日々の垂れ流し。別名『へこたれ流し』
自分を偽らず素のままで。
拍手レスもこちらで。
【再掲】ニラ【100110】
 そんなワケで、『あの桜並木の下で』時間外。『真昼の星』の3ヶ月くらい後のお話。
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○岩下家本宅・縁側

       晩秋だがぽかぽか陽気。空気が乾燥しているので、陽の当たるところはやや暑く、
       日陰や家の中は少々肌寒い。
       昼前、たぶん10時ちょっと過ぎ。子供たちは学校へ行って自宅にはいない。
       岩下貴子が縁側で新聞紙を広げて、なにやら作業中。
       そこへ兄嫁の柳原秋子(しゅうこ)が来る。スカートに素足、そしてすっぴん。
       どうやら公休日らしい。



 秋子   おはよう、貴ちゃん。
 貴子   (チラリと秋子を見て、すぐに新聞の上に視線を落とす)おはよう。
      よく眠れましたか?
 秋子   ええ、おかげさまで。……大変じゃなかった? ご飯の用意。
 貴子   ……ぼちぼち。慣れてきました。子供たちも手伝ってくれるしね。
      タカもトモも茶碗並べたりお茶入れたり。ハルカはつまみ食いしてくれたり(喉の奥でクツクツと笑う)
 秋子   ……誰に似たのかしら、春花は(ため息)
 貴子   みんなで甘やかしてるからね。
 秋子   気をつけてはいるんだけど。
 貴子   ……ま、ブラザーズがちびの頃よかちょっとマシだよ。
      あっちとこっちで同じイタズラを同時にやったりしないから。あれは困った。
      双子って不思議なイキモノだ。三つ子以上だともうどんなことをするか想像がつかない。
 秋子   (貴子の手元をのぞき込んで)……ニラ?
 貴子   うん、そう。やっと種が取れたよ。
 秋子   そうね。ずいぶんかかったわね。
 貴子   うん……5年……かな。
 秋子   初めての年は、食べ尽くしちゃって花も咲かなかったしね。
 貴子   次の年、チヨ子さんに苗もらいに行くの、ちょっと恥ずかしかったよ。
 秋子   あら? あなたでも恥ずかしいって思うことがあるのねぇ(クスクス笑う)
 貴子   そら、もちろんありますとも。
      よりにもよって、あまりの美味しさに食べ尽くして種取れなかったとか、
      恥ずかしすぎてなんて言おうかって、愛媛に行くまでずーっと考えてたわよ。
 秋子   そう言いながら、結局正直に話をしたんでしょ?
 貴子   ……(憮然として)
      チヨ子さん、どストライクで当てるんだもん。
      「ほなこて、美味しかけん気ぃつけぇよーて言うてんよー」……だって。
 秋子   お祖母ちゃん、自分が作った野菜には絶大なる自信があったからね。
 貴子   根拠のある自信だから、いいんじゃない?
 秋子   まぁね。
      ……母の実家ってだけじゃなく、好きなのよ。
 貴子   んー?
 秋子   ……愛媛の家。
 貴子   ……アタシもだよ。
 秋子   うん。
 貴子   結局、アンタが相続したんでしょ? 家も土地も、何もかも。
 秋子   ええ。法定相続人が、私しかいないもの。
 貴子   ……(手元の作業を黙々と続けている。片腕では遅々として進まないようではあるが)
 秋子   村に寄付しても良かったんだけど、避暑地も欲しいし、あなたのお気に入りだし、
      ……なにより私があのまま置いておきたくて。
      アトリエにしたいなら、していいわよ? 村の人たちとも仲良くなってるんでしょう?
 貴子   ……さて、どうだかね。
 秋子   もうっ(苦笑する)
      ……お手伝い、させてくれる?
 貴子   ……。
 秋子   ダメ?
 貴子   ……好きにすると良い。
      そろそろ体を支えるのがツラい……。
 秋子   支えてあげましょうか?
 貴子   ……んにゃ。
      それよか、ニラ……種に混じっちゃってる種殻を退けてて欲しいんだけど。
      ピンセット。もう一本、そこにあるし。
 秋子   はいはい……。
      ……ねぇ、貴ちゃん。
 貴子   んー?
 秋子   これ、ピンセットより、筆で払ったほうが、効率よくない?
 貴子   ……。
 秋子   ……。
 貴子   ……。
 秋子   ……。
 貴子   ……ダナ。
 秋子   ……ごめんなさい……(笑いをこらえてる)
 貴子   (憮然と立ち上がる)……持ってくる。
      それまで、ピンセットでやっててよ。
 秋子   はいはい(苦笑)



       貴子、のしのしと自分の自室兼アトリエである“あずまや”に歩いて行く。
       恥ずかしさをこらえてか、はたまた機嫌が悪くなってか、足音がドシドシ聞こえる。



 秋子   (貴子を見送って、肩を竦める)……すごい足音(苦笑)



       貴子は、普段は足音とほとんど立てずに歩く。
       岩下家本宅は素敵に古い家(昭和初期築)なので、不用意に歩くとあちこち
       ギシギシ音が立ったりする。
       しかし貴子だけは足音をほとんど立てずに歩く。家の者全員が一度ならず真似をして
       みてるらしいが、貴子ほど音を立てずに歩ける者は、現時点ではいない。
       クスクスと笑いながら、秋子はピンセットを取って広げられた新聞紙の上に
       散らばっているニラの種の選別を始める。
       左手を床に付き、右手にピンセット。
       時折指先で、枯れた種殻や茎を弾いて、必要なものとそうでないものに分けていく。
       あらかじめ貴子によってだいたい分けられていたそれは、徐々に純度を増して
       黒い種のみと枯れ色の草のみの明確なコントラストを作り上げていく。



 秋子   (種と種殻を選り分けながら)……あら……?
      ふふ……今で気がつかなかったわ……。



       無意識のうちに鼻歌が漏れ始める秋子。
       そこへ、筆2本と蓋付きのガラス瓶を入れた篩(ふるい)を持った貴子が戻ってくる。
       すでに足音はしていない。機嫌は直っているようだ。



 貴子   ……ん(元いた場所にストンと座り、篩を新聞紙の横に置く)
 秋子   (その気配に顔を上げ)……おかえりなさい。
 貴子   (ほぼ綺麗に分けられている新聞紙の上を見て)……筆、必要なかったわね。
 秋子   (手を止めて上体を起こす)そんなことないわよ。



       秋子、篩の中から筆を取り、分けた種の山を崩して、取り損ねた小さな枯れ草等を
       筆で器用に掃き出す。
 
 
 
 秋子   ……ね?
 貴子   ……じゃ、アタシはこっちをさせてもらいますかね。



       貴子、篩の中から筆と瓶を出し、選り分けられた種を無造作にすくい取ると、篩に入れる。
       篩を軽く揺すってさらに細かなゴミを落としていく。
       篩の中には、ニラの種と、篩の目に引っかかって落ちなかった針のような草殻が少々。
       貴子が篩う手を止めて、それらを取り除くために、篩を新聞紙の上に置こうとしたその時、
       横から秋子が持つピンセットが伸びて来て、草殻をちょいちょい、と取り除き始める。
       貴子は微動だにせずその様子を見る。
       貴子と秋子の距離が、とても近い。



 秋子   ……ねぇ。
 貴子   ……ん。
 秋子   ニラって、種の状態でもニラの匂いがするのね。
 貴子   するね。
 秋子   面白い。
 貴子   このニラは、細ニラだから、余計に香りが強い。……だからじゃない?
 秋子   ……そうかもね。でも……面白いわ。
 貴子   ……だね。



       しばしの間。



 秋子   はい、これで良いかしら?
 貴子   (篩を揺すってみて、もう取り除かねばならないゴミがないかを見る)
      いんじゃない? 瓶の蓋、取ってくれる?
 秋子   はいはい(笑いながら、瓶を取り、蓋を開けてやる)



       貴子、新聞紙の一画を大きく四角に切り取ると、それを三角形に1度折り、
       瓶の口に斜めに差し込む。丸くなるようにひらくと、簡単な漏斗ができた。
       そこに、静かに、篩の中の種を流し込む。
       サラサラと新聞紙の上を流れる、乾いた音が、ふたりの耳をくすぐる。



 秋子   相変わらず、器用ねぇ。
 貴子   ずいぶん不器用になりましたよ。
 秋子   でも、努力している。
 貴子   ……ふん……。
 秋子   (うふふと笑いながら)ごめんなさいね。
 貴子   ……ふん(別段、機嫌は悪くない模様)



       何度か同じ動作をくり返したのち、すべての種は瓶の中に収まった。
       黒い種が詰まったガラス瓶。それを貴子はつまみ上げて、自分の目の高さに持って行って
       軽く左右に振る。



 貴子   うむ(満足そう)
 秋子   たくさんできたわねぇ。
 貴子   うん。
 秋子   来年、畑に植えるの?
 貴子   そのつもり。ニラ専用の畝を作ってもいいね。
      雑草に埋もれやすいから、畝をマルチングしたほうがいいかも。
 秋子   あら、珍しく本格的ね。
 貴子   このニラだけは、できる限り残したいからね。美味しいし。
 秋子   ……なにより、チヨ子さんからもらったニラだし……ね?
 貴子   ……ふん……(そっぽを向く)
 秋子   ふふふ。



       ふたり、空を見上げる。薄く高い青空が広がっている。



 貴子   ……ウチで取れたニラ、チヨ子さんに食べてもらいたかったな。
 秋子   そうね。
 貴子   間に合わなくて、残念だ。
 秋子   ……来年、一周忌のときにでも、お供えしたら?
 貴子   ……そうか。
 秋子   そうよ。その種も、お供えする? そろそろ百箇日だし。
 貴子   ……ふむ。
 秋子   「それも良い」?
 貴子   ふむ。
 秋子   ふふふ……。
 貴子   ……。
      やなぎはらさん。
 秋子   ……なんですか? 貴子さん?
 貴子   お腹が空きました。
 秋子   (ぷ、と吹き出して)はいはい。
 貴子   玉子焼き、作ってよ。中がとろとろのヤツ。甘いヤツ。
 秋子   はいはい(立ち上がる)
      後片付け、よろしくね。
 貴子   もちろん。……自分で始めたことですから。
 秋子   岩下家の家訓ですからね。
 貴子   そのとおり。
 秋子   じゃ、作ってくるわ。……今日はお店、誰が来てるのかしら?
 貴子   ……柳原グループ総裁の手作り昼メシが賄いか……そらみんな喜んで涙流すな(シシシと笑う)
 秋子   止めてちょうだい。今日はお休みの日なんだから。
      トーテム主人……岩下友則さんの、奥さんなのよ。今日はね。
 貴子   はいはい、そうでしたねぇ。じゃ、お昼ゴハン、よろしく。
 秋子   了解しました。……貴ちゃんにはトクベツに、チヨ子さんの玉子焼きね。
 貴子   はい、よろしく。



       秋子、トーテムの店側に去る。たぶん人数の確認に行ったと思われる。
         ※トーテムでは、店員に対して、主に貴子が家に居れば賄いを作ってやっている。
          いない場合(出掛けてるとか失踪とかアトリエに籠もっているとか)
          はこの限りではないが、主人の友則が朝メシを大量に作るので、
          これが出されたり、近所の弁当屋から配達してもらったりする。
       貴子、種の入った瓶を縁側に置き、作業に使った物たちを片付け始める。

       利き腕を失って約1年、岳が亡くなり半年、秋子の祖母が亡くなって約3ヶ月。
       腕も猫も人も去り、時間は無情に流れていく。
       自分が望むと望まざると関係なく、いずれ今日は去り明日はやってくる。
       それでも、種は残り思いは残り、未来へと受け継がれていく。
       大事にしたければ。
       大事にしたければ……。



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ファイルに付いてる執筆開始日を見て「…え!? そんなに昔?」ってなりました。
…マジかなぁ??
2021/06/15(Tue) 00:29 No.8
【再掲】艦隊行進曲【190207】
 ひさびさにちょっとドタバタ的なモノを。
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○ヒナセ基地司令官室 夜
        コンコン、とノックの音に続いてドアの開く音。


どうぞー……て、なんだレーコさんか。


なんだはご挨拶だなぁ。


こんな夜更けになに?


大したことではないんだが、例の件、どうするんだい?


例の件……ああ、あれか。
……レーコさん、私の代理で出てよ。


そうはいかないだろ。
私にだって要請が来ている。


マジか。


仕方がないさ。姫提督(アサカのこと)の当番なんだから。
部下の提督という提督。近隣にいる連中は、みんな呼ばれているはずだよ。


……基地を留守にしたくないんだけどな。


ここは本部にいちばん近いと言っても過言じゃない程度には近隣地の後方基地だからね。
ああ、そうそう。佐世保組も呼ばれているらしい。


マジ? ……というか、その情報はどこから入ってきたの?


ん?
まぁ、同期関連の連絡網……とでも?


……誰かいたっけ? ヒロミさんの部下で同期って。


……ヒナセ、君、本気でそれ言ってるか?


うん。


……ホントに君は、同期関係への関心が薄いな。


すみませんね、人付き合い悪くて。


(肩をすくめる)
……それはともかくとして……だ。
式典行事への参加となると、アレがいるよな。
君、決めているか?


アレ?


艦隊曲。


へ? いるの?


いるとも。


あー……。


曲目を提出しないと音楽隊が困るし、君の艦隊だけ無音で長官の前を行進する気か?


……そう言うレーコさんは決めてんの?


もちろん。提督になった時に決めて、それをずっと使ってる。
もちろん式典くらいしか使わないから、数回くらいしか演奏したことはないが。


式典当番なんて、そうそう回ってくるもんじゃないからね。


そうだな。


……で、何?


ん?


曲。


ああ……『錨を上げて』だよ。 https://www.youtube.com/watch?v=YcXbZK_VB-U


あー……イヤになるほど似合いそうだね。


お褒めにあずかって光栄。


褒めてないし。


アメリカさんの公式行進曲だっけ。
アイオワとか旗艦にするとさらに板に付いた感じになりそう。
旗艦は誰?


今回は『那智』だね。


あらま、めずらしい。
妙高さんじゃないのか。


(にこ、と微笑む)


……なんかあったな。


……イヤ別に……。


なるほど。


……で、ヒナセ。
君は決めてあるのかい?


一応ね。
だって、艦隊指揮官になった時点でとりあえず申請出さないといけないじゃない。


ペナルティがあるわけじゃないから『保留』で申請してそのまま……って提督も多いけどね。


マジなの。アレ絶対出さないといけないと思ってた。


真面目な君らしい回答だね……で、何で申請しているんだい?


……『行進曲 軍艦』※いわゆる軍艦マーチ※ https://youtu.be/s6ZrQ73zxdw


……それまた、キミに似合わず勇猛な曲を選んだな。


……それしか知らなかったんです。


は?


私の音楽の成績、知ってるでしょ! もー!


音楽のみならず、芸術方面全般において素敵な成績だったのは知ってるよ(爽やかに笑う)


きー!


……ふむ。しかし悪くないかもな。
『軍艦』のあとに『錨を上げて』は、流れとして悪くない。


なんで私のあとにレーコさんなんだよ。
違うかも知れないでしょ。


通例でいくなら、同基地はまとめるからな。
だとすれば、立場上君が先になる。


階級一緒なのに!


階級は一緒でも、役職は君の方が上でしょ、課長。


ああそうですね、課長代理。


……こんなことなら、知ってる曲って理由で適当に決めるんじゃなかったなぁ。
どうせ演奏したりされたりなんてことないだろうって、嵩括ってた。


姫提督の下にいるのに、どうしてそう思うかな。


………。


しかしまぁ、今回は我々はさほど目立ちはしないだろうね。
なにせ彼も出るそうだから。


彼?


我が鹿屋第三部の名物男さ。


あー。オトマルさんか。


彼の艦隊はある意味壮観だからね。


だね。戦艦どころか空母も二隻しかいないのに、あれほど派手な艦隊は他に見たことない。


左様左様。
あの艦隊が平時にフルセットで見られるだけでも、僥倖と言うべきだろうな。


……そうだ。密閉容器《タッパー》持って行かないと。


いや……それは……。
話が違っているぞ、ヒナセ。


そのくらい楽しみがあっても良いと思う。


……子供じゃないんだから、駄々こねないでくれよ。


ぷぅ。



   ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

○鹿児島湾 鹿屋基地軍港内 式典当日
        鳳翔艦橋で、ヒナセが妖精さんを介してカワチ提督と喋っている。

(我々の出番が無事に終わって良かったですな)


……だから嫌だって言ってたのに……。


(いや、なかなか雄壮な艦隊行進で、我が三三六分基地の印象も深くなったでしょう)


だーかーらー目立つこと自体が嫌なんだって。


(それは仕方ありませんなぁ。第二艦隊とバランスを取るためには、武蔵くらいが旗艦じゃないと。もちろん鳳翔さんが旗艦でも、見劣りはしないどころかベテラン艦の偉容を十分見せつけることはできますけどね)


……いや。それはそれで困る。表向きは建造艦なんだし。


(そう言えば。ウチの第一艦隊を見て、旗艦は武蔵ではなく大和と勘違いした連中も少なからず居そうですな)


いやよく見なくても違うでしょ。


(大和型と『鳳翔』の組み合わせが、その勘違いを誘発する一種のフィルターみたいなものですからね)


……うむー。


(なんにせよ、これといった問題もなく我々の出番は終わりです。それだけでも重畳ですな)


そーだね。あとは誰が勘違いしようが妄想しようが、好きにすれば? って感じかな。


(姫提督直属の偉容も見せつけてやれたし、まぁ『良き哉』というところですな)


……そこはちょっと勘弁して欲しいところだったんだけどね。
とにかく私は目立ちたくない。


(時すでに遅しですよ)


……はぁ……


(そんな、盛大にため息吐かんで下さい……あ、そろそろ彼の出番だ。これで私たちのことは綺麗さっぱりみんなの脳内から消えますよ、きっと)


……そうであって欲し―――



        ヒナセが言い終わらないうちに次の艦隊曲のイントロが流れ始める。



(来ましたな)



        メインテーマの音量が大きくなり、
        小規模ではあるが、通常とはまったく異なる編成の艦隊が主会場に粛々と入ってくる。
        主隊が見え始めると、式典会場がざわつき始め、空気がどよめく。

        先頭(旗艦)は『天龍』、次に空母『飛鷹』その左右に『大井』と『北上』
        後方主隊に『間宮』と『伊良湖』がそれぞれ三隻複縦陣で。
        その左右に『黒潮』『夕立』
        後方に『ガンビア・ベイ』さらに後ろに『叢雲』
        そして殿は『龍田』

        演奏されている艦隊曲は『おもちゃの兵隊のマーチ』(某調味料メーカーがスポンサーの、料理番組のオープニング曲のアレ) https://youtu.be/SxLK0bcVEDw



やっぱお持ち帰り用の密閉容器を用意しなくちゃって気分になるよ。


(二大料理番組の片割れのテーマ曲ですからな)


まぁねぇ……。
というか、あのフレーズが聞こえると、そろそろお昼だなぁって思っちゃうよ。


(……もしかして、姫提督のオフィスで流していた……とか?)


いんや。明石の工房で時計代わりにテレビが付けてあってねぇ。
艦娘用の軍内放送枠だから、見られる番組は限定だし局もごたまぜなんだけど、あの番組だけは本放送とおなじスケジュールで十一時四十五分から始まるんだよね、なぜか。


(なるほど。それは罪作りな)



        カワチの苦笑が妖精さん越しにヒナセの耳に届く。
        ヒナセはちょっと肩をすくめて



あー……
オトマルさんの作ったオムレツ食べたい。あのほら……卵で焼き固めたみたいな。


(ヒナセ司令。あれはオムレツじゃなくてキッシュって言うんですよ)


……そなの?


(それ、イワヤ提督が聞いたら泣くから、リクエストの際は、まず私に言って下さい)


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 ちょっとグダグダっぽくなりましたが。
 …てかこれ、書き始めてすぐに気が付きました。
 「マンガのほうが、絶対におもしれえ」

 世の中には、マンガにしたほうがいい話、小説にしたほうがいい話……って確実にあります。

 こののち、ヒナセは艦隊曲を別のに変えたとかどうとか…ww
2021/05/24(Mon) 00:08 No.7
何もできないままに…
 時間だけが過ぎ去っていきます。

 リハビリを兼ねて、現在パートタイムで就労中。
 とは言いつつ、国を挙げての一大プロジェクトのある意味最前線。

 純粋に事務したり、みんなが使うExcelファイルを作ったり改造したり、PCのハードやソフトの設定したり、キャラデザしたり、ポスターを作ったり。

 今まで縁のなかった知らない世界で毎日が貴重な体験。
 ……やってることは、いつもの「何でも屋」なんですけども(w。

 少しだけ体力も戻ってきつつあるみたいです。


 まだ「何かできる」という状態ではありませんが、ゆっくり前に歩けたらいいな、と思っています。
2021/04/09(Fri) 03:13 No.6
【再掲】ヴァレンタイン2016
艦娘ヴァレンタインボイスのネタバレを含んでますので、
嫌な人はリターンバック、よろしくなのです。

ヴァレンタインいろいろ
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


鳳翔   チョコレート、どうでしたか?

ヒナセ  ありがとうございます、すごく甘かったです。
 
鳳翔   きな粉と和三盆を使って和風に……

ヒナセ  あ、こっちのはきな粉とチョコレートの味がしてましたね。
     なるほど。さすが鳳翔さんですねぇ。

鳳翔   あ……そうですか。

日向   (司令官室の前を通りがかって、偶然見た)
     ……やれやれ……。


      ◇◆◇◆◇◆◇


電    あの……司令官さん。いなづまの本気のチョコ、差し上げるのです!
     こちらなのです。

ヒナセ  ありがとう。可愛いラッピングだねぇ。
     自分でやったの?

電    はいなのです。間宮さんに教えていただいたのです。
     みんなでいろいろ包んだのです。

ヒナセ  ……みんな……。


      ◇◆◇◆◇◆◇


日向   そうか、バレンタインというヤツだな。

ヒナセ  あん?

日向   しかたがない。『特別な瑞雲』をやろう。ホラ。

ヒナセ  ……今年のはちゃんとチョコなんだ。

日向   なんだ? 気に入らないのか?
     じゃ、去年の『特別な瑞雲』を返してくれ。

ヒナセ  ちょっと待て。なんでそうなるの。

日向   なぁに、バラせばすぐに資材になる。基地が潤うのは良いことだ。

ヒナセ  やだよ! 絶対に返さないからねっ!!

 
      ◇◆◇◆◇◆◇


響    司令官。ロシア風チョコ、あげる。

ヒナセ  (開けて)……どこがロシア風なの?

響    それは……内緒だ。

ヒナセ  ……そう。ありがとう。
     (電のチョコと変わらないんだけど、これ、間宮さん製だよねぇ…?)
 

      ◇◆◇◆◇◆◇


雷    じゃーん! 雷の手作りチョコを用意したわ!

ヒナセ  ……それはどうも。

雷    司令官、よーく味わって食べるのよ。はい!

ヒナセ  ありがとうございます。
     (やっぱり電たちのチョコと同じに見えるんだけどなぁ……)

 
      ◇◆◇◆◇◆◇


暁    し、司令官。チョコを作ったわ。……一人前のレディとして……その……

ヒナセ  はい。ありがとうございます。
     味わって頂くね。

暁    もう! 頭をなでなでしないでちょうだい!!

ヒナセ  あ、ゴメン。ついいつものクセで……。

暁    もー!!


      ◇◆◇◆◇◆◇


むさ坊  提督よ、チョコレートを用意した。

ヒナセ  ………。

むさ坊  ……その……疲れたら、食べてくれ。遠慮は要らん。

ヒナセ  ………。

むさ坊  なんだ? その意外そうな顔は。

ヒナセ  いや、意外だったもんで。……隼鷹の差し金?
 
むさ坊  ………。
     提督よ! 返すがいい!! もう二度とやらん!

ヒナセ  いやいやいや。
     もらったモノは、私のものだよ。ありがとねぇ。大事に食べるよ。

むさ坊  なんてヤツだ。隼鷹の言うとおりだな! この人でなしめ!


      ◇◆◇◆◇◆◇


カワチ  ……まったく、君はどうしてそう、心の機微というものが分からないんだ。

ヒナセ  いえいえ、嬉しゅうございますよー。
     まさかこの歳になって、大量のチョコをもらえるようになるなんてねぇ。
     たださぁ……

カワチ  だた、なんだい?

ヒナセ  ……正直、来月の間宮さんからの請求書がコワイ。

カワチ  ……ああ、……ま、確かに。
     私のほうも、ちょっとな……。
2021/02/12(Fri) 01:33 No.5
【再掲】おにぎりのうた【161017】
おかあさん
あなたの作るおにぎりは三角で
角がきちんととがっていた
ほどよく握りこんでいて
もろもろ崩れることがない
運転しながらでも安心して食べられる


おかあさん
あなたの作るおにぎりは塩味で
ときどき種を抜いた梅干しが入っていた
ほぐした焼き鮭を混ぜ込んだのもあって
どれも塩加減がちょうどいい


おかあさん
あなたが持たせてくれてたお弁当は
おにぎりが3つに 三切れを一包みにした玉子焼きが三包み
私がそれだけでいいと言ったからだけど
どこに行くにもそればかり
いつも残さず食べました
いつでもおいしく食べました


私はいまだに
あなたのおにぎりにたどりつくことができません


さいごにおにぎりを作ってくれた日
あなたはお弁当のつつみを渡しながら泣いていた。
おにぎりがうまく握れないと
さめざめと泣いていた。

私もあのとき
「どんな形になっても、かあちゃんのおにぎりが食べられることが、嬉しいよ」と
笑って受け取って出かけたけれど
本当は一緒に泣いてしまいそうだった
だけどあなたをこれ以上悲しませたくなかったから
ニコニコと笑って出かけていったのです

車の中で包みを開いて
もろもろと崩れるおにぎりをほおばって
私は涙があふれて仕方がなかった
このおにぎりはきっと最後のおにぎりになる
そんな予感がしていたから

そしてそれは現実になりました



カミサマにひとつだけお願いできることがあるならば
母のおにぎりをまた食べたい
と心から言いましょう



今 私は自分のためにおにぎりを握ります
母のあのおにぎりを
いつか自分で作れるようになりたいと
ひとつひとつ心を込めて
おにぎりを握ります
2020/11/28(Sat) 03:39 No.4
とりあえず完了。
 …てことで。
 スマホ縦の場合だと、字がめたくそ小さくなるんですが、これについては、シナリオ形式のモノの表示が大幅に壊れないようにするためでして、致し方なく…という感じです。
 その代わり、2.5倍まで拡大できるようにしてるので、それで対応して頂くか、あるいは端末を横にしてくだちぃ……というところです。

 相変わらずユーザーフレンドリーにはほど遠いサイトです。

 本家サイトのコンテンツでは、この部分はある程度解消されるかとおもいますが……がががが……。

 なにゆえあっちとこっちで差が出るかと言えば、こちらはCGIで生成している上にタグが使えないってトコに起因しています。
 特にシナリオ形式の場合、全角あるいは半角空白で整形してますんで、幅が狭いとどうやっても崩れるわけで。
 じゃ崩さないように入力すると、幅広の端末で見た時にめっちゃマヌケになるので。
 ……で、どっち取るか? の判断をした時に「全体を見た時の見栄えが良い方」になるわけです。

 ほんじゃま、サイトコンテンツ(主にへっぽこ書架)であまり崩れずに表示できる理由なんですが、実はあちらのシナリオ形式、ソースを見て頂いたら即分かるんですけど、1セリフ、1ト書きごとに専用のタグに入れて整形しているのです。
 あれね、ファイル作るのめたくそ面倒なのね(完全自動化はできないので。
 例えば誰かのセリフ……

 秋子  貴ちゃん、そろそろ出てきて頂戴。
 貴子  ……ヤダ。

……(↑)があったとして、名前枠、セリフ枠 と、<div>や<P>というタグで一つ一つ括って、その中に文字を入れてるのです。このタグ、幅を指定してやると、はみ出す分は自動で折り返してくれ、各項目の頭も揃うというスグレモノ。
 具体的にどう表示されているのかといえば、このあたり(https://www.studiol.co.uk/novel/archives/kancolleDB/kanDB_042.html)を見て頂ければわかるかと(w。
 ソース見られるの嫌…なんてことも言いませんので、見られる方はお好きに見て下さい。……こんな手間かけてんの!? ってたいがい言われますw
 この手間にはレイアウト以外の理由があるので、そこはまたそのうちにでもお話ししたいかなと思ってます(w。
2020/11/14(Sat) 01:04 No.3
【再掲シリーズ】今朝のキスの味。【181014】
○ヒナセ基地 離れ「い棟」 早朝

       〇五四〇。「い棟」と呼ばれている離れの一棟。その内部にある寝室。
       武蔵と隼鷹が眠っている。ふたりはほぼ全裸。どうやら昨夜はお楽しみだった模様。

       いきなり武蔵がむくっと起き上がり伸びをする。ベッドから足を下ろして
       立ち上がろうとしたとき、武蔵の首ががくんと斜め後ろにテンションがかかって停まる。



 武蔵  ………。



       見れば、隼鷹の手が武蔵の髪を掴んでいる。
       ……が、当人の目は開いていない。だが、しかし……



 隼鷹  (目を瞑ったまま)キスは?

 武蔵  ……(なんとも微妙な顔)

 隼鷹  (チロっと片目だけ開いて武蔵を見る)キ・ス。

 武蔵  ……ん……お……おはよう(隼鷹に覆い被さるようにして)

 隼鷹  んー(口元が笑って、武蔵を迎え入れる)



       武蔵と隼鷹、ゆっくりと口づける。深いキス。
       舌と舌が絡み合い、音を立ててむさぼるようにキスを続ける。
       やがて、満足したように自然と離れ……



 隼鷹  (お互いの唾液で塗れた自分の唇を舌先で舐め取りながら)……うまくなったねぇ……(にやにやと笑う)

 武蔵  ……ん……(こちらも自分の口の周りを舐めて)

 隼鷹  てかだな。



       隼鷹の手がシュッと武蔵に延びて両のもみあげガシっと掴んでそのまま起き上がる。



 隼鷹  てめー、いつも言ってんだろ! ヤッたあとこっそり盗み食いすんなって!!
     ゆんべはカステラか!!! こないだ長崎で自分用の土産に買ったヤツだろ!

 武蔵  いててててて!!! な……なにを証拠に……

 隼鷹  あまーい匂いと味がすんだよ、白状しろくぉら!!

 武蔵  ごごごご……ごめんなさいぃぃぃ!!

 隼鷹  どうしてもハラ減るなら、食ってもいいけどな! 歯ァ磨いて寝ろ!!
     布団の中に甘い匂いがして気持ち悪いし、なによりおめーが虫歯になるだろ!!
     虫歯になったら治療が大変なんだって、何度言ったら分かる!
     虫歯はバケツでも治らないんだよ!! 分かったか、このちびすけ!!!



       隼鷹、ものすごい剣幕でまくし立て、武蔵は隼鷹の勢いに押されて
       平謝りするばかり。

       間。


○後刻エピローグ 別の場所 日向、武蔵


 日向  (『叱り方はともかく』)隼鷹の言い分が正しいな。
     武蔵よ、お前はあの明石(明石ダッシュのこと)に、麻酔もなしで歯を抜かれて
     新しい葉を移植されたいか?


 武蔵  ……絶対ヤダ。

 日向  だったら寝る前には歯を磨くんだな(『いくら眠くてもだ。日向さんとの約束だ』)

 武蔵  ……はい……(小さくなる)



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ごくごく掌品のシナリオ。
こういうのは、ネームにしたほうが、分かりやすいでしょうね(苦笑。
2020/11/12(Thu) 23:35 No.2
日記を新設置しました。
 理由は、レスポンシブ対応にしたいなって思ったから。
 ……で、前のスクリプトと同じものがアップデートされてたので手を付けてみたら、まったく別物になってた次第。
 そのようなワケで、アップグレード版なんだけど新規になりました。

 本来は掲示板なんですが、その機能はすべて表からは触れないようにしてます。

 以前の日記は、こっちにまだ残ってます。
 https://bbs.studiol.co.uk/0/

 HTML生成タイプなので、ファイルだけ残しておけるのがいいですね。

 そのうち消す予定ですが、まぁ年内くらいまではこのままにしておきます。
2020/11/12(Thu) 11:35 No.1
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