プライベートエリア・6.5

Date: 2017/10/17(Tue) 04:54 [1312]

 その6.5 <こら。
 …ここまで書いていくんだったと、猛反省(うえーん)
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

       カワチの手がピタリと止まり。
       那智の喉が小さくゴクリと鳴る。
       絡む二人の視線。
       カワチは上から。
       那智は下から。



 那智   その言葉……偽りは……


 カワチ  それはお前の、受け取り方次第だ。



       カワチ、いつも浮かべている笑みは消え、まっすぐ那智の目を見据える。
       カワチと那智、しばらく対峙していたが、ややあって那智の口もとがかすかにほころぶ。
       喜びから発せられた笑みではなく、気圧されて敗北を受け入れたそれ。



 那智   ……わかった……
      そこまで言うのなら、貴様にこの身、委ねよう。
      (口もとはかすかに笑っているが、目は笑っていない。やや恐怖を感じている)


 カワチ  (ギラッと目が光り、口角が上がる。今まで誰にも見せたことのない表情がある)
      (那智を抱き寄せて)ここから先は、真剣勝負だ。



       二つの影が重なって……

http://www.studiol.co.uk/


プライベートエリア・6

Date: 2017/10/12(Thu) 05:14 [1311]

 その6 やっとこさで、再開。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 カワチ  (手にしているメモ帳をパタンと閉じて)さて、お勉強の時間は終わりだ。


 那智   (顔を上げる)もう、いいのか?


 カワチ  なにがだい?


 那智   その……私と足柄の話だ。


 カワチ  ああ、さっきに足柄から聞いた話を掛け合わせて、だいたい問題は把握した。
      ここからが本番だ……那智、服を脱きたまえ(言って自分も上着を脱ぐ)


 那智   ……!! (グラスを握りしめたまま、じり…腰が引ける)


 カワチ  話を聞くまでは、どうするか決めかねていたが、これが一番手っ取り早いようだ。
      (中に着ているシャツのボタンも外し始める)


 那智   結局……こういう流れに……なるのだな……(嫌悪に顔が歪む)


 カワチ  (手首のボタンを外しながら)命じてはやりたくないのでね、自主性を重んじるよ。


 那智   ……自主性……?
      聞いてあきれるな。自主性に対して失礼千万だ。


 カワチ  (半裸の状態で那智に対峙する。シャツの合わせの隙間から、下着が覗いて見える)
      失礼を重ねて伺うが、那智、君は気持ちの良いセックスをしたことがないだろう?
      足柄以外とは。


 那智   ………。


 カワチ  おや、足柄ともさほど気持ちいいと思ってないかな(かすかに笑い、あからさまに煽っている)


 那智   貴様……。


 カワチ  足柄はしょっちゅう君に求めてくるだろ? どうだ?


 那智   ………(目をそらす)


 カワチ  私が今言ったことが当たっているなら、それは満足していないからだ。
      満足できないのは、片方だけの問題ではないが、君たちの場合は、まず君に問題があると、
      先日足柄を抱いて、漠然と感じたんだ。だから今夜、君を呼んだというわけだ。


 那智   ……私にある問題とは……なんだ?


 カワチ  相手が人であれ艦娘であれ、抱かれて心から満足した経験がないだろう?
      そもそも抱かれたこと自体も少ないか?


 那智   ………(視線が地を這う)


 カワチ  気持ちの良いセックスっていうのは、生まれながらにできるものじゃないからね。
      カナリヤの鳴き方と一緒で、指南相手と経験値が大事なんだ。
      人間ですらそうなんだから、君たちはもっと無理な話だろう。
      重巡以上の建造艦の養育課程に性教育が入っているが、実地訓練はせいぜい数回程度だ。
      それも同性の養育艦とがほとんどで、将来起こるかどうかも分からない人との性交の際に
      事故が起こらないよう、流れや作法を一通り教えるだけだからな。
      そんなもの、セックスとはとうてい言えんよ。


 那智   つまり貴様の持論は、性交は気持ちよくなければならない、ということか。


 カワチ  もちろんそうさ。
      もっとも、私も異性とのセックスで、心底気持ちの良と思った相手は、たった一人だがね。
      その相手と結婚してみたが、私のわがままで離縁した(やや自嘲気味に笑う)


 那智   碌でもないヤツだな。
      ……気持ちよい思いをしたなら、なぜ分かれたんだ?
      分かれなければここに来ることもなかったのではないのか?


 カワチ  気持ちよくて身も心も満足したが、それで良しとは、私は思えなかったということだよ。
      体を重ねことがこの先一生、たとえ海が蒸発しても叶わないだろうが、それでも
      好きな人の傍にいて、見守るだけでもしたかったんだ。
      私にとって、今までの一生の中で、今が一番幸せな時なのさ。


 那智   ……すまん。


 カワチ  何が?


 那智   いや……他意はなかったのだが、貴様のプライベートに踏み込んでしまったなと。


 カワチ  別に。相手は君だし、私も今、君のプライベートに土足で踏み込んでいる最中だからね。
      アンフェアなのは、私自身が嫌いなんだよ。


 那智   ……確かに……
      貴様が言うとおり、私は性交にあまり良いイメージを持っていない。
      初めての相手が『那智』だったからというよりは、そのあと、二番目以降の赴任先で
      いろいろあったからな。アレを入れられるのは、ただひたすらに痛いだけだ。
      戦闘で受けた傷と違って、体の中から受ける痛みだからだろうか、慣れたためしがない。
      女性提督を抱く機会も何度もあったが、あれもよくわからない。
      どちらも始まると、頭のどこかでカチリ、と音がして、あとは終わるまで、何かに閉ざされたような
      感じで……水の中に閉じ込められている……とでも言おうか……。


 カワチ  ………。
      足柄との時も、同じ感覚かい?


 那智   ……いや……それはない。逆に感覚が研ぎ澄まされたような感じがある。
      足柄が触れた部分(ところ)や、足柄を触れた部分(ところ)が過敏になりすぎて、
      どうして良いかわからない。


 カワチ  だから、そっとしか触らない……いや、触れないのか。
      ……ふむ。やはり君は、性教育を一からやり直す必要があるようだな。


 那智   (サッと顔色が変わる)


 カワチ  そんなに警戒しなくていい。嫌なら今すぐその扉から出て行っても構わない。
     だが那智、今ここで出て行くなら、この先遠くない未来に、足柄と君は決裂するかもしれんよ。


 那智   ……(何を言い始めたんだ? という顔でカワチを見上げる)


 カワチ  私はエゴイストでね。
      自分にとってより良い艦が欲しいし、それを手に入れるために、手段も労力も、
      惜しむ気はさらさらない。
      さらに言えば、自分や自分の艦にとって、将来マイナスになりそうな因子は、
      何が何でも取り除きたい。
      つまり今私は、私の目の前にいる艦が、もっと良い艦になることを大いに望んでいるし、
      多少人道的でない手段を使ってでも、後顧の憂いは取り除いておきたい。
      (那智にゆっくりと手を差し伸べる)


 那智   (やや怯んで、後ろにのけぞる)


 カワチ  ……那智……虎よ、お前の牙と爪、私に研がせてはくれまいか?
      私の与えるものを受け取り、溺れ、そしてそれを足柄に与えてやれるようになって欲しい。



       カワチの指先が、那智の顎を、そのラインに沿って撫でる。
       那智の顎がそれに誘導されるように上がっていく。



--------------------------------------------------------------------------------
 長くなりそうだから、ひとまずここまで。
 タラシ・カワチの真骨頂……か?(へらへら笑いながら、
 こういう、どこからが演技でどこから本気か分からない人って怖い……てか、縁起でああり本気である、が、真実なんだろうな。


 カワチはいつも、どこか笑みを絶やさない人なんだけど、今はいつもと違うタイプの笑みを浮かべてそうで、やっぱりコワいwww

http://www.studiol.co.uk/


いろいろと…

Date: 2017/10/07(Sat) 02:16 [1310]

 …削れすぎててダメなようで。

 気が張っているウチはなんとかなるのですが、過度の緊張とストレスが続いたあとでそれが(ある程度)消えてしまうと、一気にガックリくるタイプで。
 昔、20代後半にいろいろあって、まぁぶっちゃけ、1年ちょっとDV受け続けたのちに、それとなく気がついた母に救ってもらって実家に戻ったあと、鬱症状が出て、数年静養という名の引き籠もりをしていた時期がありました。
 たぶん3年くらいだったかと思うんですが、その間の記憶があやふやな上に順番認識がおかしくなってて、今もそのあたりのことをよく憶えていません。実のところ、正確な期間もよくわからない。

 当時から、とにかく人が怖くて、集団も怖い。女性が苦手なのも、このあたりに起因しています(塗り固められていくのはその後のいろいろが原因ですが。
 そして私がサラリーマンをやっていない理由がここにあります。

 DVが怖いのは、振り切って逃げても、逃げ方が中途半端だと相手との縁が切れない上に、なんだかズルズルと関係が続くってところだなと、今断片的に思い出せる分を繋いでつぎはぎ分だけでも俯瞰して、ぼぅっと思います。DVの相手と完全に縁が切れたのは、ここからさらに5年くらいを要しました。

 この一連の出来事を思い出すのも考えるのも、もやを通して見て、水の中を歩いているようなもどかしさ。
 その後知り合って長く付き合った相方と、軽い共依存状態におちいって、私はモノカキとしての時間を約10年分、無駄にしました。

 それもこれも自分が選んで歩いてきた道なので、馬鹿だったなぁ…としか思いませんし、過去を悔やむよりも未来を切り開いて歩いて行きたいので、30代の頃のように、分からなくなってしまった記憶を無理矢理思い出して、空白の部分を埋めることは、積極的にはやっていません。…ときどきヒョイッと思い出して「…これはいつの記憶だ?」としばらく悩むことはありますけども(10分も考えて分からなかったら放置するようにしてる。


 そんなわけで。
 この10月は繁忙期でもありますし、しばらくネットからやや遠ざかっておこうかなと、思っています。
 たぶんここは、ちょこちょこ更新するかもしれませんが。

 Twitterは雑踏の中で一人ぽつんと立って、周りの物音が際限なく自分の中に流れ込んでくるイメージなのですが、今それが辛いなって。

 早々にPCを切って寝室で寝転がって、溜まっているkindleを片っ端から読みちらかしてたら、ずいぶん落ち着いてはきました。
 肌寒いくらいのすきま風と、虫の声が心地良いなぁ…と思っています。

http://www.studiol.co.uk/


9月はぎぅぎぅでした。

Date: 2017/10/03(Tue) 02:37 [1309]

 とりあえず、一段落。
 まだ完全に終わったワケではないので、気を抜くわけにはいかないのですが。

 ひと月あまり、緊張と集中した状態が続いてて、気の休まる瞬間がなかったもので、案の定、大風邪を引きました。
 喉が腫れた。

 てか、腫れすぎてて、センセイに叱られるのが今すごくイヤというか、たぶん叱られたらそのままベッコリと凹みそうなので、病院に行った方が治るの早いって知ってても、行かずにグダグダしています。

 ぎぅぎぅ作業の終盤に、ガルパンの劇場版を無限ループでかけ流してました。
 画面なんてほとんど見ていないのに、さすがに内容を憶えてしまった。

 正直、『ガルパン』は、TVシリーズを見ても面白さがよく分からなかったんですが、劇場版はとにかく戦車戦車戦車! なので、そこが実に面白い。
 戦車大好きオトコノコの夢が詰まってる感じです。出てくるオナノコはもうどうでもよくて、とにかく戦車戦車戦車! 戦車を楽しみたい人向けかもしれませんね。自分はそうだった。
 終いには電源タップまで戦車に見えてしまったので、ちょっとアカン感じにはなってますけども。
 明後日あたりにDVDを返却しないといけないので、1度くらいは画面にへばりついて観たいです。

 10月はまた半分くらいがぎぅぎぅなんですけども、これは例年通りの繁忙期なので、まぁ予定調和。
 今年はパートディレクターじゃなくて、上司のいない現場を仕切らないとアカンらしいんですけど。…てかな、大和ミュージアムで釣ろうしても無駄です、ボス。大和ミュージアムより鉄のくじら館行きたい(そっちか。

 帰りに草津か江波あたりを一巡りしたいんだけど、日が暮れてるよなぁ…って。
 いっそもう、自費でいいから広島に泊まろうかな。あるいは車中泊しちゃうか。疲れてるのに4時間近くも一人で車を運転したくないよ。

--------------------------------------------------------------------------------
【拍手】ぱちぱち、ありがとうございます。>8/22、30、9/5、7、8、10/1。

http://www.studiol.co.uk/


『プレゼント』 ヒナセと電と明石

Date: 2017/08/22(Tue) 16:39 [1308]

 これも、まだふたりしかいない頃のお話。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
○ヒナセ基地 湾内係留岸 ヒナセと明石

 ヒナセ  お疲れさま。姫提督によろしくね。


 明石   りょーかいしました。
      ……あ、提督。


 ヒナセ  あに?


 明石   えっと……電ちゃんに、ゴメンね、って言っといてください。


 ヒナセ  あー、はいはい。了解。


 明石   すみません。ついうっかり。


 ヒナセ  うん……次は気をつけてね。


 明石   はい。がんばります。


 ヒナセ  うん(歯切れ悪く)


 明石   では、失礼します(敬礼)


 ヒナセ  はい、おつかれさん(敬礼)


   ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

○ヒナセ基地司令棟(掘っ立て小屋)

       ヒナセが戻って、ドアを開けながら。



 ヒナセ  デン? デーン。



       電が奥からおずおずと出てくる。



 電    ……はいなのです。


 ヒナセ  (優しく笑って)明石は帰ったよ?


 電    はいなのです。ご、ごめんなさいなのです。


 ヒナセ  んー。明石ってば声が大きいもんねぇ。あの明石は特に元気すぎてね。
      気をつけるように、常に言ってんだけどね。


 電    ……ごめんなさい、なの……です……。


 ヒナセ  デンは何も悪くないよ。イケナイのは明石のほうだね。
      来たときも来る前にもちゃんと「気をつけて」って申し渡しているのに
      うっかり忘れちゃう。一度や二度じゃなくて毎回だから。あれは明石が悪いんです。


 電    ……(さらにしょげてしまう)


 ヒナセ  (その様子を見て)……じゃ次に明石が来たときには、クチにガムテープを
      貼っちゃうか?(笑う)


 電    はわ……。


 ヒナセ  んで、妖精さんに喋ってもらう。トップの妖精さんならそのくらいできるでしょ
      (悪戯っ子のような顔でウインクする)


 電    はわわ……それは明石さんが、かわいそうなのです。
      いなづまも、びっくりしないよう、がんばるのです。


 ヒナセ  じゃ、電もがんばるし、明石にもがんばってもらおうかな……どう?


 電    は、はい、なのです。


 ヒナセ  うん。じゃ、そうしよう。
      じゃ、定期電で、あちらにその旨申し渡しておきます。


 電    はわ。


 ヒナセ  あ、でね。こっちきて(手招きして司令官室へ)


 電    ……?
      はいなのです(トコトコ付いて行く)


○ヒナセ基地司令棟(掘っ立て小屋) 司令官室

       先に入ってたヒナセが、デスクの向こうに立っている。
       デスクの上には60サイズほどの小さな箱。



 ヒナセ  これね(電のほうに箱を、デスクの上を滑らすようにして出す)


 電    はわ?


 ヒナセ  君にね、プレゼント。
      私と明石から。


 電    はわわ……(やや困惑したように箱とヒナセを交互に見る)


 ヒナセ  (ちょっと困ったような顔で)……リボンをかけて、もっとかわいくプレゼントっぽく
      すれば良かったねぇ。リボンがなくても、せめて白い箱とか。


 電    はわわ。


 ヒナセ  ま、よかったら開けてみて。


 電    は、はい。なのです(箱を開けて中を覗く)
      ………はわ……はわわわわ……(口をパクパクさせる)


 ヒナセ  どうかな?


 電    さ、触っても、いいですか?


 ヒナセ  もちろんどうぞ。君のだからね。


 電    はわ……。



       電は箱の中に手を入れ、中身を出す。
       中に入っているのは、小さな移植ゴテと子供が砂遊びに使うような小さなバケツ。
       そしてプラスチックのゾウさんじょうろ。子供サイズの軍手が一ダース。



 電    (移植ゴテを目の高さに持ち上げて)お名前が、書いてあるのです。
      (目がキラキラしている)


 ヒナセ  私のあまり綺麗じゃない字で申し訳ないんだけどね、
      ……気に入ってくれた?


 電    はいなのです。すごくすてきなのです。


 ヒナセ  そう、それは良かった(にっこりと笑う)


 電    ヒナコさんのお手伝いが、もっとたくさんできるようになるのです。


 ヒナセ  期待しています(ニコニコしながら)


 電    ありがとう、なのです。……あ。
      あの……あの……。


 ヒナセ  ん?


 電    明石さんに……お礼……


 ヒナセ  ああ……んー、そうだなぁ。じゃ、こうすれば?
      次の定期便のときに、明石にちゃんとお礼をする。
      それで良いと思うよ。
      それに明石もさ、君のことはよく分かってるし、きみが 隠れちゃったのは
      自分が悪いって分かってるから、今日お礼が言えなくても気にしないよ。


 電    はわ……(見えない耳と尻尾が垂れてる)


 ヒナセ  ……じゃ、こうしようか。
      定期電のときに、明石が出たら伝えます。
      君がとても嬉しがってたし、お礼も言いたいって言ってたって。
      そして、次の定期便のときに、君が直接明石にお礼を言う。
      それでどうですか?


 電    はわ。
      はいなのです。そうするのです。


 ヒナセ  じゃ、決まりね。


 電    あの……これでお花を育てて、明石さんに差し上げるのです。


 ヒナセ  それはいいねぇ。今回チューリップの球根を持って来てもらったから、
      それにする? 咲くのは春だけど。


 電    春……


 ヒナセ  植物は花が咲くまでに時間がかかるけど、きれいだし、そのために使ってねって
      プレゼントしたものを使って育ててくれたお花をもらうなんて、とても嬉しいよ?


 電    なのですか?


 ヒナセ  (大きくうなずいて)なのです。


 電    じゃ、そうしますのです。


 ヒナセ  はい。では午後はチューリップの球根を植えますか。


 電    はいなのです。


 ヒナセ  実験のために多く買ったけど、プランターと地植えで百球くらいだから
      今日の午後だけで終わると思います。


 電    がんばるのです(移植ゴテを握りしめる)


 ヒナセ  はい。がんばりましょう。



   ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


○ヒナセ基地 湾内遠景

       湾内に工作艦『明石』が来ている。



○ヒナセ基地 司令官室


 明石   …というワケでですね。
      アタシもいろいろと反省したので、ちょっと考えてみました。



       …と言う明石は、黒子頭巾で顔を隠し、
       両手にはイ級ロ級の手作りマペットを付けている。



 ヒナセ  ……(やや真顔)


 明石   ……ダメ……ですか?


 ヒナセ  いや……努力は認めます。
      でもね……(チラリと視線を横に動かす)



       ヒナセが向けた視線の先には、窓辺のカーテンに隠れて震えている電が。



 ヒナセ  ……肝心の対象が、これだけ怖がっちゃったら、あんまし意味ないと
      思わない?(苦笑する信楽焼のタヌキ)


 明石   ……で、デスヨネー……(頭巾を取る)


 ヒナセ  もー。前進どころか後退してどーすんのさ。


 明石   へへへ……しーませぇん(悪びれずに笑っている)



--------------------------------------------------------------------------------
 このあとしばらく、電は夜に悪夢を見てうなされる回数が増えちゃって、ヒナセと一緒に寝ることが常態的になったようで。
 ……で、明石はヒナセから報告を受けたアサカにたいそう叱責されたようです(あーぁ。

http://www.studiol.co.uk/


夏イベ・2

Date: 2017/08/21(Mon) 09:48 [1307]

 夏イベは参加しないできないことがほとんどな(´ΦωΦ)ですが。
 今回の長期出張、現場もホテルもネット環境があまりにも弱っちく、 イベント海域に出てるときに接続が切れたら泣くじゃ済まされないのも、今期参加しない理由のひとつで。

 …ま、イベントに興味がなくて、日々のルーチンワークだけで満足してるのが大いにあるけども。
 日々目を皿にして、さらに汲々としているのが、階級でして。

 大将のまま保持したい。

 それだけ。
 中将以下に落ちたら、一気に演習が殺伐とする鹿屋基地サーバー(今朝目が覚めたら中将に落ちてた。イヤン。

 日々平穏に暮らしたい。

 …ただそれだけなんですけども。

http://www.studiol.co.uk/


夏イベ。

Date: 2017/08/17(Thu) 00:51 [1306]

 絶賛出張中なので、たぶん参加しないなって。

 といいますか。
 そろそろ飽きてきたかなぁと。
 完全にルーチンワーク化しちゃってるし。

 それよりも何よりも、イベントで実装される新艦に魅力を感じなくなってきているワケで。

 …サラトガまでだったなぁ…。
 サラちゃん欲しかったけど、完走できなかったしな。

 以降はまぁどうでもいい感じ。
 二等駆逐艦あたりが実装されるなら、ちょっと持ち直すかもだけど。
 松とか樅とかかわいいぜ(プラモの箱の話。←

 …とかまぁ、そんなヨタ話はどうでもいいとして。

 ずっと心の中にあるのは、
『艦これ止めたら二次も止めどき』
 なんですけども。

 イベントたんびに言ってるけど、たぶんワタクシ、日常のルーチンワーク化したものに対して、それ以上の変化は基本要らない人のようで。
 …てかまぁ、夏の出張中は、イベント参加しようなんて元気はさすがにないなぁって。



 夏出張も無事半分終わりました。
 今回は故あって、さらに物件がなくて、ホテル暮らしをしていますが。…アレね、料理ができないのがしんどいワケですよ。去年の9月10月出張の時も言ってた様な気がするけど。

 友人に「お総菜でも買って」…と言われたんだけど、そのお総菜が問題で。
 食物アレルギー、マジめんどくさい。

 食べたいものどころか食べられるものすらなくてスーパーマーケットをさまよい歩くたんびに心が折れる夏出張。
 野菜食いたいし、肉焼いて食いたい。
 メシとふりかけだけの夕飯を延々2週間以上。さすがに飽きました(そこだよ。

--------------------------------------------------------------------------------
【拍手】ぱちぱち、ありがとうございます。>7月30日

http://www.studiol.co.uk/


一言だけ。

Date: 2017/08/13(Sun) 01:28 [1305]

さよなら。

http://www.studiol.co.uk/


いのちをつなぐ。

Date: 2017/08/10(Thu) 02:03 [1304]

 ずっと書きたいと思っていた一遍を。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

○こちらを覗き込む電

 電    はわ……(大きな目をさらに見開いている)



        画面は電を見上げる感じだが、実際には電がこちらを覗き込んでいる。
        位置関係は電が上でこちらが下。
        実はこちらは電の足下にある箱の中のとあるモノ。
        さて。このモノが、今回の主役(w。



○「パタン」という乾いた音と共に暗転


○ヒナセ基地(最初期)の台所

 電    はわわ……ど……どうし……



        ひとり途方に暮れる電。
        足下にはキャスターの付いた蓋付き木箱。
        途方に暮れたまま、電は宙と木箱を交互に見ている。



 電    えっと……えと……し……司令官さん……に……(カタカタ震え始める)
      ごっ……ごっ……



        目が泳ぎ、脂汗をかき始める。



 電    ……ごめ……め……はわ……わ……わわ……



        カタカタとぎこちなく首と視線を動かして、木箱を見る。
        過去の記憶――つまりは前の提督の頃のこと――を思い出して、
        身がすくんでしまい、足を出そうにもまったく動かない。
        今にも卒倒しそうになっているその時――



 声    デンー?



        電、その声にビクッと飛び上がる。
        声の主はもちろんヒナセ。



 声    デン? ……あれ? どこかな。
      デーン。



        ヒナセが台所の入り口から顔を出す。



 ヒナセ  あ。いた。



        電、ヒナセのほうを見る。完全に硬直している。



 ヒナセ  ……? どしたの?


 電    はわ……わ……


 ヒナセ  (電が真っ青になって動けなくなっているのに気がついて)……!
      ……ん? どした?(ちょっと困った顔で微笑むが、その場からは動かない)


 電    し……司令官……さん。


 ヒナセ  なのですよ。


 電    ご……ごめんな、さい……なの……です(最後は消え入るように)



       電の目が泳いでいる。



 ヒナセ  ?? どうしたの?(ゆっくり近づく)


 電    その……(ぎこちなく首が動いて、木箱のほうを見る)


 ヒナセ  ん? イモ箱?(近づいて開ける)……あ。


 電    (下を向いてカタカタ震えながら)いなづま……お……おやさい、のかんりを……


 ヒナセ  (その様子を見て「ふ」と小さく息を吐いて)ジャガイモの芽が出ちゃったねぇ。


 電    ご……ごめんなさ、い。


 ヒナセ  あー……まぁこれは仕方ないかなー。


 電    ………。


 ヒナセ  (電に近づいて、ひょい、と抱き上げる)


 電    ひぁ……(硬直する)


 ヒナセ  (電をぎゅ、と抱いて、その耳元で)……大丈夫だよ。怒ってない。
      むしろ私のほうが、君に謝らないと。


 電    はわわ……(ぐらぐらしている)


 ヒナセ  危ないから、私をぎゅってしてくれるかな?


 電    は……はい……なの、です(言われたとおりにする)


 ヒナセ  はい、上出来。



       しばらくそのままでいるが、ヒナセがさすがに疲れてしまい、
       電をテーブルの上に座らせてから、少ししゃがんで電と目線を合わせる。



 ヒナセ  (にこ、と笑い)落ち着きましたか?


 電    ……なの、です。


 ヒナセ  なのですか。


 電    あの……ごめんなさいなのです。


 ヒナセ  君が謝ることじゃないよ?


 電    で……でも、貴重なたべものが、食べられなく……なったの、です。
      変なものが、出て、いるの、です。


 ヒナセ  (芽が出たジャガイモの一つを手にとって)まぁ食べられないわけじゃないけど、
      ここまで芽が出ちゃったら、美味しくはないかな。……ホラ、ふにゃふにゃに
      なっちゃったし(ジャガイモをプニプニと握って電に差し出す)
      触ってごらん。


 電    (おそるおそるヒナセの手の中にあるジャガイモに触れる)……ふらふわ、なのです。


 ヒナセ  中の栄養が、(芽を指さして)この芽に食べられちゃったからね。


 電   (うつむく)


 ヒナセ  おイモたちはさ……あ、タマネギとかもそうなんだけどね、まだ生きてんの。
      この子たちはね、土から出してこうやって箱に入れてても、死んでないんだよ。


 電    ……?


 ヒナセ  ジャガイモは、地下倉庫にまだたくさんかこってあるから、心配しないで。
      今日の分は、あっちから出してこよう。
      ……で、この子らは……んー……明日やりますか。
      今日はもう遅いからね。


 電    はわ……。


 ヒナセ  というワケで、このお話は明日しようね。
      じゃ、あっちからジャガイモ出してきて、晩ゴハンの用意をしますか。
      電、手伝ってくれますか?


 電    は、はい…なのです。


 ヒナセ  よろしくお願いしますのです。



       ヒナセはにっこり笑って、電に軽く敬礼した。



○翌午前中 ヒナセ基地の家庭菜園(まだ規模は大きくない) ヒナセと電

       ヒナセと電が畑に出ている。彼女たちの足下には手蓑(テミ)が三つあり、
       その一つの中には昨日の芽が出たイモと包丁が入れてある。
       もう一つには灰が入れてある。
       最後の一つは空である。
       ふたりでストレッチ代わりの体操をかるくやってのち、手蓑のそばに座りこむ。



 ヒナセ  (ジャガイモを一つ手にとって)昨日ね、この子たちはまだ生きているんだよって
      話をしたよね。


 電    (こくん、とうなずく)


 ヒナセ  だからね、土に埋めてやるんです。


 電    はわ……。


 ヒナセ  こうやってね……
      (ジャガイモをいくつかに切り分ける。一つのかけらに一つの芽…くらいの要領で)


 電    (目を見開く)……切っちゃったの、です。


 ヒナセ  (うん、とうなずき)……で、こいつをさらにこうします(切り口に灰をちょん、と付ける)
      さ、私が切るから、電はこうやって、灰を付けてくれますか?
      付けたらこっち(空のテミに自分で灰を付けたジャガイモを入れ)に入れてね。


 電    はい、なのです。


 ヒナセ  そうそう。これはね、手蓑(テミ)って言います。
      地域によってはエビジョウゲとかって言ったりするかな。
      私の父や伯父はエブって言ってたから、ずっとそうだと思ってました(あはは、と笑う)


 電    テミ……えぶ?


 ヒナセ  まぁどっちでもいいよ。一般用語としては手蓑(テミ)だから、手蓑のほうがいいかもね。
      私はついうっかりエブって言っちゃうかもしれないけど。
      ……まぁいいや、とりあえず急いでやろう。
      今日の午前中のお仕事は、このジャガイモを植えることです。
      (言うと、手慣れた手つきでジャガイモを切り分けて、電のそばに置く)


 電    はいなのです(置かれたジャガイモの切り口に灰を付けていき、空手蓑の中に
      丁寧に並べていく)


 ヒナセ  いい手つきだねぇ(ニコニコと笑う)


 電    あの……し、司令官、さん。


 ヒナセ  はいなんでしょう。


 電    じゃがいもさん、土に埋めたら、どうなるの、ですか?


 ヒナセ  埋めたらねぇ……この芽がさらに大きくなって、土の外に出てきて、
      葉っぱが出てきてさらに大きくなって、そのうち花が咲いて、土の中にジャガイモができます。
      この一片でたくさんのジャガイモができるから、収穫したらしばらくイモに
      不自由しなさそうだねぇ。


 電    はわ……。


 ヒナセ  だからね、ジャガイモは芽が出ちゃったら、場合によってはこうやって植えてやればいいの。
      こうやればね、次のジャガイモができるよ。無駄にならない。
      いのちは続いていくんだよ。……もっとも、ダメな場合もあるけどね。 そこはさ、
      掛けみたいなものだから。


 電    掛け……??


 ヒナセ  あーわかんないか。
      私の父がよく言ってた言葉がね
      『種まきと人生はロシアンルーレットだ』なんだけど、
      人生はともかく、植物を育てるってそうだなぁって思うね。
      いろんな状況とか環境や天候で、たくさんできたりまったくできなかったり。
      ホントにね、農業って面白いなっておもいます。


 電   ろしあん……??


 ヒナセ  ルーレットっていう賭け事の方法があるんだけど……賭け事っていうのは……
      ホラ、こないだやったあみだくじみたいなヤツね。当たったり外れたり。


 電    おもしろかったのです。


 ヒナセ  それは良かった。


 電    でも、司令官さんより多くもっらっちゃって、良かったのですか?


 ヒナセ  そりゃもちろん。デンはくじ運がいいよねぇ。
      まさか飴をあんなに当てちゃうなんて、思わなかった。


 電    大事に食べているのです。


 ヒナセ  そうしてください。虫歯になってもここじゃすぐに治療できないから、
      食べたあとは、ちゃんと歯磨きもしてね。


 電    はいなのです。


 ヒナセ  ロシアンルーレットってうのは、簡単に言うと、命がけの賭け事でね。
      当たっても外れても大きい……って意味らしいよ。


 電    ???(首をかしげる)


 ヒナセ  ふふ……(ニコニコと上機嫌で作業をしている)



       そうこうしているうちに、ジャガイモは切り終わり、灰も付け終わって。



 ヒナセ  さて、これをこっちとこっちの畝に、植えていきますか。
      だいたいこのくらいの間隔(約三十センチほど)を開けてね。
      このくらいの深さで、こんな感じに芽を上にして、植えていきます。
      ……わかった?


 電    わかりました、のです。


 ヒナセ  OK。じゃ、競争しようか?(にっこりと笑う)


 電    はわ……。


 ヒナセ  君は初めてだから、ハンデ付けよう。
      (右の畝の中央付近に行って線を引く)ここがお互いのスタートね。
      ……で、君は向こうに向かって植えて、私はこっちに向かって端まで行ったら
      こっちの畝にも植えます。ゴール地点は向こうね(電の進行方向を指す)
      お互いに畝の向こう端にたどり着いたらゴール。
      どっちが早いか競争。……どう?


 電    はわ……。
      わ……わかりましたの、です。


 ヒナセ  これが終わったら、ちょうどお昼を作る時間くらいになるかな。
      じゃ、始めようか。


 電    はいなのです。


 ヒナセ  じゃ、君はこっち側に来て。そう。
      私はこっち側にポジション取ります。お互い右利き同士だから、ぶつからなくて済むよ。


 電    (ヒナセに言われた通りの位置に付く)


 ヒナセ  (灰の付いたイモ2/3ほどを、今は空になっている手蓑に移して自分のほうに置き、
       1/3を電のほうに置く)こっち、君の分ね。足りなかったら悪いけど私のところまで
       取りに来てくれる?


 電     はいなのです(柄に『まづない』と書いてある移植ごてを握っている)


 ヒナセ   お。やる気満々ですね。


 電     なのです。
       じゃがいもさん、たくさんになるなら、いなづまはがんばるのです。
       司令官さんにはまけないのです。


 ヒナセ   (電の様子に心から満足しきった笑顔で)よし。じゃ……位置についてー……よーい……


 電     (真剣な顔で合図を待つ)


 ヒナセ   スタート(ゆっくりとでも確実に土に移植ごてを入れる)


 電     はいなのです。



        人ひとり艦(ふね)ひとり。
        畑で黙々とイモを植えていく。しばらくは徐々に離れていったが、
        やがて人が折り返して艦との差をジワジワと縮めていく。
        空は快晴。風が畑の周りの草を揺らしている。
        
        ヒナセと電、まだふたりしかいない。島の暮らしにそろそろ慣れたけれど、
        ふたりの生活はまだまだこれから。

--------------------------------------------------------------------------------

 一足早く、エアコミケ的に。

http://www.studiol.co.uk/


めーさくお題の欠片。

Date: 2017/08/03(Thu) 23:04 [1303]

 ちび子2号をいじくってたら、ひょろっと発掘されたので、書きかけですが公開してみる。
 …よく見たら、美鈴出てきてないし。←
 こりゃ『咲夜さんとおぜぅ』じゃんよー…てなった。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「しんしゃかいじん?」
 それは、咲夜が初めて聞く単語だった。
「ああ。なんでも“外”では最近、今の時分に“しんしゃかいじん”とやらが大量発生するんだそうよ」
 咲夜の給仕したモーニングティー(それはこの館では一日の最後に出されるものである)を、その出自に恥じることない貴族的で優雅な動作で受け取った、この館――紅魔館――の主人である吸血鬼のお嬢さまが、やはり貴族的な笑みを浮かべて言った。しかし言った本人も意味はよく分かっていないらしく「八雲紫に聞いた話だけど」と補足した。
「しん……というからには、なにか新しいものでしょうか」
「そうかもしれない」
「……であれば、『新しゃかいじん』ですわね」
 咲夜は右の人差し指の先で空中に字を書いた。いわく『新』と。
 であるならば、『しゃかいじん』とはなんぞや? 紅魔館の主従には答えを見いだすべき最後の問題が残った。それを咲夜は素直に口にした。
「……で、“しゃかいじん”とは、一体なんでしょう?」
「さぁな」
 主人の口調は素っ気ない。
 咲夜は「ああ、お嬢さまにも分からないのね」と心の中でつぶやいた。ならばこれ以上ここでこの話題を引っ張っても、なんら進展も発展もないだろう。目の前の主人は単に話の接ぎ穂ネタとして、『新しゃかいじん』なる単語を口にしただけのようだった。もしかしたら咲夜がこの単語の意味を少しでも知っていて話を広げてくれることをほんの少し期待していたのかもしれない。
 しかし咲夜も知らなかった。だからと言うわけではないかもしれないが、主人は今自分が口にした単語への興味を完全に失ってしまっていた。
 だから、この話はこれでお終い。咲夜もこれ以上はこの話を発展させず、お嬢さまの意に沿うよう振る舞った。つまり、完璧な給仕をし、新しい話題の話し相手となり、そしてお嬢さまがお休みになるまでのお相手を務めたのだった。
 しかし、分からないことを分からないままにしておくのは、瀟洒と評される有能なメイドには耐え難いことだった。さてこの問題に対する回答はどこにあるのか、誰が持っているのか。しばしの休息が取れる午前中、時間を止めて微睡みながら、咲夜は考えた。
 夕方、お嬢さまがお目覚めになるちょっと前くらいに人里に出てみようか。
 物知りと言えばすぐに思いつくのが魔法使いたちだが、『新しゃかいじん』と『魔法使い』2つの単語の響きがなぜだかしっくりこない。ここはどうやら寺子屋の教師をやっている歴史食いの半獣に訊くのが良いような気がする。
 『教師』と『新しゃかいじん』……ホラ、なんとなくパズルの隣同士のパーツのような響きではないか?

--------------------------------------------------------------------------------
 このあともちろん美鈴やけーね先生やらたぶんもこたんやらアリスやらなんやら出てきて、『新社会人』についてあーでもないこーでもないとやる話だったかと。
 思い出すか、別方向でも話が流れ出したら、続きを書くと思います。←

http://www.studiol.co.uk/


Deep inside・16

Date: 2017/08/02(Wed) 23:49 [1302]

 エピローグ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
○鹿屋基地 アサカのオフィス

        アサカがヒナセから提出された報告書を読んでいる。
        ヒナセはデスクの向こう側、アサカに対峙する形で丸椅子に腰掛け、鯱張って
        アサカが読み終えるのを待っている。



 アサカ   (最後のページまで読み、すらりとデスクの上に報告書を置いて)……三文小説を
       読んでいるような気分になるわね。


 ヒナセ   はぁ……(そう言われましても、という顔)


 アサカ   あまりにも荒唐無稽だし、憶測の域を出ていないことが多すぎる。もしこの報告書の内容が
       実際にあったことだと仮定しても、例の件についてはすでに最終報告書の受理・検証・承認も
       終わっているから、今さら蒸し返すのも面倒になるわね。
       どのみちG提督はすでに亡くなっているし。


 ヒナセ   ……ですねぇ。
       それは次長にお見せするためだけのモノでして。可能であればご返きゃ……


 アサカ   (自分の唇に人差し指を当てて、ヒナセを制しつつ)ヒナセ提督。悪いのだけど、
       デスクの上の書類を片付けておいてくれるかしら? (ざぁっと書類をかき回す)


 ヒナセ   (アサカの意図に気がついて)次長、来るたびに従卒か秘書扱いは、そろそろやめて
       頂けませんかね?


 アサカ   (何も言わずにオフィスチェアから立ち上がって、隣にある書類用小部屋の引き戸を
       開けて中に入り、扉を閉める)


 ヒナセ   ……無視かい……(呟いたにしてはやや声が大きい)
       んもー……。こういうのは明石あたりにさせてよね。



        アサカがかき回した書類を集め直して順番もそろえて立て、
        デスクの天板にトントン、と地を落としながら、デスクの周囲を
        アサカがいつも座っている正面に回っていく。
        もともと書類を挟んであったハード型のファイルバインダーに戻すと
        バインダーの地をデスクの隅の一画に叩きつけたあと、その場に
        バインダーを、やはり叩きつけるようにして置き、
        同時にデスク天板の裏に手を滑り込ませて小さな黒いモノを剥ぎ取った。
        それをチラリと見て何もなかったように床に落とし、
        靴の踵で力いっぱい踏みつける。
        床の上には無残に潰れた小さな黒いモノの残骸。
        それを無表情でつまみ上げ、ハンカチに包んで小さく丸めて
        自分のポケットに入れた。



 ヒナセ   ……まったく、相変わらず人使いが荒いよ、姫提督は(頭をガリガリと掻く)


 声     何か言ったかしら?



        アサカが書類のバインダーをいくつか持って、小部屋から出てくる。



 ヒナセ   いいえー(にへら、と笑って、肩をすくめる)
       (先ほどハンカチを入れたポケットを指さしながら)これ、ちょいと調べます。


 アサカ   そうして頂戴。あなたの“ご自宅”でね。


 ヒナセ   ……Aye aye ma'am.


 アサカ   ところで、本当に良いのね?


 ヒナセ   何のことですか?


 アサカ   神通のことよ。


 ヒナセ   ええ。現時点では、ウチで引き取るのが最良だと思われます。


 アサカ   一度あなたに手を上げかけたのに?


 ヒナセ   それは、ウチからまた出されるかもしれないという危機感がさせたことで、
       そういうのがなければ、落ち着くと思います。
       ドロップ艦や漂流艦の、発見率の高さには目を見張るものがありますから、
       彼女の着任は、当基地にとっても有益であると考えます。
       まぁ、Win-Winとまではいかなくても、お互いそれなりに益はあると思いますよ。


 アサカ   あなたがそう言うのなら、私には異論はありません。
       ただ、形だけでも廃艦ということにして、あなたの基地で建造されたように
       見せかけることは可能だけど、そこはどう?


 ヒナセ   それをする必要ってあります?


 アサカ   基地から出さないのであれば取り立てて必要ないけれど、大規模合同作戦に
       参加させる場合はシリアルの提出が必要だから、その際に問題になるかもしれなくてよ?


 ヒナセ   ……ああ……なるほど。
       うーん……それについては少し検討させて下さい。


 アサカ   検討ね……そんなに難しい話でもないでしょうに。


 ヒナセ   対外的には次長の仰るとおりですが……その……私もあまり艦政部あたりに
       借りを作りたくないんですよ。下手をすると、そこから綻びが生じることになるかもしれませんし。


 アサカ   (ふむ、と得心した顔で)確かに。それもそうね。
       分かりました。……もしその気になったら言って頂戴。


 ヒナセ   ありがとうございます。
       ところでお茶、入れましょうか?


 アサカ   (珍しいこともあるものね、と目線を上げるが、すぐに書類に目を落として)
       じゃ、ちょっと休憩しましょうか。
       (書類をまとめるとデスクの上から2番目の引き出しを開けてなにやらゴソゴソとさぐり)
       ヒナセ提督、あなたのオフィスでいいかしら?(菓子の箱を持って立ち上がる)


 ヒナセ   (へ? と目を丸くして)……あ、はい。いいですけど……?


 アサカ   あなたのお茶じゃなくて、鳳翔か神通の入れたお茶を所望します。


 ヒナセ   (ひっでー…という顔をするが、自分の腕を知っているのであえて黙った)
       じゃ、神通に淹れさせましょう。


 アサカ   (制帽を手に取って、ふと気が付いたように)電も連れて来ているのだったわね。
       (制帽を置き、カラーを緩める)


 ヒナセ   (アサカの心遣いに「にこ」と微笑んで)ありがとうございます。
       じゃ……(ドアを開けて控える)


 アサカ   (ドアマン・ヒナセの前を通りながら)……そういうところ、抜けないわね。


 ヒナセ   (ちょっと心外だという顔で)アサカ次長に対してだけですよ。
       どんだけ秘書やら特別幕僚やらという体の良い使いっ走りをやってたとお思いです?


 アサカ   (ヒナセの言葉に心を動かされた様子もなくしれっと)あなたも一城の主になって
       ずいぶん経つのだから、自覚をお持ちなさい。ドアくらい自分で開けられます。


 ヒナセ   ……失礼しました(苦笑したアヒル顔になる)



        言葉とは裏腹にアサカはさも当然のようにヒナセが開けているドアを通って廊下に出ると、
        そのままスタスタと艦娘控え棟に向かって歩く。
        その様子を見ていたヒナセは、フッと息を吐いて微妙な表情になると
        小さく肩をすくめてからドアを閉め、アサカを小走りに追う。


 ヒナセ   (追いついて並んで歩きながら)神通はもちろんですが……


 アサカ   長門も見させてもらうわよ。
       (チラ、と一瞬だけヒナセに冷たい視線を送って)本当に、貴女は鈍感ね。
       もっと行動心理学を学んだ方がいいわよ。


 ヒナセ   ……はぁ。



         艦娘控え棟に向かうふたりがだんだんと小さくなっていき……。
                                                                                                            (了)

http://www.studiol.co.uk/


そして怒濤の夏がはじまる。

Date: 2017/07/28(Fri) 22:38 [1301]

 一昨日の夜から熊本に来ています。
 今年はお化け屋敷の中の人。

 会期は8月いっぱいまで。

 過去に問題の多かった熊本現場ですが、お世話になった営業さんに何かをお返ししたくて、半分志願してやってきました。
 去年は震災前にはもう決まってた現場でしたが、震災で建物が半壊し、イベント自体が吹き飛んで、ワタシは遠く秋田の地へ飛ばされたましたっけか。

 今も一部は駐車場の一角で、プレハブ店舗で頑張ってらっしゃいます。
 ワタシに何ができるというわけではありませんが、熊本の小さなお友達とそのご家族の幸せなひとときのお手伝いができたらなぁ…と思います。

http://www.studiol.co.uk/


Deep inside・15

Date: 2017/07/19(Wed) 03:01 [1300]

その15
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
        部屋の中に残っているのは、ヒナセ、カワチ、神通。



 カワチ   まったく、艦娘使いが荒いのは今に始まったことではないが、感心しないな。


 ヒナセ   まぁいいじゃない。


 カワチ   あと、思いつきで、いとも簡単に予定を変更するのも頂けない。


 ヒナセ   (至極ごもっともなので苦笑する。人の悪い信楽焼のタヌキのような顔になる)


 カワチ   ……と、言うべきことを言った上で、さらに言おう。
       無事で良かった……ヒナセ。そして神通も。


 ヒナセ   ……ありがと。


 カワチ   こんなに肝が冷えることは、金輪際無しにして欲しいよ。


 ヒナセ   軍人である以上、命のやりとりは常に背中合わせじゃない。


 カワチ   そういう意味ではないよ。


 神通    あの……す……すみません……。


 カワチ   いやいや、君が悪いわけじゃないよ神通。悪いのは、この信楽焼のタヌキのほうだよ。


 ヒナセ   あ。ひどい。


 カワチ   君がこういう無謀な計画を立てて実行するたびに、何度でも言ってやるさ。
       じゃないと、分からんヤツだからな。


 ヒナセ   ……レーコさん、怒ってる?


 カワチ   かなり本気でね。


 ヒナセ   ホントにごめん。


 カワチ   (息を大きく乱暴に吐く)



        こんこん、と小さなノック音。



 カワチ   誰だね?


 声     私だ。神通を迎えに来た。


 カワチ   ……那智か。お入り。


 那智    失礼する(嫌な音を立ててドアが軋みながら開き、那智が入ってくる)
       長門たちから話は聞いた。明日、神通も連れて行くなら、そろそろ休ませてやったらどうだ?


 カワチ   ……あ。


 ヒナセ   すっかり忘れてた。


 那智    まったく、ひどい提督たちだな。


 ヒナセ   (那智の意図に気がついて)じゃ、お願いしようか。
       神通、明日の朝の作業は……


 神通    (表情が曇る)


 ヒナセ    ……あ、いや、やっぱりやってもらおうか。
        私は明日、たぶん寝坊するので、私の代わりに鶏小屋の玉子を回収してくれる?


 神通    (にこ、と笑って)了解しました。。


 ヒナセ   よろしくね。じゃ、おやすみ。
       那智も、よろしく。


 那智    うむ承知した。お先に失礼する。
       (神通を促して部屋から出ようとしたところで立ち止まって振り返る)
       ……アキラ、妙高姉(あね)から伝言だ。
       「今夜はゆっくりなさいませ。ただし、とぐろを巻かない程度に」以上だ。


 カワチ   あ……ああ。分かった。
       おやすみ那智、神通。



        那智は神通を伴って、部屋を出て行く。司令官室の扉が、ギギ…っときしんだ音を立てて閉まった。



 ヒナセ   ……ドアを取り替えないと。


 カワチ   君が本部に行ってる間に、直しておくよ。


 ヒナセ   ………(意味ありげにカワチを見ている)


 カワチ   ……なんだい?


 ヒナセ   んにゃ……。


 カワチ   那智のことだろう?


 ヒナセ   ……君の艦(ふね)だしね。
       ただまぁいつの間に? とは思った。


 カワチ   例の一件以来だね。今のは職務じゃなくてプライベートとして来たんだろ。
       ちなみに、妙高さんもプライベートでは名前で呼ぶよ(うふうふと嬉しそうに言う)


 ヒナセ   ……あそ。好きにハーレム形成してろ。
       とにかく問題がないのならそれでいいよ。


 カワチ   なんだい? 妬いてくれてるのかい?


 ヒナセ   それ、ゼッッッッタイにないから!!


 カワチ   そうか、それは残念だ。私は君と鳳翔さんのあいだにある、誰にも割り込めない関係に
       いつも嫉妬しているのだけれどね(にっこにっこ笑いながら)
       特に仕事中、執務室で見せつけられるのは、実に心が苦しい。


 ヒナセ   だから! そういうのは止めろって、何度言ったらわかるかな!!
       私はそういうの――


 カワチ   そんなに照れなくてもいいじゃないか。


 ヒナセ   照れてない!!


 カワチ   (ヒナセを捉えて首に腕を回してヘッドロックし、顔を近づける)まぁまぁ。今夜は何もなければ、
       私は妙高とベッドの上でデートの予定だったんだ。それがオシャカなったからな。このオトシマエは
       きっちり払ってもらおうか。


 ヒナセ   ばっ……マジで止めてよね!!(河内の顔を遠ざけようと押すが、動かない)


 カワチ   (耳元で)まぁそう言わずに、一杯付き合ってもらおうか。
       (冷えたサイダーをヒナセの頬にペタと付ける)


 ヒナセ   ひゃ!!


 カワチ   (ヒナセから離れてにっこりと)どうだい? タネも仕掛けもある手品は?


 ヒナセ   ……妖精さんか……。


 カワチ   ご明察(カワチの肩の上、髪の中から妖精さんがピョコと顔を出して敬礼する)


--------------------------------------------------------------------------------
 次でラスト(たぶん。←

http://www.studiol.co.uk/


プライベートエリア・5

Date: 2017/07/18(Tue) 01:50 [1299]

 その5 ここを書くのに難儀してました。←
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 那智   ……再会した時、足柄は……さっきも言ったが、建造時のことをはっきりと憶えていた。
      当時の建造順、養育艦が誰だったか、そして私たち姉妹全員のこと。
      実は私もすべて憶えていてな。ひと目見てあの足柄だとすぐに分かった。
      後年再会した妙高姉も羽黒も同様にすべてを憶えていて、全員が一目でお互いを認識している。
      それまで他の妙高型と一度も邂逅したことがないならば、単に同型艦認識を勘違いしただけだ
      ということになるだろうが、そうじゃない。全員、他の妙高型と同じ隊にいたことがある。
      彼女らとはこのようなことはなかった。


 カワチ  (速記で書き付けながら)なるほど。


 那智   足柄と再会した夜は、提督の計らいもあって、二人きりで部屋で飲んでいた。
      足柄はあれでも酒に強くてな。


 カワチ  妙高型は、全体強い子が多い印象だね。君ら姉妹は特に強いなと、感じるけれども。


 那智   そうか。
      提督から差し入れられたダルマはもとより、私所有のダルマも空けてしまったな、あの時は。
      ややハイペースで飲んでいたのは間違いない。そのうちにいい雰囲気になってな。
      酔っ払いが酒の勢いでコトに及んだと言われればそれまでだが……。
      (何かに気がついたような顔になり)………(考え込む)


 カワチ  (那智の様子に気がついて顔を上げ)どうしたね?


 那智   ……どちらからともなくと思っていたが、違うな。
      十年以上前の話なので記憶があやふやになっているが、たぶん、積極的に誘導していたのは
      足柄のほうだ。
      私は何度かはぐらかしたんだが、それでもなお食いついてきたというか。


 カワチ  ふむふむ(相槌を打ちながら、しかしカワチの目が意味ありげに動く)


 那智   「気がついたらそうなってた」というのはフェアじゃないな。誘ってきたのは足柄だが、
      それをいいことに、自分の衝動に逆らわなかったのは私だ。


 カワチ  まぁ、それは悪いことではないと思うよ。


 那智   貴様ならそう言うだろうな。


 カワチ  まぁね。これが人間なら兄弟姉妹同士の性行為は大いに問題アリだが、君たちには
      そのあたりのタブーがないからね。『型』はあくまでも『型』であって、『血縁』ではないから。


 那智   ヒトはときどきそんなことを言うが、どういう意味だ?


 カワチ  全部がそうというわけではないが、とあるレベル以上の生物は『血縁』というもので繋がっていてね。
      実際的には遺伝子と染色体という、君たちで言うところの設計図と根幹情報のようなものだ。
      そしてこの遺伝子が繋がっていることを『血縁』や『血』という言語概念で表現している。
      この場合の『血』は単純に『blood』という意味ではない。それはわかるかい?


 那智   ……うむ、なんとなくだが。


 カワチ  OK、なんとなくで十分だよ。
      で、ここからが本題だが、たとえば自分の直接かつ異性の親や子、きょうだいとセックス…
      …生物全体で話をしようか。つまりは生殖……交尾交配だな……をして子ができたとする。
      これを『血が濃い』と称して、あまり良くないこととしている。


 那智   何が良くないのだ?


 カワチ  血縁が近いもの同士の生殖だと、非常に似通った遺伝子を使った次世代ができる。
      遺伝子というのは、遺伝する因子のことだよ。優秀・有益な遺伝子だけが入っている
      のであればあまり問題はないのかもしれないが、先天的な病気や障害などのマイナス因子も
      遺伝子情報として入っているんだ。
      今、「優秀・有益」や「マイナス因子」と言ったが、本来、遺伝子が持つすべての因子は、
      “未来への可能性”という意味しか持っていないんだ。
      たとえばの話。現在のキリンは、現在の生息環境下で生きるための最適進化した姿だが、
      この先気候の変化やらなにやらで食料となる背の高い木が急激に消失して、彼らの蹄の高さほどにも
      ならない草しか残らなかったら、あの首が災いして種の存続危機に陥るだろう。
      つまり、『首が長い』という遺伝因子は、現時点では種の存続のための有益な因子だが、状況が変われば
      種の存続すら危ぶませるマイナス因子になる、というわけさ。


 那智   ……(ちょっと考え込んで)今装備している兵装が、現在の世界最高水準最高性能であっても、
      時と場合によってはそれが徒になって死活問題に発展することがある……ということか。


 カワチ  さすが那智。飲み込みが早いね(満足げに大きく肯く)
      次世代が生み出される際には遺伝子の組み換えが行われるが、
      これは親となる二個体から得た遺伝子情報が使われる。
      顔かたち体型体格体質。身体能力。性格や思考の方向性……出現は多岐にわたり、
      『顔は父親に似ているが後ろ姿は母親そっくり』だとか『性格は母親寄りなのに、
      考え方や話し方は父親と同じ』などという個体が生成される。
      つまり、どちらかの親の完全なクローンではなくて、両方の性質を兼ね備えた次世代が生み出される。
      生物はそうやって常に進化を続けてるのだよ。


 那智   ……ふむ。


 カワチ  さて、話のはじめあたりに戻るが、親や子、あるいはきょうだい間で生殖が行われた場合、
      親となる二個体から得られる遺伝子情報は、重複するものが多いということになる。
      その場合に考えられるデメリット……つまりマイナス面はなんだと思うね?


 那智   (ちょっと考えて)病気や障害が発現しやすくなる……のか?


 カワチ  その通り。もちろん、マイナス面ばかりが発現しやすくなるわけではないようだがね。
      大昔の話ではあるが、王族や貴族などが優秀な遺伝子を残す目的で、同族婚姻を繰り返していた時代もあったということだ。
      もっとも、数世代後には虚弱者ばかりが生まれ夭折することが多くなってきたため、
      極端な同族婚は止めているという話だ。


 那智   (真剣な顔で考え込んで)……たとえば、私と足柄の設計図を持ち寄って新しい艦を作ったとして、
      意図して長所だけを寄せ集めることが、人間や生物の生殖ではできない……ということだな。
      時には短所ばかりが選択されて、不具合の多い艦ができる、と。


 カワチ  (さりげなく自分と足柄を例に出した那智が微笑ましくてくすりと笑い)
      ざっくり言えばそういうことだね。
      君たちをたとえとして使うなら、二個イチで建造しなければならないとして、
      妙高型の設計図を二艦使うのと、妙高型と別型の艦(ふね)の設計図を一艦ずつ出して使うのと
      どっちがより進化した艦が出来上がる可能性が高いかな、という話だね。


 那智   なるほど。……ふむ。遺伝とやらの基礎はなんとなく理解した。


 カワチ  さらに深い話になるが、遺伝には優性遺伝と劣性遺伝、そして隔世遺伝というのがある。
      「優性・劣性」は遺伝の質ではなくて、単に遺伝のしやすさのことだよ。
      わかりやすいところで、「父親似・母親似」などを決める因子だね。これによって、
      姿形がよく似たきょうだいや、ぱっと見他人かと思うようなきょうだいが生まれる。


 那智   ふむ。ではカクセイイデンとはなんだ?


 カワチ  直上の親ではなく、二世代以上を経て出現する遺伝のことだね。
      両親共に右利きなのに子だけが左利きで、調べてみたら三世代前に左利きがいたとか、
      家族の誰とも似ていないが数代前の先祖にそっくりだ……というようなパターンがこれにあたる。
      実は私の容姿がそうでね。親や兄たち、祖父母とも似ていないのだが、祖父に言わせると、
      高祖父……つまり祖父の祖父にそっくりなのだそうだ。


 那智   祖父の祖父……(指で数えて)……四代前か。


 カワチ  そうだね。


 那智   貴様のその容姿から想像するに、ずいぶんとハンサムな提督だったのだろうな。


 カワチ  (肩をすくめて)ご婦人方によくもてたそうだから、それなりにハンサムだったかもしれないね。
       今話したいくつかのことから、遺伝子情報が似通っていると次世代を形成するさまざまなものが
       遺伝子的に濃くなるのは分かったと思う。しかしだ。たとえば、うまみ調味料を入れすぎると、
       美味くなるどころか逆に不味く感じるように、遺伝子情報も似通ったものが重複しすぎると、
      優秀とされている遺伝因子も、その固体にとって害をなす因子になることがある、ということだろう。
      また、異なる遺伝子情報の結合は多様化をもたらすが、似通った遺伝子情報の結合では多様化を
      引き起こす条件が少ない。
      生物の進化は、その多様性をもって、生存環境への順応をしていく先にあるのだと思う。


 那智   理解できたような、そうでないような。
       なんとなく煙に巻かれた感があるのは否めないな。


 カワチ  ……説明が下手ですまないね(苦笑する)


--------------------------------------------------------------------------------
 書いては消し書いては消し……で二週間くらいくらい格闘してました。
 ひさびさに、資料の読み過ぎで大迷走してみたりも。
 この世界においては「艦娘はヒトではない」ので「こういう知識はほぼ持っていない」という前提があり、その上で「専門家ではないが非常に頭の良い人間」が、「自分の理解している範囲で、この手の知識がほぼない艦娘に、説明している」……というシチュエーションって、難しいな……と思いました。
 …が、まとめる時は、たぶんかなり削っちゃうんじゃないかなぁって、思います。かなり増長しすぎてる。

 さて、次回から後半戦…(苦笑。

http://www.studiol.co.uk/


Deep inside・14

Date: 2017/07/09(Sun) 04:39 [1298]

 その14
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

        司令官室の扉を蹴破って、日向と長門が飛び込んでくる。
        日向が神通の持っているナイフを叩き落とし、羽交い締めにして確保する。
        長門は散乱している飛来物をかき分けて、司令官デスクの下からヒナセを引きずりダ出す。



 長門    ……無事か?


 ヒナセ   (引きずり出されながら)……なんとか……。
       耳が割れるかと思った。もうちょっとお手柔らかに頼むよ。


 長門    すまないな。可及的に速やかに、かつ被害を最小にとどめて、
       神通の足を止めさすには、これしか思いつかなかった。



        電気が点けられて、カワチと鳳翔が入ってくる。
        司令官室にドラム缶がいくつも散乱している。
        飛来物はこのドラム缶で、大きな音が出るよう、中は空のようだ。



 カワチ   大丈夫ですか? 司令。


 ヒナセ   ……手荒な真似は止してよね。誰の立案なの?


 日向    すまない、私だ。


 ヒナセ   ヒナタか……(はー、とため息をつく)
       ああ、神通は解放して。もういいでしょ。


 カワチ   しかし……


 日向    (心配そうな顔)


 ヒナセ   ナイフを奪ったなら、もういいです。
       ……ところで、この芸術的な投擲をしてのけたのは、誰?


 カワチ   武蔵だよ。海から……ほら。



        カワチが指さした先の海に、『武蔵』の黒い影。
        てっぺんの戦闘指揮所に武蔵と隼鷹姿とドラム缶の影。



 ヒナセ   (窓からそれを見て、ため息をつく)
       (振り返って)ヒナタ、神通を放してやって。


 日向    ……わかった(神通を立たせて、離れる)


 ヒナセ   (神通の前に行って)すまなかったね、神通。
       ……落ち着いた?


 神通    ……はい……申し訳、ありませんでした……。


 ヒナセ   いや、謝るのはこっちなんだよ。
       君が今夜、ここに来るように仕向けたのは、私でね。
       一部フェイクの情報を流したんだ。
       まさかナイフを持ってくるとは思っていなかったから、ちょっと大ごとな感じになっちゃったけど。


 神通    すみません……私……わた……


 ヒナセ   (室内にいる他の連中を見回して)ウチの専任艦……特に戦艦クラスはやることがおおざっぱでね。



        日向、長門が心外だと言わんばかりに顔をしかめる。



 ヒナセ   でもさ、みんな私やカワチによく仕えてくれるし、小さな艦たちの面倒見もいい。
       どう? 彼女らと一緒にやっていけそう?


 神通    ………。
       私……もう、駄目です……提督を……


 ヒナセ   ………。


 神通    だからもう……解……


 ヒナセ   解体はしないよ。


 神通    ……!


 ヒナセ   その必要はない。


 神通    でも私……おかしいんです。
       はじめはそんなことないのに、だんだんと、提督の一番でいたくなって……
       提督と私以外いらないって……そう、思ってしまって……
       でも……でも、そんなこと……できっこないのに……でも……それが、すごく嫌で……


 ヒナセ   (ガリガリと頭を掻く)君はたぶん、人間を好きになりすぎるんだ。
       それは悪いことではないけど、危険なことでもある。
       あと、君は艦娘を大勢持っている提督や、大規模の基地にいるよりも、
       ここみたいに小さくて、所属の艦娘がコロコロ変わるところがいいのかもしれない。
       どうだろう? ここで基地専任艦として、正式に着任してみないかい?
       それで様子を見て、それでも駄目だと君が判断したら、私にそう申告して下さい。
       その時は、私が責任を持って、君を解体します。


 神通    ……!


 ヒナセ   でも憶えていておいて。
       私はね、資材にするしかないほど損傷している艦や、うまく建造できなかった未生成艦しか解体したくないんだ。
       君たちには、ヒトにより近い『心』がある。そんな君らを解体するというのは
       私にとっては人を殺すことと同じくらいに罪深いことなんだよ。
       だから、そんなことを私にさせないよう、君もできる限りの努力をしてほしい。


 神通    はい……。


 ヒナセ   それと、これは提案なのだけど。


 神通    はい?


 ヒナセ   もし君が基地専任艦となることに同意をしてくれるなら、鹿屋に一緒に行こう。
       一緒に行って、その場でできる手続きは、すべてやってしまおう。
       どうかな?


 神通    ………(しばらく黙っていたが、やがて、こくり、とうなずく)


 ヒナセ   じゃ、決まり。
       (顔を上げて、カワチに)カワチ副司令。明日の旗艦は長門で行きます。


 カワチ   ……は? はい、了解しました。
       しかし司令、足が速い艦をと、おっしゃいましたが?


 ヒナセ   うん。ちょうど良いから、『長門』と『鳳翔』の最速航行の実験と訓練をやりながら行こうかなって。


 カワチ   つまり、今から罐を用意しろ、と?


 ヒナセ   明石と日向がいれば、なんとかなるでしょ(にへら、と笑う)


 カワチ   ………(渋い顔)


 日向    (同じく渋い顔で)わかった。明石を叩き起こして何とかしよう。
       『鳳翔』はともかく『長門』は湾内に置けないから、『明石』を外に出すぞ。妖精も総動員しなくてはな。


 ヒナセ   うん、それでいいです。ありがと。よろしくお願いします。
       (周りを見回して)さて、みんな。今日のところは解散しよう。
       日向、明日の出発は、一三〇〇カッコ「予定」で。


 日向    朝イチじゃないのか?


 ヒナセ   なんか疲れちゃったからさ、ここの後片付けは明日の午前中にやって、のんびり出たい。
       高速罐を積むなら、午後から出てもなんとかなるでしょ。


 日向    ………。
       わかった。
       まったく、不器用な司令官だな。


 ヒナセ   (すっとぼけて)何のコト?


 日向    ま、好きにするが良い。
       鳳翔と長門は一緒に来てくれ(作業のために部屋を出て行こうとする)


 鳳翔    はい。


 長門    うむ。


 鳳翔    では提督がた、お先に失礼いたします(一礼して、日向の後を追う)


 長門    (出て行こうとして、ふと立ち止まり)
       提督、武蔵と隼鷹はこのまま直帰させる。明日の朝にでも労ってやってくれ。


 ヒナセ   了解。そのようにするよ。
       艦を『明石』に付けたら、君たちも早く休んで。


 長門    うむ、了解した。では失礼する。



        日向、鳳翔、長門は、それぞれの作業準備のために、部屋を出て行く。

--------------------------------------------------------------------------------

http://www.studiol.co.uk/


『プライベートエリア』4.5

Date: 2017/07/08(Sat) 06:06 [1297]

 その4.5(またそんなことを…)

 “離れ”に移動して、さて前段作戦(は?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

○同夜 数分後 離れ
       那智を連れたカワチが入ってきて、電灯を点ける。



 カワチ  今日はまたきれいに片付けてあるな。前に使ったのは誰かな。


 那智   貴様ではないのか? ……その……足柄……と。


 カワチ  いいや。足柄とは私の部屋でねぇ……(見回して)これだけきれいに整えるのは、たぶん隼鷹だな。


 那智   ………(しれっと足柄とのことを肯定されたので、憮然とした顔になっている)


 カワチ  知っていたかい? 隼鷹はあれでもいろいろときちんとしててねぇ。
      さすが元客船というべきか(クスクス笑う)
      おかげで、ウチの武蔵は余所の子よりも格段に行儀がいいんだよ。
      やはり育て方なのかも。提督(主人)はもとより養育担当艦の性質が大いに影響するようだ。


 那智   私にはそのあたりのことはよく分からないな。建造から二〇年近く経っている。
      以前言ったことがあると思うが、私を育ててくれたのは同じ那智でな。……まぁ、初めての相手も
      その那智だった(カワチと目を合わせずにつぶやくように言う)


 カワチ  (別室にあるたぶん妖精さんが用意しただろうウヰスキーとつまみのセットを持って出てきて)
      ひどい提督がいるもんだ。養育担当艦が同種艦なのは構わないが、初めての相手をさせるのは
      確実に軍規違反だ。……理由は知らないが、まぁなんとなく予想はつく。
      (那智を促して同時にソファに腰掛け、グラスに氷とウヰスキー入れてオンザロックを作る)
      自分と同じ顔でほぼ同じ性格の存在が相手というのは、正直ぞっとしないよ。
      どちらの立場を想像しても、私には耐えられないな(グラスの一つを那智に差し出す)


 那智   (グラスを受け取りながら)私は、そのあたりもよく分からなかった。今でもよく分からない。
      足柄は私と同じ養育艦だったから、もしかしたら私と同じ相手が初めてだったかもしれんな。
      (ぐっと一口飲む)


 カワチ  (グラスをゆっくり傾けながら)……ははぁ……なるほどな。
      なんとなく納得したよ。


 那智   うん?


 カワチ  足柄がどうして君に執着するのか……って話さ。


 那智   ……初めての相手が『那智』だった……からか。


 カワチ  真相はそう簡単なことではないかもしれないがね。単に『那智』だったから……ではないかもしれんよ。


 那智   どういうこと?


 カワチ  突っ込んだことを訊いて申し訳ない、と先に謝っておくが、足柄とはいつ関係を持った?


 那智   ……は……?


 カワチ  誤解が生じないように直截に言おうか。
      初めて足柄と寝たのはいつだ?


 那智   (あからさまに嫌そうな顔をする)………。


 カワチ  嫌なら答えなくてもいいよ。単にこれは自分の予想を補完したいだけの話だから。


 那智   いや……それについては、別に構わない。
      一度姉妹がばらばらになって、再会してからだ。私が当時仕えていた提督のところに赴任してきたんだ。
      前任者が戦死したらしい艦娘を、提督が丸ごと引き受けてきた。その中に足柄がいた。そして……


 カワチ  そして?


 那智   ……その日のうちに……。


 カワチ  なるほど。もう一つ突っ込んで訊く。
      どっちが声を掛けた? つまり……コトに及ぶに当たって。


 那智   ……貴様の出刃亀趣味に付き合わされているのではないだろうな?


 カワチ  そう思いたければ思うがいいよ(肩をすくめる)
      ただまぁ……君と足柄の件については、先日足柄と寝た際にいろいろ思うことがあってね。
      これはきちんとしないとまずいなと思った……と、正直に言っておこう。


 那智   ……ふむ(微妙に納得していない顔)


 カワチ  私はあまり人に褒められた人間ではない。ことセックスモラルについては、たぶん最悪の部類だ。
      だからこそ、君たち姉妹が潜在的に抱えているかもしれない問題については、
      早々に方向性だけでも示しておきたい、と思っている(真面目に言う)


 那智   セックスモラルが低いのは確かだな。
      貴様は私が知っている提督の中でも、しょっちゅう相手が違う。
      ここに来てからは妙高姉(あね)だけっぽいが、実際にはそうでもなさそうだ。


 カワチ  ここでは妙高さんだけだね。ここ以外の場所に出張の際は、まぁそれなりに。
      人間相手ではあるけどね。


 那智   ……貴様のその言葉を、とりあえずは信じようか。
      姉上が世話になっている良人でもあるしな。


 カワチ  それは光栄(にこ、っと微笑む)


 那智   言葉を信じるだけで、貴様自身を信じるわけではないぞ。


 カワチ  そこはどうぞ、好きにしてくれ。


 那智   そのようにさせてもらう(グラスのウヰスキーをぐっとあおる)
      ……私と足柄が今の関係になったのは、足柄と再会したその夜だ。
      新しい艦娘が着任した際、早く環境に慣れさせるために、元からいる艦娘としばらくペアにしておく提督がいるが、
      当時の提督もそのタイプでな。姉妹艦が良かろうということで、私と同室になった。
      当時は妙高型重巡は私だけだったな。
      足柄は……リセットされてほぼ建造時の状態に戻されてはいたが、だからかな。建造時の提督のことと
      私たち四姉妹のことは憶えていた。会ってすぐにその話が足柄の口から飛び出してきた。


 カワチ  ……那智。すまないがこの話、メモを取らせてもらっていいだろうか?


 那智   なんだ? ヒナセ司令の真似事か?


 カワチ  悲しいことに、足柄との一件で、司令に対応と詳細な報告を命じられていてね。
      ……ま、君を呼びつけたのも、その一環というわけさ。


 那智   ……仕事の一環だったのか(憮然とする)


 カワチ  仕事の一環でもあるが、自分の艦娘たちの監督と問題解決は提督の責任だからね。
      君たちはそんなことないかとは思うが、感情的にぎくしゃくするのは、今後の作戦行動に
      差し障りが出る可能性がないとも限らない。それでは私が困るし、君たちもお互いに嫌だろう?
      ……我々の仕事は海で死ぬことじゃない。海で戦って生きて戻ることなのだから。


 那智   ……そうだな。
      メモくらい好きに取るがいい。どのみち私たちは貴様の所有物だ。今はな。


 カワチ  ありがとう(上着を脱いで、内ポケットから手帳とペンを取り出す)
      私の「所有物」という言われ方は心外だが、まぁ良かろう。今話題にすべきコトはそこじゃない
      (手帳を開いていくつかのことを速記のようなモノで書き付けて、そのまま顔を上げずに)
      ……お待たせ。つづけて、どうぞ。


 那智   ……ふん。

--------------------------------------------------------------------------------
 次は、ちょっと面倒なお勉強の時間…(遠い目。

http://www.studiol.co.uk/


Deep inside・13

Date: 2017/06/27(Tue) 15:23 [1296]

 『プライベートエリア』と交互に連載状態になってますが、一部テーマかぶりしてるからしゃーないかなって…(明後日を見やる。

 その13
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

○同夜 二二四〇(フタフタヨンマル) 司令官室
        ヒナセと鳳翔が居残って仕事をしている。



 ヒナセ   鳳翔(おかあ)さん、そろそろ上がって下さい。
       明日は早いですし。


 鳳翔    いえ……まだ終わっていませんので。
       提督のほうこそお休みになって下さい。


 ヒナセ   私は艦の中で寝られるので。それに……


 鳳翔    はい?


 ヒナセ   いえ……。


 鳳翔    ………。
       明日の旗艦はわたくしではないのでしょう?


 ヒナセ   (書類から目を外さず)……ええ。大淀です。
       即行で往復したいので。


 鳳翔    でしたら、もう少しお付き合いいたします。


 ヒナセ   いや……鳳翔さんには、艦載機で索敵と直掩をお願いしたいので、
       早く休んで、明日に備えて欲し……(不穏な空気を察し、顔を上げて鳳翔を見る)


 鳳翔    ………(超絶渋い顔)


 ヒナセ   ………(目が泳ぐ)
       お、お茶を入れてくれませんか? 飲んだら今日は上がります。
       目処が付きましたから。


 鳳翔    ……了解いたしました。



        鳳翔、書類をまとめて立ち上がり、書類棚に戻して給湯に消える。
        ヒナセはその様子を見送り、ホッと息を吐くと眼鏡を外し、眉の根元を
        親指で押さえて顔をしかめる。



 ヒナセ   ……まぶし……この、ポンコツ目め。



        デスク上に置いている室内電灯のリモコンに手を伸ばして取り、ボタンの一つを押す。
        ピッと軽快な音が鳴って、室内灯が一段階光量を落とす。
        ヒナセは顔をしかめたまま、二回、三回とボタンを押し、そのたびにピッと音が鳴って
        部屋が徐々に暗くなる。最後の一押しで「ピー」と小さく甲高い音が鳴ると同時に明かりが消える。
        月は出ていず、星明かりのみの夜。
        暗がりの中。ヒナセは窓辺に立ち、海を見る。波の音が聞こえる。

        コツコツ…と控えめなノックの音。



 ヒナセ   (眼鏡をかけ直し、音の方にゆっくりと向き)……誰かな?


 声     あの……


 ヒナセ   ああ……どうぞ。



        扉を開けて入ってくる黒い影。
        中が暗いのでたじろいだ様子を見せる。



 ヒナセ   こんな時間に何かな? 神通。


 神通    ……あの……。



        ヒナセは左目を閉じ、右目で神通を見た。
        胸の前で組まれた手に、ナイフがある。



 ヒナセ   (つま先に力が入る…が、表面上は平静を装っている)
        どうした?(小首をかしげる)


 神通    あの……明日……


 ヒナセ   うん?


 神通    鹿屋に……行くと、伺って。


 ヒナセ   うん、行くね。それがどうかした?
       あ、もしかして、お土産のおねだりかな?(軽くおどけて言う)


 神通    いえ……その……


 ヒナセ   必ず持って帰るねって安請け合いはできないけど、それでもいいなら受け付けますよ。


 神通    わたし……わたし……を……


 ヒナセ   ………。


 神通    他所に……やらないで……くだ……さ……
       私……(手に持ったナイフがカタカタと揺れる)


 ヒナセ   危ないからさ、それ、仕舞おうか?
       こっちにくれるかい?(ゆっくりと神通に手を差し伸べる)


 神通    こ……ここ……に……


 ヒナセ   うん。大丈夫だよ。余所にはやらない。だから……(じり…と神通のほうに踏み出す)


 神通    嘘です!! 提督……提督は、私を……私を他所にやるために……
       やるために……鹿屋に……行く、んでしょう!?
       (手に持ったナイフをさらに固く握りしめる。そのはずみで刃がヒナセの方を向く)


 ヒナセ   違うよ。落ち着いて。落ち着いて、神通(差し出した手を引っ込めて、両手のひらを神通に見せてかざす)
       君は、余所にやらない。その話をしに、明日鹿屋に行くんだ。ホントだよ。


 神通    ……本ト……ですか?
       ここに、ずっといて……いいの?


 ヒナセ   本当。本当。なんなら、カワチに聞く?
       このことは、副司令も承知してることだから。


 神通    ………(ホッとした様子だが、その目はヒナセと凝視している。ヒナセの言葉を信じようと内心で葛藤している)


 ヒナセ   君を、基地専任艦として、ここに引き取れないか、アサカ提督にお願いしようと思ってる。
       さっきも言ったけど、このことは、カワチ副司令にはすでに話して了承済みだよ。


 神通    ………。


 ヒナセ   君はドロップ艦の発見率が高い。ウチにとって大変有用な子だからね。
       だから……



        常にヒナセにくっついている鳳翔所属の妖精さんが、ヒナセの耳の後ろの髪の中から
        ぴょこっと顔を出す。位置的に神通からは見えない。



 妖精さん  てーとく、鳳翔さまからエマージェンシーコールを受けて、カワチ提督がこちらに向かっているとのことです。


 ヒナセ   だから……
       (胸の前で上げている両手のひらを一回結び、そして広げる。妖精さんはこれを了解の合図と受け取った)
       だから……。


 神通    ………。


 ヒナセ   (カワチがこちらに来ているのはいいとして、タイミングを間違ったら最悪の事態になるなぁ、と思いつつ)
       まずは手に持っているそれを、こっちにくれるかな? (再びゆっくりと手を差し伸べる)
       ……ところでそれ、どこにあったの? 倉庫かな? それともキッチンかな?
       (もっと有益なこと言えないのかね、自分は、と思っている)


 神通    嫌です。


 ヒナセ   (冷や汗がどっと背中を伝う感触)


 神通    これを渡したら……余所にやられてしまう……。
       前の前、がそうだった……から……。


 ヒナセ   あー……(前々回、ここに送られてきた直前に何が起こったのか、なんとなく察した)
       落ち着こう神通。さっきも言ったように、もう君を余所にはやらない。
       君を基地専任艦にする申請をするために、明日から本部に行く。それだけの話だか……


 神通    ……え……?(目が見開いて、視線が遠くなる)


 ヒナセ   (神通の様子にすぐに気がつき)ん? (急いで振り返って、神通の視線の先であろう方向を見る)
       ……え!? ちょ……っ……



        ヒナセの目が、こちらに向かって飛んでくる何かをはっきりと捉えた直後、
        それが視界いっぱいに広がる。
        ヒナセは思わず、デスクよりも低くしゃがみ込むと、飛来物はヒナセのデスクを超えて、
        司令官室の床、神通の手前に直撃する。
        続いて二波三波と飛んできて、ほぼ同じ場所に落下する。司令官室が轟音に包まれる。
        ヒナセは耳を塞いでデスク下に逃げ込み、神通は何が起きたのか理解できずに立ちすくんでいる。



 声     提督!



--------------------------------------------------------------------------------
 書いてみたら存外長くなったので、ここでぶち切り(酷い。

http://www.studiol.co.uk/


プライベートエリア・4

Date: 2017/06/21(Wed) 05:58 [1295]

その4
 結局、司令も副司令も、似たもの同士と言いますか。それとも長く一緒にいると、似てくるというのか……。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
○同夜 カワチの私室(リビング側)

       那智が来ていて、ソファに座り、膝に両肘をつけ、手を自分の前で固く握りしめている。
       口も堅くぎゅっと引き結んで、顔をゆがめて黙っている。
       テーブルの上には、ダルマとグラスとつまみのナッツ類。
       グラスには手が付けられていない。
       カワチはテーブルの対岸にいて、静かに飲んでいる。



 那智   (しばらく苦々しそうに黙っていたが、重い口を開く)……とにかく、事情と状況はわかった。
      足柄が……世話をかけた(立とうとする)


 カワチ  待ちなさい那智。君はそれでいいのか?


 那智   (カワチの声を聞きたくないというように、振り切ろうとする)


 カワチ  Wait!


 那智   っ……!(その場に縫い止められたように動けなくなる)


 カワチ  Sit-down and don't move.


 那智   ………(抵抗を試みるが抗えず、引きずられるように座る。
      座ったときには汗びっしょりになっている)


 カワチ  (那智の様子を無表情で眺めたのち、立ち上がって寝室に入り、
       タオルを持って出てきて、そのタオルを那智に差し出す)
      移動しよう。離れを予約してある。妙高にも了解は得ているから心配しなくていい。


 那智   (タオルを受け取りながら、絶望的な顔になる)


 カワチ  なに、夜は長い。話をするにしても、隣にはヒナセ司令がいるからね。
      今夜は電とお楽しみのようだし、邪魔しちゃいけない。


 那智   ……ヒナセ提督が? まさか。


 カワチ  そのまさかさ。人は見かけによらないだろう?(肩をすくめてかすかに笑う)


 那智   平和と見えたのに、ここもそうでもないのだな。


 カワチ  いや、平和さ。他の基地や鎮守府に比べれば、格段に平和だよ。
      人が艦娘を巡って争わないだけでも、格段に平和さ。
      ヒナセ司令はお堅いから、電だけだしね。ベッドに連れ込むのは。


 那智   私は……そうやって人間の相手をさせられた駆逐艦や特務艦が壊れていくさまを数え切れないほど見てきた。
      ここに送られてくる艦なぞ、ほんの一握りだ。艦娘は誰もが口をつぐんでいるが、海ではない場所で
      人間に酷い目に遭わされている艦は、星の数ほどいる。


 カワチ  そもそも人間は、戦闘という名目で君たちを間接的に傷つけている。
      君たちは戦いで疲弊していく。……が、その人間もまた然りだ。
      酷いことを承知で言えば、君たちは感情コントロールがかかっていて、恐怖を感じる部分を
      かなり削られているが、人間はそうじゃない。
      君たちに守られてはいるが、敵の砲弾や艦載機がまぢかに来れば、筆舌では尽くしがたい恐怖をこの身に受ける。
      衝動で動ければまだいいが、たいがいは体が凍り付いて身動きができなくなる。
      死の恐怖を味わい続けて平気な者は、ごくわずかで、そういうヤツはたぶんすでに狂っている。
      ……那智、『死ぬ』という意味がわかるかい?


 那智   動かなくなって解体されるか轟沈することだ。この世には存在できなくなる。
      だが、場合によっては、建造や修復の資材になる。他の艦の役に立つ。


 カワチ  人はね、那智。
      死んだらそこで終わりなのさ。死のあとには何もないし、何も残らない。
      だから人は死が怖いんだよ。
      さ、この話の続きはあちらでやろう。司令の睡眠を邪魔してはいけない。


 那智   ……わかった……睡眠!?


 カワチ  そう、電と一緒だとよく眠れるらしい。
      電からもそのように報告が上がっているよ(にっこり笑う)


 那智   (毒気を抜かれた顔になって)……わかった。今夜はお手柔らかに頼む。


 カワチ  こちらこそ。


--------------------------------------------------------------------------------
 ちょいと短いですが、一区切り。

http://www.studiol.co.uk/


Deep inside・12

Date: 2017/06/19(Mon) 05:54 [1294]

 その12 提督たちの密談は続く。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 カワチ   ところで、そろそろ本題に入らないか?


 ヒナセ   ……そうだね。
       この基地の司令官として思っていることは、まぁこれは「ゆゆしき問題」だね。


 カワチ   その心は?


 ヒナセ   カワチ副司令、当基地の主任務は?


 カワチ   様々な問題……特にメンタル面での問題を抱える艦娘たちの修復と、それに付随する観察と記録です。


 ヒナセ   そのとおり。
       あと、そういう問題の諸元となっているものの特定と告発も、実は秘密裏に行ってます。
       もっとも、たいがい被疑者死亡であることのほうが多いので、告発まで行ったのは、
       過去に二回しかないけどね。


 カワチ   ……それで、あんなに執拗なメモを取るわけか。


 ヒナセ   まあね。しかしまぁ、これは完全なる副産物でしかないけどね。
       艦娘たちに害をなす連中に同情の余地はないし、できることなら根絶して欲しいところ
       ではあるけど、だからといって、私はMPでも軍検察や軍事裁判所の検事官
       でもないから、正直、誰かを裁くための準備をするのは、あまり良い気持ちではないよ。


 カワチ   ふむ。


 ヒナセ   さて今回の件だけど、こんなに何度も出戻ってきた艦娘は他にはいないんだよね。
       戻ってくることそのものについては、特に問題とは思わない。
       気がつかれなかったり隠されたりして、沈んでしまったり、秘密裏に処理されてしまう方が
       問題が大きいと私は思う。
       提督たちの元で日々量産されているからといって、艦娘たちは使い捨てしていいものじゃない。
       兵器とはいえ、人格があり感情も持っているからね。


 カワチ   それはそうだ。そのように士官学校でも、艦娘は大事に扱え、しかし馴れ合うなと叩き込まれるからな。


 ヒナセ   その割には、扱い方が酷かったり馴れ合いすぎてたりして、軍規違反が横行してるけどね(チラリとカワチを見る)


 カワチ   まぁそう言ってやるなよ。
       ……我々は戦争をしているんだ……それも、得体の知れないモノを相手にだ。
       どこかでガス抜きをしてやらないと、人間のほうが先に参ってしまうよ。
       なにせ我々には艦娘のようなメンタルコントロールが施されてないからな。
       だからといって艦娘に対してどんな扱いをしていいということにはならんがね。


 ヒナセ   (肩をすくめる)まぁそんなこんなだから、どこかおかしいなら、ここに預けられたり戻されるほうが、
       万倍もマシだと、私は考えてる。もちろん、ほんのわずかな運がいいかもしれない子たちだけが
       ここに来ているわけだけど。


 カワチ   そこはもう致し方ないところだな。すべてを受け入れるには、ここのキャパでは小さすぎるし、
       問題が露見するのもわずかな数しかいない。


 ヒナセ   分かってる。
       私がここでできることなんて、砂粒ひとつくらいの分量でしかないよ。
       問題が発覚した子すべてを受け入れることなんて、とうていできない。


 カワチ   ………。


 ヒナセ   話を戻そう(ふぅっと息を吐く)
       とにかく目の前の問題をどうにかしないと。
       私はね、あの子を引き取ろうかと思っている。


 カワチ   君の艦(ふね)として?


 ヒナセ   いや……とりあえずは基地専任艦として。
       軽巡は運用しやすいから。


 カワチ   演習や遠征旗艦として運用するといいかもしれないな。


 ヒナセ   ……いや、遠征旗艦はまだ無理かな。
       ここに何度も戻ってくるのは、思い違いじゃなければ「私のそばにいたい」からだと踏んでいる。


 カワチ   なるほど。


 ヒナセ   今は君もいるから、ちょっと様子が変わっているかもしれないけど、とにかく『提督の』役に立ちたい、
       それも直接……って思ってる節があるんだな。もしかしたら潜在意識があるだけで
       本人に自覚はないかもだけどね。


 カワチ   思い当たる節があるんだな。そう言うということは。


 ヒナセ   まぁね。
       褒めるとさ、はにかんだり困ったそぶりを見せるんだけど、一瞬だけ口の端が、実に嬉しそうに笑うんだよ。
       気がつかない?


 カワチ   そういえば……。なるほど、これは根が深そうだ。


 ヒナセ   余所に回されれば、そのたびにリセットされて無改造状態になるじゃない。
       無改造だと運用しづらいから、そこそこのレベルに上がるまで、海域に出してもらえないことが多いと思うんだよね。
       あの子は自分のレベルが上がるまで待てないタイプなんじゃないかな。
       だから、『提督』の役に立てないって思い込んじゃって、不調に陥る。
       ……詐病の可能性も捨てきれないけどね。


 カワチ   詐病だとしたら、論文が一本書けるくらいの症例になるな。
       そんな高度なことをした例は、今までないだろう?


 ヒナセ   公式の記録にはないね。もしかしたら、本当に初めてのケースかも。


 カワチ   もしそうなら、艦娘も、ごくごく緩やかではあるけども、進化しているってことになるかしれないな(やや興奮気味に)



 ヒナセ   (その様子を見て、ため息をつく)それもあってさ、手元に置こうと思ってんの。
       もし本当に進化していて、それが露見でもしたら、それこそ処分されかねない。
       ここに置いておけば、私が口をつぐんでいる限りは、その心配はないからね。


 カワチ   まぁそうだが……ちょっとリスクが高くないか? その仮説が事実だったとしたら。


 ヒナセ   まぁね。とにかく、姫提督に直接相談した方がいいかもしれない。
       早いがいいだろうから、今日アポ取って、早ければ明日にでもちょっと本部に行ってこようと思う。
       急にで悪いけど副司令、留守番をお願いできますか?


 カワチ   了解しました。で、誰で行きます?


 ヒナセ   うーん……そうだなぁ……足の速い子。あと鳳翔さんとデン。


 カワチ   (えへら…と笑う)


 ヒナセ   ……ん? なに?


 カワチ   そこはいつものメンバーなんだなって。


 ヒナセ   デンはどこにでも連れて行ってるでしょ。


 カワチ   いや、鳳翔さん。


 ヒナセ   美味しいゴハン、食べたいじゃない。


 カワチ   ………。


 ヒナセ   なによ?


 カワチ   いや……君こそ艦娘の運用を微妙に間違っているなと思っただけだよ。


 ヒナセ   ……艦載機の哨戒と直掩があったほうが、安全でしょ!


 カワチ   はいはい。そういうことにしておきましょうか(ツボに入って肩が震えている)


 ヒナセ   ………(それを見て、盛大に顔をしかめる)


--------------------------------------------------------------------------------
 …うっかり本音が出ちゃうダメ司令でありましたwww


【拍手】ぱちぱち、ありがとうございます! >16日。

http://www.studiol.co.uk/


プライベートエリア・3

Date: 2017/06/16(Fri) 08:56 [1293]

 距離感って大事だと思うんです。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

○前景 木漏れ日の中。
       ヒナセとカワチ。
       すでにジョギングではなくて散歩になっている。



 カワチ  ……さて、どうしたものかな。


 ヒナセ  百戦錬磨のカワチ提督でもそういうんだ(くすり、と笑う)


 カワチ  やめてくれ。人聞きの悪い。


 ヒナセ  どうせ、私たちふたりしかいないじゃない。


 カワチ  さてどうかな。あんがい日向あたりが、そのへんに潜んでて聞いているかもしれんよ。


 ヒナセ  それこそ人聞きが悪いなぁ。日向は確かに神出鬼没なところはあるけど、
      言うほどでもないし、そんなにしょっちゅう立ち聞きはしてないよ……たぶん。


 カワチ  たぶん。


 ヒナセ  あの子は単に、そういう星の巡り合わせにいるんだと思う。


 カワチ  そうか?
      私の目には、主人に忠実で、何かあったら守ろうと思ってる。
      だから君のそばによく潜んでいるように見えるがね。


 ヒナセ  そう……あー……。


 カワチ  思い当たる節でもあったかい?


 ヒナセ  んー……まぁね。前に仕えていた提督が、たぶん好きだったのかなって。


 カワチ   ………(期待外れに終わった顔)


 ヒナセ  伊勢が好きなんだとばかり思っていたけど……いや、たぶんそうなんだろうけど。
      提督のほうも同じくらい好きだったのなら、そりゃぁ辛い思いをしたろうなと。


 カワチ  (やれやれ、とため息をついて)
      事情がよく分からないが、あの日向にもいろいろあったということか。


 ヒナセ  ま、その話はおいおいね。
      ……となると、日向が実際にどのくらい壊れているのかちょっと怪しくなってきなぁ。
      これ以上面倒ごとが増えるのはちょっと勘弁して欲しい。


 カワチ  ……ふむ。


 ヒナセ  だからさ、頼むから面倒ごとは起こさないでよ。


 カワチ  ………(顔をしかめて)
      いきなりこっちに話を振らないでくれ。


 ヒナセ  いやいや、元々君の艦が問題だったんだから。


 カワチ  ………(やられた、という顔)失礼しました……。


 ヒナセ  方法はお任せします。私にはそのあたり、よくわからないから。


 カワチ  いつもながら、この手の話題は逃げるね。


 ヒナセ  オマエさんと違って、経験豊かじゃないからねぇ。
      若いうちにもっと遊んでおけば良かったなぁって、思うよ。


 カワチ  (肩をすくめて)やめたまえよ。そういう柄にでもないことを口に出すのは。


 ヒナセ  それは失礼。
      ……ま、しばらくは“離れ”を使うのは制限しておきましょうかね。


 カワチ  ヒナセ、そういうのは「気の回しすぎ」というヤツだよ。
      もっと端的に言えば、「要らぬお節介」だね。


 ヒナセ  あ、そ。
      やっっぱり、慣れないことはするものじゃないね。


 カワチ  まったくだ。



--------------------------------------------------------------------------------

 ヒナセはお堅いというよりも、そっち方面に割かれるべきリソース自体を持っていないと言いますか……。
 結婚生活がそれなりに長く続いていれば、ちったぁ変わったのかもしれないけど、そのあたりはすでに藪の中。そして神のみぞ知る。

http://www.studiol.co.uk/


- SunBoard -