日々の垂れ流し。別名『へこたれ流し』
自分を偽らず素のままで。
拍手レスもこちらで。
今年はよく本を読んでいる
 とは言っても、一度以上読んだ本ばかりですけども。

 初めて読む書籍はKindleばかり。
 これは、本を置く場所がないのではなくて、紙本がすでにない、という初歩初歩のお話でして。それはともかく。

 一昨年前あたりから、やたらと登山系それも遭難モノのドキュメントを読むようになってまして。きっかけはさらにその前に『岳』を読んだからだと思いますが。
 登山系書籍といえば、言わずもがな山と渓谷社。Amazon Kindle Unlimited にずらーっとあるのをいいことに、契約中は手当たり次第読みたくってました。
 なんでそっち方面ばかり読むのかといえば、たぶん、稀に山歩きをするようになったからでは、と。
 さすがに冬山に登りたいなどと言うことはありませんが(根性無しなので)、夏山でも気がついたら簡単に遭難してしまうのが山なので、いろんな遭難事例を知識としていれておいても邪魔にはなるまい、と思っているわけです。
 ……某ゲームの取材で、やたらと山行してたからだという話もあります。あります。あります。
 いやマジに山に登ってるか山間の道を走ってるかしかしてなかったよ、あの取材は。
 それもともかく。

 本題に戻りますが、既読のモノばかりとはいえ、今年は本当に本をよく読んでいます。この時点までは。

 ファンタジーから歴史小説から日記モノ、児童小説、ドキュメンタリー、技術書と、乱読に片足の先でツンツン触れてみてる感じ。
 本気の乱読はもっとジャンル広く、3~4冊同時に読むようなこともやったりするんですが。そこまでには行ってないので『乱読をつついてる』状態というわけです。
 このペースでいけば、今年は300冊くらい読む計算になるんですけど、これは獲らぬ狸の皮算用。

 しかしですよ。
 こうなるとヤバくなるのがベッドの上や周辺で。読んだ本、読みかけの本、これから読む本がどんどん積み上がっていくんですよね。
 ……で、困ったことがひとつ。
 今は真冬なので、自分の寝室ではなくエアコンがあり、外壁から遮断されている唯一の部屋に置いてある折りたたみの簡易ベッドで寝ているんですけど、これが、狭い。
 いや、普通のサイズのベッドなんですけど、寝室のベッドはマットがセミダブルなので、簡易ベッドは通常よりも狭い……となり、本を置くスペースがないのが悩みなんですなー。

 そもそもベッドの上に本を積み上げるな、という話ではあるんですけども(そこな。


 そんなわけで、本来ベッドの上に積み上げられる本は、ベッドテーブルやサイドテーブル代わりのエレクトーン椅子に積み上がることになりまして。
 エレクトーン椅子は動かさないからいいんですが、、ベッドテーブルは寝る前に足元に移動させる。これが重い。
 テーブルは激軽いくせに載ってる本は重いから、トップヘビー状態になって動かしにくいコトこの上ない。下手すると足元が付いて行かなくて倒れそうに。小さいとは言えノートPC(ちび子4号)が乗って、本が10冊くらい乗ってるテーブル。倒れて足に落ちかかろうもんなら無事では済まされなく……。

 とかなんとか書き連ねてしまいましたが、言いたいことはただひとつ。

 読み終わった本は、元の位置に戻せ。

 ……そういうこっちゃ。
2024/01/26(Fri) 01:35 No.53
2024年 今年の毛布
 気がつけば新年明けて1週間が過ぎてました。
 今年は1日から能登半島で大きな地震が発生。
 2日は羽田空港で、民間旅客機と災害支援で稼動中の海保機が離着陸の際に衝突。海保機に乗っていた機長を除く5名が殉職しましたが、民間機の方は乗員乗客合わせて400人近い人数にもかかわらず全員無事だったという大きな事故がありました。
 さらに3日はお隣の市で古くからある食堂街が大火でほぼ全焼。山手線で通り魔的事件が起き。
 4日は西新宿で12階建てのマンションで火災が起きたり品川駅で男が電車待ちの女性をホームに突き落とす事件が発生しました。

 ……一体どうした2024年。令和ちゃん6歳。

 実はワタクシ今年は、六星占術でいうところの大殺界のど真ん中。九星占術では五黄土星でやっぱりあんまし良くない星回りなのですが、こうも年始から世の中が不穏すぎると、自分の星回りに戦々兢々とするのも小さいかな、と思いました。
 それはともかく。

 去年の話なんですけど、一昨年の12月にとあるアプリ開発の会社に派遣社員として入職しまして、でも生活パターンをうまく更新できませんで。そのせいで昨年の正月は雑煮は食べたけど筑前にも食べた(と思う)けど、ブリも一応買って食べたけど、年末にはんぺんを買い損ねたばっかしに伊達巻きを作って食べることができませんでした。
 その程度の話? という感じなんですけどね。そうは問屋が卸さない。
 正月に作り損ねて食い損ねた伊達巻き。結局去年は一度も作らず食わず……なんてことなの……。
 やはりちゃんと年末にはんぺんゲットして、年始に作って食べないと。まさか1年以上伊達巻き食べないで過ごすとは思わなかったです。
 でもですね、何度かはんぺん買ったんですよ。去年。
 2回くらい伊達巻き作って食いたい! って買ったのに、作らずそのまま焼いて食べちゃった。チーズ挟んで焼いて食うと美味いんだはんぺん。おでんに入れても美味しいですね。……12月だったか11月の終わりあたりだったかに、おでんもやったね。その時もはんぺん買ったのにね。

 そんなわけで、今年の正月は暮れの若干早い時期にはんぺんをゲットしてきまして、一日から作りました。食べました伊達巻き。
 やっぱ自分で作る伊達巻きは、あんま甘くなくて美味しい。一昨年はんぺん焼くために玉子焼き用のパンを買ったんだから、果敢に作って食べないと。

 てなことで、今年の毛布は無事クリアしました(年々レベルが下がっていくな。

 あとはまぁ、無事にヒョロヒョロ生きていけばいいかなってところです。

追伸:iPadは結局、メインPC(Windows機)と繋いで液タブ化して使うことにしました。評価のあまり良くないアプリを介しての接続ですが、クリスタは遅延もなく重くもなく充分に使えてます。
 てことで、仕事以外で絵を描くを、今年はもっとやりたいですね。<今年の毛布。
2024/01/08(Mon) 04:24 No.52
ひうがししょぉ と ひぶりがた・3-2
 ……そして討ち入り(違。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
○ヒナセ基地農作業小屋 日向、日振、大東
        日向が布バケツ片手に農作業小屋に入ってくる。
        内部には薪ストーブが焚かれており、ストーブの上には大きなヤカン。
        湯がたっぷりと沸かされている。ストーブそのものには二重の柵。
        そして一段高くなっている三畳ほどのスペースには布団が敷かれており、
        日振と大東がすやすやお昼寝中。
        日向、眠っている二人を見て、ホッと息を吐く。
        ヤカンからお湯を取り、タオルを二枚洗いぎゅっと絞ってから
        二人が眠っている横に腰を下ろして……




 日向   (掛け布団の上からそっと撫でるように叩き)そろそろおやつだぞ。



        日振型たち、ぽにゃ…と目を覚ます。



 日向   まだ寝ていたいなら、それでもいいが。

 日振   (両手をついてうーんとネコのように伸びをし)うー……。

 大東   (眠くてたまらないがおやつは食べたい)おやつー。

 日向   では、顔を拭け。目脂やヨダレが付いている(先ほどのタオルを広げて渡す)

 日振型  はぁ~~~い……(大人しく拭く)

 日向   (使い終わったタオルを受け取って)よし。じゃ、おやつをやろう。



        布バケツにタオルを入れ、そして大きなビニールの袋を取り出す。



 日向   (袋の中から、オブラートに包まれたチョコレートタフィーを出して…)
      昨日間宮が来たからな(日振と大東の口の中に、タフィーをひとつずつ押し込む)



        日振と大東、口の中に入れられたモノをしばらくモゴモゴしていたが、
        急に目が見開いて「きらーん」となり、全身を震わせる。



 日向   (真剣に様子を見ている)

 大東   ひゅひゅひゅひゅ……

 日振   ししょししょししょぉ……

 日向   (眉間に皺を寄せた渋い顔で)……嫌いだったか?



        日振と大東、自分の頬を、支えるように手で押さえ、
        ぶるぶると顔を横に振る。
        日向はそんな二人を覗き込むように見ている。



 日振   し……ししし……

 日向   ………。

 大東   こここここれこれこれ……

 日向   ………。

 大東   にゃにきょれ……

 日向   ………。

 日振   おぃひい(プルプルしている)

 日向   (真面目というより、怖い顔)………(いきなりニカ、とたぶん笑い)そうか。

 日振   うひぃ!(日向の顔が怖くて飛び上がる)

 大東   はやぁ……!(同様に飛び上がる)

 日向   ……ん?(なんだか反応が変なので小首をかしげるが、気を取り直して)
      もう一つ……いるか?(袋の中に手を入れる)

 大東   (ぱぁぁぁ…と顔がほころび)たべるー!

 日振   (ホッとして溶ける)

 日向   (二人の口の中に、タフィーを入れながら)今日だけ特別に二つやるが、
      明日からはひとつだけだぞ。それも、ちゃんとお利口さんにしていたらだ。

 大東   しゅるしゅるー(口の中でタフィーをもごもごさせながら)

 日振   ひひょぉらいひゅひー(もごもご)



        喋ろうとしてヨダレを垂らす日振型たちの口元を、
        作業用タオルで拭いてやる日向。



 日向   ……食べながら喋るんじゃないと、何度言えば……


     ------------------------------------------


○作業小屋外
        ヒナセとカワチが通りがかる。
        カワチがふと窓越しに中を見て。



 カワチ  ……あれは、なんだい?

 ヒナセ  (中を見て)ん? ……ああ。
      餌付け中だね。

 カワチ  は?

 ヒナセ  チョコだよ。おちびさんたちになかなか手こずっているようだから、ちょっとアドバイスを。

 カワチ  なるほど。しかしそれは悪手では?

 ヒナセ  そぉ?

 カワチ  犬猫じゃないんだから、エサで釣るのはいただけない。
      犬猫ですら、餌で釣って躾けると、碌なことにならないのに。

 ヒナセ  そうなんだ。でも二本足で歩かせたりするじゃない。

 カワチ  芸と躾はちがうからね。

 ヒナセ  そうなんだ?

 カワチ  (渋い顔になって)だいたい君はだな。どうしてそう心の機微に疎いんだ。
      おちびさんたちを自分に置き換えて考えてみたまえよ。

 ヒナセ  うーん…(いちおう考えている)

 カワチ  何か起きたら、君が責任取れよ。

 ヒナセ  え? そんなに重篤なことなの?

 カワチ  そうなるかも知れないってことだよ(やれやれ、と肩をすくめる)


     ------------------------------------------


○数日後 司令官室 夜
        日向がヒナセに対峙している。



 日向   困ったことになった。

 ヒナセ  なに?

 日向   ちょこれいとが足りない。

 ヒナセ  ………。

 日向   さらにだ。艦医を呼んで欲しい。

 ヒナセ  ……それはまた物騒だね。明石じゃダメなの?

 日向   明石でも対応できるが、ちょっと可哀想でな。

 ヒナセ  ……日振たちか。

 日向   そうだ。このままでは虫歯になってしまう。

 ヒナセ  寝る前に歯を磨かせてないの?

 日向   いや。それはやらせている。食事やおやつのあとも、できるだけ磨かせてはいるんだ。

 ヒナセ  んー? じゃ、どこに虫歯になる余地が?

 日向   その歯磨きのあとだ。問題は。

 ヒナセ  んん?

 日向   チョコを欲しがるんだ。

 ヒナセ  それは意味がないのでは?

 日向   おりこうさんなことをしたから、チョコを食べなければならない、と
      無茶苦茶な持論を展開してきた。

 ヒナセ  それは確かに無茶苦茶だねぇ
      ……あ……

 日向   ん? なんだ?

 ヒナセ  あー……あーあー……そういうことかー!

 日向   ??

 ヒナセ  ヒナタ。

 日向   な…なんだ?

 ヒナセ  (肺の中の空気を強き吐き出して)可哀想だけど、虫歯にしちゃおう。
      ちょっと痛い目見ないとダメだと思う。

 日向   し……しかし……。

 ヒナセ  見た目は子供だけど、中身は子供じゃないんだ……いや、違うな……
      (手で顎を支えて考え込み)とにかくだ。見た目と行動に欺されてはいけない。

 日向   ふむ?

 ヒナセ  やはり海防艦だなぁ。クレバーだ……いや、crafty か、この場合は。

 日向   クラフ……ずる賢いか……なるほど。

 ヒナセ  ちょっと甘やかしすぎたかな。
      どのみち、この基地に置くことになるなら、規律と躾はしておかないと。
      あー……こういうことか、レーコさんが言ってたのは。

 日向   カワチ提督から何か言われてたのか。

 ヒナセ  言われてたというか、忠告をね。
      そんなわけだから、チョコあげていいよ。そして明石に治療させよう。

 日向   ……海防艦たちが気の毒になってきたな。

 ヒナセ  んにゃ。これ以上増長させると、本気でこっちをナメてくるからね。
      そうならないうちに先手を打たないと。

 日向   ……(不満顔)

 ヒナセ  これ命令。OK?

 日向   Aye-aye ma'am....


     ------------------------------------------


○さらに1週間後 ヒナセ基地工廠(掘っ立て小屋) 
        明石’が白衣を着て頭に反射鏡を付けている。
        その後ろに日向とヒナセ。二人とも無表情だが、日向はやや目を逸らせ気味。


 明石’  (ヒナセに)ホントにいいんですかい?

 ヒナセ  (無表情のままで)ああ、思いきってやっちゃって。
      ここまで進行してたら、もう物理的に抜くしかないでしょ。

 明石’  (肩をすくめつつ、しかし楽しそうに)いやー、なかなかここまで悪化させてるのは
      久々に見ますねぇ。
      (こっちを向いて)さーぁ、口を開けてー。抵抗しなかったら一瞬で終わるからねー。

 大東   やだー! ししょーたすけてー!!

 日向   いやもう無理だ。明石が診断に間違いはないからな。
      だから言ったんだ。ちょこを食べたら歯を磨けと。

 大東   みがいたじゃんかよー!!

 ヒナセ  そのあとでまたチョコを食べたら元の木阿弥なんだよね。
      ……日向。監督不備だから、君はあとで始末書ね。

 大東   やいていとく! ししょーはなんもわるくないぞ!! 
      わるいのはししょーにわがままいったあたいたちだ!!

 ヒナセ  (冷たく)そこまで分かってたなら、こういうことになれば日向が監督責任で
      罰せられることも分かってたよねぇ、キミタチ。

 大東   (ぐ……っと詰まる)

 日振   ごめんなさい提督。

 ヒナセ  見た目に欺された私にも責任があるから、この件についてはアサカ中将閣下にも報告済みでね。
      ウチの基地は向こう三ヶ月、福利厚生費を半分に減らされることが決定してるの。
      私が自腹を切るのにも限度があるから、おやつ代がごっそり削られるのは避けようがないし、
      艦医を呼ぶ予算もなくなったから、もう明石に抜いてもらうしかないんだよ。
      ずっと痛いのもいやでしょ?

 日向   そういうわけだ。全員痛み分けということで、今回はお前達は歯を抜いてもらえ(踵を返す)

 大東   うぇえええええん……。

 日振   うぇぇぇぇん……。

 明石’  さぁさ、話し合いは済みましたかね?(とても嬉しそう)
      じゃ、さくっとやっちゃいますかね。
      抜くときはメチャクチャ痛いけどね、抜いてしまえばあとは入渠すればいいからねぇ……


       ジリジリ近づく明石’に、日振と大東の顔色はは真っ青になっていく。


 日振型  ……ひ……ひぃぃぃぃぃぃ……


○工廠の外 日向、ヒナセ
       工廠の中から歯を抜かれる日振型たちの声が響く。
       それに肩をそびやかしながら、ヒナセと日向が出てくる。


 日向   (表情はあまりないがややゲッソリした顔で)……これで少しは従順になればいいが……。

 ヒナセ  さてどうだろうねぇ。

 日向   君は怒らせたら恐い、というのは分かったと思うよ。

 ヒナセ  そうであってくれればいいけど。
      なんだかんだ言っても海防艦だからなぁ。
      見た目は駆逐艦より子供だけど、中身は違うからね。そこは気をつけないといけなかったね。

 日向   そう……だな……。

 ヒナセ  最近ちょっとダレてきてたから、軍規を引き締めるのにちょうど良かったよ。
      悪いけどヒナタ、さっき言った始末書、建前上出してよ。

 日向   ああ、わかってる。

 ヒナセ  代わりにと言ってはなんだけど、明石小屋の外壁。やり替えていいから。

 日向   !
      ならば承知した。明石が良いと言ったら、天井も塗り替えていいか?

 ヒナセ  お好きにどうぞ。塗料が足りればね。
      ……ま、そのくらいの費用なら、補修費から出せるかな。


        日振型たちの泣き声が響いている。


 ヒナセ  明石には、最大に痛いやり方で抜いて、って言ってあるんだけど……

 日向   ……ああ、さすがに気の毒になってきたな……。

 ヒナセ  長門を遠征に出してて良かった。じゃないと、今ごろ明石小屋に殴り込んでる。

 日向   ……まったくだな。


        肩をがっくりと落としながら、菜園のほうに遠ざかっていくヒトと艦。
        その背中に哀愁がただよい……

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 何年越しに完結させてんだよ……ってくらい放置してました。
 この一件で、長らく放置されてた工廠(掘っ立て小屋)の外壁が塗り替えられることに。
 これにいちばん喜んだのは、間違いなくアサカ提督所属の明石。
 ヒナセが放置し続けたのは、そのままでも特に問題がなかったからと、他のところに予算を使ってて、手(というか金)が回らなかったから。
 経年劣化でどんどんみすぼらしくなっていってたので、塗り替えか外壁交換をしたがっていたのは『棟梁』日向さん。

 ヒナセ基地の話はきちんと時間が流れてまして、時間経過内の基準点的な話がいくつか存在しますが、この話もそのひとつってことで。
2023/12/16(Sat) 02:39 No.51
ひうがししょぉ と ひぶりがた・3-1
放置期間が長すぎた…
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

○ヒナセ基地 菜園
        日向が菜園の一角を丹念に点検している。



 日向   ……ふむ。



        あちこち見ているが、取り立てて異常はない。



 日向   (独白)まぁ、大丈夫なようだな。
      (有声)……ん?

    
    

        なにか見えたような気がして、そちら方面に歩いて行く。
        歩いて行った先は、サトウキビが植えてある区画。
        甘味の一部を賄うために、さほど広くはない面積で栽培をしている。
        サトウキビは日向よりも背が高いが、頓着なく入っていくと、
        いきなり身をかがめて何やら引きずり出した。



 日向   ……やっぱりお前達か……。

 日振   えへへへ。

 大東   うひひひひ。



        無造作に首根っこを持たれてぶら下げられているのは日振と大東。
        手には折り取ったサトウキビ。皮を剥いてあちこち囓った跡があり、
        繊維がモシャモシャと広がった部分がある。
        賤し食いを見つかったにもかかわらず、悪びれない日振型たちを見て、
        日向は盛大なため息を吐いた。



 日向   何度言ったら分かるんだ。これは砂糖を作るために栽培している。
      つまりみんなの共同財産だ。それをつまみ食いするとは何事だ。
      腹を壊すかもしれんし、そうなったら賤し食いがバレて、
      提督に頭がハゲるほど叱られるぞ。

 日振   だってーひゅうがししょぉ……

 大東   うまいじゃん!

 日向   言い訳にもなってないな。
      それにだ。ハブでも出たらどうするんだ? もし噛まれたら大ごとになるだろう?

 大東   ハブ! たんぱくしつ!

 日振   おいしい!

 日向   ……イヤ、そうではなく……だな……



        話が通じないちびっこたちを前に、途方に暮れる日向。
        しかし、ふととあることに思い至った。



 日向   お前たち……おやつは足りているか?
      昼寝前に食べさせすぎてはいけないと思って、ちょっとセーブ気味だが。
      しかし、起きたら追加はもらっているよな? そう指示を出しているんだが。

 大東   あたいたち、甘いのに目がないんだ。な、ひぶー。

 日振   うん。

 日向   ……いや……そうじゃなく……だな……(頭を抱える)
      まぁいい。とにかく籠に入れ。帰るぞ(日振型たちをいつも入れている大籠を左肩にかける)


 大東   やだー! まだあそぶー!

 日向   ダメだ。そろそろ夕方だ。



        逃げていこうとする大東を電光石火で捕まえて手際よく籠に放り込み、
        さらに日振(こっちは逃げてない)もひょいっと小脇に抱えて歩き始める。



 大東   やだー。まだあそぶー! ししょぉのふねさらいー!!

 日振   大ちゃん……

 日向   ……まったく、人聞きが悪いぞ……。



        日向の背中に哀愁が漂っている。



     ------------------------------------------



○数日後 夜 ヒナセ基地 農作業部屋
        日向がヒナセと喋っている。



 日向   ……というワケだ。

 ヒナセ  なるほど。

 日向   あれはどうにかならんか?

 ヒナセ  うーん……育ちきるまでは仕方ないんじゃないかなぁ。

 日向   他に誰か、面倒をみるヤツがいないか?

 ヒナセ  そうしたいのは山々だけど、君にいちばん懐いているからなぁ。
      ……ああ、そういや、面倒見たがってる子はいるね。

 日向   アレはダメだ。

 ヒナセ  まだ誰とも言ってませんが?

 日向   長門だろう。
      あいつだけは絶対にダメだ。丸め込まれて躾が壊れる。

 ヒナセ  ……ま、確かにね。その可能性は否定しない……というか、「できない」、が正解かな。

 日向   存外、武蔵が適任と思うがどうだろう?

 ヒナセ  うーん…遊び相手なら良いんだろうけどね。さて「育てる」って観点からはどうだろう?
      それなら隼鷹に任せたいところだけど、あいにく彼女は航空隊の練度上げで忙しいからなぁ。

 日向   それ以前に嫌がるな。

 ヒナセ  たぶんね。「ちびは武蔵だけで十分」って言いそう。

 日向   あれのどこが「ちび」なんだ。
      隼鷹は目が悪いのではないか?

 ヒナセ  ……いや、そういうことじゃないよ、決して。

 日向   ? そうか。

 ヒナセ  (こりゃ解ってないな、と肩をすくめる)

 日向   (ため息を吐いて)そういうことなら、もうしばらく面倒見なくもないが、
      もう少しいたずらや賤し食いをしなくなればな。ちょっと目を離した隙に、
      何かしでかしているから、こっちは仕事が滞っている。ゆゆしき問題だ。

 ヒナセ  ……幼児サークルでもこさえますか? いっそもうニワトリ小屋みたいなの。

 日向   ………(渋い顔)

 ヒナセ  それは嫌なワケね。

 日向   閉じ込めるのはちょっとな。

 ヒナセ  しょっちゅう、ひっくり返したカゴに入れてるのは、どこの誰かな?
      アレ見てると、父が伏せたカゴにヒヨコを入れてたのを思い出すんだけど。

 日向   あれは危ないからだ。ヒヨコもそうだろう?

 ヒナセ  まぁね。油断しているとカモメやトビなんかに盗られたりするからね。

 日向   さすがにあいつらを盗っていくほどの大きな鳥はいないだろうが、
      放っておくと二人で危険な遊びをしてたりするからな。

 ヒナセ  危険な遊び?


 日向   そうだ。わざわざハブを捕まえようと藪に入っていったり、木に登っていたり。
      ……崖からぶら下がっていたこともあったぞ。

 ヒナセ  マジか……それは超危ない。

 日向   だろう。
      大勢で作業しているなら、誰かが見ているからさほど心配はしないんだが、
      少人数だったり私一人だったりすると、やはりちょっとな。

 ヒナセ  むーん………(腕組みして思案する)

 日向   鳳翔を貸してくれてもいいんだぞ。鳳翔の言うことはきっちり聞くから。

 ヒナセ  それだけは勘弁して!

 日向   なんでだ? 赤城にでも代行させればいいし、そうじゃなくても今は
      秘書業務ができる艦娘がたくさんいるじゃないか。

 ヒナセ  私のモチベーションが下がるから嫌。

 日向   ……君もたいがいに公私混同するよな。

 ヒナセ  ……ちょっと止めてよ。私と鳳翔さんがデキてるみたいな表現するの。

 日向   なんだ。違うのか?
      夜中によく司令官室で逢い引きしてるから、てっきりそうだと思っていたぞ。

 ヒナセ  ヒナタ!

 日向   まぁ、そんなに怒るな。

 ヒナセ  あれはね、仕事が遅くまで引き伸びちゃった時に、夜食を持ってきてくれるだけです!

 日向   そんなにムキになるから怪しまれるんだぞ。

 ヒナセ  (うんざりした信楽焼のタヌキみたいな顔になる)
      私はカワチじゃないんだから、そっち方面はまったくダメなんだってば。

 日向   失礼な物言いだ。
      単に恋愛事には疎いと言えばいいものを。

 ヒナセ  ~~~~~。

 日向   ……だからこそ、私も安心して君と付き合えるのだがな(微かに笑う)

 ヒナセ  へ?

 日向   深い意味はない。
      強いて言えば、愛称を付けてもらった艦娘が主人に対してより深く意識下での
      繋がりができるということ程度の意味だ。

 ヒナセ  ふぅん……(尻のポケットから鉛筆付きの手帳を取り出し)今の、メモっていい?

 日向   (鼻白んで)好きにしろ。

 ヒナセ  (書き付けながら)……あ、そうそう。五日後にさ、間宮さんが来るんだよ。

 日向   緊急便か?

 ヒナセ  んにゃ。それほどじゃないけど……毎年この時期に来てるじゃない。

 日向   そうだったか?

 ヒナセ  忘れましたか? てんぷくまるに付けたオマケのことを。

 日向   オマケ……ああ……あれは……赤城が先導して、間宮から共同購入したヤツだったな。

 ヒナセ  その節は美味しく頂きました。てんぷく丸も、超嬉しかったし。

 日向   自分の私船登録する程度には気に入って貰えたようでなによりだ。
      しかしなぜ船なんだ? 確かにフロート(浮舟)はついているが?

 ヒナセ  個人で飛行機持つってなると、手続きがめちゃくちゃ面倒なんだよ。軍人だし、操縦免許も持ってるから余計にね。
      どうせアレで鹿屋に行くワケじゃないし、飛ぶよりも走らせる方が多いし、なにせフロート(浮舟)が付いてるから。

 日向   人間がよく使う、詭弁というものだな、それは。

 ヒナセ  まぁね……とと、話が逸れてる。
      ちょうど良い時期だし、日振たちが甘いモノに目がないってなら、ちょっと多めに買っといて、
      ときどき少しずつ与えて手懐けるのも、ひとつの手かなって。

 日向   餌付けか……なるほど。

 ヒナセ  注文は明日の十五時がラストなんで、ちょっと考えてよ。
      なんなら『か号券』、多めに出すけど?
       ※『か号券』…海軍限定の、艦娘専用軍票(複写式)のこと。
        提督の個人識別コードが記載してあり、物品名と数量と金額を記載する欄がある。
        主に間宮・伊良湖で使用されるが、鎮守府や基地・泊地内にある軍内売店でも利用可能。
        一枚で使える上限金額は五百円程度。券そのものに使用期限はないので、
        貯めておいて複数枚を一気に使うことも可能。十枚程度までなら受け付けてもらえる。
        提督の階級や役職、その他の条件によって、艦娘用福利厚生月額が
        設定されており、超過すると提督個人が負担をしなけらばならないので、
        『赤(字になる)キップ』『破産票』『地獄キップ』などと呼ばれている。
        ちなみに、福利厚生月額に満たなかった分の次月以降の繰り越しはなく、
        余剰金をプールして支出の多い月に当てることはできない(厳しい)
        ヒナセ基地では、福利厚生費が余りそうな月は、月末〆で間宮に依頼して
        キャラメルや飴を購入し、遠征時のおやつとして持たせている模様。
        基地や提督によっては、不正の温床になっているという噂がある※

 日向   いいのか? 来月大変になるんじゃないか? この時期集中するんだろう?

 ヒナセ  あ。思い出した?

 日向   うむ。ちょこれいと、とやらだな。

 ヒナセ  そうそう。この時期の超過支払いについてはすでに織り込み済みだから、
      そこは気にしないでいいよ。ありがたいことに今年は人数少なめだし。

 日向   わかった。ならお言葉に甘えようか。

 ヒナセ  上手くことが運ぶと良いねぇ。



     ------------------------------------------
(続きます)
2023/12/16(Sat) 02:38 No.50
緑の手
ヒナセとカワチとその他諸々。
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○ヒナセ基地 新しく開墾した菜園。
 提督が二人、切り倒した木の枝を、鉈で払っている。
 少し遠くには日向と長門。
 彼女たちは切り倒した木を提督たちのところに運んだり、木の根を掘り起こしたりしている。



 ヒナセ   (鉈を振るうカワチをふと見て)…………。

 カワチ   (それに気がついて)どうした?

 ヒナセ   (あまり面白くなさそうな顔で)……んにゃ。
       (首のタオルで汗を拭き)上手くなったなぁって。

 カワチ   ……ん?

 ヒナセ   (カワチの手元をチョイチョイと指さし)鉈使い。

 カワチ   (指さされたなたを見て)ん? 
       ……ああ。そりゃそうだろう。私がここに来て何年になると思ってるんだい?

 ヒナセ   (肩をすくめて)ま……ね。
       はじめの頃は、本当に危なっかしかったよ。いつか指でもなくすんじゃないかって。
       街の人だから、こんなもんかなぁ……とかも思ってた(言い切ってから作業を再開する)

 カワチ   ヒナセ、その『街の人』という表現、私は好きではないんだよね。
       好きで都会に生まれたんじゃないからな。

 ヒナセ   そ。……確かに、誰も出自は選べないもんね。

 カワチ   左様。君だって『アサカの縁者』と言われるのは好きじゃないだろう。

 ヒナセ   好きじゃないけど、事実だし。

 カワチ   ……(渋い顔)

 ヒナセ   (カワチの方は見ずに作業を続けながら)鍬や鎌なんかも、本当に上手くなったよ。
       正直、ここまでなるとは思ってなかった。さすがレーコさんだね。

 カワチ   それは……どうも(作業を再開している)

 ヒナセ   (ぼそりと呟く)これなら、任せられるかなぁ。

 カワチ   (作業の手を止め、ヒナセのほうを見る)……え?
       どういうことだ?

 ヒナセ   ん?(カワチを見る)

 カワチ   任すって……何を?

 ヒナセ   ん? まぁ……私もここが長いからね。もし栄転……ってことにでもなったらさ、
       後任を指名しておくのも、アリなのかなぁって。

 カワチ   ……それは……正式にヒナセ提督の幕僚にって話かな?

 ヒナセ   お前さんがイヤじゃなかったらね。

 カワチ   嫌も何も、この手の話は大歓迎ですよ、司令官。

 ヒナセ   そ。……じゃ、ここの残りの作業もカワチ提督にお任せしちゃおうか。


 (顔を向けた方向から、日向と長門が切り倒した大木を5本ずつ担いで近づいてくるのが見える)


 カワチ   ちょっと待て。それは——

 ヒナセ   いやー。助かった助かった(鉈を手にしたまま去ろうとする)


 (逃げようとしているヒナセの進路を、日向が担いだ大木で器用に遮る)


 日向    待て提督。いくら非力な君でも、人手が減るのは作業進捗に関わる。

 長門    (同じようにヒナセの退路を遮り)日向、せめて「非力でも誰よりも技術が高い」と言ってやれ。

 ヒナセ   危ない危ない。止めなさいよキミタチ。

 カワチ   グッジョブだ日向、長門。

 日向    おおかた作業に飽きたか、腹でも減ったかだろう?
       そろそろ鳳翔が弁当を配達しにくる時間だから、もうちょっと我慢しろ。
       (言って、懐中から小さな革袋を取りだし)ほら、飴だ。

 ヒナセ   いやそうじゃなくて。
       チェーンソーを取りに行くだけだってば。

 長門    大丈夫だ。先ほど妖精さんを介して、弁当配達時にチェーンソーや
       足りない他の工具も持ってくるよう依頼した(ドヤ顔で親指を立てる)

 ヒナセ   ……どーしてこういう時だけ気が回るのが早いかな。

 日向    そういうワケだ提督。ま、観念するんだな。

 カワチ   (ヒナセと日向・長門のやりとりを見ながら)
       (独白)……会話だけ聞いてると、本当にここは海軍基地なのか、不安になってくるなぁ(苦笑気味の顔)


 (そうこうしているうちに、向こうからガヤガヤと複数人の声が近づいてくる)


 鳳翔    皆さん、お昼ですよ。

 ヒナセ   (ぱぁぁ、と顔が明るくなり)あ! ……なんでそんなに大所帯なんですか?(表情が沈む)

 隼鷹    なんでって……運ぶのが弁当だけじゃなくて、作業工具もあるじゃない。
       (とはいえ、運んでいるのは主に武蔵で、ほかはほぼ手ぶらか、昼食を運んでいる)
       だったらもう運搬要員分の弁当も運ぶかってなってサー。

 那智    そうこうしてたら、みんな集まって来てしまってな。

 足柄    だーってぇ、新しい菜園を見たいじゃない? ねぇ。

 妙高    それでは全員こっちで昼食にしようということで、話がまとまりまして。

 ヒナセ   ……なるほど(天を仰ぐ)

 鳳翔    預かり艦も、今いませんから……(ちょっと困り顔で)

 電     明石さんと大淀さんと赤城さんはお留守番なのです。

 カワチ   じゃ、こっちも作業を止めて、お昼にしようか。
       いいでしょ? 司令官。

 ヒナセ   いいですよ……というか、日向さん長門さん。この状況をどうにかしてくれませんかね?
 

  (10本の木がぐるりとヒナセを囲んで、出られないようになっている)


 日向    逃げられちゃかなわんからな。

 ヒナセ   いやもう逃げないよ、この状況なら。

 大東    ひぶー、しってっか? どうぶつえんってあんなかんじなんだぜー。

 ヒナセ   ヒナタ!

 日向    ……ったく、手間のかかる人だな(木を一本抜く)

 ヒナセ   いや違うでしょ。君らが閉じ込めたんだし(出てきて大きく伸びをする)


  (みんながヒナセに注目しいている)


 ヒナセ   あー……まぁいい天気だし、ついでにピクニックと洒落こみますか。
       近くに良い見晴らしの高台があるんだよ。

 カワチ   いいですな。司令官にしては上出来だ(笑う)

 ヒナセ   いやまぁ、こっち方面の見張り台も建てたいし、その下見も兼ねてね。

 カワチ   …………(まったくこの人は、という顔)

 隼鷹    まー、てーとくならそんな感じでしょうねぇ。仕事熱心でいいこった(カラカラと笑う)

 鳳翔    では参りましょうか。皆さん、工具はこちらに置いて。お昼は手分けして運びましょう。
       日向さん、長門さん、武蔵さん、申し訳ありませんが、こちらをお願いできますか?

 日向    承知した。長門、前を頼む。

 長門    良かろう。この長門に任せ——

 日向    力任せに引っ張って壊すなよ。全員分の汁物が入っているからな。
       武蔵は右舷に付いてくれ。この先の道にくぼみがあってな。通らない幅ではないが、
       このうっかり者が脱輪しかねん。

 長門    …………。

 武蔵    了解した。

 ヒナセ   (それらの様子を見ながら日振と大東を捕まえて、一人をカワチに一人を那智に渡す。自らは電と手を繋ぎ)
       じゃ、出発しよう。ここから10分くらいのところだから、みんなもうちょっと頑張ってね。


 (ヒナセを先頭に隊列は動き出す)


 カワチ   ヒナセ。

 ヒナセ   ん?

 カワチ   頼むから、どこかに消えてしまうような言動はしないでくれ給えよ。

 ヒナセ   そ?

 カワチ   ああ。さすがに今日はドキリとした。栄転話でもあるのかい?

 ヒナセ   まぁね。でもできるだけここから離れたくないのも、事実だね。

 カワチ   せっかく帰ってきたんだもんな。

 ヒナセ   そゆこと。……でももし、断り切れなくなったら、真面目にレーコさんが後任になってくれると助かるな。

 カワチ   君と離れてしまうのは本意ではないが、そういうことなら引き受けよう。

 ヒナセ   そういうことに、なったら……の話だけどね。

 カワチ   そういうことにならないでほしいものだ。

 ヒナセ   (肩をすくめる)知ってる? 『緑の手』って。

 カワチ   なんだいそれは。

 ヒナセ   英語で言えば、green thumb。あるいはgreen fingers……植物を育てるのが抜群に上手い人のことだね。

 カワチ   それは……君のことでは?

 ヒナセ   ……お前さんも『緑の手』を授かった人みたいだな、って思ったの。さっき。
       だからさ。

 カワチ   ん?

 ヒナセ   ここに赴任するべきは、できたらそういう人がいい。

 カワチ   それは、君がそう運営した来たからだろ。
       もちろん私は全面的に賛同してるよ。

 ヒナセ   うん。だからね.……次本部に行った時に、姫提督に相談しようかな。

 カワチ   嬉しいこと言ってくれるが、まぁ期待せずにいておこう。
       なにせ我れらが司令官殿は、ごくまれに気まぐれを曰うことがあるからねぇ(くつくつと笑う)

 ヒナセ   ……ちぇ……信用がないなぁ……あ。
       (後ろを振り返って)みんな、目的地が見えたよ。
       本当にね、良いところなんだ。あそこでお昼を食べたら、きっと気持ちが良いよ。


  (隊列は静かに丘を登っていく。道の先は開けていて、そこから涼しい緑の匂いのする風が吹いてくる。
   それは微かに潮の香りもはらんでいて……)
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2023/11/28(Tue) 22:39 No.49
セーラームーンにはフランス文学の香りが似合う
 実は、ずっとそんなことを思っていたり。

 セーラームーンからは数多のCDが出てますが、中でも最推し的に好きなのが『美少女戦士セーラームーン in Paris』でして。
 花の都パリで収録されたこのCDは、全曲を朝川ひろこさんが歌ってるんですが、特筆すべきは全曲フレンチポップスorボサノヴァ調にアレンジ&フランス語のセリフ入りであるとこでして。お仏蘭西のフレグランスたっぷりの1枚なんですけども。

 これ以前にMoonRevengeやバンダイ版セラミューの楽曲のほとんどを作曲している故・冬杜花代子先生が早稲田の仏文科ご出身だとどこかで見たような……(セラミューのパンフだったかな? 忘れた。

 どうでもいいことですけど、拙著『迷走惑星3 -Venus-』は、話の約半分の舞台がパリだったりもしましたか(1940年くらいの話だけど)<思いっきり戦中。
『in Paris』のほうが先ですけども、影響されたわけではなく、話の流れ上1940年のパリから始まって、41年12月29日のロンドン大空襲までの美奈子ちゃんの前世(ヴィナ)のお話を描くハメに。ネームが終わった時点で呟いたひと言は「~~もー歴史モノはやんねーぞ……」でございました。少々在庫があるし、デジタル化も進めてますんで、そのうちBOOTHあたりに置くかも。
 それはともかく。

 ワタシは実は、フランス映画なんかも好きでして。
 あのどうしようもなく救いのない愛憎劇みたいなのが。
 ……シルバーミレニアムの滅亡あたりに、フランス映画の空気感みたいなのを感じているのかもしれません。

 現世ももちろん大好きですが、やはり好きなのは前世組。
 滅亡に向かって誰もが抗えない状況と言いますか。自分の世界観では、すべてのひとりひとりが、吸い込まれるように滅亡へとコマを進めていく様が、なんとも美しいというか、哀しいというか。

 やっぱりお仏蘭西のフレグランスが漂ってるなぁ…と思うわけです(ちなみに英仏どっちもfragrance なんだよなぁ。ふらぐらー(鼻から空気を抜くように発音。

 そんなことをつらつらと思いながら……


【PS】
 実は。もう30年くらい、とあるとあるフランス映画のタイトルを探してるんですけども。ゼンッゼン分からない。
 夫のある女性と独身女性(同性愛者だったかも)の禁断の恋(破滅付き。←)なんですけども。
 マジに救いがなかった。最後まで観てないから、また観たいなーって思ってるのに、タイトルすら覚えていないから見つかりゃしない。
 覚えているのは、関西圏のローカル局がやってた『映画大好き!』でやってた…てだけ。
 姉妹番組で『アニメ大好き!』で『トップをねらえ!』の最終話をやってて、モノクロのアニメ? って観てて最後に度肝を抜かれたんですよね。…てマジにどうでもいい話だな。
2023/11/21(Tue) 01:40 No.48
もやもやと…
 いろんなことを考えてて。

 前向きなこととか、そうでないこととか。


 どうしてこうなっちゃったんだろうなぁ……などということは、もう考え飽きてきたから。

 そろそろ手を動かす時期に入っている——


 ……のかもしれない。
2023/11/07(Tue) 00:07 No.47
二人の女
『あの桜並木の下で』 春花20代、秋子60代

春花が柳原性になる少し前のお話
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○柳原本邸・食堂

     柳原秋子が入ってきて、食堂の一角に設置されている6畳間にある丸ちゃぶ台の上の
     赤い缶に目を止める。



 秋子  ……あら?



     秋子、缶を手に取り、印刷されたロゴを見、やや鈍い金色の蓋に指を這わせる。
     蓋を外して香りを嗅ぐ。鮮烈な香りがふわりと鼻の奥に満ちる。


 秋子  (独白)……新しい……。
     ……ふむ。



     右下に左下にとゆっくり視線が動き、何かに思い当たったか、蓋を閉める。
     元あった場所に静かに缶を戻すと、同じタイミングで春花が食堂に入ってくる。



 春花  ……あら……めずら——っっ!!(ちゃぶ台の上に赤い缶を置いたままにしていることに気がついた)

 秋子  (ゆっくりと春花の方を向いて)おかえりなさい。ちょっと用があったの。

 春花  そ……そう……。

 秋子  (ばつの悪そうな娘に半ば苦笑しながら)めずらしいものがあるわね。

 春花  う……うん……(視線が床をさまよう)

 秋子  あなたももう子供じゃないんだから、べつに隠す必要はないわよ?

 春花  いえ……そうじゃなくて。

 秋子  喫煙している……わけではないのね?

 春花  ええ。

 秋子  何となく、手元に置きたかった?

 春花  ……いえ……記憶を……

 秋子  ……。

 春花  ……つなぎ止めたくて。

 秋子  ……(まだ何か出てきそうだと言葉の続きを待つ母)

 春花  ……二十歳になった日に、買ったの。
     それからずっと、香りが飛んだら、買い換えてる。

 秋子  そう。たばこ屋のご主人はお元気?

 春花  (ほっとしつつ苦笑して)ええ。毎回、お線香代わりにって、ひと箱くれるの。
     それ以上の話は何一つしないのだけどね。

 秋子  (小さく笑う)らしいわね。

 春花  だからってわけじゃないけど、接待で必要な葉巻とかは、あのお店で買ってる。
     兄さんに買ってきてもらうのだけどね。

 秋子  そう、良い心がけね。
     あのお店、品揃えが良いし、管理もしっかりしているから、
     いい判断だと思うわ。私も昔は使っていたもの。

 春花  へぇ、そうなんだ。なんで止めたの?

 秋子  …………。

 春花  (何かまずいことをいったろうかと、首をほんの少しかしげる)

 秋子  ね、春花。

 春花  はい?

 秋子  ちょっと、お参りに行きましょうか(薄く微笑む)

 春花  え……あ、はい。



○貴子の墓の前

     線香の煙がたゆたう。
     春花、赤いタバコ缶を開け、1本取り出す。かすかにお香のような香りがふわりと立つ。



 秋子  入ってないのに、それ(「それ」に傍点)も点けるのね(かすかに笑う)

 春花  ……何事にも形式は必要……でしょ(苦笑しながらマッチを取り出す)



     春花、煙草を口に咥え、マッチを擦って煙草に火を点けようとするが、なかなか点かない。
     すぐに火が消え、2本目、3本目とマッチを擦るが。しかし煙草に火は点らず、空しく消費していく。
     秋子、しばらくその様子を見ていたが、春花が点火する際に煙草を吸っていないことに気がついた。



 秋子  ……貸してごらんなさい。



     そう言うと、秋子は春花が咥えている煙草に手を伸ばし、
     すぅっとそれを取ると、そのまま流れるような動作で口に咥えた。
     春花は思わずマッチを母に渡す。
     母は優雅に手の中でマッチを擦る。
     燐の匂い。勢いよく上がる火。
     秋子は躊躇なく煙草を吸って、紙に巻かれた刻み葉に空気を通してやる。
     1回……2回……。
     そのたびに煙草の先端が赤く強く光を放ち、秋子の口端から白い煙の塊が生まれ広がり消える。
     しっかりと火の点いた煙草を、秋子はそっと口から外し、線香の横に静かに置いた。



 春花  …………。

 秋子  (しばらく静かに手を合わせて瞑目する)



     やがて秋子はゆっくりと目を開き、墓標を見据えたあと春花に視線を移して
     にこり、と微笑む。それから煙草缶とマッチを春花の手に戻した。



 春花  (いろんな意味で、母には敵わない、と痛感している)

 秋子  ……コツはね、煙を喉まで入れないことなのよ。

 春花  ……うん。
     すごく、強いもんね、これ。

 秋子  あら、吸ってみたことがあるようね。

 春花  ……一度ね。

 秋子  どうだった?

 春花  さっきので分かったでしょ。私には無理。

 秋子  そうね。こういうことは、できればやらない方がいいわね。

 春花  真似したって、私は貴ちゃんにはなれないもの。

 秋子  そうね。



     風がさぁ、と吹き抜ける。
     見れば、煙草は半ばで火が消えている。



 秋子  空気を通し続けないと消えてしまうのよ、この煙草は。
     まるで貴ちゃんみたい。

 春花  (生前の貴子を思い出しながら)……うん。

 秋子  帰りましょうか。

 春花  うん……(腰をかがめ線香と煙草を取り上げて、火消し筒に入れて蓋をする)
     (立ち上がって伸びをし)まだまだお母さんには敵わないわ。

 秋子  そりゃぁね……付き合ってる年数が違いますから。

 春花  それ言われちゃうと、いよいよ太刀打ちできないわ。
     お母さんと貴ちゃん、1つしか違わないもん。私とは40離れてるのに。
     (すごく悔しいのだが、おどけてみせることで平穏を計っている)

 秋子  そうね。



     秋子、微笑むと踵《きびす》を返してゆっくりと歩き出す。



 春花  あーあ、そこは否定して欲しかったなぁ……



     母を追い、歩き出す春花。
     悔しいが埋められない。しかし嫌な気分ではない。
     確かに母たちの間には誰にも割り込むことができないモノがある。
     そう深く心の奥に刻みながら……。



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 この秋子、わかっててやってる。
 嫌なオンナだwww


 秋子と貴子、貴子と秋子
 春花と貴子、貴子と春花

 愛の形はかなり違います。
2023/05/08(Mon) 23:57 No.46
一旦ここを閉じようと思います。
 ……とタイトルで出しておいて。


 あ。
 たぶん閉じないな。

 と思った次第。



 ただし、更新は止まります。
 そういう意味で、ここは閉じます。



 近日、TOPページ右側のナビゲーションに、新しい? コンテンツが差し込まれます。



 ここは
 そこが何かあった際の、避難場所ってことで。
 はい。
2023/02/24(Fri) 23:41 No.45
3週間
 …ほど経って、会社員って大変……と、思う毎日です。

 模型屋にいた頃は、店長ではあったけど、かなりお気楽だったなと。
 そりゃね、ほとんどのことを自分の裁量でやれる環境だったし。
 今回の職場はそういうわけにもいきません。仕事の内容も立場も(派遣だしな。

 そうは言いつつ、朝礼で「年末年始のために『お知らせ』を発動すべきでは?」などとわざわざ挙手して発言して、朝礼が思いいっきり伸びてみたり。
 双方にとって益しかない(はず)だから、いいか。
 ……ま、大人しくできない性分らしいですよ。

 そしていきなりリーディングをやるハメになってみたり。
 ……もうしばらく様子見してからおもむろに……って予定だったんだけどねぁ(未定のフラグ。<撲。

 とりあえず、今年もあろ1週間を切りました。
 そして1日は現場です。

 …休みとは……。
2022/12/26(Mon) 23:45 No.44
子供の頃に読んでいた本を…
 手元に取り戻す作業を年に何回かのタイミングでやってます。

 ノスタルジーではなく。
 なかなか良い本を与えられてたのだよなぁと気がついて、確認するために探している、わけで。

 子供が扱うにはちょっと大変な厚さの雑学本は、最近オークションで手に入れまして。
 届いて開き、ざっと読んで「ああ、そうそうこれこれ」と思ったのと、よく読んでいたジャンルを改めて俯瞰して

「……何でオレは何十年も自分のことを文系と思ってたんだろう?」

 と悩むことになりました。
 理由は知ってる。【算数ができない】からだよね。うん。

 どうやら計算障害があるようで。
 加算(足し算)と減算(引き算)が壊滅的にできません。このこと1点で、自分は文系だと思い込んでました。
 …文系のヤツは電気とか色彩学とかを専門に選ばないんだぜ(たぶん。

 とは言いつつ。できないのは


 137+66 とか   138  
           +   87
          ―――

 みたいなヤツ(それも足し算と引き算だけ)なんですが。
 乗算(かけ算)除算(割り算)はできるし、四則が入り交じった計算もできるし、なんなら金〈カネ〉の計算なんかもできますが。

 なんにせよ、この加算・減算が壊滅的にできないばっかりに、自分のことを何十年も勘違いしてて、それによって選び損なったアレコレがなかなかシャレにならない量だなぁ…とか、思ったりします。それはともかく。


 探しているのはあと2種で。

 ひとつはレコード付き絵本。
 ひとつは絵本百科という大型本のセットです。

 絵本百科は持ってるんですけど、きょうだいで取り合いしてる状態なので、もう一セット欲しいなぁと。


 レコード付き絵本は『母と子の世界のカラー童話シリーズ』全20巻
 このシリーズの絵本部分も良いのですが、巻の後半に掲載されている解説ページがすごかった…という記憶があるんですね。
 1巻は『さるかに合戦』なんですけども、解説ページには原書である『御伽草子』の当該部分が載ってます(某動画で確認済み。
 さらに後ろには幼児教育のうんたらとかも載ってたような記憶があって、これらを確認したい……が収集の動機です。

 絵本は雑学本と一緒のタイミングでオークションに掛かってたんですが、雑学本の方を優先してモタモタしているうちに落札されてしまって、かなり後悔しています。
 全巻揃いの上に超美品、さらに安価。あんな出物はしばらくないだろうなぁ……。躊躇したことが悔やまれる(ぬーんぬーん。

 急いではいないので、ゆっくり探す……しかないですね(うひぃw
2022/12/02(Fri) 01:55 No.43
ホワイトボード2
 でっかいヤツを元の位置に戻して終了。
 設置すれば粛々と使う。……あ。あたらしいマーカー買わないと。

 ま、そんなもんだ。
2022/12/01(Thu) 02:37 No.42
悩ましい…。
 Web拍手はもう流行らない上にセキュリティ的な問題もあって、イイネボタンにでも切り替えようか……などと。

 しかし。しかしである。
 Web拍手の良いところは、あわよくばコメントが頂けるという部分でして。

 さらに。
 イイネボタンに切り替えたとして、これをまたあの200以上あると思われるページ一つ一つにスクリプトを貼り付けて大更新まつりをするのか…と思うと、やる前からその作業量にゲッソリするのも事実でして。

 こういう時さ、CMS(いわゆるブログシステム)を使ってたら、一気に書き換えができたりするので、楽なのよね……とか(動的更新するならな。HTML吐き出させてるタイプだとそうはいかない。

 ……とか言いつつ、明日あたりになんか変わってたら、それはそれで笑うわけですがね、はい。
2022/12/01(Thu) 02:33 No.41
一息つく。
 2つのポイント。
 1つめから丸2年。2つめから1年2ヶ月。
 未来が見えなくて暗中模索と悪あがきをしていました。

 一昨日、ターニングポイントとも言えることが起きて、未来への見通しはクリアになってはいませんが、暗中模索はしなくてよくなったかもしれません。

 一言で言えば「一息ついた」
 そんなところです。

 この先の未来がどうなるかは、わかりませんけども。
 結局は、元の箱に戻ったのですが。
 ……箱はたぶん豪華になりましたけども。
 これからもたくさん勉強しないといけませんが。

 一歩をまた踏み出す。
 すごく怖かったけれど、大丈夫です。
2022/11/19(Sat) 23:59 No.40
『艦これ』二期
 見ました。リアルタイムで。

 わが家は今テレビは常設していないので、見るとなるとアンテナ線を繋ぐところからやらないといけないんですけど、その手間をかけてでも、今回は気になりすぎていたので、観ました。

 うん。面白かった。

 それぞれのキャラの性格が、3割増しくらいには感じました。
 これをやり過ぎと感じるのか、ちょうど良いと感じるのかは、人それぞれだと思います。
 元々の設定があって、それを引き継いでのシナリオ製作だと、前作よりも性格を2~3割増にして書くのは、よくある話ではないかなと。体験的に。

 なので、今期の各キャラの性格は、あれで良いのだろうと思います。ます。


 内容は、しばし静観ですね。
 前回のようなことにはならないだろう、とは思いました。
 ただ、難しいんですよね、戦争がモチーフにあるモノは。
 キャラクターコンテンツである艦これは、ご存じの通りたくさんのキャラクターが登場して、それぞれのキャラには多数のファンがすでにいるので。
 一期の時のように、自分の推しが登場しないで欲しいと思っちゃったら、楽しめなくなっちゃうんですよ。実際に六駆主役回で遠景モブにほっしょさんいて「あ”あ”あ”あ”あ”あ”……」ってなったし、隼鷹は最終回でさらに回想シーン? だったのでたぶん大丈夫だろうと、つい「ホッ」としちゃいましたし。

 今回は特に推しはいない……いや、日向がいるか。

 それはともかくとして、実はトレーナー業やってる最中にオンエア時間になっちゃいまして。最後の3ステージのみだったので、ポチポチクリックしながら観てたんですよ。
 ……で、一瞬目を画面から外してまた観たら……

 …………大和のシルエットの後続のシルエットって……もしかして……

 坊ですか? もしかしてシルエットだけでも坊が出たんですかね!!??


 いやもうやらかしました。
 確認のために、dアニメストアをまた契約しようかと考えてるくらいシクりました。


 いやもうかわいいですね、武蔵は。可愛すぎて目が潰れますね(言ってろ。


 話は元に戻しますが、内容については今後どうなるか……という感じではありますが、第一話の演出はとても良き! となりました。
 それこそ↑の大和型が出てきたシーンは「おお…」となりました。
 あと、絵がめちゃくちゃ美麗で。本当に昨今のアニメは、絵のクオリティが高すぎます。
 あれだけクオリティが高いということは、作画のコストもお高いってことなので、本当にいろいろ大丈夫なんだろうか
、と心配になるレベルです。

 ともあれ、『艦これ』二期については、静観しつつも今後に大いに期待します。


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 それと、ずっと気にはなってたけど食指が動かなくて、ウォッチリストに入れたり外してたりを繰り返していた『不滅のあなたへ』もマラソン視聴しました。

 うん。もっと早く観れば良かった。

 そう思いつつも、ちょっと前までの自分では、たぶん精神的体力がなかったので、たぶん観てもしんどいたけだったような気がします。そういった意味では、機が熟したんだろうなと。
 内容的に小説かと思ったんですが、漫画作品とのことで、「すげぇな……」しか言葉が出ませんでした。語彙力ェ…。

 本格的なファンタジーはもうダメだ……などと聞こえてきたりしますけど、そんなことねぇわ。
 こんなに濃いファンタジーはいつ振りだ?
 OPに出てくるあの少女の正体が分かったときには、脳を揺さぶられたりも。
 アニメの演出がすごい作品であることは間違いないです。
 オープニングからエンディングまでが完成された作品なので、未履修の方で重いファンタジーがお好きな方は是非。
2022/11/04(Fri) 03:21 No.39
ホワイトボード。
 先日、ダイソーで週間スケジュールを書き込める小さいホワイトボード(冷蔵庫の扉に貼れるようにマグネットシートになってるタイプ)を2枚買って来て、当座1週間のスケジュールを書き込んで書見台にペタこしてモニターの上に掲示しました。 …で、今日また来週分のスケジュールをもう1枚に書いて、並べてペタこして。
 今、目の前に2週間分のスケジュールが見える状態になったわけです。

 このホワイトボード(シートと言うべきか?)を買う際にすごく悩んだことがありまして。

 実はホワイトボード、持ってるんです。でっかいのを。

 でも、今壁から外してしまってて、離れの模型工房(現在倉庫としてか機能してない)に立てかけて置いてあるのです。

 壁から外した理由は、模様替えで元の位置だと活用しづらくなったからですが……

 そもそも2ヶ月単位でのスケジュール管理をする必要がなくなったから

 ……という話であったりもします。
 イベント屋だった頃は、2ヶ月どころか3ヶ月、4ヶ月、下手をすると半年スパンでのスケジュール管理が必要で、さらにこれにデザイン案件やらWeb制作案件がボコボコ飛び込んできていたから、でっかいスケジュール管理用のホワイトボードは必須だったというわけです。

 
 で今。
 これがほぼ必要なくなって、必要になる日がまた来るのか? はまったく分かりません。
 でもこのでっかいスケジュールボード(900×600サイズ)、ちょっとお気に入り。枠がウッドタイプのナカバヤシ製なんですが、調べてみたらすでに生産終了品。
 でかすぎて設置場所が元の位置しかないという超困りもの。一瞬友人の会社に譲ることを考えましたが、やっぱやめとこ、と撤回しました。

 いつまた使うか見えないものではあるのですが、いつかまたこれを日常使いする日が来ることを願って、とりあえずは模型工房の壁に引っ越しをするか、あるいは積み上がった本を片付けて、元の位置に戻すかしようと思いました。

 ただ、そんだけのお話。
2022/11/03(Thu) 10:39 No.38
お題モノ。
 いつかの診断メーカー。
「名前も知らないその人に、ひと目で惹かれてしまった」で始まり「そんな思い出が今でも心臓を刺すのだ」で終わります。
では、どうぞ。
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「やぁ、ちびちゃん。もしかして迷子かなー?」

 空から降ってきた声に振り返り見上げると、目に飛び込んで来たのは明るい薄紫の大きな鳥。驚き、次いで眼《まなこ》開いてよく見れば、それは鳥ではなく女の人。にっかりと笑うそのあったかさに目が釘付けになる。白い歯がやけに眩しく見えた。
「んー?」
 鳥は紫の輪郭をゆらりと傾《かし》がせ、さらにこちらを覗き込む。どうやら返事を待っているのだと気がついて、コクリ……とうなずいてみせた。実は少し前から母の姿が見えなくなって途方に暮れ、いくつもの大きな船が見えるこの岸壁で独り立ちつくしていたのだった。
「んーそっかー……」
 声がゆっくりと降りてきて膝を抱えるようにしてしゃがみこむ。いつか図鑑で見た、翼をたたんだ猛禽類のようなシルエットになった。鳥は頭を膝にのせ、「んん?」とこちらを覗き込むように見上げてきた。髪よりもやや暗い色の瞳がとても優しい。だからこれは怖い鳥……いや、人ではない、そう思った。
 彼女はこっちをじっと見つめて、それから少しだけ眉をハの字に寄せた。しばらく何かを考えているようだった。私はその歪んだ表情を見つめる。母を見失った心細さは嘘のように消え去り、朝焼けの色をしたこの鳥《ひと》をずっと見ていたい……それだけを思っていた。
「かー……」
 白く長い指がしなやかに動く。薄紫の髪をかき回して、彼女はスッと立ち上がりこちらに手を差し出す。意図が分からなくて彼女を見上げた。薄紫の髪が空の青に映えてきらきら輝いている。私はただそれに触れたくて、彼女の手をそっと握った。鳥は満足そうに口の端を片方だけ上げた。
「アンタの行くべきトコに、ねーさんが連れて行っちゃろ」
 きゅっと握り返される。少しだけ強い力で。
 指先まで温かく、そしてさらりと乾いていた。
「……ち。こんな小さい子までもかい」
 ごくごく小さな声。よそ見をしていると聞き落としてしまいそうな。
 聞こえたのは、彼女を見つめていたから。そうでなければ聞こえなかったろう。そのくらいささやかな声だった。
 じっと見つめていると、それに気がついた彼女はニカっと笑い返してきた。首を小さくかしげると、彼女はかすかにうなずいて、ゆるりと歩き出した。
 手を引かれるままに付いて行く。どこから来た? おっかさんとはぐれちまったのかい? ああ、そうそう……名前は? アンタの名前、なんてんだい? 道道いろんなことを訊かれたけれど、答えることができたのは、母から呼ばれていた名前だけ。
「良か良か。知らない人とは喋らない。用心深くていいこった」
 鳥の人が言う。その意味がよくわからない。でも、この人に付いていくのは間違っていない。なぜかそう確信していた。
 鳥の人に連れられて、一体どこまで歩いたろう。ずいぶん長く歩いたような気がする。
「ごめんよちびちゃん。ここでお別れだよ。アタシができるのはここまでサ」
 ホントは連れて来たかなかったんだけどね……とふたたび小さな声。触れた部分から微かに聞こえた振動のようなそれ。……そのうちに白い服を着た人たちが出てきて、その中にいた女の人に引き渡された。鳥は、白い人らと言葉を交わし、それからこっちを振り返る。
「……また、あえる?」
 そう言うと、微笑んでいた彼女の顔が、くしゃり……と歪んだ。
 どうして泣きそうなの? おかあさんもそんな顔してた。…………。
 いろんなことが頭の中でいっぱいになって、それ以上の言葉が出てこなかった。不安になってすがるように彼女を見上げた。
「……さぁ、どうだろね。会えてもお互い憶えてないかもしんないよ?」
 でも、いつかね……と白い指が降りてきて、私の頭をくしゃくしゃと撫でる。頭を撫でられるのは嫌いだったけれど、その人の手は嫌いじゃなかった。
 白い人たちが鳥に強い言葉を投げかける。鳥は肩をすくめると、軽い足取りで私から離れていった。
 鳥とはそれっきり。会うことはなかった——のだが……



「初めて会った時のこと、憶えているか?」
 鳳翔が営む小料理屋のカウンターで、ぬる燗の入った猪口を傾けつつ、ふと浮かんだ言葉を口にした。特に特別な意味はない。何となく口をついて出た、そんな調子の戯れ言だ。
「あん? ……こらまた藪から棒だねぇ」
 隣で鯨飲している空母は、億劫そうに首を傾いでこちらを見る。あちらにこちらにと跳ねた髪がゆらりと揺れて、それが止まると、朝焼け色に染まった猛禽類を思わせるシルエットになる。
「……さぁて、どのオマエさんの話をしているのか?」
 いわくありげにつぶやいて、ひひひ、と喉の奥で引きつったように笑うのは、酔った時の彼女のクセ。歯の間から漏れる息は酒の匂いを濃くまとっている。そんな様子に鳳翔が、カウンターの向こうからさりげなく手を伸ばして銚子を下げ、代わりに温かい茶を二つ、我々の前に置いた。
「あららら。もう看板ですかい? 女将さん」
 カウンターの奥に下げられた銚子たちを名残惜しそうに見ながら、隼鷹は出された茶をしみじみと飲んでいる。手元の湯呑みからは、焙じ茶の香りがゆらりふわりと立ちのぼる。
 私なんかよりもはるかに長く稼動している彼女は、何隻《なんにん》の私と会ったのだろう。ふとそんなことを考えて、『いや、違うな』と否定した。
 彼女はそらとぼけているだけだ。そう直感する。
「まったく、お前が酔いつぶれたところを一度見てみたいものだな」
 あきれたように溜め息をついてみせると、隣から面白くないな空気をまとったつぶやきが聞こえた。
「あん?」
 一度だけ隼鷹の体がゆらりと揺れてピタリと止まる。
「アタシを酔いつぶして、何をしようと企んでんだい?」
 刺すような視線が痛い。だが、それをいなすように視線を逸らせて、まだ熱いほうじ茶を静かにすすった。
「別に。純然たる興味だ。酔いつぶれの世話は真っ平御免だ」
「ふぅん……」
 興味なさそうな声で応じられて、胸の奥にかすかな冷たい風が通り抜ける。いつものように盛大に笑い飛ばされるかおちょくられるか、はたまた鼻で笑われるか。内心期待していたのかと今さらながらに気がついた。勝手な失望を払うために飲み直したいが、酒はすべてカウンターの奥に強制入港中だ。酒を指揮する提督は鋼鉄の意志を持っている。今日はもう諦めるしかない。
「そーねぇ——」
 ふー……っと長い息を吐きながら、白くて形のいい手がゆるりと動く。肘の高さで停まると、小さな子供の頭を撫でるように手首の先を、器用に動かした。
「こーんなに小さかったねぇ——」
 その言葉にドキリとして隼鷹を見ると、酒をあおり飲むかのごとく、豪快に茶を飲み干しているのが目に飛び込んだ。たん! と乾いた音を響かせて湯呑みが置かれ、濡れた唇のあいだから長々と息が吐き出される。
「―建造槽から出した時のオマエさんなー」
 おかわりを頼んだわけでもないのに、新しい茶が注がれた。
「……あの時急いで出さなかったらサー……壊れてたかもねぇ、建造槽」
 喉の奥から引きつったような笑い声を発し、酔っ払い空母は新しい茶をさらに飲む。
「そう……だったな……」
 隼鷹の言葉は正しい。
〝私〟と〝彼女〟の出会いは確かにそうだった。
 だがもっと昔に、建造されるよりもはるか昔に、私は彼女と会っている。たぶん。たぶん……。
 この記憶は真実なのか妄想なのか。
 ……あるいは願望なのか。
 確固としたものがなにもない、ぼんやりとした記憶は、強く詳しく思い出そうとするたびに輪郭がぼやけてわからなくなってしまう。だが、確かにそれは、いつかの思い出として記憶の片隅にうずくまっている。

 顔も声も忘れてしまった母。
 朝焼け色をした鳥の人。
 髪よりもやや薄い瞳の色。
 繋いだ手のあたたかさ。
 別れるときの切なさ……。

 何かの弾みにふと呼び起こされる。
 そんな思い出が今でも心臓を刺すのだ。
2022/09/25(Sun) 03:14 No.37
母校の閉校。
 その瞬間に立ち会ってきました…というか、お忙しいのにアヤシイのがひとり校庭をウロウロさせてもらっちゃってすみません……って感じでしたが。

 テレビの取材もありまして、今日の夕方の地方ローカル番組で8分間放送されるそうです。
 その時間、家にはいないかなー、残念だけど。

 最後の教頭先生は、気さくで可愛らしい女性の先生。
 彼女の率いる先生達だったからこそ、賑々しく閉校を迎えることができたのかもしれない。

 大学行事のために高校の卒業式に出ることができず、後日当時の教頭先生から直々に手渡してもらえたあの日の自分に教えてあげたい。

 あの日ここに立って校舎を見上げながら「もう来ることはないかもしれない」とキミは考えていたけど、閉校の日に同じ角度で見上げているよ…と。

 あの高校に通ったから今の自分があるよ。
 全力で遊んで勉強してサボり散らかした。
 入らされてた新聞部が生徒会実働部隊みたいだった。
 遊び倒したくて作った部活が、閉校まで残ってたことは正直驚きだった。

 閉校の際に、懐かしい再会が多くあった。
 これからまた関係が続いていくのだろう。

 僕が卒業したように、学校自体も卒業を迎えたのだろう。
 就学困難な子供らを受け止めるの器のひとつが消えてしまったことは、正直哀しいし不安でもあるけれど。

 いまはただ、静かに頭を下げ、ひと言……

「71年間、お疲れさまでした。そしてありがとう。大好きだよ豊翔館そして鞍手分校」
2022/04/01(Fri) 08:28 No.36
やっぱりですよ…
 FANBOXは気軽に書けないなぁ…などと思いまして。

 てろてろしてことはこっちに落として、読み物としてカチッとしているものはあちらに落としていくのがいいかもなぁ…などと、思い中。

 さてどうなるかは分かりませんけども。


 あいかわらずタラタラやってるねぇ……って感じで(にひ。
2022/02/06(Sun) 23:52 No.35
今年の毛布。
 …とりあえず『生き延びる』

 これ以上もこれ以下もないデス。
2022/01/01(Sat) 22:32 No.34
プレゼント
 クリスマスが近くなってきたので。

 これも、まだふたりしかいない頃のお話。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
○ヒナセ基地 湾内係留岸 ヒナセと明石

 ヒナセ  お疲れさま。姫提督によろしくね。


 明石   りょーかいしました。
      ……あ、提督。


 ヒナセ  あに?


 明石   えっと……電ちゃんに、ゴメンね、って言っといてください。


 ヒナセ  あー、はいはい。了解。


 明石   すみません。ついうっかり。


 ヒナセ  うん……次は気をつけてね。


 明石   はい。がんばります。


 ヒナセ  うん(歯切れ悪く)


 明石   では、失礼します(敬礼)


 ヒナセ  はい、おつかれさん(敬礼)


   ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

○ヒナセ基地司令棟(掘っ立て小屋)

       ヒナセが戻って、ドアを開けながら。



 ヒナセ  デン? デーン。



       電が奥からおずおずと出てくる。



 電    ……はいなのです。


 ヒナセ  (優しく笑って)明石は帰ったよ?


 電    はいなのです。ご、ごめんなさいなのです。


 ヒナセ  んー。明石ってば声が大きいもんねぇ。あの明石は特に元気すぎてね。
      気をつけるように、常に言ってんだけどね。


 電    ……ごめんなさい、なの……です……。


 ヒナセ  デンは何も悪くないよ。イケナイのは明石のほうだね。
      来たときも来る前にもちゃんと「気をつけて」って申し渡しているのに
      うっかり忘れちゃう。一度や二度じゃなくて毎回だから。あれは明石が悪いんです。


 電    ……(さらにしょげてしまう)


 ヒナセ  (その様子を見て)……じゃ次に明石が来たときには、クチにガムテープを
      貼っちゃうか?(笑う)


 電    はわ……。


 ヒナセ  んで、妖精さんに喋ってもらう。トップの妖精さんならそのくらいできるでしょ
      (悪戯っ子のような顔でウインクする)


 電    はわわ……それは明石さんが、かわいそうなのです。
      いなづまも、びっくりしないよう、がんばるのです。


 ヒナセ  じゃ、電もがんばるし、明石にもがんばってもらおうかな……どう?


 電    は、はい、なのです。


 ヒナセ  うん。じゃ、そうしよう。
      じゃ、定期電で、あちらにその旨申し渡しておきます。


 電    はわ。


 ヒナセ  あ、でね。こっちきて(手招きして司令官室へ)


 電    ……?
      はいなのです(トコトコ付いて行く)


○ヒナセ基地司令棟(掘っ立て小屋) 司令官室

       先に入ってたヒナセが、デスクの向こうに立っている。
       デスクの上には60サイズほどの小さな箱。



 ヒナセ  これね(電のほうに箱を、デスクの上を滑らすようにして出す)


 電    はわ?


 ヒナセ  君にね、プレゼント。
      私と明石から。


 電    はわわ……(やや困惑したように箱とヒナセを交互に見る)


 ヒナセ  (ちょっと困ったような顔で)……リボンをかけて、もっとかわいくプレゼントっぽく
      すれば良かったねぇ。リボンがなくても、せめて白い箱とか。


 電    はわわ。


 ヒナセ  ま、よかったら開けてみて。


 電    は、はい。なのです(箱を開けて中を覗く)
      ………はわ……はわわわわ……(口をパクパクさせる)


 ヒナセ  どうかな?


 電    さ、触っても、いいですか?


 ヒナセ  もちろんどうぞ。君のだからね。


 電    はわ……。



       電は箱の中に手を入れ、中身を出す。
       中に入っているのは、小さな移植ゴテと子供が砂遊びに使うような小さなバケツ。
       そしてプラスチックのゾウさんじょうろ。子供サイズの軍手が一ダース。



 電    (移植ゴテを目の高さに持ち上げて)お名前が、書いてあるのです。
      (目がキラキラしている)


 ヒナセ  私のあまり綺麗じゃない字で申し訳ないんだけどね、
      ……気に入ってくれた?


 電    はいなのです。すごくすてきなのです。


 ヒナセ  そう、それは良かった(にこと笑う)


 電    ヒナコさんのお手伝いが、もっとたくさんできるようになるのです。


 ヒナセ  期待しています(ニコニコしながら)


 電    ありがとう、なのです。……あ。
      あの……あの……。


 ヒナセ  ん?


 電    明石さんに……お礼……


 ヒナセ  ああ……んー、そうだなぁ。じゃ、こうすれば?
      次の定期便のときに、明石にちゃんとお礼をする。
      それで良いと思うよ。
      明石もさ、君のことはよく分かってるし、きみが 隠れちゃったのは
      自分が悪いって分かってるから、今日お礼が言えなくても気にしないよ。


 電    はわ……(見えない耳と尻尾が垂れてる)


 ヒナセ  ……じゃ、こうしようか。
      定期電のときに、明石が出たら伝えます。
      君がとても嬉しがってたし、お礼も言いたいって言ってたって。
      そして、次の定期便のときに、君が直接明石にお礼を言う。
      それでどうですか?


 電    はわ。
      はいなのです。そうするのです。


 ヒナセ  じゃ、決まりね。


 電    あの……これでお花を育てて、明石さんに差し上げるのです。


 ヒナセ  それはいいねぇ。今回チューリップの球根を持って来てもらったから、
      それにする? 咲くのは春だけど。


 電    春……


 ヒナセ  植物は花が咲くまでに時間がかかるけど、きれいだし、「そのために使ってね」ってプレゼント
      したものを使って育ててくれたお花をもらうなんて、とても嬉しいよ?


 電    なのですか?


 ヒナセ  (大きくうなずいて)なのです。


 電    じゃ、そうしますのです。


 ヒナセ  はい。では午後はチューリップの球根を植えますか。


 電    はいなのです。


 ヒナセ  実験のために多く買ったけど、プランターと地植えで百球くらいだから
      今日の午後だけで終わると思います。


 電    がんばるのです(移植ゴテを握りしめる)


 ヒナセ  はい。がんばりましょう。



   ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


○ヒナセ基地 湾内遠景

       湾内に工作艦『明石』が来ている。



○ヒナセ基地 司令官室


 明石   …というワケでですね。
      アタシもいろいろと反省したので、ちょっと考えてみました。



       …と言う明石は、黒子頭巾で顔を隠し、
       両手にはイ級ロ級の手作りマペットを付けている。



 ヒナセ  ……(やや真顔)


 明石   ……ダメ……ですか?


 ヒナセ  いや……努力は認めます。
      でもね……(チラリと視線を横に動かす)



       ヒナセが向けた視線の先には、窓辺のカーテンに隠れて震えている電が。



 ヒナセ  ……肝心の対象が、これだけ怖がっちゃったら、あんまし意味ないと
      思わない?(苦笑する信楽焼のタヌキ)


 明石   ……で、デスヨネー……(頭巾を取る)


 ヒナセ  もー。前進どころか後退してどーすんのさ。


 明石   へへへ……しーませぇん(悪びれずに笑っている)



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 このあとしばらく、電は夜に悪夢を見てうなされる回数が増えちゃって、ヒナセと一緒に寝ることが常態的になったようで。
 ……で、明石はヒナセから報告を受けたアサカにたいそう叱責されたようです(あーぁ。
2021/12/23(Thu) 14:31 No.33
12月になりました。
 まだまだ先が見えない状況。
 なかなかにストレスがかかりますね。

 先が見えないけれど、できることはやっていこうという姿勢で。

 来年2月に開催されるPixiv主宰ネット上イベントにスペース頂けると嬉しいなぁ。
 そうでなくても、オリジナルの電書は出します(絶賛作業中。

 『九苑-くおん-』は当サイト上で読めますけども、電書化にあたってあちこち改訂しています(『苑Ⅰ』はそうでもない。

 当初は『苑Ⅰ』と『苑Ⅱ』のみと考えてましたが、『苑Ⅲ』まで収録します(公開してるの全部かよ…。

 状況が許せば(キャラデザがちゃんと上がれば)、挿絵も入れる予定です。……久世さん達って、あんまし描いてないので、絵が安定してないんですよね(エヘ。
2021/12/01(Wed) 23:39 No.32
尻がぬくもらない。
 …落ち着きがない……という意味でして。

 じっくりと腰を落ち着けることができない状態が続いてます。
 そんな中、少しでも前に進みたい……と思うのは人情というもの。
 裏でこそこそとなにやらコソコソと(何?

 昔の同人誌の電書化などもその一環……だっったりしますね。

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 ぱちぱち、ありがとうございます!>11/26
 ひさびさにすっごい爆裂でぱちぱち頂きました。うっひょい!(小躍り。
2021/11/27(Sat) 02:42 No.31
ひうがししょぉとひぶりがた・1
 日振型の新しい子が来るらしいので記念。

 一気に3本(都合4本)連続で行きます。
 読みやすいように、新しいのから先に落としているので、そのまま下に読んでいけます。
 では、どうぞ。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

○鹿屋基地 外部提督用艦娘控え室  日向、鳳翔、電

       室内には日向と鳳翔と電のみ。
       どうやら今回の出張には、この三名がお供のようである。
       しかし日向とはめずらしい。
       日向は物珍しそうに室内を見回している。



 鳳翔   なにか思い出されましたか?
 日向   ……いや。特にこれといっては何も。
      鳳翔、この手の部屋はどこの基地や鎮守府でもこんな感じなのか?
 鳳翔   ええ……そうですね。どこも似たようなものだと思います。
      ……と言っても、私もそんなには知らないのですけども。
 日向   そうか——



       扉からぺちゃぺちゃ、と控えめな音



 日向   ——と、なんだ?(扉の方に行く)
 鳳翔   (それを止めるように)……あ、日向さん待っ……



       鳳翔とっさに日向を追う。
       しかし間に合わなかった。日向は無頓着に扉を開ける。
       ※本来ならば、艦娘しか在室していない時は、各扉に付けてあるモニターで
       誰が来たかを確認して、さらに自分の提督以外は扉を開けてはならない
       (情報漏洩防止のために、所属提督以外とはむやみに接触してはいけない)
       しかしヒナセ基地の日向は過去に頭部が半分以上吹き飛んで『壊れている』ため、
       こういった基本的な情報すら喪失しているらしく、
       日常生活でもこんなことがたびたび起こっている。
       この日向は本来ならば資材化されるレベルの状態であるのかもしれない※



○同 同部屋の外廊下から

       扉が開いて日向が見える。
       カメラは斜め下、日向の腰付近の高さから日向を見上げている。
       日向越しに、困った顔の鳳翔と電が見える。



 日向   ……これは……??




        ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



○同 アサカのオフィス アサカ、ヒナセ

       アサカのオフィスでいつものお仕事(報告書提出などなど)
       アサカが受け取った書類に目を通し終えたらしいところ。



 アサカ  (脇の書類トレーに分厚いレポートを置きながら)
      ところで、いつもいつものお話だけど、ちょっと預かってほしい艦《ふね》があるの。
 ヒナセ  (うんざりした顔で)あー……はいはい。今度は何です?
 アサカ  ……というか、ゆくゆくはあなたの基地に正式配属したいから、そのお試しで
      様子を見てほしい、というところね。
 ヒナセ  ……は? ウチは今、所属艦については過不足ないどころか、ちょっと多い
      くらいだと思っているんですが?
 アサカ  数はね。でもバランスが——



       アサカのデスク上にある内線電話がいきなり鳴り始める。



 アサカ  (ヒナセに構わず受話器を取る)はいアサカ——……はい、はい……はい?
 ヒナセ  ?
 アサカ  ……そう、分かったわ。ありがとう。では……(受話器を置く)
      (ヒナセを見て)悪いのだけど。あなた、自分の仮オフィスで待機していて頂戴。
 ヒナセ  はぁ。
 アサカ  ちょっと出てきます……その前に、日向を見せてもらえる?
 ヒナセ  急ぎではないんで?
 アサカ  急ぎと言えば急ぎだけど、慌てる必要はない程度の急ぎね。
      日向を見るくらいの余裕はあります(立ち上がりながら、デスクの引き出しから
      大きめのクッキー缶を出す)



        ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



○同 外部提督用艦娘控え室前 ヒナセ、アサカ

       ヒナセはノックもせずに扉を開けて中に入った。
       アサカも後ろからそのまま内部へ。


○同 同内部

 ヒナセ  ただいまー……って
      (日向が抱えているモノを見て)なんだそれ!!
 日向   (困惑しきった顔で)……いや、私の方が知りたいんだが……。



       アサカが日向を見て、ぷ、と笑う。



 アサカ  あら、ちょうど良かった。今からその子たちを探しに行こうと思ってたのよ。
 ヒナセ  ……て、なんですか、これ! もしかしてさっきの内線……。
 アサカ  ええそう。海防艦は知っているでしょ? 日振と大東よ。
      日向に懐いているようだから、このままお願いするわね。ヒナセ提督。
      (にっこりと笑う)
 ヒナセ  ……てかこれ、次長が仕組んだことじゃないでしょうねぇ。
 アサカ  まさか。まったくの偶然よ。
      何にしても手間が省けて助かったわ(珍しくころころ笑う)
 ヒナセ  ~~~~~~………(絶句する)



       日向の小脇に抱えられた海防艦は、じたじたしながらめいめいに
       「ししょぉ」「ししょぉー」と日向を呼んでいる。
       日向はどうしていいか分からず途方に暮れ、
       鳳翔、電も対応に困った顔をするのみで……。


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『ひうがししょぉ と ひぶりがた』
 実は、海防艦の日振型をひと目見た時からあっためてました。
 でも、冬イベに参加しなかったので、日振型はウチには来なかったのです。
 来なけりゃ性格とか分からないので、さてどうするかなぁ…という感じで。
 完全にあっため期間に突入してこのまま日の目を見ないんじゃないかと思ってましたが、現在進行中の春のミニイベントは、2-4 で日振が、5-5 で大東がドロップするってぇことなので、せっせと周回してます。
 先週末にめでたく日振がドロップして「やっぱ日振型めっちゃかわいいぃぃぃぃぃ!!」となりましてのぅ。そろそろ体調も戻ってきているので、アナログの鉛筆ラフでつらつら一枚絵を描いてしまったからさぁ大変。
 東方「めーさく」ですら幼児マンガを描いちゃう程度には子供が好きと言いますが、子供に振り回される大人も好きなので、『ひうがししょぉ と ひぶりがた』は、元から敷かれていたレールにただ乗っかっただけ…という気がしてなりませんwwww
 巨大家庭菜園を運営しているヒナセ基地ならではの、愉快な話がぼちぼちと描けたら楽しいだろうなぁ…と、思います。
 うひひひw
2021/11/19(Fri) 22:13 No.30
ひうがししょぉ と ひぶりがた・2
 プロローグの後日談。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

○ヒナセ基地 〇九三〇 司令官執務室 カワチ、鳳翔、電、赤城、妙高、隼鷹、長門。

       朝礼中。
       ヒナセが本日のスケジュールを述べている。
       妙高型は本来全員参加なのだが、さらに三名入室すると狭い室内の密度が
       高くなりすぎて暑苦しいので、ほかの姉妹たちは妙高を通じて話を聞いている。
       基本は妙高が代表で出席するが、日によっては意見具申したい姉妹の誰かが
       代わりに出ていることも多い。共鳴艦同士はこういうところが実に便利である。



 ヒナセ   えー、本日のスケジュールだけど、秘書艦業務はいつものメンバーと隼鷹。
 隼鷹    へいよ。

 (パタパタと何かの足音)

 ヒナセ   外組は、これもいつものメンバー……なんだけど、そろそろ豆類の収穫があるので……。
       日向。これをよろしく。
 日向    了解した。(妙高に)那智を補佐にしていいか?

 (パタパタと何かの足音)

 妙高    (ちょっと小首をかしげて何かを聞いた風で)いいそうです。
 日向    うむ。では作業には二班を使おう。第二倉庫から器具を人数分出しておいてくれ。
 妙高    了解しました……とのことです。

 (パタパタと何かの足音)

 ヒナセ   じゃ、次。長門は今日は第七区画の整備ね。補佐には足柄と羽黒。
       一班と三班使っていいから。

 (パタパタと何かの足音)

 長門    (なにやらそわそわして)……う……うむ。わかった(ちら、ちら、と足下を見ている)
 ヒナセ   長門、気を散らせないで。
 長門    わ……わかった(やはりそわそわしている)
 ヒナセ   (長門を見てため息をつく)
 カワチ   (苦笑して)司令官、これは何かの訓練ですかな?
 ヒナセ   ……そういうワケじゃないよ。

 (パタパタと何かの足音)

 ヒナセ   ~~~……あーもう日向!
 日向    なんだ?
 ヒナセ   それ、なんでミーティングに連れてくんの?



       ヒナセが指さした方にいるのは、海防艦・日振と大東。
       ヒナセの咎める声に、日振と大東は日向の足に隠れた。



 日向    目を離すと、何をするかわからないからな。
 ヒナセ   じゃ、せめてリード付けて、リード!
 日向    ああ、リードはお互いに反対方向に走ったり、リード自体が絡まったりして
       ちょっと危なくてな。
 ヒナセ   じゃ、いつもみたいにカゴに入れて背負っといてよ。
       ここだって安全とはいえないんだから~~~~~って言ってる端からっっ!!!



       大東が書類棚によじ登っている。



 カワチ   おっと、こっちも……



       司令官デスクの上の湯飲みに手を伸ばそうとしていた日振をひょっと捕まえる。



 ヒナセ   ……変だなぁ。海防艦って国境警備や掃海任務が主だから、形《なり》は小さくても
       そこそこ大人びてたりするもんなんだけど、この子らどう見ても幼児だよねぇ。
 カワチ   ヒナセ。君、もしかして成艦になってない海防艦を引き受けてきたのではないだろうね?
 ヒナセ   ……へ? ま……まさか……。
 カワチ   姫提督のことだ。艦政本部からちょっと不具合が出た海防艦を押しつけられた可能性は高いぞ。
       そして君は海防艦をほぼ見たことがないだろう?
       この子たち、海防艦にしてもちょっと小さいしな。
       なにかワケがあって成艦になる前に建造槽から出した可能性は高いな。 
 ヒナセ   ~~~~(絶句する)



       そうこう話している間も、ちょろちょろと執務室をうろつく海防艦たち。
       そしてとうとうヒナセの執務椅子に気がついて、それに二人でよじ登ろうとする。



 電     はわわわ……そこはいけないのです。司令官さんの椅子なのです。
 カワチ   日向、妙高。



       日向と妙高、日振と大東を椅子から下すため抱きかかえようとするが、
       日振型たちはアームレストにしがみついて、てこでも動かない。



 カワチ   ……ふむ。
       ではこうするとしようか。
       (片膝をついて日振型たちに)君たちはこの部屋に来た際には、その椅子に座って
       おとなしくしなければならないよ。
       それができないなら、この部屋に入ってはいけない。
 ヒナセ   ちょっとカワチ! 私は置き去りか!?
 カワチ   (ヒナセにウインクして、日振型をまた見る)さ、どっちがいい?



       日振と大東、顔を見合わせて……



     ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


○ヒナセ基地 一一〇〇《ヒトヒトマルマル》司令官執務室

       窓辺に司令官の執務椅子。
       その上には日振と大東がすやすやと寝ている。
       ヒナセは丸椅子に座ってデスクについているが、いつもと違う高さで
       非常に仕事がしにくそう。



 鳳翔    (ヒナセにお茶を出しつつ)ご一服なさってください。
 ヒナセ   ああ、ありがとうございます。



       ヒナセ、お茶を取り上げて一口飲んだまでは良かったが、
       うっかりいつもの癖で背を後ろに預けてしまい、盛大に椅子から転げ落ちる。



 ヒナセ   わぁっ!
 カワチ   (駆け寄って)だから私の椅子を使い給えと、言ったんだ。
 ヒナセ   ……それはヤダ。
 カワチ   なぜ?
 ヒナセ   自分以外の匂いがするの、やなんだもん。
 カワチ   ……は?
 ヒナセ   レーコさんの香水……酔う。
 カワチ   は!? (思わず赤面する)
 ヒナセ   ……ったく、艦娘に甘い自分が恨めしいよ……。



       人間たちの騒ぎもモノとせず、すうすうと眠り続ける日振型たち。
       初夏の空の下、菜園では日向がのびのびと農作業をしている。


--------------------------------------------------------------------------------

 ……今日もヒナセ基地は平和です。
2021/11/19(Fri) 22:10 No.29
ひうがししょぉとひぶりがた・3-1
 てことで、3発目。
 長すぎてCGIが受け付けてくれなかったので、分割しました。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

○ヒナセ基地 菜園
        日向が菜園の一角を丹念に点検している。



 日向   ……ふむ。



        あちこち見ているが、取り立てて異常はない。



 日向   (独白)まぁ、大丈夫なようだな。
      (有声)……ん?

    
    

        なにか見えたような気がして、そちら方面に歩いて行く。
        歩いて行った先は、サトウキビが植えてある区画。
        甘味の一部を賄うために、さほど広くはない面積で栽培をしている。
        サトウキビは日向よりも背が高いが、頓着なく入っていくと、
        いきなり身をかがめて何やら引きずり出した。



 日向   ……やっぱりお前達か……。

 日振   えへへへ。

 大東   うひひひひ。



        無造作に首根っこを持たれてぶら下げられているのは日振と大東。
        手には折り取ったサトウキビ。皮を剥いてあちこち囓った跡があり、
        繊維がモシャモシャと広がった部分がある。
        賤し食いを見つかったにもかかわらず、悪びれない日振型たちを見て、
        日向は盛大なため息を吐いた。



 日向   何度言ったら分かるんだ。これは砂糖を作るために栽培している。
      つまりみんなの共同財産だ。それをつまみ食いするとは何事だ。
      腹を壊すかもしれんし、そうなったら賤し食いがバレて、
      提督に頭がハゲるほど叱られるぞ。

 日振   だってーひゅうがししょぉ……

 大東   うまいじゃん!

 日向   言い訳にもなってないな。
      それにだ。ハブでも出たらどうするんだ? もし噛まれたら大ごとになるだろう?

 大東   ハブ! たんぱくしつ!

 日振   おいしい!

 日向   ……イヤ、そうではなく……だな……



        話が通じないちびっこたちを前に、途方に暮れる日向。
        しかし、ふととあることに思い至った。



 日向   お前たち……おやつは足りているか?
      昼寝前に食べさせすぎてはいけないと思って、ちょっとセーブ気味だが。
      しかし、起きたら追加はもらっているよな? そう指示を出しているんだが。

 大東   あたいたち、甘いのに目がないんだ。な、ひぶー。

 日振   うん。

 日向   ……いや……そうじゃなく……だな……(頭を抱える)
      まぁいい。とにかく籠に入れ。帰るぞ(日振型たちをいつも入れている大籠を左肩にかける)


 大東   やだー! まだあそぶー!

 日向   ダメだ。そろそろ夕方だ。



        逃げていこうとする大東を電光石火で捕まえて手際よく籠に放り込み、
        さらに日振(こっちは逃げてない)もひょいっと小脇に抱えて歩き始める。



 大東   やだー。まだあそぶー! ししょぉのふねさらいー!!

 日振   大ちゃん……

 日向   ……まったく、人聞きが悪いぞ……。



        日向の背中に哀愁が漂っている。



     ------------------------------------------



○数日後 夜 ヒナセ基地 農作業部屋
        日向がヒナセと喋っている。



 日向   ……というワケだ。

 ヒナセ  なるほど。

 日向   あれはどうにかならんか?

 ヒナセ  うーん……育ちきるまでは仕方ないんじゃないかなぁ。

 日向   他に誰か、面倒をみるヤツがいないか?

 ヒナセ  そうしたいのは山々だけど、君にいちばん懐いているからなぁ。
      ……ああ、そういや、面倒見たがってる子はいるね。

 日向   アレはダメだ。

 ヒナセ  まだ誰とも言ってませんが?

 日向   長門だろう。
      あいつだけは絶対にダメだ。丸め込まれて躾が壊れる。

 ヒナセ  ……ま、確かにね。その可能性は否定しない……というか、「できない」、が正解かな。

 日向   存外、武蔵が適任と思うがどうだろう?

 ヒナセ  うーん…遊び相手なら良いんだろうけどね。さて「育てる」って観点からはどうだろう?
      それなら隼鷹に任せたいところだけど、あいにく彼女は航空隊の練度上げで忙しいからなぁ。

 日向   それ以前に嫌がるな。

 ヒナセ  たぶんね。「ちびは武蔵だけで十分」って言いそう。

 日向   あれのどこが「ちび」なんだ。
      隼鷹は目が悪いのではないか?

 ヒナセ  ……いや、そういうことじゃないよ、決して。

 日向   ? そうか。

 ヒナセ  (こりゃ解ってないな、と肩をすくめる)

 日向   (ため息を吐いて)そういうことなら、もうしばらく面倒見なくもないが、
      もう少しいたずらや賤し食いをしなくなればな。ちょっと目を離した隙に、
      何かしでかしているから、こっちは仕事が滞っている。ゆゆしき問題だ。

 ヒナセ  ……幼児サークルでもこさえますか? いっそもうニワトリ小屋みたいなの。

 日向   ………(渋い顔)

 ヒナセ  それは嫌なワケね。

 日向   閉じ込めるのはちょっとな。

 ヒナセ  しょっちゅう、ひっくり返したカゴに入れてるのは、どこの誰かな?
      アレ見てると、父がヒヨコを伏せたカゴに入れてたのを思い出すんだけど。

 日向   あれは危ないからだ。ヒヨコもそうだろう?

 ヒナセ  まぁね。油断しているとカモメやトビなんかに盗られたりするからね。

 日向   さすがにあいつらを盗っていくほどの大きな鳥はいないだろうが、
      放っておくと二人で危険な遊びをしてたりするからな。

 ヒナセ  危険な遊び?


 日向   そうだ。わざわざハブを捕まえようと藪に入っていったり、木に登っていたり。
      ……崖からぶら下がっていたこともあったぞ。

 ヒナセ  マジか……それは超危ない。

 日向   だろう。
      大勢で作業しているなら、誰かが見ているからさほど心配はしないんだが、
      少人数だったり私一人だったりすると、やはりちょっとな。

 ヒナセ  むーん………(腕組みして思案する)

 日向   鳳翔を貸してくれてもいいんだぞ。鳳翔の言うことはきっちり聞くから。

 ヒナセ  それだけは勘弁して!

 日向   なんでだ? 赤城にでも代行させればいいし、そうじゃなくても今は
      秘書業務ができる艦娘がたくさんいるじゃないか。

 ヒナセ  私のモチベーションが下がるから嫌。

 日向   ……君もたいがいに公私混同するよな。

 ヒナセ  ……ちょっと止めてよ。私と鳳翔さんがデキてるみたいな表現するの。

 日向   なんだ。違うのか?
      夜中によく司令官室で逢い引きしてるから、てっきりそうだと思っていたぞ。

 ヒナセ  ヒナタ!

 日向   まぁ、そんなに怒るな。

 ヒナセ  あれはね、仕事が遅くまで引き伸びちゃった時に、夜食を持ってきてくれるだけです!

 日向   まぁそんなにムキになるな。

 ヒナセ  (うんざりした信楽焼のタヌキみたいな顔になる)
      私はカワチじゃないんだから、そっち方面はまったくダメなんだってば。

 日向   失礼な物言いだ。
      単に恋愛事には疎いと言えばいいものを。

 ヒナセ  ~~~~~。

 日向   ……だからこそ、私も安心して君と付き合えるのだがな(微かに笑う)

 ヒナセ  へ?

 日向   深い意味はない。
      強いて言えば、愛称を付けてもらった艦娘が主人に対してより深く意識下での
      繋がりができるということ程度の意味だ。

 ヒナセ  ふぅん……(尻のポケットから鉛筆付きの手帳を取り出し)今の、メモっていい?

 日向   (鼻白んで)好きにしろ。

 ヒナセ  (書き付けながら)……あ、そうそう。五日後にさ、間宮さんが来るんだよ。

 日向   緊急便か?

 ヒナセ  んにゃ。それほどじゃないけど……毎年この時期に来てるじゃない。

 日向   そうだったか?

 ヒナセ  忘れましたか? てんぷくまるに付けたオマケのことを。

 日向   オマケ……ああ……あれは……赤城が先導して、間宮から共同購入したヤツだったな。

 ヒナセ  その節は美味しく頂きました。てんぷく丸も、超嬉しかったし。

 日向   自分の私船登録する程度には気に入って貰えたようでなによりだ。
      しかしなぜ船なんだ? 確かにフロート(浮舟)はついているが?

 ヒナセ  個人で飛行機持つってなると、手続きがめちゃくちゃ面倒なんだよ。軍人だし、操縦免許も持ってるから余計にね。
      どうせアレで鹿屋に行くワケじゃないし、飛ぶよりも走らせる方が多いし、なにせフロート(浮舟)が付いてるから。

 日向   人間がよく使う、詭弁というものだな、それは。

 ヒナセ  まぁね……とと、話が逸れてる。
      ちょうど良い時期だし、日振たちが甘いモノに目がないってなら、ちょっと多めに買っといて、
      ときどき少しずつ与えて手懐けるのも、ひとつの手かなって。

 日向   餌付けか……なるほど。

 ヒナセ  注文は明日の十五時がラストなんで、ちょっと考えてよ。
      なんなら『か号券』、多めに出すけど?
       ※『か号券』…海軍限定の、艦娘専用軍票(複写式)のこと。
        提督の個人識別コードが記載してあり、物品名と数量と金額を記載する欄がある。
        主に間宮・伊良湖で使用されるが、鎮守府や基地・泊地内にある軍内売店でも利用可能。
        一枚で使える上限金額は五百円程度。券そのものに使用期限はないので、
        貯めておいて複数枚を一気に使うことも可能。十枚程度までなら受け付けてもらえる。
        提督の階級や役職、その他の条件によって、艦娘用福利厚生月額が
        設定されており、超過すると提督個人が負担をしなけらばならないので、
        『赤(字になる)キップ』『破産票』『地獄キップ』などと呼ばれている。
        ちなみに、福利厚生月額に満たなかった分の次月以降の繰り越しはなく、
        余剰金をプールして支出の多い月に当てることはできない(厳しい)
        ヒナセ基地では、福利厚生費が余りそうな月は、月末〆で間宮に依頼して
        キャラメルや飴を購入し、遠征時のおやつとして持たせている模様。
        基地や提督によっては、不正の温床になっているという噂がある※

 日向   いいのか? 来月大変になるんじゃないか? この時期集中するんだろう?

 ヒナセ  あ。思い出した?

 日向   うむ。ちょこれいと、とやらだな。

 ヒナセ  そうそう。この時期の超過支払いについてはすでに織り込み済みだから、
      そこは気にしないでいいよ。ありがたいことに今年は人数少なめだし。

 日向   わかった。ならお言葉に甘えようか。

 ヒナセ  上手くことが運ぶと良いねぇ。



     ------------------------------------------
2021/11/19(Fri) 22:09 No.28
ひうがししょぉ と ひぶりがた・3-2
 ……そして討ち入り(違。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

○ヒナセ基地農作業小屋 日向、日振、大東
        日向が布バケツ片手に農作業小屋に入ってくる。
        内部には薪ストーブが焚かれており、ストーブの上には大きなヤカン。
        湯がたっぷりと沸かされている。ストーブそのものには二重の柵。
        そして一段高くなっている三畳ほどのスペースには布団が敷かれており、
        日振と大東がすやすやお昼寝中。
        日向、眠っている二人を見て、ホッと息を吐く。
        ヤカンからお湯を取り、タオルを二枚洗いぎゅっと絞ってから
        二人が眠っている横に腰を下ろして……



 日向   (掛け布団の上からそっと撫でるように叩き)そろそろおやつだぞ。



        日振型たち、ぽにゃ…と目を覚ます。



 日向   まだ寝ていたいなら、それでもいいが。

 日振   (両手をついてうーんとネコのように伸びをし)うー……。

 大東   (眠くてたまらないがおやつは食べたい)おやつー。

 日向   では、顔を拭け。目脂やヨダレが付いている(先ほどのタオルを広げて渡す)。

 日振型  はぁ~~~い……(大人しく拭く)

 日向   (使い終わったタオルを受け取って)よし。じゃ、おやつをやろう。



        布バケツにタオルを入れ、そして大きなビニールの袋を取り出す。



 日向   (袋の中から、オブラートに包まれたチョコレートタフィーを出して…)
      昨日間宮が来たからな(日振と大東の口の中に、タフィーをひとつずつ押し込む)



        日振と大東、口の中に入れられたモノをしばらくモゴモゴしていたが、
        急に目が見開いて「きらーん」となり、全身を震わせる。



 日向   (真剣に様子を見ている)

 大東   ひゅひゅひゅひゅ……

 日振   ししょししょししょぉ……

 日向   (眉間に皺を寄せた渋い顔で)……嫌いだったか?



        日振と大東、自分の頬を、支えるように手で押さえ、
        ぶるぶると顔を横に振る。
        日向はそんな二人を覗き込むように見ている。



 日振   し……ししし……

 日向   ………。

 大東   こここここれこれこれ……

 日向   ………。

 大東   にゃにきょれ……

 日向   ………。

 日振   おぃひい(プルプルしている)

 日向   (真面目というより、怖い顔)………(いきなりニカ、とたぶん笑い)そうか。

 日振   うひぃ!(日向の顔が怖くて飛び上がる)

 大東   はやぁ……!(同様に飛び上がる)

 日向   ……ん?(なんだか反応が変なので小首をかしげるが、気を取り直して)
      もう一つ……いるか?(袋の中に手を入れる)

 大東   (ぱぁぁぁ…と顔がほころび)たべるー!

 日振   (ホッとして溶ける)

 日向   (二人の口の中に、タフィーを入れながら)今日だけ特別に二つやるが、
      明日からはひとつだけだぞ。それも、ちゃんとお利口さんにしていたらだ。

 大東   しゅるしゅるー(口の中でタフィーをもごもごさせながら)

 日振   ひひょぉらいひゅひー(もごもご)



        喋ろうとしてヨダレを垂らす日振型たちの口元を、
        作業用タオルで拭いてやる日向。



 日向   ……食べながら喋るんじゃないと、何度言えば……


     ------------------------------------------


○作業小屋外
        ヒナセとカワチが通りがかる。
        カワチがふと窓越しに中を見て。



 カワチ  ……あれは、なんだい?

 ヒナセ  (中を見て)ん? ……ああ。
      餌付け中だね。

 カワチ  は?

 ヒナセ  チョコだよ。おちびさんたちになかなか手こずっているようだから、ちょっとアドバイスを。

 カワチ  なるほど。しかしそれは悪手では?

 ヒナセ  そぉ?

 カワチ  犬猫じゃないんだから、エサで釣るのはいただけない。
      犬猫ですら、餌で釣って躾けると、碌なことにならないのに。

 ヒナセ  そうなんだ。でも二本足で歩かせたりするじゃない。

 カワチ  芸と躾はちがうからね。

 ヒナセ  そうなんだ?

 カワチ  (渋い顔になって)だいたい君はだな。どうしてそう心の機微に疎いんだ。
      おちびさんたちを自分に置き換えて考えてみたまえよ。

 ヒナセ  うーん…(いちおう考えている)

 カワチ  何か起きたら、君が責任取れよ。

 ヒナセ  え? そんなに重篤なことなの?

 カワチ  そうなるかも知れないってことだよ(やれやれ、と肩をすくめる)


     ------------------------------------------


○数日後 司令官室 夜
        日向がヒナセに対峙している。



 日向   困ったことになった。

 ヒナセ  なに?

 日向   ちょこれいとが足りない。

 ヒナセ  ………。

 日向   さらにだ。艦医を呼んで欲しい。

 ヒナセ  ……それはまた物騒だね。明石じゃダメなの?

 日向   明石でも対応できるが、ちょっと可哀想でな。

 ヒナセ  ……日振たちか。

 日向   そうだ。このままでは虫歯になってしまう。

 ヒナセ  寝る前に歯を磨かせてないの?

 日向   いや。それはやらせている。食事やおやつのあとも、できるだけ磨かせてはいるんだ。

 ヒナセ  んー? じゃ、どこに虫歯になる余地が?

 日向   その歯磨きのあとだ。問題は。

 ヒナセ  んん?

 日向   チョコを欲しがるんだ。

 ヒナセ  それは意味がないのでは?

 日向   おりこうさんなことをしたから、チョコを食べなければならない、と
      無茶苦茶な持論を展開してきた。

 ヒナセ  それは確かに無茶苦茶だねぇ
      ……あ……

 日向   ん? なんだ?

 ヒナセ  あー……あーあー……そういうことかー!

 日向   ??

 ヒナセ  ヒナタ。

 日向   な…なんだ?

 ヒナセ  (肺の中の空気を強き吐き出して)可哀想だけど、虫歯にしちゃおう。
      ちょっと痛い目見ないとダメだと思う。

 日向   し……しかし……。

 ヒナセ  見た目は子供だけど、中身は子供じゃないんだ……いや、違うな……
      (手で顎を支えて考え込み)とにかくだ。見た目と行動に欺されてはいけない。

 日向   ふむ?

 ヒナセ  やはり海防艦だなぁ。クレバーだ……いや、crafty か、この場合は。

 日向   クラフ……ずる賢いか……なるほど。

 ヒナセ  ちょっと甘やかしすぎたかな。
      どのみち、この基地に置くことになるなら、規律と躾はしておかないと。
      あー……こういうことか、レーコさんが言ってたのは。

 日向   カワチ提督から何か言われてたのか。

 ヒナセ  言われてたというか、忠告をね。
      そんなわけだから、チョコあげていいよ。そして明石に治療させよう。

 日向   ……海防艦たちが気の毒になってきたな。

 ヒナセ  んにゃ。これいじょう増長させると、本気でこっちをナメてくるからね。
      そうならないうちに先手を打たないと。

 日向   ……(不満顔)

 ヒナセ  これ命令。OK?

 日向   Aye-aye ma'am....


     ------------------------------------------

続く予定(ぇ。
2021/11/19(Fri) 22:05 No.27
ニトリのクッションと綿入れ半纏。
 ベッドでのテキスト打ちが、ぼちぼち長続きするようになってきまして。……で、ポジションが微妙に悪いことに気がつくワケです。
 長く続けられないというか、疲れやすいというか。
 首の位置も微妙に悪いし、腰が痛くなるのも早い。

 …で、よくよく見てみると、いつももたれかかってるニトリのクッションがヘタレてる。
 2年近くも毎日もたれてりゃ、そらヘタレますさね。
 しかしそこは抜かりのないニトリさん。補充用のピーズを売ってるので、買ってきてやや固めに補充してみました。

 さて、ベッドで使っているニトリクッションは2種4品。
 抱き枕にもなる細長い丸太が3本と、座ってるクマのぬいぐるみの下半身部分みたいなクッション。勝手にクマ尻クッションと呼んでます。このクマ尻ちゃんがヘタレたわけですね。

 固めに入れてみたら、ちょっと固すぎまして(ばかじゃん)
 これはこれで若干アレなんですけども、でもしっかり支えてくれるところは悪くない。
 でかめの羽毛枕の上にクマ尻ちゃんのせて、さらに背中にハンドサイズのミニビーズクッションを入れて背中が丸まって胃を圧迫しないように背中を反らせて。
 左右に丸太を一本ずつ。体を両側から支え、かつアームレストとして。
 最後の丸太は膝の下に。体が下にずり落ちるのを防いでくれます。

 ……こう書くと、マジに老人になってるなぁと思っちゃうんですが、5年ほど前にやらかした腰の椎間板ヘルニアのせいなので、出来なくなってることを嘆くんじゃなくて、どうやったら以前に近い状態を保てるのか…を考えて実戦するようにしています。


 ……で、さらに綿入れ半纏。
 これ着てベッドに入るようになると、「冬だなぁ」と実感します。
 基本的に寝る時は半袖Tシャツなので、その状態でテキスト打ってると腕と肩を冷やしちゃうんですね。…で、風邪を引く……と。
 そうなるのはとてもイヤなので、特に肩を冷やさないためのアイテムとして、ペラくてポリ綿でホームセンターで1500円くらいで買った綿入れ半纏を着るワケです。
 これね、10年以上使ってるから、中の綿自体もへこたれてて、真冬にはかなり厳しいんですが、今時期ならちょうど良い感じ。中の綿はポリエステルで、着すぎてぺったんこになってもいるから、真冬用の半纏みたく腕の動きを阻害しないのも気に入ってるところですね。


 なんだか止めどもなくダラダラ書き綴ってしまいました。……ので、今回はこのあたりで。ノシ
2021/11/18(Thu) 02:15 No.26
ヒナセと日向とときどき明石。2
 1、は直下に。
 もともと発話のキャラ名がない会話文形式だったんですけど、執筆再開にあたって簡単なシナリオ形式にしました。
 1部分も、元から若干の修正を加えています(内容は全く変わってない。

 つづき
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
○翌日 同工廠 ヒナセ・日向・明石
    日向は椅子に座り、腰と首の艤装接合部にケーブルが数本繋がれている。
    ケーブルの先には分厚いタブレット端末。操作者は明石。


 明石  (顔を上げて)さて、てーとく、日向さん。心の準備はよござんすか?


 ヒナセ …………。


 明石  ……? どうなさいました?


 ヒナセ んにゃ……。
     ……君、ホントに明石……だよね?


 明石  (首をかしげて)もちろんですよ? ……で、そのココロは?


 ヒナセ んー……なーんか『明石』のイメージからブレるっていうかね。
     もっとも、よく知ってる『明石』は、アサカ提督んトコの明石だからね。


 明石  ああ、あの娘はごく一般的な『明石』ですからね。


 ヒナセ ……君は、違うんだ?


 明石  いいえぇ。そんなことないですよ(ひひ、と喉の奥で引きつったように笑う)
     ただね、アタシゃ稼動が長いほうなんで……と言っても、鳳翔さんや隼鷹さん
     ほどじゃないですがね。


 ヒナセ ふぅん(眼鏡が光って、一瞬表情が見えなくなる)


 日向  二人とも、話が逸れているぞ。


 ヒナセ ああ、ゴメンゴメン(ボトムのポケットから銀の輪っかを取りだして指につまむ)


 明石  相変わらず無造作に持ち歩きますねぇ。


 ヒナセ だって、ただの輪っかじゃない。
     これ自体には特にこれって仕掛けはないんでしょ?


 明石  まぁそうなんですけどね(苦笑する)
     それでも雰囲気って大事じゃないですか。いわゆる『形式』ってやつですけど。


 ヒナセ んー……私はそういうの、よくわからない、かな。


 日向  そうか? 鳳翔との時は、まずなかなか踏ん切れなかった上に、
     さぁその時になって、ジタバタと足掻いていたと、電《いなづま》が言ってたぞ?


 ヒナセ ~~~~……何でも初めてのことは慎重にならざるを得ないでしょ。
     ただそれだけのことだよ(憮然と言い放つ)


      日向と明石「素直じゃないなぁ」と無表情でヒナセを見る。


 ヒナセ とっととやっちゃおう。このあともやんないといけないことが山盛りなんだし。


 明石  ほんじゃま、てーとく。その輪っか、日向さんにどうぞ?


 ヒナセ (ムッツリとやや機嫌悪そうに)……ヒナタ(指輪を入れた拳を差し出す)


 日向  (手のひらを差し出す)


      ヒナセの拳の中から日向の手のひらに指輪が落ちる。


 日向  (手のひらで指輪の存在を確かめるようにぐっと握って)
     ……ムードもへったくれもないが、それもまた我々らしいな。(うっすら笑い
     ながら自ら指輪を左の小指にはめ、その手を拳にしてヒナセに差し出す)


 ヒナセ (日向が差し出した拳を右手でぐっと掴み)明石、やって。


      明石が苦笑しながら端末を操作する。
      端末から時折ピピピ、ピピピ……と小さな音が発せられ、
      最後にピーと長い音が数秒。それが停まり……


 明石  はい、終了です。お疲れさまでした。
     いやぁ、こんなにムードのない授受式は、さすがのアタシも初めてですねぇ。


 ヒナセ (日向から手を離して、ごく小さくホッと溜め息をつく)


 日向  ……まったく。君は本当に心配性だな(口角が僅かに上がっている)


 ヒナセ (機嫌の悪かった真意を見破られて、ややばつの悪い顔)


 日向  何はともあれ、これからもよろしく頼む。
     君は私の命を繋いでくれた恩人だ。最後まで私に対する責任を果たせ。
     (日向の顔が明確に「に、」と笑う。


 ヒナセ (それをみて驚き、目が見開く。眉間に皺が寄った信楽焼のタヌキのような顔)
     ……退役する時までに、完全復帰してくれると、大いに助かるね。


 日向  そうならなかったら機能停止してくれ。
     なに構わん。これ以上君以外の提督に仕える気はない。君が最後の私の主人だ。


 ヒナセ (肩をすくめて)定年まであと30年はゆうにあるからさ、
      そのあたりはゆっくり考えといてよ。気が変わるかもしれないでしょ。


 日向  (笑って)……そうだな。


 明石  さて、そろそろ失礼しますよ。往診に行かなくちゃ、なんで。
     (往診と書かれた大きなのバッグを肩から斜めがけにする)
     日向さんはもう少し安静になさってて下さい。今日は散歩……軽作業くらい
     までなら許可します。……あ、ウチの子一人付けときましょうか?


 日向  いや、構わない。
     今日は提督と一緒にいることにする。


 明石  おやまぁ、お熱いですね。
     では、お先に。


      明石、工廠から出ていく。
      工廠がしん……と静かになる。隣のドックから明石の妖精さんたちの声が
      小さく漏れ聞こえてくる。


 日向  提督、苗園《びょうえん》に行こう。


 ヒナセ ……? うん、いいよ。


   ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

○ヒナセ基地 苗園
    文字通り苗を育てる専用スペース。
    ここは基本的に限られた者しか入れない。


 日向  提督、明石のこと、どう思っている?


 ヒナセ うーん……あからさまに怪しいんだけど、何が怪しいのかよくわからない。
     なんていうのかなぁ……『明石にしては、どこか変』って感じかな。
     初めて会った時からこの感覚が取れないんだよね。


 日向  本部基地から派遣されてきた『明石』だったな?


 ヒナセ うん。ヒロミさん経由だけど、実際には佐世保から派遣されてきたみたいだね。
     本部《鹿屋》にはあの明石はいなかった。
     そんなわけだから、警戒しつつ様子見はしているんだけど、大淀ほどの警戒は、
     今のところしてないかな。


 日向  私は大淀のほうがまだマシに見えるが?


 ヒナセ 大淀は鹿屋《本部》のみならず、他の鎮守府にも繋がってるホットラインを
     担当しているからね。……そういえば、ウチの明石は大淀にさほど執着して
     ないんだよねぇ。どちらかと言えば遠ざけてる感じがある。そこもめずらしいよね。


 日向  そういうものなのか?


 ヒナセ どの明石もそうってわけじゃないけど、明石と大淀は他の艦娘と違って対で
     運用することが多いから、お互いに好意を持ちやすいみたいでね。
     だから、遠ざけてるそぶり……てのが、ちょっと違和感があるというか。


 日向  なるほど。
     では、それとなく様子を気にするようにしよう。


 ヒナセ それはありがたいけどさ、日向の目はいくつあるのか、そっちの方が気になる。
     君、妖精さんいないでしょ?


 日向  いないな。出すこともできない。


 ヒナセ 嘘は……


 日向  ついていない。


 ヒナセ ……というか、つけない……よね。


 日向  ああそうだ。頭が半分吹き飛んだからなのか、もともとなのかは知らん。


 ヒナセ (そっか……と小さく呟いて)ま、どっちにしても無理はしないでね。
     君、しょっちゅう私の傍に潜んでるでしょ?


 日向  そんなこともないぞ? 菜園にいる時間も長いからな。


 ヒナセ ……まぁ君の勘の良さにはいろいろ助かってるところがあるから、この話は
     ここで終わり。


 日向  うむ。


 ヒナセ 君にとっては不幸すぎる経緯でここに来たろうけど、私にとっては大事な戦艦
     1号だ。改めて、これからもよろしく(ぐーを日向に差し出す)


 日向  君以外に拾われたなら、もう私はこの世にはいなかったろう。
     生き延びたことに対して思うことがないわけではないが、助けてくれたことに
     ついては心から感謝している(ぐーをヒナセに差し出す)


      ヒナセと日向、お互いに拳を合わせて軽く押し合う。


 ヒナセ じゃ、今日は私の傍でずっと護衛をしてて。
     午後からは菜園で作業する予定だから。


 日向  うむ。了解した。


 ヒナセ じゃ、まずは司令部に戻ろうか。
     みんなに改めて紹介するよ。


 日向  (さっと敬礼し)アイアイ・マム!(にこ、と明確に笑う)


 ヒナセ (さっと腕を上げ、返礼する)
     (腕を下ろして)行こう(身を翻して、苗園を出、司令部棟へ歩き出す)


 日向  うむ(それに付いて行く。改二改装で長くなった袖が風になびき……)


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 書き始めが19年3月19日。本日は21年11月17日。
 途中で大きな仕事をしていたってこともありますが、中断が長すぎる。……でもなんとか書き上げてホッとしているというのも事実。
 当初の予定内容からはあまり大きく逸れてないので、記憶というか、脳の動きも以前に近くなってきているっぽいですね。


 ヒナセ基地の後期にあたる話で、明石´(ダッシュ)がいるので、武蔵や隼鷹、カワチ提督や妙高型姉妹も全員います。

 ヒナセ基地の一連のお話には、明石と大淀は都合二人出てきます。大淀はさほど重要な位置に配置していないのでやってませんが、明石は解説やこのような後段あとがきで便宜上「明石」と「明石´」と表記しています(本編ではやっていない)。
 大淀は「最初の」「二人目の」とか「1号」「2号」って書いたことはあったかもw

 この世界線では、明石・大淀・間宮・伊良湖の4艦は中央の艦政本部工廠でしか建造できず、ドロップも(基本は)しないということになってます。
 ごくごくまれにドロップするみたいですが、必ず艦政本部に渡さなきゃいけない軍規になってまして、艦政本部のドックで検査・修理・初期化したのち均等に各鎮守府に分配されるのですが、まれにドロップ回収提督に執着するのがいて、そのなれの果てがイワヤ提督率いる“鹿屋の海上烹炊所”艦隊だったりするわけですが、……ま、それはまた別のお話ってやつで(w。
2021/11/17(Wed) 12:33 No.25
ヒナセと日向とときどき明石。
 日向改二実装記念。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

○ヒナセ基地工廠(という名の掘っ立て小屋)


 ヒナセ ……どう?


 日向  うむ……悪くない。


 ヒナセ それは体調のこと? それとも新しい装備のこと?


 日向  どちらもだ。


 ヒナセ それは良かった。


 日向  少し体が軽くなった気がする。


 ヒナセ ふむふむ……(手帳に書き付け)
     ところでさ、ヒナタ。


 日向  なんだ?


 ヒナセ これ……いる?(2本の指でつまんだ丸いモノを見せる)


 日向  ………。


 ヒナセ あら驚いてるね。


 日向  ……私だって驚くこともある。


 ヒナセ いやぁ、目が見開いてる日向は初めて見た(やや苦笑)


 明石  これはナカナカめずらしいモンが見れましたやね(ひひひ、と喉の奥で引き攣ったように笑う)


 ヒナセ うっすら笑うのはよく見るようになったけど、驚いた顔は初めて見たかも。


 日向  (憮然としながらもやや照れて)君がいきなりそんなもの出すからだろう。
     なんで今さら? とこっちは正直思うぞ。


 ヒナセ んー……そうねぇ……基地専任艦というのも、そろそろ無理があるかなぁって。


 日向  なんだそれは?


 ヒナセ 基地専任艦に空きを作りたい……が、本音だったり。


 日向  だったら、単に私を専任艦から外すだけでいいんだぞ?


 ヒナセ いやそれは困る。


 日向  即答だな。


 ヒナセ 当たり前でしょ。
     君は他所にはやれない。だから専任艦にしている。
     ただ、基地専任艦では本部に無理矢理持って行かれる可能性がないとは言い切
     れないし、さっきも言ったように基地専任艦の空き枠がそろそろ満杯だからね。
     だから、君を私個人の専任艦にするのが、安全かつ理にかなっていると思う。


 日向  ………(うっすら渋い顔)


 ヒナセ ……れ?


 明石  ……てーとく。もっと言い方があるんじゃござんせんかね。


 ヒナセ ……そう?


 明石  そーですよ。カワチ提督が今の聞いたら、間違いなくあとで説教されますよ。


 ヒナセ そんなこと言われましても。


 日向  (ため息を吐いて)……君の歯に着せぬ物言いは重々理解しているが、年々酷くなるな。
     私は気にしないが、新規で受け入れた娘《こ》たちへの言動は気をつけた方が良い。
     ……ま。君は命の恩人で今の主人だ。異存は無いよ。改二改装もしてもらったことだしな。


 明石  あー。ちょっとタンマしていいすか?


 ヒナセ 明石?


 明石  今日はアタシが許可したくないです。


 ヒナセ なんで?


 明石  アタシにゃその権限がありますんでね。
     そもそも日向さんはつい今し方改二改装が終わって出渠したばかりです。
     現時点でこれといった不具合がなくても、時間経過と共に出てくることもあり
     ますからね。物理はともかくメンタルが。
     特に改二改装後は、体の変化に心がついてこなくて、精神バランスを崩す子が
     実に六割を超えるというデータもありますし。


 ヒナセ そんなに?
     過去の記録にそんなの載ってないじゃない。


 明石  そこなんすよ。艦娘ってぇのはね、てーとく。提督《ご主人》に心配を
     かけたくないモノなんですよ。だから精神的にしんどくても表面取り繕っ
     ちゃう子が多いんです。特に日本艦艇はね。実にニッポンジンらしいじゃないですか。


 ヒナセ ……ふむ。
     ………。
     わかった。じゃ、これは明日以降にしよう。どのみち急いでないから(無造作に
     ボトムのポケットに仕舞う)


 明石  そうして下さい。
     二十四時間経過後は、好きになすって構わないです。
     様子見しながら、準備しときますよ。


 ヒナセ うん。よろしくです。
     じゃ、私は執務室に戻ります。ヒナタ。今日はもういいから上がって。


 日向  ………。
     提督。


 ヒナセ なに?


 日向  菜園に出ても良いだろうか?


 ヒナセ 明石が良いって言うならいいけど……少しは休みなよ。


 日向  いや。体を動かしていたい。そろそろ里芋の間引きをしなければいけないからな。
     今日明日あたりに芋茎《ズイキ》を食卓に出せると思う。


 ヒナセ (明石を見る)


 明石  (肩をすくめて)畑作業をするくらいならゼンゼン構いませんよ。
     海と違って、沈むことはないですからね。


 日向  うむ。じゃ、ちょっと作業をしよう。
     提督。二、三隻《にん》使うぞ。


 ヒナセ 了承します。綾波たちなら大丈夫じゃないかな。
     あ。あともしもの時のために、神通を同行させて。


 日向  うむ。わかった。ありがとう。


 ヒナセ 私も自分の仕事が一段落したら菜園に出るよ(工廠を出て行く)


 明石  ………。


 日向  ………。


 明石  よく我慢しますねぇ。


 日向  いや。そうでもないぞ。


 明石  そうなんすか?


 日向  正直、一瞬ムッとする時もあることはあるが、他意がないのも分かっているからな。


 明石  他意がないからこそ、腹が立つってこともありますよ。


 日向  私はその辺りの感情はよく解らない。
     昔の私はどうだったか知らないが。


 明石  日向さん。


 日向  ん?


 明石  アタシの見立てじゃ、アンタはさほど壊れちゃいないと思ってるんですけどね。


 日向  そうか?


 明石  ええ。
     本格的に壊れているなら、たぶんですけど、改装に耐えられないんじゃないですかね。


 日向  そうか?


 明石  前任の『明石』から引き継いだカルテによると、確かにアンタは頭半分以上
     削られちゃって、根幹部分の情報もかなり吹き飛んじゃってる。だから通常の
     艦娘の通常の状態とは、言い難いです。そもそも稼動していることすら奇跡
     みたいなものですよ。


 日向  君も提督同様に、歯に衣着せぬ物言いをするな。


 明石  『明石』は忖度しすぎる性格だとやってられませんからね。
     アタシもそうですけど、稼動期間の長い『明石』は毒舌になりやすくてねぇ……艦の
     性質とは言え、ちょっと損な性格してますよ。


 日向  ふぅん ……(気のない返事)


 明石  そもそも『明石』自体が、戦闘海域にはあまり出ませんからね。
     稼動十年はヒヨッコで、三十年以上でやっと中堅ってとこなんすよ。ベテラン
     って言われるのは五十年以上稼動の『明石』じゃないんですかね。
     ……もっとも、これ『明石』内《うち》でのお話ですがね。


 日向  ……だろうな。
     五十年稼動の艦娘なんて、すべての艦娘の中でも数えるほどしかいないだろう。


 明石  「数えるほど」は大げさですよ。まぁ、ざっと軽く見積もっても二~三百隻
     くらいはいると思います。アタシ個人で直接会ったことがある艦娘でも二十隻
     くらいいますから。


 日向  そうか。


 明石  もしかしたら五百隻くらいはいるかもしれませんね。
     ……ウチの『隼鷹』さんなんて、ベテラン候補じゃないですかね。
     彼女、確か連続稼働四十年超えの艦娘でしょ? 凍結経験もないしドロップ艦
     でもないから、本当の意味で希少艦ですよ。ここに配属され続けているのも頷けます。


 日向  ここに来た時はアルコール中毒で解体寸前だったようだがな。


 明石  理由はどうであれ、ここに来たってのが、彼女にとっては僥倖だったかもしんない
     ってことです。


 日向  話が逸れていないか?


 明石  いいえぇ。
     アタシにはねぇ、日向さん。
     ここに来て長く留まる艦娘たちって、大なり小なり意味があって集ってんじゃ
     ないかって、思うワケですよ。
     あの、のほほん提督のもとに、訳あり艦娘が集まってくる。そうじゃないのも
     いますけど、結局ここから離れがたい理由があって、離れられない。
     その中心にヒナセ提督がいる……そう思いませんか?


 日向  何が言いたいのか理解できんな。
     ……あまり難しいことを考えさせないでくれ。


 明石  頭痛が出ますか?


 日向  そうだな。頭が締めつけられる感じで、痛い……とかはないが、チリチリする。
     ……そう……チリチリだ。


 明石  これはすみません。
     じゃ、この話は、お終いで。


 日向  ああ、そうしてくれ。


 明石  頭痛が酷いようでしたら、外の作業は控えめにして下さい。


 日向  するな……とは言わないんだな。


 明石  まぁ、アタシも見てますんで、「あこりゃダメっぽいなー」と思ったら、
     ドクターストップならぬ、「明石ストップ」発令します。……タオル投げても
     良いですけど(ひひひ、と笑う)
     ま、アンタは、ご自分や周りが思ってるほど『壊れて』やしませんよ
     ……あくまでも『明石《アタシ》』の見立てでは、ね。


 日向  わかった。留意しておこう。


 明石  ええ。そうして下さい。あまりご自分を卑下することのないように。


 日向  わかった。忠告ありがとう。


 明石  いえいえ。どう致しまして。


 日向  じゃ、作業に出てくる。


 明石  はい、行ってらっしゃいませ。


   ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

…続きます。
2021/11/16(Tue) 01:57 No.24
サイトのお手入れ。
 時々はやっておかないと…ってヤツでして。

 とは言っても、見えるところの手入れじゃないとこがミソ。
 いわゆるサーバーの中に要らんもんが置かれてることがままありまして。
 つまりは、その駆除作業というわけです。

 2年ぶりくらいに掃除してみたら、あるわあるわ…で困ったモノです。

 困ったと言えばこのサイト、Web拍手なんかも自前で置いてまして、それにイタズラしていく(単に拍手して行く程度ですが、判別しなくちゃいけないのでなかなかウザい)ことがありまして。
 なもんで、拍手を引っぺがすかな…とか考えたりもしますけれど、拍手はモチベにも繋がるコンテンツなので、なかなかポイっと捨てる気にもなれませぬ。

 うーん困った困った(ホントに困ってるか?
2021/10/20(Wed) 00:03 No.23
レシポンシブな君
 というわけで、スマホの方のCSSもいじくってみました。
 たぶん見やすくなってんじゃないかなーって(たぶんな。

 こちらも文字の大きさを変更してみたり。

 ……目が良いとは言えないもんで(はっきり言ってとても悪い)、昨今の豆粒ところか芥子粒のような大きさのフォントは好きではありません。

 モニター(ディスプレイ)の解像度、メチャクチャ上がってんだから、10pxとか勘弁して欲しいとです(見えません。見えません。見えません。<大事なことなので3……

 なので、自分ちだけでもでかい文字にしようや…ってトコです。

 さて、ザクッとですが、レスポンシブな表示も何となく理解してきたので、できれば一気に本家サイトのへっぽこ書架にも適応したいところ……なんだけど、さて大丈夫だろうか?(特にシナリオ形式のブツたちが。

 ま、一度やってみないとわかんないか。
2021/10/08(Fri) 07:40 No.22
新しい日記。タグ使えない。
……しってた。


…てことで。

PCの中を漁ってたら、懐かしい動画が出てきまして。
…で、開いて聴いてみたら、バランスが激烈に悪いwww

てことで、現環境でそこそこ聴けるかな? 程度の調整をしてみました。
9~8年前の声なので、自分の声じゃないみたい。
これ録ってる時、母が入院しちゃって、その約5ヶ月後に帰らぬ人になったんだったなぁ…とか。

これ以降、きっちりとした状態での宅録ってしなくなったというか、できなくなったというか。
まぁ、そんな区切り的なモノだったりします。

混声4声の重唱としてアレンジしたんですが、微妙にカルテットとは言い難い感じの仕上がりです。

【ひとりで4人編成】
東方ヴォーカルアレンジ。幽閉サテライト『華鳥風月』【うたってみた】

https://www.studiol.co.uk/sound/mp3/kcfg_06_2.mp3


…てかこの人、一体いくつ声持ってるんでしょうね。
2021/10/05(Tue) 02:54 No.21
こそこそと…
 内部機構をいじくりまわし。

 …これで楽になった(ふふふふ……。
 他はまた後ほど…ってことで(何?
2021/09/24(Fri) 23:51 No.20
いつまでも……
 オレの心を抉る君。
 写真の向こうから微笑んで。
 だがその笑みは、誰に対して送ったものなのか。

 オレは内心チッと舌打ちして、声なく呟くのだ。
「馬鹿な子だ……」

 今となっては
 涙なんか出て来ない。心が痛くなったりもしない。

 ただ君がいないだけなのだ。
 オレにとっては。
 そう、オレにとっては……。
2021/09/24(Fri) 23:25 No.19
見映えを変更。
 間延びしてんなぁ……と思ってたので。
 …てか、出先でCSSいじるの好きよな、自分。

 ですけどもよ。
 PCに特化した表示になってるもんで、スマホではメチャクチャ見にくいですよな、これ。
 このあたりは自宅に戻って……いや、10月に入ってからいじることにしましょう。

 それはともかく(常套句。
 いきなり思い立って、東京都美術館で開催されている展覧会を観に来ました。
 楽しかったですが、自分とその他・某キャラクター2名の感情とか思いとかが入り乱れた状態になってしまって、脳みそがパンパンです。
 モノカキというものは、時々こんなことが起こったりしますけれども、問題は……自分の中でまだ消化し切れていないモノを抱えているのだな、ということです。
 ぶっちゃけ、自分の中でまだキャラが生きている。

 思い入れが過ぎるだけなのか、それとも……。


 ……とある人から言われたことが、まだ棘になって突き刺さったままなんだな、ということだけは事実のようです。

 ですが、棘は棘として、傷は傷として、外れないなら癒やされないなら、血を流したままで生きていくことしかできません。
 ……ま、しゃーねーわなぁ。
2021/09/24(Fri) 23:16 No.18
【200619】君の名は。【再掲】
 『あの桜並木の下で』
 さて、いつぐらいの話にしようか。前期の終わり頃か、中期の初め頃か。
 ま、そのくらいのお話。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ねぇやなぎはら、ちょっと訊きたいんだけど?


なぁに? 貴ちゃん。


そう、それだ。


何が?


その『貴ちゃん』


はい?


アンタさ、いつからアタシのこと『貴ちゃん』って呼ぶようになった?


え? ……そうねぇ……。


少なくとも、2号店に転がり込んだ時には、呼んでたわよね。


転がり込んだ……って、人聞きの悪い。
あなたが『住んで欲しい』って言ったから、渡りに船で、住まわせてもらったけれど。


まぁ、そうね。
おかげであのころはとても助かりました。
卒制にも専念できたし。


私の卒制は、あなたのほど大きくはなかったから、そこも丁度良かったわね。


まぁね……って、話が逸れてる。


あら、めずらしい。話を逸らすのはあなたの専売特許で、逸れたら逸れたでいい……ってスタンスなのに、今日は引き戻すのね。
何か気になることでもあるの?


気になるというか……気になったら、ジクジクといつまでも考えるようになっちゃったから、気持ち悪くてね(肩をすくめる)


なるほど、それでなのね。


まぁね……。
……4年の時にはもう呼ばれてたのは、まぁいいとして、いつぐらいからだったかなぁってね・……というかだ。記憶の中にないわけですよ。


?(首をかしげる)


アンタから『岩下さん』って呼ばれてた記憶が。


(ああ なるほど、と頷く)……でしょうねぇ(ころころと笑い始める)


ん?


うふふふふ……


んんん?


だって、呼んだこと、3回しかないもの。


はぁ? ……そだっけ?


ええ、そうよ。
あなた、私が初めて呼んだとき、無視したじゃない。


……え……そう……だっけ?


ええ、そう。
聞こえなかったのかしら? と思ってもう一度声かけたら、一瞬だけこっちをチラッとみて、そのまま無視してくれたし。


……(あー、なんか思い出したぞ、という顔になる)


あんなにあからさまな態度、他人からされたのは生まれて初めてだったから、ちょっと驚いたわよ。


いやー……なんといいますか……。
その……。


驚きすぎてちょっと固まってたら、丁度そこにカホリが入ってきてね。


……ぁっ……。


ふふふふ……思い出したわね?


(ち……っとあからさまに不機嫌な顔になる)


あなたと私を交互に見て……何が起こってるのか、察したんでしょうね。


いきなりヘッドロックかけやがって……アレ、すごく痛かったんだから。


驚いて暴れるからよ(ころころ笑う)


……ふん。


あの時、カホリがあなたのこと『貴子《たーかこ》っ』って呼んだから、あなたの名前を再認識したのよね。


あの時は、取りなしてくれて助かったよ。
カホリさん、容赦ないからさ。


あら、そうなの?
あとでお願いして、同じことをやってもらったんだけど、ゼンゼン痛くなかったから、そんなものだと、今まで誤解してたわ。


はぁ? アンタも物好きだね。……てか、カホリさん、相手をちゃんと見て対応してんだよな。……そっか……あの時か。


ええそう。
あの時とっさに『貴ちゃんは何も悪くないから。私が貴ちゃんに失礼なことをしちゃったから』って言っちゃったのよ。


ははーん……いきなり2回も『貴ちゃん』って言われたから、そこからはどーでも良くなってたワケね、アタシは(ため息)


なによそれ、他人事みたいに(コロコロ笑う)
……で後日、『岩下さん』って声をかけたらやっぱり無視されちゃったから、思いきって『貴ちゃん?」って言ってみたら、あなたこっちを振り返って、すごい形相で私を睨んだわよ。さすがにアレは、びっくりしちゃった。


……機嫌が悪いときに声かけてくる方が悪い。


(肩をすくめて)そういうところ、昔からよね。
あなたの事情なんて、誰にもわからないのに。だからだんだんとお友達が減るんでしょうに。


べっつに……友達なんざ、一生に2~3人いれば十分だよ。
知人くらいまでの距離感でちょうど良いんだって。


そういうところ、昔も今も変わらないわよねぇ。


別に変えようとも思わん。
現状、アタシの世界は飽和状態だからね。
これ以上何かを増やそうなんて、これっぽっちも思わないよ。


そう。
それならそれも良いんじゃない?
(小さく息を吐く)……私が憶えているのは、その3回ね。
つまり、大学1年の頃からよ。
まさか、その3年後からしか記憶してないなんて、思わなかったけど。


…………。


記憶がないってことは、さほど気にしてないってことなのね。


……そうかもね(肩をすくめる)


ちなみに、カホリを呼び捨てにし始めたのは、つい最近よ?


え? そうなの?


ええ、最近までちゃんと『カホリさん』って言ってたわよ。
同期とはいえちょっと年上だし、


アンタとは4つ差だっけ?


友ちゃんの2コ下だもんね。


なるほど。


あなたは、カホリのこと、呼び捨てにしないのね。


んー。……なんとなくね。ま、呼び捨てにすると『小僧がいっぱしの口叩くな』って叱られるからね。


あら、きびしい(クスクス笑う)
……というか、あなた。基本年上の人には礼儀正しいわよね。


そーでもないよ。


そう?


たぶん。


そうね……慇懃無礼に振る舞うことができるもんね。
研究室の先生たちへの態度とか。


……ふん。


……あなたから初めて呼ばれた時、いきなり名字呼び捨てだったから、それもすごく驚いたけど、なんとなく嫌じゃなかったのよね。


……だからか。


ん?


なんか、嬉しそうに返事した。


あら、気が付いてた? というか、憶えてくれてたのね。


まぁ……あの時アタシ、ちょっと緊張してたからね。


ええ、知ってる。
だから、すごく嬉しかったのよ。


……さいですか(毒気を抜かれた顔)



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 オチはなく。
 この二人、たぶんカホリさんがいなければ、今の関係にはなっていなかったのではないかと。

 ワタシはこの二人は、肉体関係ではなく、精神的な恋人同士として描き続けています。
 貴子の方は秋子に対する恋愛感情があったので、一時期ちょっとしんどかったようですが。兄とくっついちゃって家にいてくれるから、これが着地点だな、と折り合いを付けたようです。
 秋子は完全にノンケなので、肉体関係も含む恋人同士にはなれないと分かっていて、その上で貴子の傍から離れがたくて。そうこうしているうちに友則兄ちゃんが好きになっちゃったって人なのです。まぁつまり岩下兄妹込みで引き入れちゃった、情の深い女ですな。コワイコワイ。

 まかり間違ってこの二人がくっついたなら、関係は長続きしなかったんじゃないかな。女同士だから……ということではなくて。
 放浪野良猫とお母んなので、このくらいの距離感がちょうど良いんですよ。きっとw
2021/09/21(Tue) 01:17 No.17
 ぶた谷せんせぇ——某社編集・タコ田くんの述懐——
 時代のいっときを風靡した小説家の歌谷薫先生が、『ぶた谷せんせぇ』になっておしまいになったのはいつだったのか、実は当のご本人も分かっておられません。
 やや遅咲きながらも、華々しく颯爽と文壇にご登場なさったときは確かに『歌谷先生』でしたし、姿形もちゃんと人間でした。当時わたくしは中学生でした。
 ブラウン管の向こうにいらっしゃる先生は、それはそれは麗しい方でした。固太りの中肉中背。眉目の通ったご尊顔を飾るのは、ソフトリーゼントと小さな丸いサングラス。そして何よりもテーラーで仕立てただろうダブルのスーツが、とてもとてもよくお似合いでした。口をひらけば洒脱な言葉が飛び出し、インタビューもそつなく爽やか。見目の良さと頭の回転のよさを買われて、一時はテレビにもよくご出演なさっておられました。レギュラー出演をされている番組も週に何本かございましたから、以前の歌谷先生をご覧になった方は少なくはないかと思います。……だのに。だのに……。のにのにのに……。
 気がついたら、おなかはたぷたぶ、背中もたぷたぷ。ふんわりかきあげていらっしゃったオシャレなリーゼントは見るも無惨に刈り込まれ、頭頂部は、立ち枯れてぱやぱやと生えた冬の雑草地みたいになってしまってる始末。さらにはきりりと締まってダンディーだったお顔もたるんたるんにゆるんでおしまいになり、もうなんというか、はっきり申し上げてブタさんそのものでございます。
 ほら、よく見ないでも、あの大きな垂れ耳と、上を向いた大きな鼻はもう、もうね。

 わたくしタコ田こと迫田半介は、実は歌谷先生が文壇にデビューなさった時からの大大大ファンでござまして、それが高じて大学を出たあと、現在勤めております出版社に入社。数年前にとある文芸雑誌の編集者とあいなりまして、とうとう旧来からの念願であった歌谷先生の担当をさせていただくことになりました。初めてお会いするために先生のお宅の前に立った時なんか、ドキがムネムネしちゃったりなんか致しまして、お目にかかった瞬間に卒倒してそのまま天に召されるんじゃぁないかとか。ええ、そんな気がしておりました。ええ。
 実際、お目にかかった瞬間、わたくし本当に卒倒しそうになりました。
 なぜって、わたくしが存じ上げていた歌谷先生とは、打って変わって別人のようになっていらっしゃったからです。そうまるでブタさんに。ブタさんに……。
 かわいいミニブタならまだしも、上を向いて反っくりかえっている鼻の下や、たるたるの二重三重顎《にじゅうさんじゅうあご》に無精ヒゲをピヨピヨとまばらに生やした、小汚ーい中年オッサン顔のブタさんが、万年床を座布団代わりに、文机の前で火鉢を抱えていらっしゃったのですよ。ひどいでしょう。わたくしの十数年来の憧れなぞ、一瞬で吹き飛んで路傍の芥《あくた》同然に散り去っていくかに思われましたよ、ええ。
 また、そのとき同行しておりました前担当者である先輩編集が、あろうことか歌谷先生に向かって
「おはようございます、ぶた谷せんせぇ」
……なんて申すものですから、想像していたのとはまた別の意味で、天に召されそうになりました。
 ところが当の先生は、そう呼ばれても意に介さずといった風でひと言
「話ならできてねぇぜ」
……とかなんとか。わたくしが知っている歌谷先生とはゼンゼン違う声と口調でおっしゃったのです。またまたわたくしは卒倒しそうになりました。もちろん比喩ございますが、もしかしたら2,3センチくらいは仰け反ったかもしれません。
 それでもわたくし、気を取り直して自己紹介を致しましたところ、歌谷先生(たぶん)はお耳もお悪くなったのか
「あぁん? タコ田ぁ? そらまたよく似合った名前だなぁ」
とおっしゃいまして、すぐにわたくしが
「いえ、違います。迫田と申します」
となんべん申し上げましても、
「ちゃんと聞こえてるぜ、タコ田だろ」
とおっしゃいます。
 しまいには
「まぁこれからよろしくたのまぁ。いつ話ができ上がるかはわかんねぇけどな」
と、わずらわしそうにおっしゃって、くるりと後ろを向いておしまいになりました。
 途方に暮れたわたくしは、思わず先輩編集のほうを見ましたところ、なんと先輩は巨大な穴子《アナゴ》に変わっておりました。もう脂がのってぷりっぷりの穴子でございます。今すぐいて煮たら、さぞかし美味しいだろうなと思わせるには十分なほどの巨大さとぷりっぷりさでした。いや確かにタテもヨコもたいそう大きな方で、編集者と言うよりはラグビー選手とかアメフト選手みたいな風情の方ではあったのですが、よりにもよって穴子に変わるなんてそんな馬鹿なと思うでしょう。ところがですよ、歌谷先生(たぶん)はその先輩編集に
「アナゴさんよ、今まで世話になったなぁ」
なんて、背中越しにおっしゃるじゃありませんか。いや、先輩の名前は尼子《アマゴ》さんなんですよ。それなのにアナゴさんって呼ばれて、当の本人は穴子になっちゃってるだなんて。
 呼ばれた先輩も先輩で、わたくしに向かって
「じゃ、あとはよろしくね、タコ田君」
とニコヤカにおっしゃって、なにごともなく未練もなく、先生のお宅から出て行こうとなさる。そりゃまぁ自分だって編集一年生ではありませんが、この混乱しきった中にひとり取り残されてどうしたらいいかわからない。あああ、先輩待って下さい! と声にならない声を上げ、左手をいっぱいに広げて先輩に突き出しましたら……

 ……手が、スーツの袖口から出ている手が……

 え? 手? 手が??……触手? 二本?

「……おめぇ、洗面行って顔ぉ洗ってきたらどうだ? 廊下を戻って玄関横の便所の隣にあらぁよ」
 先生のダミ声が聞こえました。
 わたくし、お言葉に甘えて洗面所をお借りしました。洗面所にはもちろん鏡があります。そこに写ったわたくしの顔は……
 ……ご想像のとおり、タコになっておりました。
 それも超リアルな真蛸に。
 いやたしかに頭は短くスポーツ刈りにしておりまして、さらにタテにひょろ長いわたくしの首から上は、中くらいの長さの茄子を逆さにしたようで、中高生の頃のあだ名はナスオではございましたが、まさかタコに。タコ。タコ。……タコ。
 ……一体なにが起こったのでございしょう。

 とにかくその日からわたくしはタコ田と呼ばれ、姿形もタコ。スーツを着たタコとなりました。その日夜遅くに自宅に戻りましたら妻もタコになっておりまして、腰が抜けるかと思いました。……が、それ以前に、道行く世の中すべての人が、何かしらの動物に変わっておりました。本当に、一体ぜんたい何が起きたのでしょう。いまだに分かりません。ただ、ひとつだけ、ある日意を決してぶた谷せんせぇに
「せんせぇはいつご自分がそのお姿になったことにお気づきになられましたか?」
と伺ったところ、せんせぇは、ご愛用の火鉢に炭をくべながら、わずらわしそうに天井を一度ご覧になり、わたくしのほうを眼鏡ごしにじろりとご覧になり、それからこうおっしゃいました。
「さぁねぇ、いつの間にかだったけどもよ、そうさな……話がこれっぽっちも出てこなくなってずいぶん経ってからだったかなぁ。……うーん……痛風が出てからだったかなぁ。……ま、とにかく、あんまし動かなくなってからだったな、うん」
 つまりは、スマートでダンディーで素敵な作品をたくさんお書きになっている歌谷先生だったころには、まだこのようなお姿ではなかったということのようです。
 あれから何年かがたちましたが、わたくしたちが人間に戻る気配は一向にござません。しかし人間の思考というものはあんがい柔軟で、自分ひとりがタコならばたいそう困ったり迫害されたりもしましょうが、みんながみんなこのような状態ですから、さほど不便にも感じません。わたくし個人と致しましては、結果的に腕が四本足が四本という内訳で落ち着きまして、これを使ってみれば、あんがい人間だったころよりも器用な感じがいたします。こと、ぶた谷せんせぇがよくご所望なさる鍋焼きうどんを作ってさしあげる時に、この四本の腕がとてもとても重宝しておりますので、このあとの一生、このままでもかまわないかなと思っている次第でございます。
2021/08/28(Sat) 08:29 No.16
【再掲】風呂とタバコと傷心と【191222】
すると5分ライティング。

『あの桜並木の下で』たぶん中期くらい。
メルボルンの愛人宅。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
○バスルームにて。

 カホリ  (スッパで入室。ここんちの風呂は日本式)……ん?
      (くんくんと匂いを嗅いで)……あんのくそったれが……。


○カホリの寝室。貴子がベッドで大型猫類のように寝転がっている。

 カホリ  (バスタオル姿でズカズカ入ってきて)ガンタ! このバカ小僧!!
      (ごん! と貴子の頭にゲンコツ)


 貴子   (完全に不意を突かれてものの見事にゲンコツを喰らう)……ぎゃ!
      ……あにすんだよー(頭を押さえながら)


 カホリ  なんべん言ったら分かる! 風呂の中でタバコ吸うんじゃないわよ!!


 貴子   えー? いいじゃんそのくらい。


 カホリ  ものすごい匂いなんだよ! 湯が!! つか、湯気が!!


 貴子   ふーん。


 カホリ  この小僧……。アンタはよくても、次以降使う人間が臭いでしょうが!
      人んちに上がり込んで無為徒食してんなら、家主にちったぁ気を遣え、このバカが!!(ふたたび「ごいん!」とゲンコツで叩く)


 貴子   いたいいたいいたい。


 カホリ  痛いように叩いてんだから、当たり前じゃ!!
      はー……なんで秋(しゅう)ちゃんは、こんなの平気で飼ってんだろね、ったく。


 貴子   あれはあっちが転がり込んで来たんだよ! 知ってるでしょ(めちゃくや機嫌が悪くなる)


 カホリ  そーねー。兄さんの嫁になりにきた奇特な子よねー。
      ……てかだな。なんで風呂桶の中でタバコ吸いたがるかね、この子は(どさっと貴子の横に座る)


 貴子   (ギー…と威嚇しながらも)気持ち良いこと二つ掛けして何が悪……


 カホリ  悪いから今怒られてるんでしょうが!!
      タローが学校から戻ってくるまでに、風呂の匂い落とせ! このくそガキ!


 貴子   水掛けたら簡単に落ちるんじゃないの? ニコチン、水溶性だし。


 カホリ  それを、アンタがやんなさいつってんの! 汚したら綺麗にするのが礼儀でしょ。


 貴子   悪しき日本の思考だよなぁ、それ。


 カホリ  日本じゃなくても普通はそうするんだよ。自分ちじゃちゃんとしてるクセに、
      どうしてアタシんちに来たらこれかね。


 貴子   カホリさんが甘やかしてくれるから。


 カホリ  ……なんかやっちゃぁ、叱られてる子はどちらさまかしら?


 貴子   それでもカホリさん、甘やかしてくれるから好き(にひ、と笑う)


 カホリ  (この顔に弱いんだよなぁ、と思いつつ)……風呂桶浸かったら、手が濡れるでしょうが。
      だのになんでやるかね。


 貴子   それはデスネ。まずマッパになりまして。


 カホリ  あん?


 貴子   火を点けてから風呂へ向かい。そして手を拭くためのタオルを持って入ります。


 カホリ  やり方を聞いてるんじゃないわよ。


 貴子   あらそう?(そろ…っとカホリに手を伸ばす)
      吸い殻はちゃんと水掛けてから灰皿に捨ててるから、安全だよ。


 カホリ  (気がついて、べすんとその手をはたき落とす)そんなこと聞いてません。


 貴子   けち。


 カホリ  風呂掃除しないかぎり、ヤらせてやらん。


 貴子   えー・ じゃぁ、風呂掃除したら、一緒に風呂入ってくれる?
      綺麗なお風呂、気持ち良いよ。


 カホリ  風呂はもう結構よ。ふやけちゃう。


 貴子   水もしたたるいいオンナなのになー(クスクス笑う)


 カホリ  (妙に機嫌がいいわね、これは要注意、と思いながら)とにかく。
      今後一切、うちの風呂桶の中でのタバコは禁止。
      誰よりも最後に入って、きちんと掃除するなら……いいや、ダメだ。甘やかすと癖になる、アンタは。


 貴子   ちぇー。


 カホリ  ホンッとに変な子よね、アンタ。


 貴子   同学のカホリさんには言われたくないなぁ(クスクス笑いを止めない)


 カホリ  アーティストってぇのは大なり小なり変人しかないないけど、アンタはその中でも輪を掛けて変人よ。
      こんなに変なの、他に見たことないからね。


 貴子   そんなことないでしょ?
      カホリさんだってかなり変な人だもん。


 カホリ  変の方向がかなりおかしいのよ、アンタは。
      アンタといると退屈はしないけど、疲れるのも確かね。


 貴子   (目も止まらぬ速さでカホリを押し倒す)……ね? ヤろ?


 カホリ  (組み伏せられたが、ははん、と気がついて)やなこった。


 貴子   じゃ、こうしてやる(カホリのバスタオルを開いて、がーっと甘噛みする)


 カホリ  ……ったくもう。シて欲しいなら最初からそう言いなさい。


 貴子   ………。


 カホリ  そら図星。気が削がれたでしょ(にや、と笑う)


 貴子   ………(カホリの上から降りる)


 カホリ  『気持ち良いこと二つ掛け』して、気が乗ったか?
      めずらしく今回は夜中に忍び込まないなと思ってたのよ。何があった? 日本《あっち》で。


 貴子   別に。


 カホリ  秋ちゃん、か。


 貴子   ………。


 カホリ  ホントにバカよね、アンタ。アンタがくっつけたみたいなもんでしょ。


 貴子   ………。


 カホリ  なんで兄さんたち結婚した時、家を出なかったの?


 貴子   ………。


 カホリ  ま、ダンマリでもいいわよ。どうしても辛くなる時ってあるからね。


 貴子   ……カホリさんも?


 カホリ  そーだよ。アンタが最初にアタシを振った時の言葉がね。まだ刺さってんのよ、ここにね。


 貴子   ………。


 カホリ  ………。


 貴子   ……やさしいね、カホリさん。


 カホリ  ……バカタレ。


 貴子   ……ね。


 カホリ  あん?


 貴子   タバコ、吸ってもいい?


 カホリ  却下。


 貴子   ちぇ。


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 …たぶんこのあと、なだれ込んだのではないかなと(へへっ。
2021/08/20(Fri) 00:08 No.15
【再掲】煙草。【160120】
 …心は常に自由でなくてはならないのだ。
 そう思った。


『あの桜並木の下で』時間外 春花の独白。
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 二十歳になった日に、運転免許証を財布に入れて、とあるところにとあるものを買いに行った。その店の年老いた主人は、老眼鏡ごしに私をじろじろと舐めまわすように見て、それから「身分証はあるかね?」と言った。私は財布の中から運転免許証を出して、店の主人に手渡す。
 その店の主人はとても目が悪いらしく、いつもやぶにらみで、店に来る人間たちに品定めするように見るのだ。私も同様に、いや、もっと訝しまれていたに違いない。
 私は、昔から実年齢よりも二~三歳年若くに見られるのが常だった。早生まれの上に、誕生日も年度末ギリギリなので、四月生まれの同級生ならば一年近い年齢差が生じる。私の身長は、中二になるくらいまで平均よりもかなり低かったこともあって、どうしても幼く見えてしまう。幼く見えるから周りもそのように接するし、末子で甘やかされて育ったものだから、周りのそういう態度をあまり抵抗なく反発もなく受け入れていた。だからなおさら、幼い雰囲気を残してしまったのだろうと思う。一度できてしまった人間関係はたやすく崩れない。だから、私の背が平均的な高さになったあともやはり、周りは私を小さな子供扱いし、私もそれを疑問なく受け入れていたために、成人したあとも、また三十をとうに過ぎた現在でも、実年齢よりもやや若く見られがちなのだろうと思う。
 運転免許証には、戸籍に記載された正しい誕生日が表示されている。間違いなくこの日、私は二十歳になった。二十歳になれば、その店でそれを買うことを咎められることはない。私はとにかく二十歳の誕生日が待ち遠しかった。
 運転免許証の裏も表も穴が空くほど見た店の主人は、「ふん」と鼻を鳴らしてそれを私の手に返した。そしてこう言った。
「“赤缶”だぁね。一つでいいのかい?」
 言いながら、すでに棚に置いてあるそれを、迷うことなく手にとってカウンターの上に置いた。
「ええ、一つで」
「これはね、初心者が興味本位で吸うものじゃぁないよ」
 店の主人はぶっきらぼうに言った。
「ええ。知ってます。……昔、叔母が吸っていたんです」
「そぉかね」
「ええ。こちらで買ってて。たまに私も連れてきてもらってました」
 そう言うと、店の主人は視線をやや右に上に動かして、さらに険しい顔つきになった。そして、ややあってからこう言った。
「……ああ、そういえばおったね。たまーに女の子を連れてくる若い女の人が」
 なるほど、記憶をたどっていたのか。
「当時、叔母は四十代だったんですけどね」
 私は苦笑した。確かに叔母は、四十代ではあったが、二十代おわりくらいから三十代はじめくらいにしか見えなかった。服装があまり年相応でなく、さらに化粧気がなかったせいだと思う。
「おや、そうかね。いつの間ーにか来なくなってしまったが、お元気かね?」
 店の主人が尋ねる。私は首を横に振った。
「いえ。亡くなりました。八年ほど前に」
「……そぉかね……」
「はい」
 ほんの少し、私たちの間に沈黙が流れた。見ると店の主人は目をつぶっていた。記憶の海を漂っているように見えた。
 小さな店ではあるけれども、ここにはたくさんの人が訪れるのだろう。ひとりひとりは数分の滞在でも、店の主人にとっては膨大な時間のはずだ。小さな積み重ねは、いずれ大きなうねりとなる。その中から、ほんのちいさな欠片を掬いだすことは、容易なことではないかもしれないし、さほどなことでもないのかもしれない。
「これを」
 店の主人が、棚から密閉容器を出すと、その中から小さな箱を取り出して、“赤缶”の横に置いた。
「おばさんに……線香代わり……」
 赤缶と同じ銘柄の、同じ色の薄い箱。
 ややメタリックの赤地に金の縁取り。
「……ありがとうございます」
「いや……あの子来ると、面白かったでね」
 店の主人は険しい顔のままうっすらと笑った。苦笑しているようにも、泣くのをこらえているようにも見えた。


 会計を済ませて店を出た。缶と箱は未晒クラフト紙の袋に入れられている。
 あの店の主人にも、叔母との思い出があったのだということを反芻しながら、紙袋を左腕に抱えて、昔ふたりで歩いた道をとぼとぼ歩いた。
 歩くたびに紙袋がカサカサと乾いた音を立てる。
 紙袋の中身は、煙草だ。
 叔母が……貴ちゃんが吸っていた煙草。それがどうしても欲しかった。あの店で買いたかった。
 もちろん、私は今日まで煙草を吸ったことはない。たぶん、この先吸うこともないだろう。でも、欲しかった。

 大学に入ると、周囲に喫煙者が多くなった。もちろん家業の店では喫煙者が何人かいる。入れ替わり立ち替わりにやってくる母の会社の人たちがそうだ。喫煙者ゼロのときもあるが、三、四人いる人たちの誰かは、たいがい喫煙者だ。また、店の大人のお客さんにも喫煙者は多い。父は、店を禁煙にしたことはない。店内は紙の箱だらけだし子供も多く出入りするので、店内は禁煙で歩き煙草厳禁。そのかわり店の外、屋根付きでコンクリートの土間になっている、プチ四駆の試走場やその反対区画の卸し作業場には喫煙所が設けられていて、喫煙者たちの憩いの場になっている。家では絶対に吸わない父が、そこで喫煙しているのを見たこともある。
 喫煙者が周りに増えて感じたことは、自分が知っている煙草の匂いは、どうやら一般的な煙草とは違うようだということだった。
 父は家では吸わないこともあって、うちの母屋には煙草臭が染みついていない。貴ちゃんが生前のころは、たまに縁側で吸っていたこともったが、彼女は主に“あずまや”でしか喫煙しなかったし、子供だった兄や私が喫煙している貴ちゃんに近づくと、さりげなく火を消してくれていたのだ。
 ただ、毎日たくさん吸わないといったものの、彼女が吸っている“赤缶”は、かなり独特な香りがしていて、彼女の髪や服からほんのりと香る時があった。そして私はその香りが好きだった。
 特に好きだったのは彼女の指で。
 煙草をはさむ左手の人差し指と中指の第一関節には、その煙草特有の香りが染みついていた。顔や頭を撫でられたときや腕枕でお昼寝をしてもらっているときに、ふわりとした甘い香りが私を包んでくれるのだった。



 いつもの桜並木の下にさしかかる。今年は年明けからあたたかい日が続き、開花が少々早かったため、すでに満開に近くなっていた。
 母と叔母がいつも花見をしていたところにあった土管は、おととしだったか撤去されて今はもうない。叔母が中学生の頃にはすでにそこにあったらしいその土管は、経年劣化のためにもろくなって、危ない状態だったらしい。ある日いきなり重機が入って掘り返してどこかへ持ち去った。跡にはどこからか持ってきた新しい土が置かれて、段差が分からないようきれいに均(なら)された。今はもう、すでに新しい草が生えて、そこに土管があっただなんて誰にも分からないようになってしまった。
 時は確実に流れてる。
 ここを通るたびに、草の生えそろった広くはない河川敷を見るたびに、そう思う。
 母と叔母が愛していた桜の木はいまもそこにあるが、土管撤去の際に道に覆い被さるようになっていた枝を落とされ、木のバランスが狂わないようにと、左右に広く伸びた大枝が切り詰められて、幹だけが大きな、こぢんまりとした風情になってしまった。母はその姿を見て、もう花が咲かないかもしれない、と心配していたが、予想に反して花を咲かせている。切り詰められた枝にはまだ花が付く気配はないが、切られなかった枝には今までどおり、いやそれ以上の花が、今年もひしめき合うように咲いている。

 いろんなことが変わってしまったけれど、変わらないものもある。
 それがこの桜の木であり、土管のあった河川敷であり、貴ちゃんの煙草である。少なくとも、私と母には。
 

 河川敷に降り、桜の木の下に行く。
 土管があった場所は、このあたりだったろうか。
 私は紙袋をあけ、中から赤い缶を取りだした。この缶も変わらない。メタリックな赤のボディーに少し鈍い金色の蓋。堅めのフィルムを剥がして蓋を開けると、つん、と懐かしい香りが鼻をくすぐったのと同時に、いきなり深い夕日が目に飛び込んできた。
 そうだった。この円筒形の煙草缶には、丸いカードが入っていて、それに夕日の写真が印刷してあるのだ。
 この煙草の生産国の夕日なのかしら、と思いながら、カードをなんとか取り出すと、気のせいか、懐かしい香りが強くなったように感じられた。隙間なく、ぴっちりと並んだフィルターの断面が見えた。
 やっぱり、変わらないわね。
 私はほっと安心感に身を浸した。
 当時小さかった私の記憶は、月日を経るごとにどんどん風化していくようで、それをつなぎ止めることに必死だった。今日、貴ちゃんの煙草を買ったのも、そのためだった。
 袋の中を見ると、タバコ屋の主人がくれた煙草のほかに、小さなマッチ箱がひとつ入っていた。喫煙するのに使えということだろうか。
 否。
 これもまた、貴子叔母への餞別なのだ。私はそう了解した。
 貴子叔母は喫煙する場合はマッチ派で、病気で利き腕をなくしたあとも、器用に片手でマッチを擦り、煙草に火を付けていた。タバコ屋の主人はそれも憶えてくれていたのだろう。
 私は煙草を一本取り出して、口にくわえてみた。
 ああ懐かしい匂いがする。そして、フィルターが、とても甘い。
――極上のキスを味わってるような、そんな感じ――
 叔母が母に言った言葉を思い出した。
 キスがどんなものなのか、私はまだ知らないが、たぶんこんな感じなのだろう。しばらく煙草をくわえてもてあそんでいたが、ふとその気になって、マッチを擦り、火を付けてみた。

 吸って……みる。

 フィルターの甘みからは想像もできなかった衝撃に、むせかえってしまった。
 なるほど、タバコ屋の主人が言うはずだ「これは初心者が興味本位で吸うものじゃぁないよ」と。
 一度で懲りた。
 一口しか吸っていないそれを、足下に落として靴で踏んでもみ消す。火が消えたのを確認して、長いままの吸い殻を拾った。


 煙草の紙ボックスが入った紙袋に、煙草缶とマッチと火が消えた吸い殻をいれ、袋の口を3回折り曲げてから歩き出す。
 気がつけば太陽がかなり傾いて、煙草缶に入ったカードほどではないけれど、夕日が空を彩っていた。
 春の、淡い淡い夕日。
 この道から見えるこの光景も、ずっと変わらない事象の一つ。

 願わくば、ずっと、ずっと、このままで……。



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2021/08/16(Mon) 23:12 No.14
【再掲181219】10年の宴【マリみて】
聖蓉駄文。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ねぇ蓉子さん。


なぁに? 聖さん。


おいわい、しませんか?


お祝い? 何の?


わかんない?


……。
何かを企んでそうよね。


やだなぁ、そんなことないって。
どうしてそう疑り深いの?


……胸に手を当てて日頃の行いを思い出してご覧なさい。


………。
んー……これと言って特に。


あなたならそう言うでしょうね。
……で、何のお祝いをしたいのかしら?


ホントにわかんないの?


かいもく見当も。
というか貴女の突飛な行動にいつも振り回されている私の身にもなって欲しいわ。


んんん~~……。


口を尖らせてもダメ。


ちぇー!


………。


………。


拗ねないで頂戴。


………。


……わかりました。降参よ。
貴女の考えていること、謹んで拝聴したいわね。


……言い方がなんか気に障るんだけど、まぁいいわ。


……(肩をすくめる)


(こほん、と咳払いひとつ)じゃじゃーん!
本日この日に、お祝いをしなければならない理由は……なーんと、私たちが初めて出会った日だからでーす!!


………。


……あれ?


いえ、なるほどね、と思ったの。


はぁ。


実に貴女らしいわね。
出会ってからこっち、つかず離れずでなんだかんだと一緒にいることの方が多いのに、今さら「出会って10年めのお祝い」をする必要があるのかしら?


……う……よーこさん、厳しい。


それに、『私たちが出会って』なら、ここにもうひとりいないとおかしくない?


よーこはそうかもだけど、私はさらにその九年前だったから。でこちんとは。


……あ、そうだったわね。


あ。もしかして今の、マジボケですか!?


でも、貴女が言ったように、私と江利子も出会って十年ですから、やはりここは江利子もいるべきだと思うワケ。


……う。


ご反論は?


……え……えと……。


持ち時間は、シンギングタイムも含めて三分間です。


お……鬼だ!!


じゃないと、調子に乗るでしょう。それも際限なく。


わあった! わかりました。
じゃ、こうしよう。江利子とのお祝いもやる。でもこっちは後日で。
とりあえず今日は、私たちのお祝いって事で!!


却下。


えええー!!


「とりあえず」なら必要は感じない。私はね。


あー……やだもう、この弁護士の卵!!
……え? てか、今なんて?


ふふふふ。


え? え??


聖、言葉は丁寧に使わないと。


あー……。


今の貴女の「とりあえず」は「適当」に……『いい加減』という意味の『適当』ね。『テキトー』とでも言うべきかしら? そんな感じに聞こえてたわ。
そういう意味の『とりあえず』なら、私はお祝いしなくて結構よ。


……ごめんなさい。


貴女のことだから、「お祝いしましょう」も昨日今日考えついたことではないのでしょうけど、もう少し早めに言ってほしいのよ、私としては。


だってー、それじゃぁサプライズにならないじゃない。


サプライズなら、すべて用意してから仕掛けるものじゃなくて?


……う。


考えつくだけ考えついて、あとは成り行き任せ、というのも感心しない。


あうー。


……で、どんなことを考えついていたのかしら?
お出かけ? それとも食事?


……おでかけして、食事。
ちょっとイイトコで。……てか、ホテルも実は予約しちゃってるのよね。


私、明日も大学(学校)なんですけど?


大丈夫、私もだから。


……。


ホテルから直接行けばいいじゃん。
私、今日は車(ブーブー)出すから。荷物はブーブーに置いておけば良いじゃない。


……わかったわ。じゃ、用意しましょう。
ホテルを予約したなら、そのホテルの最上階レストランあたりにも予約を入れているのでしょう?


いやー……そこまでは。
食事は抜きでもちょっと良いホテルにお泊まりはしたいなーって思っただけだから。


あ、そう。
じゃ、ホテルのお名前は?


え? いいの!


It's please.


えっと……●●ホテル。


……ふむ。ホテルは聖の奢りでしょ。
じゃ、私は食事代を出すわ。そのホテルの近くに行きたいレストランがあるの。


ほへ? ああいや、食事も私が出すよ! 昨日バイト代出たし。


いつも言ってるけど、一方的に金銭を出すのは禁止。
だって……


50:50(フィフティー・フィフティー)でいたいんでしょ。


その通りです。
じゃ、準備してそろそろ出掛けましょうか。
レストランは事前に席だけ予約しておくわ。


うん。私はいつでもオッケーだから。


そう……じゃぁ私は準備してくるわ。


うん。車で待ってるー。

---------------------
(車の中にて)

……あ、もしもし。●●ホテルですか? 今日▲▲ルームを予約していた佐藤ですが。
ええ……ええ。そうです。
お願いしていたモノは……あ、大丈夫ですか。いろいろお手数掛けちゃって、済みませんでした。……いえ……いえ、こちらこそ。……ああ、、ええそうですね。ありがとうございます。ではあとで伺います。よろしくお願いします。


---------------------
(家の中にて)
……もしもし。■■さんでしょうか。急で申し訳ありませんが、席の予約はできますでしょうか? あ、大丈夫ですか。ありがとうございます。
車で行きますので、一時間後……遅くても一時間半後くらいになるかと思います。はい……はい。
……で、お料理のほうなんですが、ネットで拝見した▼▼は、今日は可能ですか?
ええ……それです。……あ、じゃそれを2人前でお願いします。あと急な話なんですが、実は今日ちょっとした記念日で、もうひとりにサプライズを……ええ……ええそうです。……あ、今日大丈夫ですか。じゃ、お願いします。曲は……そうですね……では『◆◆』で。……え? 換えられるんですか? ではそこを「聖」に変更で。ええ。ありがとうございます。よろしくおねがいします。
では、あとで伺いますので、ええ、遅くても一時間半後くらいまでには。ありがとうございます。では失礼致します。



   ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


ねー、よっこさん。
おいわいしませんか? 明日。


……おいわい? なにをかしら? 聖さん。


……昔同じことお互い言ったような記憶があるんだけど、気のせいかな?


気のせいじゃないのじゃないかしら?
貴女とはこの手の会話はしょっちゅうしている気がするけど?


……そう?


ええ、そう。
……で、何のお祝いがしたいの?


訊いてくれるんだ。


話を早く進めたいだけよ。


あ、そう。


拗ねた?


拗ねてません。ここで拗ねてたら、よっことの会話終わっちゃうもん。


そこは進歩したわねぇ。


ぬー。笑わないでよもー。


ごめんなさい。では拝聴致しますわよ。


えーと、十周年なんです。


……。


ん?


以前も何かの十周年をお祝いしたわよね。


そうねぇ。


それと今回の十周年は何が違うのかしら?
……そう言えば、あれは春だったわね。
そして今は晩秋。


前回のは『私たちが出会ってから十周年』。
今回のは『私たちがパートナーになって十周年!』


ああ、そうそう。
去年、9th Anniversary をこの時期にやったわ。
その前の年は 8th Anniversary。


さらにその前は 7th。その前の前は 6th をお祝いしたわよ。


そこ、胸張らない。


いーじゃなーい! 減るモンじゃなくておめでたいことなんだから。


いえいえ、貴女のそのマメさに感心しているのよ。


へへへ。


……そうねぇ。いいわよ。


ホントに!


ええ。どのみち明日はお休みを取っているから。


え!


……なんとなくね、休みを取らないといけない気がしてて、取っていたのよ。


あらー。


誰かさんが毎年Anniversaryをやってくれるから、その賜物ね。


えへへへ。


休みの申請をしたら、所長がニヤニヤ笑いながら快く受理してくれたから、なんだろうと思っていたけど、なるほどね。


いやそれ、他所の人が憶えてて、当人が憶えてないってどうなの?
……てか、あの所長さん剛毅な人だよね。なにせ水野蓉子を雇っているし。


最後は余計よ。
……業務に穴を開けなければ、メンバー間での恋愛や結婚はお好きにどうぞ、って考えだから。未婚既婚関係なく妊娠出産育児休暇もOKで、その後の復帰も可能だし、確かに女性が働きやすい事務所だと思うわ。


所長さん、シングルマザーだっけ?


ええそう。
前の旦那さんとの関係がきっかけで、今の法律事務所を立ちあげているから、業務内容も自ずとそっち方面に特化している感じがするわね。あと債権関係とか。


自分の経験をフル活用してるんだなぁ。すごい人だ。


ええ、見習いたいわね。あの生き方は。


なんにしても私たちのことにもご理解深くて助かります。


そうね。
……で、お祝いってどうするの?


どうでも。蓉子の好きなように。


あら、今年はノープランなの?


まぁね。ホテルは予約してるけども。


いつ?


明日の夜。一泊で。


ホテルから出勤させる気?


いいんじゃない? たまには。


………。


あら、嫌?


一度家に戻って着替えたいかな。


へ?


ホテルにはすごく良い服を着ていきたいもの。


わお。


そのホテル、最上階に展望レストランとかないの?


ごめん。ないんだ。


あら残念。


でも、近所にすごくおいしいお店があるの。そこに席の予約を入れてもいい。


それは楽しみね……というか、いつの間にそんなお店見つけたの?
ネット?



ううん。教えてもらったのよ。


誰に?


蓉子に。





前の、十周年のお祝いの時に。


……あ……。


うひ。


……ばか。


あの店、すんごく美味しかったから。


あのあと何度も行ったじゃない。


うん。でも明日行きたいなって。


……わかったわ。
ホテル代は私が持つ。だから聖、食事代は貴女が出して?


うんいいよ。話がまとまるならそのつもりだったし。
今、オータムフェアで、特別メニューがあるみたいなの。楽しみね。
……てか、今から予約しちゃう?


ええ……そうね。貴女におねがいしてもいい?


うん、もちろん。
……ピアノと歌のサービス、なくなっちゃったの残念だ。


そうね。
演奏者が今いないらしいから、仕方ないわね。


あの時はびっくりした。


そう?


感動して泣いちゃったくらい。


……そのあとホテルでの貴女、大変だったわ。興奮しすぎて。


そりゃーもうねー。
サプライズ仕掛けたはずが、先に仕掛けられちゃって。
自分がやりたかったこと全部吹っ飛んで忘れるくらい驚いたし嬉しかった。


私も……サプライズ仕掛けて悦に入(い)っていたのに、サプライズ返しがあるなんて思ってもみなかったから。
びくりしたけど、とても嬉しかった。


うひ。
それはよかった。


ええ。良かった。


さて、今日はそろそろ休みますか。
明日の夜にお楽しみは取っときたいし。


ほどほどにしてね。明後日は仕事なのよ。


その予定です。
朝早めにホテル出て、一度帰宅するんでしょ?


ええ、お願い。


了解しました。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
2021/07/03(Sat) 00:33 No.13
【再掲】『無印』シンデレラ閑話【マリみて駄文】

あーあ、終わった終わったー。

そうね。

ありゃ。感慨にふけってる?

ある意味ね。

ふぅん……。

そういうあなたはどうなの?

べっつにー。去年と同じって感じかなー。
……んー……そうね、それなりに積極的な学園祭だったから、そういう意味ではちょっと感慨深いかもね。

……。

こーんな自分でも、蓉子や江利子と一緒に、なにかを成し遂げられるものなのね。

……江利子は?

さー? 令や由乃ちゃんと一緒じゃない?
あんがいあそこでみんなと踊っていたりして。

綺麗よね、燃えるところって。

そう?

ええ。みんなで形作ったものが、その役目を終えて。

……そういう意味なら、綺麗よね。
明日からまたフツーの日常かぁ。

ええ。そうね。

……。
あんまりしんみりしすぎてると、襲っちゃうぞ?

やめて。

あら、即答。

……昨日ね。

ぁん?

昨日の柏木さんとの一件ね。

……ギンナン王子が何?

その王子様じゃなくって、祥子……。

……。

……と、祐巳ちゃん。

はい。

ちょっとね……。

……妬けた?

そういうのではないのだけど。

そんな感じに見えるけどなぁ。

私が分からなかった祥子の心を、あんなに的確に捉えている、とはね。

やっぱ、妬いているんじゃん?

そんなんじゃないから。

はいはい。
……でもまぁ、私もちょっとびっくりしった。

聖?

ただの熱烈な祥子ファンなだけって思ってたのに、あそこまでっやっちゃうなんてね。

あなたが最初に太鼓判を押したじゃないの。

そうだけど。良いほうに転がれば……ってだけのことで、あそこまではまったく期待してなかったのよ。

……。

すごいね。……普通の女の子なのにさ。
……いや、普通の女の子だから、できたのかな?

そうかもしれないわね。

だからさ……

私……

――うん?

あの子、祐巳ちゃんが祥子の妹になってほしいかもしれない。

おや。妬いているのにそう思うんだ。

妬いてはいないわよ。ただ、ちょっとこのあたりがスースーする感じなだけ。

それを……

でも、これは乗り越えていかないといけないことだから。
そうやってお姉さまやその前の方々も……。

はは。相変わらず教条的な考えですこと。
さすが紅薔薇ね。

おかしい?

いんや。「らしいな」って、思っただけ。

……。

……私もそう思っていたから。

? 何が?

私も、祐巳ちゃんが祥子の妹になってくれたら……なんて……ね。

……そう。

うん、そう。
……蓉子とおんなじでちょっと嬉しい。

そ。

あらら。つれないお返事。

上っ面な感じがするのだもの。

……照れているんで御座いますよ。

あらそう。

ちぇー。
……ねぇ蓉子。

なに?

踊らない?

え?

せっかくだから。

……。

『王様』と……

私はいじわるな『継母』なのよ?

いいじゃない。男役と女役で、さらに父役と母役だもの。

まったくのこじつけよね?

まぁ、この際かたいことは言いっこなしで。
……ほら、音楽も鳴ってるし。
私は今、ものすごく蓉子と踊りたい。

……承知しました、王様。

ではマダム、お手を……。

ふふ……。


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 ただ一言。 初代さま万歳!(何?
2021/06/30(Wed) 00:23 No.12
『艦これ』駄文。 日向と長門。【再掲 160208】
 『艦これ』駄文。 日向と長門。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

今日の教練はこれだ。


……教練……。


うむ。


………。


不満がありそうな顔だな。


そういうわけではないが……。


「が」と言葉をひっくり返すということは、やはり不満があるのだろう?


……不満……ではない。


では何だ?


………。


ん?


……言葉を探している。


そうか。
……ま、やっとのことで実技と思ってたんだろ?
だが、これも実技のうちだ。


……艦娘の実技に、鍬や鋤を使う理由が分からん。


ま、そうだろうな。
だが、ここでの生活に早く慣れてもらわんとな。
それに


うん?


畑仕事は、我々が生活する上に必要なのもあるが、その実、強靱な足腰を作るいい手段だ。


………。


眉唾といいたい顔だな。


眉唾とは思わないが、にわかには信じがたい。
よもや、詭弁を弄しているのではなかろうな。


……まったく。提督はなぜお前を成艦になるまでドックに入れといたのかな。
下手に小賢しくて、扱いづらいぞ。


そんなこと、私に訊かないでくれ。


うむ。それもそうだな。
どのみち、お前がどうのこうのあれやこれやと言ったところで、この芋を今日明日中に植えてしまわにゃならん。
提督は四日前から本部に行って不在だし、主席秘書艦と次席秘書艦も同行して留守だ。
さらに言えば……


主だった者は遠征と訓練で出払ってる。


そのとおりだ。
有り体に言えば……


赤城と我々と修復中の艦娘以外、この基地にいない。


そのとおりだ。
つまりは……


私たち二人でこの芋を、植えないといけない。


うむ。そうなるな。


赤城は出てこないのか。


お前は、この種芋が、赤城の腹の中に入っていく様を見たいか?


……それは……嫌かもな。


つまりはそういうことだ。
それに彼女は、事務関係を片付けてもらわないといけないからな。
あれは私には無理な仕事だ。


なぜ?


ここが、壊れてるから。


………。


そう絶句することもない。
まずは慣れだ。
この基地で長生きするには、それがいちばんだ。
なにせ提督がアレだからな。


………なるほど。


では、始めようか。


うむ……。


まずはじめに、ここからあすこまでの範囲を耕してしまおう。
なあに、我々戦艦クラスがふたりもいれば、すぐに終わるさ。


そうでありたいかな。
……というか、耕耘機を使えば早いのでは?


残念ながら、耕耘機は今修理の部品待ちだ。
たぶん、提督たちが持って帰ってきてくれるだろう。


……誰が壊したのか、訊いてもいいか?


構わんぞ。
目の前にいるヤツだ。


……そうかなと思ったら、マジでそうだったか。


どのみち、ああいう機械は、非力な人間が使うものだよ。
我々なら、自前の体を使った方が早い。
まぁとりあえず、好きに耕してみろ。マズければ指導するから。


うむ。


……あ、硬い土や石を噛んだ場合は、無理をせずゆっくり引き抜け。じゃないと……


もっと早くに言ってくれ。


そのようだな。
農具には一応上限本数があるから、お手柔らかにな。


わかった。


しかし


なんだ?


初っぱなでその鉄製の柄を九〇度に曲げたヤツは初めてだな。


……それはどうも。


さすがはビックセブンというところかな。


それ、ゼンゼン褒め言葉になってないから。


大丈夫だ、問題ない。


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 『書架』に置いてある、『風よ吹け』(だったっけ?←)の、ヒナセたちが鹿屋に行ってる間の、レベルがヒトケタ(お子さま)長門とその世話をする日向のお話。
 今、コソコソとこの日向がヒナセ基地に来た時のお話を書いてますが、「ここが壊れている」とご本人がおっしゃってるように、この日向さん壊れてます(いろんな意味で。
 壊れているので海域に出ることなく、基地で大工をしたり畑を耕したり、『特別な瑞雲(という名の「てんぷくまる」)』を作ったりしてます。
 ヒナセの専任秘書艦のひとり。
 ……頭のネジが微妙に飛んでるっぽいのは、壊れていることが原因なのかどうかは、不明です。まぁ仕様なんだろうなw
2021/06/26(Sat) 01:11 No.11
【艦これ駄文・再掲】日向とカワチ【160413】
 こういう組み合わせもなかなか(w。

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おつかれ。精が出るね。
どうだい、一服しないか?


……。


なに?


……いや、めずらしい人が来たなと。


そうかい? ヒナセ司令が今日は多忙でねぇ。
はい、これ。魔法瓶で悪いのだけどね。


いや……かたじけない。


こう暑い日はついつい冷たいものが飲みたくなるが、大いに体を動かして汗をたくさん
かいた時は、熱いもののほうが実際、体が疲れない。
ヒナセからの受け売りなんだけどね。


そうだな……ん?……。


なんだい?


……よく、知っていたな。


もちろん。
基地にいるお嬢さんがたの好みくらいはね。


提督は……たぶん知らないな。


ははは、だろうね。
だけど、そこは勘弁してやってくれよ。
彼女はそういうところ、とても鈍感な人だから。


それは、否定しない。


はははは。


あなたは、不思議な人だな。ヒナセ提督とまた違って。


それは褒め言葉かな?


……好きにとるといい。


では、都合の良いようにとらえようか。


……美味い。


それはよかった。


どこで、気がついたか、訊いていいか。


君が自分用に淹れるとき、かならずそれを淹れているだろ。


よく見ている。


私にとってお嬢さんがたの動向は、関心事の高位にあるというだけだよ。


ふむ。


同型の艦娘でも、個々の嗜好は微妙に違うからね。


………。


以前、私の秘書艦をしていた日向は、コーヒーしか飲まなかった。
紅茶は苦手だと言ってね。ましてやハーブティーは邪道だと。


なるほどな。


君はハーブティー派だね。レモングラスなんかが特に好きだ。


私のキャラじゃないがな。


そんなことはない。


……ヒナセ提督が言ってた通りだな。


ほう? なんと?


『タラシ』だと。


はははは、確かに。反論の余地はない。


………。
カワチ提督。


なんだい?


女を抱きたがる女というのは、なんなのだろう?


ん?


うーん……失礼を承知で、もっと直截に言おう。
女を抱いていて、楽しいのか? 意味はあるのか?


………。


私たちは、人間に奉仕するようプログラムされている。
求められれば応じる。どんなことでもな。
男の提督の多くは私たちを抱きたがるが、稀に抱かれたがるヤツもいる。これらに応じることは可能だ。造作もない。


ふむ。


女の提督から求められて、抱くこともある。これも理解できる。
すべてが提督たちの欲求を満たすための行為だ。ここに、私たちの感情はない。


そうだね。


だがまれに、私たちを抱きたがる女の提督がいる。
あなたもそうだ。
その気持ちが、わからない。


………。


私たちがああいう行為の際に人間に見せる反応は、どれだけ乱れていようが、それは単にプログラムされた反応にすぎない。
そもそも男が多い組織の中で作られた私たちだ。男に都合の良いようにプログラムされていると言っても過言じゃないだろう。だから、プログラムされた反応であっても、男の提督ならそれなりに満足できるのかもしれない。そういうところを、数え切れないくらい見てきたからな。
だが、女の提督はどうなんだ? 相手がそれで、楽しいと思っているのか?


さぁ、どうだろうね。……本音をいえば、少なくとも私は楽しくないな。


ふむ。そうだろうな。


ところで君が、そんなことを言うということは、求められて女性の提督を抱く際に、楽しいと思ったことがないからか。


ないな。相手の望んだことをやっている。それだけだ。


なるほど。


あなた自身、今「楽しくない」と言った。
だったらなぜ、あなたは私たちを惑わすようなことを言う?
プログラムされた反応を見て楽しくないと言うのに、なぜ、あなたは艦娘と性交をする?


……ふっ……はははは……。


………。


ふふ……失礼。
さて、さっきの質問の回答だが、私は、君らと性交をしている気持ちはない。
一切ね。


………。


君の言うとおり、ベッドの中での君らの反応はプログラムされたものだ。だが、私はそんなものに興味はない。


では、な――


(にやり、と口をゆがめて笑い)プログラムを超えた先に出てくるものが、楽しいんじゃないか。


………。


プログラムではなく乱れていく君たちを見るのが、なによりも至上の喜びでね。
ふふふふ……。


……なるほど。


………。


なんだ?


うん、ヒナセが言うとおりだなって。


………。


君は実に面白い。


………。


そんな不機嫌な顔をしないでくれるかい。これでも心から褒めているんだ。


褒められているようには聞こえないな。


そうかい?


今の流れで、褒められていると解釈するには、かなり苦しいぞ。


ま、そうだろうね。
だが、安心したまえ。残念なことに、君は私の守備範囲外だ。


ヒナセ提督の専属艦だからな。


それもあるが、そうじゃない。
今、私にはお目当ての子がいてね。目下、その子にお熱をあげているところなんだ。


ああ、妙高か。


ご名答。よく見てるねぇ。


自分の専属艦だろう? だったら命じれば、何でもしてくれるだろうに。


いやぁ、それがなかなか。


そこもあなたの不思議なところだな。
ほかの艦娘たちを平気でナンパするクセに、妙高とその妹たちは腫れ物に触るように接しているように見える。


そこまでチヤホヤはしてないよ。
那智と足柄は飲み仲間でね。


あんがい、外堀を埋めるタイプなんだな。


そりゃそうさ。彼女のことを、愛しているからね。


ヒナセ提督への愛とは違う愛だな。


ふふふ……。


にしても、よくわからん。


妙高さんはね、私にとって、大切な大切なガラス玉なのさ。波打ち際で拾った、ね。


ふむ?


だから、その妹たちも、大事にする。
本当に大事なものは、私は、そういう対照ではない、ということだよ。
……今のところはね。


今のところ……ね。


ああ。今のところは……だね。


なるほど。


納得してくれたかい?


納得にはほど遠いが、それなりの回答はしていただいた……というところかな。


ふむ。それでいいよ。


……カワチ提督。


ん?


お茶、ごちそうさまでした。


いえいえ、どういたしまして。


………。
最後にひとつだけいいか?


どうぞ、なんなりと。


“彼女”を大事に思っているのはよくわかったが、大事にしすぎても、相手にはその思いは伝わらないかもな。なにせ、主席秘書艦の思いにすら気がつかないほど鈍感な人だからな。


それもまた、よし……というところなんだよ、日向。


………。
やはり私には、あなたは理解しがたい人間だ、ということだけは理解した。


うん、ありがとう。


褒めてはいない。


そう? ま、良いじゃないか。
私がどんな解釈をしようとも。


……ふむ(肩をすくめる)

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 日向はヒナセの専属艦。秘書業務はほとんどせず(というかできないが真実)、大規模家庭菜園の管理とか基地設備のお工作とか修復とかを中心にやっている。ついでに艦娘寮の寮長も(寮母は鳳翔さん。
 カワチに対しては、人間で主人(ヒナセ)の部下だから、それなりに尊重してるけど、それ以上もそれ以下もないというスタンスで。
 表情もあまり変化しないし、声を上げて笑うこともほとんどないけど、何も考えていないわけでもない。ただ、何かが足りない。決定的に足りない。それがネックと言えばネックです。
2021/06/24(Thu) 23:30 No.10
【再掲】こころ、まにまに【180522】
めずらしいこともあるもんだと思ったら…。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

てーとくー。
……ちょっといいすか?


ん? なに?


えーっと……いやーあ。


……ふむ。
鳳翔さん、デン。ちょっと外していただけますか?


了解いたしました。
はいなのです。


………。


………。


……で、なに? 隼鷹。
君が改まって私に話をしにくるなんて、めずらしいね。
いつも一線引いて、必要以上には近づいてこないのに。


……てーとくの、そういう歯に衣着せないところ、アタシゃー嫌いじゃないですっけどね。


………。


ひひひ。


………。


………。


悪いけど、お茶、淹れてくれないかな。


……へ?


めずらしくさ、鳳翔さんがお茶淹れずに出て行っちゃったからね。


ああ……へいへい。
じゃ、淹れますかねぇ。鳳翔さんみたく美味しかぁねーっすよ?


期待していないからいいよ。


あ。ひどい。


お茶淹れてる間に、喋りたくなるでしょ。だから。


……へへ……お見通しか。


(肩をすくめる)


(茶棚のところへ行き)……えーっと……お茶っ葉、なんでもいいですかー?


分かるようだったら、玄米茶にして。それなら誰が淹れても、よほどじゃない限り不味くならないから。


……ち……へぇい。


お茶っ葉は心持ち少なめにね。失敗するときって、たいがいお茶っ葉入れすぎてんだよね、みんな。……もちろん私もね。


……なるほど。(ヒナセに)りょーかいしましたー。


湯飲みは適当でいいよ。


いやいやーてーとくのお湯飲みくらい知ってまさぁね。


そ。


千鳥のついた緑のヤツでしょ。


うん。それ。
……よくできました。


聞こえてますよー。


艦娘だからね。


……聞こえるように言ったんかい……。


んにゃ。そういうわけでもない。


……ち。


(ふ、とかすかに鼻で笑い、読んでいた書類をまとめると、トレーの上にそろえて置く。
 胸ポケットから小さな手帳を取り出してぱらぱらとページをめくる)


お待たせしましたーぁ。不味くても文句言わないでくださいよ。


ありがとう(出された湯飲みを取って)君もどうぞ? (茶を飲む)


あ。はいありがとうございます(一礼して飲み始める)


……で、どっちの話? カワチ? それとも武蔵?


ぶっ……。


ふむ。
予想は合ってたか。


……よくお分かりで。


まぁね。君がわざわざ来て、切り出しにくい話の関係者って、カワチか武蔵かしか思いつかない。


あ、そすか。


……で、どっちなの?


うーん……どっちでもないと言えばどっちでもないし、どっちもといえばどっちも……って感じですかねぇ。


……んー?


ヒナセ提督に訊く話でもない気もするし、じゃ、ほかの誰かに訊いて分かる話でもなさそうだし。


んー……煮え切らないなぁ。
そんなに話しづらいなら単語を並べるだけでもいいよ。


あー……いえいえ。
そーねぇ……なんつーかですねぇ。まぁ、その……武蔵のことなんすけど。


ふむ。武蔵ね……あ、メモ取っていい?


あーはいはいお好きにどうぞ。


(鉛筆を取り上げる)いつでもどうぞ。


いやーねぇ、武蔵がどうこうって話じゃなくて、アタシ自身のことなんすけどねぇ……。


ん? 君自身?


ええ。なんつーかその……武蔵……あーもう面倒だなー。ちびでいいや。
ちびって、アタシから見て子供なんすよ。


……(話の真意がよく掴めなかった)……そりゃ君は、私とほぼ同い年でしょ。生まれてやっと二年になろうかっていう武蔵なんて、君から見れば赤子同然でしょ?


あ、いやそうじゃなくて。アタシはあいつの養育艦じゃないですか。つまりは育ての親みたいなモンでしょ。だから、アイツはアタシの子供なんすよ。


ああ、そういうことか。……で?


そんなちびとね、ああいうことになってからこっち、なんつーかさー、こう……このあたりにね……モヤモヤ~~っとさ。


「もやもや~~っとなんか」?


そそ。こうね……モヤモヤ~~~って。
一緒にいるときにはあんまし感じないってぇか……いや、モヤモヤ~~ってしてるときもあるんですけど。どっちかってぇと、アイツがいない時ちゅーか……そーねぇ……遠征に出してる時ちゅーかですね……。


ああ、基地にいない時ね。心配性だね。
でも武蔵だけ出す時ってごくごく近距離遠征の護衛で出すだけだから、いないと言っても長くて丸一日……実質二日間くらいだし、出てくる敵もそんなに強くないじゃない。それでも?


(情けない顔で肯き)
こういうの、初めてで、なーんか気持ち悪いっていうか……。
この「なんか」の正体がわかんないんすよ。


……それは……武蔵のことが『好き』なのでは?


んんんー~~~~………そーゆーのともちょーっと違う気がするんですよねぇ。
好きっちゅーのはさ、妙高型の次女と三女みたいになるんじゃないんすか?


……ははぁ……なるほど。


わかりますんで?


や。
君が相談相手を完璧に間違っていることだけが分かった。


……あ~~~~……やっぱり……。


うん。ごめん。
その手の話、私はゼンッゼン分かんない。
……ていうかさ、なんでカワチに相談しないの?
こいうのは、彼女の方が断然詳しいよ。たぶん。


……いやーぁねぇ……話をすれば、きっと親身になってくれそうですし、それなりに有益な話もしてくれそうですけど、なーんかねぇ……こういう方面では特に胡散臭い感じがするんすよねぇ、ウチの旦那。


特にどころか、存在自体がかなり胡散臭い人だけどねぇレーコさんは。
……というか、面白いね。


はい?


君、『ウチの旦那』って言うよね。カワチのこと。


そりゃー、ご主人ですし?
……厳密には違いますけども。


そうね。君はあくまでもこの基地の専任艦だ。


カワチ提督に預けた人はどなたでしたっけ?


私だね。


仮とはいえ仕えている提督ですからね。


誰がその言葉を教えたの?


さてねぇ。忘れちまいましたよ。
ずーっと男の提督にばーっか仕えてたし。だからじゃないすか?
そういや、江戸っ子家系だっていう提督がいたような……。


ふむ。そういうものかな。
それとも長く生きてるからか。なんにせよ、面白い(メモを取る)


(肩をすくめる)


モヤモヤの元はたぶん『好き』って感情と「でもアイツは自分の子供みたいなものだし」ってのがせめぎ合ってるんだと思うな。
それも面白い。


面白がらないでくれます?


いやぁ。
君らの感情や行動は、元はプログラムだ。知ってると思うしさんざん言われて来たろうから耳にタコができてるかもしれないけどね。はっきり言って、君らは歴とした工業製品で、建造直後の状態は、同じ名前の艦(ふね)なら寸分の違いも無い状態なんだ。
だけどね、長く稼動している艦……それも、数多くの提督を渡り歩いている君のような艦は、初期化を何度も受けているにも関わらず、人間に近い感情を持ったり行動をしたりするようになる。
記録としては知っていたけど、実際自分の目の前でこうして実例を見ることになるとはね。


やだなーこの人ってば。ゼンッゼン悪びれずにイヤなことガッツリ言いますよねぇ。


うん。そういう物言いとかもね、他の子はあまりしないでしょ(にっこり笑う)


~~~―――………(呆れて物が言えない)


鳳翔さんもそこそこ長く稼動している艦ってことになるんだけど、提督があまり変わらなかったせいか、君ほどは感情豊かではないんだよね。沈んでいた期間が長かったせいもあるかもだけどね。


てーとくはさぁー、軍人辞めて学者かなんかになったほうがいいんじゃないすか?
そもそも――


軍人にはほぼ見えない……でしょ。
知ってる。それこそ学生時代……飛行学生の頃からずーっと言われ続けている言葉だもん。


……そりゃ失礼。


そういや君、私と初めて会った時、主計科の士官って間違ったよね。


……まだ憶えてんのかよ……。


あれ、そこそこ傷ついたんだもん(やや憮然と言う)


すんませんでした。


いえいえどう致しまして。


(二人で同時にお茶をずずっと飲む)


……でだ。
君はこの先どうしたいの?


……どう……って。
いきなり話を戻しましたね?


そろそろ締めないと、おやつの時間が近いしね。


あ…そ。


……子供みたいなモノといっても、実際の子供じゃないし、君らは厳密に生物ってわけでもないからさ。
生物である人間でさえも好きって感情は、行きすぎると親とか兄弟とかって枠を簡単に超えちゃうって話だしね。


そなんすか?


うん。
どこまでのレベルかまでは分かんないけど、姫提督……アサカ次長なんて、実のお兄さんが好きすぎて、未だに他の誰かと結婚する気配もないからね。


……は? ……って、それ……


うん。私の死んだ旦那ね。
ヒナセ中佐。


デスヨネ。


彼女の立場だと、結婚しないわけにもいかないんじゃないかなぁって思うんだけど、こればかりはねぇ。
そのうち、どこか遠縁あたりから養子でももらうかもね。浅香家を絶やすわけにはいかないだろうからさ。


はぁ。


あんな、パーフェクト人間っぽいヒロミさんですら「好き」って感情にはウソ付けないんだからさ、君らだってそのあたり、思ったままでいいんじゃないかなぁ……とは思う。


ヒナセ提督はどうなんす?


私? さっきも言ったけど、私はそういうの、ホンッとにゼンッゼン分かんないの。
ヒナセ教官が私を好いていてくれたのは分かってるんだけど、はじめは正直、迷惑なだけだったしね。


はぁ…。


だってさー、士官候補生なんてクッソ忙しくて、私みたいに心(しん)からの志願じゃなくて、もう成り行き上しょうがなく軍に残るためだけに進んだだけの人間はねぇ、付いて行くだけで他に気を逸らす余裕なんてなかったしね。


……同期のカワチ提督に聞いた話じゃ、首位争いしてたって話じゃないすか。
飛行学はどうやっても勝てなかったって、言ってましたよー。


(肩をすくめる)得意分野でぶっ飛ばして少しでも首位に近づいておかないとさ、後ろはどんどん追い上げてくるからね。


なるほど。
ひとつお訊きしますけど、なんでそんな、好きでもなかった人と結婚したんです?


……差し伸べられた手に縋っちゃったんだな。
何もかもがどん底だった時、手を差し伸べてくれたのが彼だったの。
そして、私が言った無理難題を実行してくれたから。
引っ込みが付かなくなっちゃったんだなー。
………。
私はねぇ、心底誰かを好きになったことがないんだ。……たぶん。


たぶん。


うん。そんな感情を経験しないまま、こんな歳になってしまった。
だから、君たち艦娘が誰か……同じ艦娘だろうが、人間だろうが……『他者を好きになる』ということに、とても興味がある。


だから今、メモ取ってるワケですが(ちょっとうんざりした顔で)


うん、そう(メモを取りつつニコ、と笑う)


うーん……。


ゴメンねぇ、ホントにゼンゼン役に立たなくて。


いえいえー。逆に為になりましたや。


そ?


ええ。こういうことは難しく考えちゃダメなんだなぁ、ってくらいのことですけどね。
どうせ明日をも知れない身なんだし、自分の感情に正直で良いんだなって。幸い、アイツもアタシのこと好いてくれてるしね。
………。
なんつーかねぇ……アタシゃ、アイツとのことになると、ちょーっと自分が見えなくなる部分がありますねぇ。
もーっとフラットでラフに考えて良いんだな……ってこと、今思いました。


それは良かった。
私は面白いサンプルが採れて満足です。
ホントに、長く稼動している君らはどんどんヒトに近くなる。


あまり良い傾向じゃない?


さてね。……軍としてはそうかもしれない。
でも、私個人としては、良い傾向だとは言わないけど、悪いこととまでは思わない、てトコだね。
(腕時計を見て)タイムリミット。おやつの時間だ(メモ帳を閉じてデスクから立ち上がる)


……ねぇ提督。


ん?


提督は、何を見ているんです?


ん?


未来に。


(微かに笑い)……さて、何だろうね。


--------------------------------------------------------------------------------

 こういうグダっとした内容をスッと描くことができるのは、二次創作の醍醐味かな…とか。
2021/06/23(Wed) 21:30 No.9
【再掲】ニラ【100110】
 そんなワケで、『あの桜並木の下で』時間外。『真昼の星』の3ヶ月くらい後のお話。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

○岩下家本宅・縁側

       晩秋だがぽかぽか陽気。空気が乾燥しているので、陽の当たるところはやや暑く、
       日陰や家の中は少々肌寒い。
       昼前、たぶん10時ちょっと過ぎ。子供たちは学校へ行って自宅にはいない。
       岩下貴子が縁側で新聞紙を広げて、なにやら作業中。
       そこへ兄嫁の柳原秋子(しゅうこ)が来る。スカートに素足、そしてすっぴん。
       どうやら公休日らしい。



 秋子   おはよう、貴ちゃん。
 貴子   (チラリと秋子を見て、すぐに新聞の上に視線を落とす)おはよう。
      よく眠れましたか?
 秋子   ええ、おかげさまで。……大変じゃなかった? ご飯の用意。
 貴子   ……ぼちぼち。慣れてきました。子供たちも手伝ってくれるしね。
      タカもトモも茶碗並べたりお茶入れたり。ハルカはつまみ食いしてくれたり(喉の奥でクツクツと笑う)
 秋子   ……誰に似たのかしら、春花は(ため息)
 貴子   みんなで甘やかしてるからね。
 秋子   気をつけてはいるんだけど。
 貴子   ……ま、ブラザーズがちびの頃よかちょっとマシだよ。
      あっちとこっちで同じイタズラを同時にやったりしないから。あれは困った。
      双子って不思議なイキモノだ。三つ子以上だともうどんなことをするか想像がつかない。
 秋子   (貴子の手元をのぞき込んで)……ニラ?
 貴子   うん、そう。やっと種が取れたよ。
 秋子   そうね。ずいぶんかかったわね。
 貴子   うん……5年……かな。
 秋子   初めての年は、食べ尽くしちゃって花も咲かなかったしね。
 貴子   次の年、チヨ子さんに苗もらいに行くの、ちょっと恥ずかしかったよ。
 秋子   あら? あなたでも恥ずかしいって思うことがあるのねぇ(クスクス笑う)
 貴子   そら、もちろんありますとも。
      よりにもよって、あまりの美味しさに食べ尽くして種取れなかったとか、
      恥ずかしすぎてなんて言おうかって、愛媛に行くまでずーっと考えてたわよ。
 秋子   そう言いながら、結局正直に話をしたんでしょ?
 貴子   ……(憮然として)
      チヨ子さん、どストライクで当てるんだもん。
      「ほなこて、美味しかけん気ぃつけぇよーて言うてんよー」……だって。
 秋子   お祖母ちゃん、自分が作った野菜には絶大なる自信があったからね。
 貴子   根拠のある自信だから、いいんじゃない?
 秋子   まぁね。
      ……母の実家ってだけじゃなく、好きなのよ。
 貴子   んー?
 秋子   ……愛媛の家。
 貴子   ……アタシもだよ。
 秋子   うん。
 貴子   結局、アンタが相続したんでしょ? 家も土地も、何もかも。
 秋子   ええ。法定相続人が、私しかいないもの。
 貴子   ……(手元の作業を黙々と続けている。片腕では遅々として進まないようではあるが)
 秋子   村に寄付しても良かったんだけど、避暑地も欲しいし、あなたのお気に入りだし、
      ……なにより私があのまま置いておきたくて。
      アトリエにしたいなら、していいわよ? 村の人たちとも仲良くなってるんでしょう?
 貴子   ……さて、どうだかね。
 秋子   もうっ(苦笑する)
      ……お手伝い、させてくれる?
 貴子   ……。
 秋子   ダメ?
 貴子   ……好きにすると良い。
      そろそろ体を支えるのがツラい……。
 秋子   支えてあげましょうか?
 貴子   ……んにゃ。
      それよか、ニラ……種に混じっちゃってる種殻を退けてて欲しいんだけど。
      ピンセット。もう一本、そこにあるし。
 秋子   はいはい……。
      ……ねぇ、貴ちゃん。
 貴子   んー?
 秋子   これ、ピンセットより、筆で払ったほうが、効率よくない?
 貴子   ……。
 秋子   ……。
 貴子   ……。
 秋子   ……。
 貴子   ……ダナ。
 秋子   ……ごめんなさい……(笑いをこらえてる)
 貴子   (憮然と立ち上がる)……持ってくる。
      それまで、ピンセットでやっててよ。
 秋子   はいはい(苦笑)



       貴子、のしのしと自分の自室兼アトリエである“あずまや”に歩いて行く。
       恥ずかしさをこらえてか、はたまた機嫌が悪くなってか、足音がドシドシ聞こえる。



 秋子   (貴子を見送って、肩を竦める)……すごい足音(苦笑)



       貴子は、普段は足音とほとんど立てずに歩く。
       岩下家本宅は素敵に古い家(昭和初期築)なので、不用意に歩くとあちこち
       ギシギシ音が立ったりする。
       しかし貴子だけは足音をほとんど立てずに歩く。家の者全員が一度ならず真似をして
       みてるらしいが、貴子ほど音を立てずに歩ける者は、現時点ではいない。
       クスクスと笑いながら、秋子はピンセットを取って広げられた新聞紙の上に
       散らばっているニラの種の選別を始める。
       左手を床に付き、右手にピンセット。
       時折指先で、枯れた種殻や茎を弾いて、必要なものとそうでないものに分けていく。
       あらかじめ貴子によってだいたい分けられていたそれは、徐々に純度を増して
       黒い種のみと枯れ色の草のみの明確なコントラストを作り上げていく。



 秋子   (種と種殻を選り分けながら)……あら……?
      ふふ……今で気がつかなかったわ……。



       無意識のうちに鼻歌が漏れ始める秋子。
       そこへ、筆2本と蓋付きのガラス瓶を入れた篩(ふるい)を持った貴子が戻ってくる。
       すでに足音はしていない。機嫌は直っているようだ。



 貴子   ……ん(元いた場所にストンと座り、篩を新聞紙の横に置く)
 秋子   (その気配に顔を上げ)……おかえりなさい。
 貴子   (ほぼ綺麗に分けられている新聞紙の上を見て)……筆、必要なかったわね。
 秋子   (手を止めて上体を起こす)そんなことないわよ。



       秋子、篩の中から筆を取り、分けた種の山を崩して、取り損ねた小さな枯れ草等を
       筆で器用に掃き出す。
 
 
 
 秋子   ……ね?
 貴子   ……じゃ、アタシはこっちをさせてもらいますかね。



       貴子、篩の中から筆と瓶を出し、選り分けられた種を無造作にすくい取ると、篩に入れる。
       篩を軽く揺すってさらに細かなゴミを落としていく。
       篩の中には、ニラの種と、篩の目に引っかかって落ちなかった針のような草殻が少々。
       貴子が篩う手を止めて、それらを取り除くために、篩を新聞紙の上に置こうとしたその時、
       横から秋子が持つピンセットが伸びて来て、草殻をちょいちょい、と取り除き始める。
       貴子は微動だにせずその様子を見る。
       貴子と秋子の距離が、とても近い。



 秋子   ……ねぇ。
 貴子   ……ん。
 秋子   ニラって、種の状態でもニラの匂いがするのね。
 貴子   するね。
 秋子   面白い。
 貴子   このニラは、細ニラだから、余計に香りが強い。……だからじゃない?
 秋子   ……そうかもね。でも……面白いわ。
 貴子   ……だね。



       しばしの間。



 秋子   はい、これで良いかしら?
 貴子   (篩を揺すってみて、もう取り除かねばならないゴミがないかを見る)
      いんじゃない? 瓶の蓋、取ってくれる?
 秋子   はいはい(笑いながら、瓶を取り、蓋を開けてやる)



       貴子、新聞紙の一画を大きく四角に切り取ると、それを三角形に1度折り、
       瓶の口に斜めに差し込む。丸くなるようにひらくと、簡単な漏斗ができた。
       そこに、静かに、篩の中の種を流し込む。
       サラサラと新聞紙の上を流れる、乾いた音が、ふたりの耳をくすぐる。



 秋子   相変わらず、器用ねぇ。
 貴子   ずいぶん不器用になりましたよ。
 秋子   でも、努力している。
 貴子   ……ふん……。
 秋子   (うふふと笑いながら)ごめんなさいね。
 貴子   ……ふん(別段、機嫌は悪くない模様)



       何度か同じ動作をくり返したのち、すべての種は瓶の中に収まった。
       黒い種が詰まったガラス瓶。それを貴子はつまみ上げて、自分の目の高さに持って行って
       軽く左右に振る。



 貴子   うむ(満足そう)
 秋子   たくさんできたわねぇ。
 貴子   うん。
 秋子   来年、畑に植えるの?
 貴子   そのつもり。ニラ専用の畝を作ってもいいね。
      雑草に埋もれやすいから、畝をマルチングしたほうがいいかも。
 秋子   あら、珍しく本格的ね。
 貴子   このニラだけは、できる限り残したいからね。美味しいし。
 秋子   ……なにより、チヨ子さんからもらったニラだし……ね?
 貴子   ……ふん……(そっぽを向く)
 秋子   ふふふ。



       ふたり、空を見上げる。薄く高い青空が広がっている。



 貴子   ……ウチで取れたニラ、チヨ子さんに食べてもらいたかったな。
 秋子   そうね。
 貴子   間に合わなくて、残念だ。
 秋子   ……来年、一周忌のときにでも、お供えしたら?
 貴子   ……そうか。
 秋子   そうよ。その種も、お供えする? そろそろ百箇日だし。
 貴子   ……ふむ。
 秋子   「それも良い」?
 貴子   ふむ。
 秋子   ふふふ……。
 貴子   ……。
      やなぎはらさん。
 秋子   ……なんですか? 貴子さん?
 貴子   お腹が空きました。
 秋子   (ぷ、と吹き出して)はいはい。
 貴子   玉子焼き、作ってよ。中がとろとろのヤツ。甘いヤツ。
 秋子   はいはい(立ち上がる)
      後片付け、よろしくね。
 貴子   もちろん。……自分で始めたことですから。
 秋子   岩下家の家訓ですからね。
 貴子   そのとおり。
 秋子   じゃ、作ってくるわ。……今日はお店、誰が来てるのかしら?
 貴子   ……柳原グループ総裁の手作り昼メシが賄いか……そらみんな喜んで涙流すな(シシシと笑う)
 秋子   止めてちょうだい。今日はお休みの日なんだから。
      トーテム主人……岩下友則さんの、奥さんなのよ。今日はね。
 貴子   はいはい、そうでしたねぇ。じゃ、お昼ゴハン、よろしく。
 秋子   了解しました。……貴ちゃんにはトクベツに、チヨ子さんの玉子焼きね。
 貴子   はい、よろしく。



       秋子、トーテムの店側に去る。たぶん人数の確認に行ったと思われる。
         ※トーテムでは、店員に対して、主に貴子が家に居れば賄いを作ってやっている。
          いない場合(出掛けてるとか失踪とかアトリエに籠もっているとか)
          はこの限りではないが、主人の友則が朝メシを大量に作るので、
          これが出されたり、近所の弁当屋から配達してもらったりする。
       貴子、種の入った瓶を縁側に置き、作業に使った物たちを片付け始める。

       利き腕を失って約1年、岳が亡くなり半年、秋子の祖母が亡くなって約3ヶ月。
       腕も猫も人も去り、時間は無情に流れていく。
       自分が望むと望まざると関係なく、いずれ今日は去り明日はやってくる。
       それでも、種は残り思いは残り、未来へと受け継がれていく。
       大事にしたければ。
       大事にしたければ……。



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ファイルに付いてる執筆開始日を見て「…え!? そんなに昔?」ってなりました。
…マジかなぁ??
2021/06/15(Tue) 00:29 No.8
【再掲】艦隊行進曲【190207】
 ひさびさにちょっとドタバタ的なモノを。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

○ヒナセ基地司令官室 夜
        コンコン、とノックの音に続いてドアの開く音。


どうぞー……て、なんだレーコさんか。


なんだはご挨拶だなぁ。


こんな夜更けになに?


大したことではないんだが、例の件、どうするんだい?


例の件……ああ、あれか。
……レーコさん、私の代理で出てよ。


そうはいかないだろ。
私にだって要請が来ている。


マジか。


仕方がないさ。姫提督(アサカのこと)の当番なんだから。
部下の提督という提督。近隣にいる連中は、みんな呼ばれているはずだよ。


……基地を留守にしたくないんだけどな。


ここは本部にいちばん近いと言っても過言じゃない程度には近隣地の後方基地だからね。
ああ、そうそう。佐世保組も呼ばれているらしい。


マジ? ……というか、その情報はどこから入ってきたの?


ん?
まぁ、同期関連の連絡網……とでも?


……誰かいたっけ? ヒロミさんの部下で同期って。


……ヒナセ、君、本気でそれ言ってるか?


うん。


……ホントに君は、同期関係への関心が薄いな。


すみませんね、人付き合い悪くて。


(肩をすくめる)
……それはともかくとして……だ。
式典行事への参加となると、アレがいるよな。
君、決めているか?


アレ?


艦隊曲。


へ? いるの?


いるとも。


あー……。


曲目を提出しないと音楽隊が困るし、君の艦隊だけ無音で長官の前を行進する気か?


……そう言うレーコさんは決めてんの?


もちろん。提督になった時に決めて、それをずっと使ってる。
もちろん式典くらいしか使わないから、数回くらいしか演奏したことはないが。


式典当番なんて、そうそう回ってくるもんじゃないからね。


そうだな。


……で、何?


ん?


曲。


ああ……『錨を上げて』だよ。 https://www.youtube.com/watch?v=YcXbZK_VB-U


あー……イヤになるほど似合いそうだね。


お褒めにあずかって光栄。


褒めてないし。


アメリカさんの公式行進曲だっけ。
アイオワとか旗艦にするとさらに板に付いた感じになりそう。
旗艦は誰?


今回は『那智』だね。


あらま、めずらしい。
妙高さんじゃないのか。


(にこ、と微笑む)


……なんかあったな。


……イヤ別に……。


なるほど。


……で、ヒナセ。
君は決めてあるのかい?


一応ね。
だって、艦隊指揮官になった時点でとりあえず申請出さないといけないじゃない。


ペナルティがあるわけじゃないから『保留』で申請してそのまま……って提督も多いけどね。


マジなの。アレ絶対出さないといけないと思ってた。


真面目な君らしい回答だね……で、何で申請しているんだい?


……『行進曲 軍艦』※いわゆる軍艦マーチ※ https://youtu.be/s6ZrQ73zxdw


……それまた、キミに似合わず勇猛な曲を選んだな。


……それしか知らなかったんです。


は?


私の音楽の成績、知ってるでしょ! もー!


音楽のみならず、芸術方面全般において素敵な成績だったのは知ってるよ(爽やかに笑う)


きー!


……ふむ。しかし悪くないかもな。
『軍艦』のあとに『錨を上げて』は、流れとして悪くない。


なんで私のあとにレーコさんなんだよ。
違うかも知れないでしょ。


通例でいくなら、同基地はまとめるからな。
だとすれば、立場上君が先になる。


階級一緒なのに!


階級は一緒でも、役職は君の方が上でしょ、課長。


ああそうですね、課長代理。


……こんなことなら、知ってる曲って理由で適当に決めるんじゃなかったなぁ。
どうせ演奏したりされたりなんてことないだろうって、嵩括ってた。


姫提督の下にいるのに、どうしてそう思うかな。


………。


しかしまぁ、今回は我々はさほど目立ちはしないだろうね。
なにせ彼も出るそうだから。


彼?


我が鹿屋第三部の名物男さ。


あー。オトマルさんか。


彼の艦隊はある意味壮観だからね。


だね。戦艦どころか空母も二隻しかいないのに、あれほど派手な艦隊は他に見たことない。


左様左様。
あの艦隊が平時にフルセットで見られるだけでも、僥倖と言うべきだろうな。


……そうだ。密閉容器《タッパー》持って行かないと。


いや……それは……。
話が違っているぞ、ヒナセ。


そのくらい楽しみがあっても良いと思う。


……子供じゃないんだから、駄々こねないでくれよ。


ぷぅ。



   ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

○鹿児島湾 鹿屋基地軍港内 式典当日
        鳳翔艦橋で、ヒナセが妖精さんを介してカワチ提督と喋っている。

(我々の出番が無事に終わって良かったですな)


……だから嫌だって言ってたのに……。


(いや、なかなか雄壮な艦隊行進で、我が三三六分基地の印象も深くなったでしょう)


だーかーらー目立つこと自体が嫌なんだって。


(それは仕方ありませんなぁ。第二艦隊とバランスを取るためには、武蔵くらいが旗艦じゃないと。もちろん鳳翔さんが旗艦でも、見劣りはしないどころかベテラン艦の偉容を十分見せつけることはできますけどね)


……いや。それはそれで困る。表向きは建造艦なんだし。


(そう言えば。ウチの第一艦隊を見て、旗艦は武蔵ではなく大和と勘違いした連中も少なからず居そうですな)


いやよく見なくても違うでしょ。


(大和型と『鳳翔』の組み合わせが、その勘違いを誘発する一種のフィルターみたいなものですからね)


……うむー。


(なんにせよ、これといった問題もなく我々の出番は終わりです。それだけでも重畳ですな)


そーだね。あとは誰が勘違いしようが妄想しようが、好きにすれば? って感じかな。


(姫提督直属の偉容も見せつけてやれたし、まぁ『良き哉』というところですな)


……そこはちょっと勘弁して欲しいところだったんだけどね。
とにかく私は目立ちたくない。


(時すでに遅しですよ)


……はぁ……


(そんな、盛大にため息吐かんで下さい……あ、そろそろ彼の出番だ。これで私たちのことは綺麗さっぱりみんなの脳内から消えますよ、きっと)


……そうであって欲し―――



        ヒナセが言い終わらないうちに次の艦隊曲のイントロが流れ始める。



(来ましたな)



        メインテーマの音量が大きくなり、
        小規模ではあるが、通常とはまったく異なる編成の艦隊が主会場に粛々と入ってくる。
        主隊が見え始めると、式典会場がざわつき始め、空気がどよめく。

        先頭(旗艦)は『天龍』、次に空母『飛鷹』その左右に『大井』と『北上』
        後方主隊に『間宮』と『伊良湖』がそれぞれ三隻複縦陣で。
        その左右に『黒潮』『夕立』
        後方に『ガンビア・ベイ』さらに後ろに『叢雲』
        そして殿は『龍田』

        演奏されている艦隊曲は『おもちゃの兵隊のマーチ』(某調味料メーカーがスポンサーの、料理番組のオープニング曲のアレ) https://youtu.be/SxLK0bcVEDw



やっぱお持ち帰り用の密閉容器を用意しなくちゃって気分になるよ。


(二大料理番組の片割れのテーマ曲ですからな)


まぁねぇ……。
というか、あのフレーズが聞こえると、そろそろお昼だなぁって思っちゃうよ。


(……もしかして、姫提督のオフィスで流していた……とか?)


いんや。明石の工房で時計代わりにテレビが付けてあってねぇ。
艦娘用の軍内放送枠だから、見られる番組は限定だし局もごたまぜなんだけど、あの番組だけは本放送とおなじスケジュールで十一時四十五分から始まるんだよね、なぜか。


(なるほど。それは罪作りな)



        カワチの苦笑が妖精さん越しにヒナセの耳に届く。
        ヒナセはちょっと肩をすくめて



あー……
オトマルさんの作ったオムレツ食べたい。あのほら……卵で焼き固めたみたいな。


(ヒナセ司令。あれはオムレツじゃなくてキッシュって言うんですよ)


……そなの?


(それ、イワヤ提督が聞いたら泣くから、リクエストの際は、まず私に言って下さい)


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 ちょっとグダグダっぽくなりましたが。
 …てかこれ、書き始めてすぐに気が付きました。
 「マンガのほうが、絶対におもしれえ」

 世の中には、マンガにしたほうがいい話、小説にしたほうがいい話……って確実にあります。

 こののち、ヒナセは艦隊曲を別のに変えたとかどうとか…ww
2021/05/24(Mon) 00:08 No.7
何もできないままに…
 時間だけが過ぎ去っていきます。

 リハビリを兼ねて、現在パートタイムで就労中。
 とは言いつつ、国を挙げての一大プロジェクトのある意味最前線。

 純粋に事務したり、みんなが使うExcelファイルを作ったり改造したり、PCのハードやソフトの設定したり、キャラデザしたり、ポスターを作ったり。

 今まで縁のなかった知らない世界で毎日が貴重な体験。
 ……やってることは、いつもの「何でも屋」なんですけども(w。

 少しだけ体力も戻ってきつつあるみたいです。


 まだ「何かできる」という状態ではありませんが、ゆっくり前に歩けたらいいな、と思っています。
2021/04/09(Fri) 03:13 No.6
【再掲】ヴァレンタイン2016
艦娘ヴァレンタインボイスのネタバレを含んでますので、
嫌な人はリターンバック、よろしくなのです。

ヴァレンタインいろいろ
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


鳳翔   チョコレート、どうでしたか?

ヒナセ  ありがとうございます、すごく甘かったです。
 
鳳翔   きな粉と和三盆を使って和風に……

ヒナセ  あ、こっちのはきな粉とチョコレートの味がしてましたね。
     なるほど。さすが鳳翔さんですねぇ。

鳳翔   あ……そうですか。

日向   (司令官室の前を通りがかって、偶然見た)
     ……やれやれ……。


      ◇◆◇◆◇◆◇


電    あの……司令官さん。いなづまの本気のチョコ、差し上げるのです!
     こちらなのです。

ヒナセ  ありがとう。可愛いラッピングだねぇ。
     自分でやったの?

電    はいなのです。間宮さんに教えていただいたのです。
     みんなでいろいろ包んだのです。

ヒナセ  ……みんな……。


      ◇◆◇◆◇◆◇


日向   そうか、バレンタインというヤツだな。

ヒナセ  あん?

日向   しかたがない。『特別な瑞雲』をやろう。ホラ。

ヒナセ  ……今年のはちゃんとチョコなんだ。

日向   なんだ? 気に入らないのか?
     じゃ、去年の『特別な瑞雲』を返してくれ。

ヒナセ  ちょっと待て。なんでそうなるの。

日向   なぁに、バラせばすぐに資材になる。基地が潤うのは良いことだ。

ヒナセ  やだよ! 絶対に返さないからねっ!!

 
      ◇◆◇◆◇◆◇


響    司令官。ロシア風チョコ、あげる。

ヒナセ  (開けて)……どこがロシア風なの?

響    それは……内緒だ。

ヒナセ  ……そう。ありがとう。
     (電のチョコと変わらないんだけど、これ、間宮さん製だよねぇ…?)
 

      ◇◆◇◆◇◆◇


雷    じゃーん! 雷の手作りチョコを用意したわ!

ヒナセ  ……それはどうも。

雷    司令官、よーく味わって食べるのよ。はい!

ヒナセ  ありがとうございます。
     (やっぱり電たちのチョコと同じに見えるんだけどなぁ……)

 
      ◇◆◇◆◇◆◇


暁    し、司令官。チョコを作ったわ。……一人前のレディとして……その……

ヒナセ  はい。ありがとうございます。
     味わって頂くね。

暁    もう! 頭をなでなでしないでちょうだい!!

ヒナセ  あ、ゴメン。ついいつものクセで……。

暁    もー!!


      ◇◆◇◆◇◆◇


むさ坊  提督よ、チョコレートを用意した。

ヒナセ  ………。

むさ坊  ……その……疲れたら、食べてくれ。遠慮は要らん。

ヒナセ  ………。

むさ坊  なんだ? その意外そうな顔は。

ヒナセ  いや、意外だったもんで。……隼鷹の差し金?
 
むさ坊  ………。
     提督よ! 返すがいい!! もう二度とやらん!

ヒナセ  いやいやいや。
     もらったモノは、私のものだよ。ありがとねぇ。大事に食べるよ。

むさ坊  なんてヤツだ。隼鷹の言うとおりだな! この人でなしめ!


      ◇◆◇◆◇◆◇


カワチ  ……まったく、君はどうしてそう、心の機微というものが分からないんだ。

ヒナセ  いえいえ、嬉しゅうございますよー。
     まさかこの歳になって、大量のチョコをもらえるようになるなんてねぇ。
     たださぁ……

カワチ  だた、なんだい?

ヒナセ  ……正直、来月の間宮さんからの請求書がコワイ。

カワチ  ……ああ、……ま、確かに。
     私のほうも、ちょっとな……。
2021/02/12(Fri) 01:33 No.5
【再掲】おにぎりのうた【161017】
おかあさん
あなたの作るおにぎりは三角で
角がきちんととがっていた
ほどよく握りこんでいて
もろもろ崩れることがない
運転しながらでも安心して食べられる


おかあさん
あなたの作るおにぎりは塩味で
ときどき種を抜いた梅干しが入っていた
ほぐした焼き鮭を混ぜ込んだのもあって
どれも塩加減がちょうどいい


おかあさん
あなたが持たせてくれてたお弁当は
おにぎりが3つに 三切れを一包みにした玉子焼きが三包み
私がそれだけでいいと言ったからだけど
どこに行くにもそればかり
いつも残さず食べました
いつでもおいしく食べました


私はいまだに
あなたのおにぎりにたどりつくことができません


さいごにおにぎりを作ってくれた日
あなたはお弁当のつつみを渡しながら泣いていた。
おにぎりがうまく握れないと
さめざめと泣いていた。

私もあのとき
「どんな形になっても、かあちゃんのおにぎりが食べられることが、嬉しいよ」と
笑って受け取って出かけたけれど
本当は一緒に泣いてしまいそうだった
だけどあなたをこれ以上悲しませたくなかったから
ニコニコと笑って出かけていったのです

車の中で包みを開いて
もろもろと崩れるおにぎりをほおばって
私は涙があふれて仕方がなかった
このおにぎりはきっと最後のおにぎりになる
そんな予感がしていたから

そしてそれは現実になりました



カミサマにひとつだけお願いできることがあるならば
母のおにぎりをまた食べたい
と心から言いましょう



今 私は自分のためにおにぎりを握ります
母のあのおにぎりを
いつか自分で作れるようになりたいと
ひとつひとつ心を込めて
おにぎりを握ります
2020/11/28(Sat) 03:39 No.4
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