鶴の舞う海 ―しあわせな鶴の話― 7

Date: 2017/12/07(Thu) 07:20 [1328]


 作戦参加艦艇への補給がほぼ終わって、『鳳翔』はヒナセ艦隊に返却された。仮オフィスを載せられ補給物資の一部も載せられていた飛行甲板は、見るも無惨な状態になっていて艦載機の発着ができる状態ではなかった。ここでもヒナセの怒りゲージは下降するどころか上昇をするばかりで、このあたりからことあるごとに「なんでこんなトコに……」を口走り始めていた。もう自分の基地(おうち)に戻りたい。じゃなければせめて鹿屋に帰りたい……そればかりがヒナセの頭の中でぐるぐる回っていた。

 さて物資がなくなったからお役御免かと思っていたら、今度は補給艦だけ鹿屋に戻してそのまま海域に留まれという命令が出た。補給船団護衛艦隊司令部に不穏な空気が走ったことは言うまでもない。簡単な会議(立ち話とも言う)が開かれ、さすがに戦闘海域のなかを補給艦だけを帰すわけにはいかない、ということになり、カワチ提督指揮の第二戦隊が戦闘海域の境界線あたりまで、その先は重巡『足柄』を中心とした一部の艦に佐世保までエスコートさせることにし、作戦司令部に申告。なんとか了承を得て実行することになったが、ここでも一悶着あった。寄り集まり所帯ならではのグダグダ運営と言えばそこまでの話だが、作戦司令部の人心掌握の稚拙さは目に余るものがある。
 はじめ、作戦司令部は補給艦の護衛すら裂くことすら嫌がっていた。どうやら今作戦の状況はあまり良くないようだと、この頃ではヒナセたちもうすうす感じていた。そうでなければ、単なる補給船団の護衛艦隊にまで戦闘海域への残留を命じる理由がない。結局、作戦司令部の無謀な要求を黙らせたのは、もしもの際にと持たせられていた伝家の宝刀、つまりはアサカ中将の信書であって、ヒナセやカワチの功績ではない。
『護衛艦隊を含む貸出の艦船を無駄に喪失するような運用が認められた場合には、それ相応の措置を取らせて頂く……云々』

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鶴の舞う海 ―しあわせな鶴の話― 6

Date: 2017/12/04(Mon) 01:43 [1327]

 艦娘は基本的には人間を害することはできないようにプログラムされているが、仕えている提督からの命令があれば、それを最優先で実行するようにもプログラムされている。
 “提督”は、だからこそ、ある程度の教養と品格そして冷静さを求められる役職だが、それでも結局は人間。感情ある生き物なので、理不尽なことが続けば、キれることもある。
 事実昔から、理不尽なことを強要されたことに起因する、この手の遭難事故や未遂事件は後を絶たない。だのになぜか性懲りもなく同じことが繰り返される。ヒナセが思いとどまれたのは、間違いなくカワチ少将が冷静に対応したからだ。反対に、キれそうになったのがカワチだった場合は間違いなくヒナセが止めていたはずで、それを見越して二人を対にして任務に就かせた、直属の上司である鹿屋基地第三部次長アサカ中将の人事が的確だったことが証明された。

 結局、カワチ少将にいさめられ秘書艦娘・鳳翔に宥められて、ヒナセは渋々座乗艦を重巡『羽黒』に移し、それに伴い艦隊編成を変えた。

 ヒナセ護衛艦隊
  艦隊司令および第一戦隊長・ヒナセ少将、旗艦『羽黒』
  艦隊副司令および第二戦隊長・カワチ少将、旗艦『妙高』

 ヒナセの筆頭秘書艦娘であり専任艦である『鳳翔』を残し、ヒナセたちは補給船団が駐留する海域の外周を警戒するべく、その場を離れた。ヒナセは『羽黒』の戦闘指揮所に上がって、名残惜しく恨めしい顔で、小さくなっていく『鳳翔』をいつまでも見ていた。『鳳翔』が米粒より小さくなって波間に隠れたあとも引き上げようとしなかったので、カワチがお目付役に置いていった那智に、首根っこをつままれて子狸のようにぶら下げられ、艦橋に戻されるまでがセットだった。

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鶴の舞う海 ―しあわせな鶴の話― 5

Date: 2017/11/28(Tue) 15:06 [1326]

 スタートを告げる号令も空砲もなく、深海棲艦との海戦以上の喧噪が始まった。
 艦隊総司令に到着報告をする前に、何故かヒナセの乗艦に補給担当参謀が乗り込んでくる。
 補給船団の旗艦は別の艦だと説明するのに誤解は晴れず……というか無視され、ヒナセ補給船団護衛艦隊の旗艦はそのまま補給司令艦にされ、ヒナセと補給担当参謀が揉めている間に『鳳翔』の甲板上にプレハブの仮小屋が建てられて、海上オフィスにされてしまった。
 自艦上に補給司令部の仮オフィスを用意して待っていた補給船団司令は「顔を潰された」と怒ってヒナセに文句を言ってくるわ、いつも妖精さんたちによって顔が映り込むほどきれいに磨きあげてある『鳳翔』の飛行甲板はヤローどものドカドカ歩きで汚されるわ、しまいには補給船団の護衛艦隊司令はとっとと護衛任務に就け――つまりは座乗艦を変えろと暗に言われて、ヒナセの怒りは頂点に達した。
 不穏な空気を察した護衛艦隊副司令のカワチ少将から全力でたしなめられなければ、ヒナセは躊躇なく鳳翔に艤装を解いて艦を海上から消すよう命じただろう。
 艦娘がベースの軍艦は、艦娘形態と実艦形態の二つを実装している。艦上に人が乗っている状態で、実艦形態を解いて艦娘形態に戻ればどうなるか。
 答えは簡単。
 乗艦中の人間や艦娘は、等しく海に投げ出されることになる。


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 …原稿作業前に30分くらい先を書きつつ、ヨタヨタ進行中。

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鶴の舞う海 ―しあわせな鶴の話― 4

Date: 2017/11/25(Sat) 17:58 [1325]

「……寒いのは苦手なんだよ」
 ヒナセはウール百パーセントな軍用コートの立てた襟の中に首を引っ込め、ウール百パーセントなマフラーの中にも埋もれて、鼻からたれてきた水をズビ…とすすった。
 こういう時にカワチが軽口を叩くのはいつものことなのだが、今日のヒナセの機嫌は、その程度では直らない。この海域に来て以来ずっと、怒りと不機嫌でアタマが沸騰しっぱなしだから、無理もない話なのである。


 一週間ほど前、ヒナセがのほほんと基地内の菜園で豆苗(まめなえ)の植え付けをしていた時に緊急電が入った。発信地は本部基地の鹿屋。曰く『できるだけ練度の高い、しかし小艦編成で、さらにカワチ少将の艦隊込みで至急来い』との命令だった。これが話の始まり。
 もっともこれは、冒頭部分どころかタイトル文字が飾られる前の、献辞の部分でしかなかった。

 鹿屋に着くなり護衛任務の命令を受けた。目的地は佐世保。なるほど護衛任務ならば小艦編成はうなづける。じゃ、カワチ艦隊の主艦である妙高型四隻はどうするかと訊けば、そのまま一緒に護衛任務に就けという。最初に不審感を抱いた瞬間だったが、命令には逆らえない。まぁいいかと、艦隊の編成変更もそこそこに、補給船団の護衛(補給船団と駆逐艦たちが重巡四隻の護衛みたいに見えたのは、ここだけの話だ)をして佐世保に行ってみると、さらに大量の補給物資を積んだ多数の船が待ち構えていた。編成内容はともかく艦数だけはちょっとした艦隊並みに膨れあがった補給船団を、手薄ながら護衛しつつ指定海域まで来てみれば、現地はめまいがするほど素敵な消耗戦の真っ最中で、後方からの補給を今か今かと待ち構えている状態だった。

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鶴の舞う海 ―しあわせな鶴の話― 3

Date: 2017/11/24(Fri) 18:28 [1324]

 できれば早々に海域を離脱して、少しでも海の状態がよいと思われる方向に待避したいところだが、この場に留まり待機するよう命令されている。
 艦橋の窓から見える自分が指揮する艦隊の艦たちが、激浪に翻弄されて上に下に左右にとうねりながら、それでもなんとか海面にしがみついているさまが、波の間から見え隠れしていて実に心許ない。艦と艦の間隔はかなり広くとってあるが、いつ不意に流されて艦同士が接触するか衝突してもおかしくない状況だ。小さな艦ほど流されやすいのだ。
 ヒナセが指揮する艦隊の主隊は、旗艦である軽空母を筆頭に、軽巡二隻と駆逐艦が三隻の小艦編成で、練度も旗艦以外はさほど高くない。そもそも戦闘行動に参加するための艦隊ではないし、基地自体が戦闘行動を主とした基地ではないから仕方がないと言えば仕方がない。
 だのに、だのにだのに……
「なんでこんなトコに出張しなきゃならないんだ……」
 呟いてから、自分のやや斜め前、十一時の方向に立っている艦隊副司令のカワチアキラ少将が涼やかに微笑んでいるのに気がついた。彼女はこの激浪の中、平気な顔をして立っている。艦が突然大きく揺れれば転倒しないよう右に左に前後にと足を突っ張る仕草はするが、その動作は彼女自身と同様に華麗でスマートだった。
「まぁまぁ。この揺れを頂戴しているのは我々だけじゃない。あっちで戦っている連中は、もっと悲惨なことになっているだろうよ」
 カワチは制帽のひさし越しに、軽くウインクを投げてよこした。そんな余裕綽々の態度に、思わず「チッ」と舌打ちが出る。

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鶴の舞う海 ―しあわせな鶴の話― 2

Date: 2017/11/23(Thu) 02:48 [1323]

 それでもまだ午前中は、高曇りではあったけれども、海自体は穏やかだった。
 天気予想を聞かされていない者たちは、気温が低く風が身を切りそうなことを除けば、まぁまぁ悪くない天気だと思っていた。冬のこの海域にしては、波が穏やかだったからだ。天気予想を知っている提督の一部も、今日はこのまま穏やかに一日が終わってくれるのではないかと、心密かに期待していた。
 だが。当たって欲しい予想は当たらず、当たらなくていい予想が当たるのは、世の常で。昼過ぎから急激に気温が下がり始めたかと思うと強い風が吹き始めた。
 一四二七(ヒトヨンフタナナ)に強風注意報が、一六二三(ヒトロクフタサン)に強風波浪警報が発令。全艦隊は予想されるさまざまな事態に備え、警戒厳の体勢に入った。
 そして現在――一七五五(ヒトナナゴーゴー)。
 さらに強くなった風は、海も空も区別なく世界のすべてを切り裂いて、この世のすべてを呪うかのような雄叫びを上げている。



「……なんでこんなトコに居続けなきゃならないんだ……」
 うねり揺れる旗艦『鳳翔』の羅針艦橋で、鹿屋基地第三部三六課課長(第三三六分基地司令官)・海軍少将ヒナセヒナコは憮然としていた。
 この海域に来てから、何度同じ言葉をつぶやいただろう。今日に至っては寒すぎて歯の根がずっと合わないし、鼻から水まで垂れそうになっている。両足を踏ん張りつつさらに手で体を支えてはいるが、少しでも気を抜くと即座に転倒しそうだ。


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 ちび子3号のFirefoxが勝手に更新しないようにと設定してから閉じたのに、結局最新になってしまった…(大泣。
 もういい。こっちもPaleMoonに切り替える…(デスクを囓りながら。

 ひとまずは狐で更新。

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つらつら独り言。

Date: 2017/11/22(Wed) 06:16 [1322]

 『あの桜並木の下で』は、女性たち(一匹毛色の違うのが混じってますけど)の物語なので、メインだけでも四人、サブや一回こっきりの人たちも含めたら、そこそこ多くの女性が出てきます。
 …で、中でも異彩を放つのがカホリさんこと保科香穂里(…だったよな、字。間違ってねぇよな…<確認してこい!)さんなんですが、この人、よくよく考えてみれば、ものすごく情の深い人だなぁって思いました。
 いやま、読んで下さってる方たちには「なにを今さら」な感じかもしれませんけども、表面のサバサバした(時には乱暴ですらある)ところとか、愛人に囚われずにさっさと自分のやりたいことができるところ(メルボルン)に子連れで引っ越しちゃうところとかにすっかり騙されてこの人の本質をずーっと勘違いしてたなぁって、なんかいきなり思い至りました。←


 ……ま、この人もたいがい奇矯な人であることは、岩下貴子を(何度ひどい目に遭わされても)愛し続けたところから十分に分かることではあるんですが、実はワタクシは、カホリさんの、貴子から何度傷つけられようともわがままに振り回されようとも、毎度毎度ボロボロになってやってくるいつもの野良猫に「こンのバカタレ!」と言いながら、首根っこ掴んで家の中に引きずり込んで、メシと風呂とふかふかのベッドを与えてやれることが、不思議でしょうがなかったりします。
 このときどきやってくる野良猫は、腹がふくれてきれいになって思う存分ふかふかベッドで寝て(ときどき家主とイイコトしちゃったりもして)英気を養うと、何事もなかったかのようにさっさとしれーっと出て行っちゃう恩知らずにもかかわらず……です。
 ……マジに天使じゃなかろうか(かーちゃんだよな、どっちかってーと。

 貴子がこの人に気を許したのは、カホリさんが貴子を傷つけたり利用したりしないどころか、(さまざまな)期待なんかこれっぽっちもしてなくて、ときどき裏口にゴハンをもらいに来る野良猫として接してくれるからだと思います。
 …ま、はじめの頃、一度だけちょっととあることがあって、貴子が暴言吐いて逃げたからいっぺんで懲りたって話もあるんですけども(そしてその代償が息子の太郎である。←

 カホリさんは実に長女だし、貴子はこれまた実に裾子(わがまままで甘えた)だなぁって感じですかね。



 ……なんかふと思い至ったので、つらつらと。はい。
 『桜並木~』ももっと書きたいなぁって、はい。

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狐。

Date: 2017/11/21(Tue) 15:00 [1321]

 …Firefoxがバージョンアップして57になったんですけど、使ってたアドオンのほとんどが使えなくなっててんてこ舞い。
 代替えのアドオンに切り替えたりなんたりしたんですが、いかんせん、タブが表示部分の直上に来ない仕様になってて、2日間ほどあれこれ試してみたんですけど現時点では、自分ではどうにもできないってことになって、ブラウザを変更するに至りました。

 タブの挙動についてはある程度まで我慢するけど、タブバーの位置だけは譲れないのですよ。

 PaleMoon という、もともとFirefoxから派生したブラウザで、狐のアドオンが使えるのがとても大助かり。
 どうやら狐から設定の引き継ぎもできるとのことなので、いまちょっとアレコレやってみてます。…原稿が進まねぇ…orz

 とりあえず日本語化……もういいや、めんどくせぇ。←
 英語表記でもあんまし困らないしな(ときどき細かいトコが分からなくなる程度。
 というわけで、Firefoxを起動して並べて見比べながらの移行作業でございます。

 …今後、狐に戻る日は来るのか?

 タブ位置がツールバーのいちばん下に来るようになれば、また狐に戻すかも知れません。
 まぁ、狐は狐で仕事で使うんでしょうけどね(ため息。


 ……まさか狐がIEと同じような取り扱いブラウザになるとは、夢にも思わなかった(遠い目。
 

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鶴の舞う海――幸せな鶴の話――

Date: 2017/11/14(Tue) 01:00 [1320]



『こづる……』

 小さな私を膝に抱いて、あの方は私をそう呼んだ。
 撫でつけられた白い髪、整えられた白い髭。
 その身に常にまとう白い詰め襟。
 節くれ立った大きな手は、けれどもさらりと乾いていて、私の頭をそっと撫でる。
 その手が、私は好きだった。

 やがて私も大きくなり、あの方を乗せて海に出る。
 白いあの方と白い私。
 この青い海と青い空。
 どこまでも、どこまでも一緒に……





 景1  南西諸島海域 沖ノ島沖 ポイント八六二


 夕闇迫る冬の海は荒れている。

『西高東低ノ冬型気圧配置。等圧線、幅狭シ。
 強風及ビ波浪ノ、警報 或ヒハ注意報 発令ノ場合アリ。
 全艦隊、厳重注意セヨ』

 明け方に作戦司令部から送られてきた予想気象図からは、どう転んでも大荒れの空模様しか読み取れず、不穏な一日が予想された。付随してくる三時間予想も同様で、時間の経過と共に天候が悪化するさまが書かれていて、海域にとどまっている艦隊司令官たちをげんなりさせた。

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近況。

Date: 2017/11/10(Fri) 13:12 [1319]

 特にコレといった話もないんですが。←

 ↓の『プライベートエリア』が終わって、『艦これ』二次創作の書きかけはあと2本になりました。
 2本とも小説で、冒頭部分を書いて放り出してるヤツなんですけど、どちらもちょっと長くなりそうで(いつものこと。
 今年中にはたぶん終わらないなぁww ってなってます。

 1本は日向の話で、1本は翔鶴の話。どちらも舞台はヒナセ基地。

 最近、ナンクロにはまってまして、寝る前テキストの時間をナンクロに当てちゃってるというていたらくで。
 テキストを書いてて寝落ちし始めたから、PC切って電気消して…ってやってるとふぅっと覚醒して眠れなくなっちゃったりするんですが、ナンクロにはそれがなくて(タブレットを『艦これ』に切り替えて、充電コード差して、電気消して布団潜るまでが1ルーチンなんだけど)スコヤカに眠れたりするんで、ついつい。

 じゃ、起きてるときにテキストやれよって話なんですが、起きてるときは家の片付けとマンガ原稿やってまして、これもなかなかママならず(イヤーン。

 ……自分があと3人欲しい…。

 たぶん、4人になってもやってることは一緒で、一斉に同じ原稿が4枚上がったりするだけなので、この考えはもう20年くらい前から封印してますが、やりたいことやらなきゃいけないことが貯まってくると、ついつい独りごちてしまいましねぇ(苦笑。

 ま、ちょっと頑張ってみます。
 …ここか雑記のほうでまた、連載するというのも手なんですけどねぇw

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【拍手】ぱちぱち、ありがとうございます! >11/ 3日。

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プライベートエリア 11

Date: 2017/11/09(Thu) 16:54 [1318]

 その11 エピローグ
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

○ヒナセ基地 司令部オフィス ヒナセ・カワチ・鳳翔・電・足柄・隼鷹

       足柄が上機嫌でニッコニコしながら仕事をしている。
       お肌がツヤッツヤ。



 足柄   (鼻歌)



       ヒナセとカワチがその様子をそれぞれの表情で見ている。
       ヒナセは眼鏡が光ってて目が見えない。



 ヒナセ  (バインダーで口もとを隠しながらカワチに)ここんとこ、ずーっと機嫌良いねぇ。
      なんだか日に日にツヤッツヤになってるし。


 カワチ  (同じくヒナセに)“メンテナンス”が行き届いているんだろう。
      片割れのほうも日に日に調子が上がっている。


 ヒナセ  (バインダーをデスクに戻して)ま、なんにせよ、艦の調子が良いってのは、
      悪いことじゃない。“離れ”の稼働率も上がってるようだし、もう一棟建ててもいいかな。


 カワチ  (おや、とヒナセを見る)これはまた、寛大な。


 ヒナセ  だって……ウサギ小屋の風紀が乱れているようなんで。


 カワチ  ………(笑顔が固まる)


 ヒナセ  (書類になにやら書き付けながら)同意を持っての行為のようだからそこは別にツッコまないけど、
      夜回り業務中ってのは、ちょっと頂けない。
      それなら、きちっと管理できるようにしとくのが、基地責任者の務めってヤツなので。


 カワチ  というか司令、当番じゃないときはきちんと休んで下さい。


 ヒナセ  トイレに起きたついでにぐるっと見てるだけだよ。
      わざわざ巡回まではしてない。
      ……せめて裏でやってよね。いくら電探仕様の目だからって、物陰までは見えないんだから。


 カワチ  心にとどめ置いておきます。


 ヒナセ  (書類を鳳翔に渡し)それか……専任艦で対になってる子たちに、専用の部屋を与えた方が良いかな。
      人と違って艦娘は、一度対になるとよほどのことがないと離れたりしないし。


 カワチ  ……ふむ。


 隼鷹   あー……てーとくー、意見具申いいすかー?


 ヒナセ  んー? どーぞ?


 隼鷹   それねー、アタシゃ反対。今のシステムがベスト。


 ヒナセ  そーなの?


 隼鷹   少なくともウチは……だけど、たぶん足柄んトコもそうじゃないかなーって。
      ねぇ、足柄。どーよ?


 足柄   そーねぇ……私たちはできれば四人一緒にいたいわね。
      それはそれ、これはこれ、ですもの。


 ヒナセ  へー(手帳を出して書き付ける)


 隼鷹   あとさー、さっき言ってた『よほどのことがないと離れない』は確かにそうだけど、
      だからってケンカしないわけじゃないからねぇ。気まずい時に一緒の部屋ってのは、
      アタシゃ勘弁して欲しいね。クールダウンって必要でしょ。


 足柄   私たちは逆に、一人になりたい時に“離れ”を使ったりするかな。
      そうねぇ……“離れ”は別にソレだけのためにあるわけじゃないから、今のままで良いのじゃないかしら
      ……と、(挙手をして)姉妹の意見は一致してます。


 ヒナセ  そっか(ふーん、と半分納得顔)
      そんなもんか。


 カワチ  このあたりは彼女たちのほうが一日の長がありそうだな。


 ヒナセ  そーだねぇ……我々のほうが分が悪いか。
      なにせ『結婚生活が短すぎたよね組』だもんね。


 カワチ  左様左様(苦笑しながら肩をすくめる)


 ヒナセ  じゃ、さっきの案は却下ね……“離れ”を増築する案については……


 足柄   それは賛成。


 隼鷹   早っ。


 足柄   妙高姉さんが『ウサギまみれやアオカンなぞ許されない!』……と、さっきから那智が喚いています。以上。



       提督ふたり、ぶは! っと吹き出す。
       カワチはバツが悪そうに、ヒナセは愉快そうに。



 ヒナセ  (バインダーで笑い顔を隠しながら)OK……じゃ、そのようにしようか。
      (ぶくくくく、と笑っている)


 カワチ  ……司令……。


 ヒナセ  (バインダーから顔を上げて、指先で涙を拭いながら)ところでさ、足柄。


 足柄   はい?


 ヒナセ  カワチがさ、なんで妙高さんに頭が上がらないか、知ってる?



       カワチがぎょっとヒナセのほうを見る。



 カワチ  ヒナセ、貴様!!


 ヒナセ  (カワチに、にやー、と笑みを送る)


 足柄   え? 姉さんのことが好きだから、じゃなくて?


 ヒナセ  それもあるけど、もう一つ理由がある(ニヤニヤ笑いを止めない)
      ね、カワチ提督。


 カワチ  ……この悪魔め(苦々しく)


 ヒナセ  姉思いな妹たちに、このくらいの情報は流しても良いんじゃない?
      じゃないと、ウサギ小屋のランデブーを止めそうにないからさー、ウチの副司令は。


 足柄   え? 何なの? なんなの?(ワクワクしながら訊く)


 ヒナセ  お祖母さまだっけ? ねぇ、レーコさん。


 カワチ  知らん!(赤面して ぷい、とそっぽを向く)


 鳳翔   ……提督(ヒナセをたしなめる)


 ヒナセ  カワチが唯一頭が上がらない人がお祖母さまなんだけど、雰囲気がそっくりなの。
      ウチの妙高さんをはじめて見たとき、誰かに似てるなーって思ってたんだけどね、
      最近思い出した。
      士官学校時代に遠目で見たんだけどね、ナカナカ矍鑠とした、でも上品な方だった。


 隼鷹   お祖母さま? そりゃまた……。


 足柄   それって……ババ・コン??


 隼鷹   (足柄に)せめて『グラン・マ・コンプレックス』って言ってやんなよ(苦笑する)
      てか、広義のマザコンだねぇ……ま、いんじゃない? ウチの提督(ダンナ)らしいや(うひゃひゃひゃひゃひゃ、と笑う)



       カワチ、隼鷹たちの言葉が刺さってるらしく、だんだんと居たたまれない顔になる。



 カワチ  (ヒナセに)君ってヤツは……。


 ヒナセ  (にひゃ、と人の悪い信楽焼のタヌキ顔になり)……そういうとこ、人間くさくて好きだよ、レーコさん。



 カワチ  (不意を打たれて、毒気を抜かれた)………。
      (視線が泳いで)……いや……その……。


 隼鷹   お……。
      (肩をすくめて)ウチの提督(ダンナ)も、めんどくさいお人だねぇ(小さく独りごちる)



        ノックの音。



 声    妙高です。ご依頼のあった資料を持って参りました。



        カワチが動揺して、ガタタン、と思わず椅子を鳴らしてしまう。
        カワチの様子に、ヒナセが「ぷっ」と吹き出す。
        隼鷹がニヤニヤ笑い、足柄の目がくるりと動いて面白そうにカワチを見る。



 ヒナセ  (笑いをこらえながら)どうぞー。



        扉が開き、ファイルケースをいくつも持った妙高と那智が入室してくる。



 妙高   (室内の空気を察して)どうかなさいましたか?


 カワチ  い……いや、何でもないよ。
      (妙高からファイルケースを受け取ろうとするが、手が滑って落としてしまう)
      わ……す、すまない(慌てて拾おうと屈む)
      (遠景では那智が電にファイルケースを渡しながら音のしたほうを見ている)


 妙高   大丈夫ですか? 提督。
      (同じく拾おうとして屈むが、タイミング悪くカワチと盛大にぶつかってしまう)
      きゃ……。


 那智   大丈夫か、姉上(妙高に手を差し伸べながら)貴様は何をやっているのだ!(カワチを叱責する)



       その様子をヒナセと隼鷹・足柄は呆れたように愉快そうに見る。



 ヒナセ  (苦笑しながら)いやはや、まったく。


 電    (那智が持ってきたファイルケースをヒナセのデスクに置きながら)
      いけないのです、司令官さん。


 鳳翔   (ヒナセに寄り添って耳打ちする)電ちゃんの言うとおりです。
      そろそろいい加減になさいまし。


 ヒナセ  (小さくなりながら)……はい、そーします。



       隼鷹と足柄、提督ふたりの様子を交互に見つつ。



 隼鷹   (行儀悪く頬杖ついて)なんだかもうグダグダだねぇ。


 足柄   (同じく頬杖をついて)仲が悪いよりは良いんじゃないかしらねぇ。


 隼鷹   ……ここでそれアンタが言うのは、アレだけどね。
      その後、てーとくとはどうなのさ?


 足柄   一度も(両手を軽く広げて肩をすくめる)
      那智のほうが断然イイから。


 隼鷹   あ・そ。これはまたごちそうさまで。



       鳳翔、司令官室の様子を見てため息をつく。



 鳳翔   これでは仕事になりませんね。
      電ちゃん。少し早いけど、小休憩しましょう。
      お茶を淹れるので、手伝って下さいますか?


 電    はいなのです。



       鳳翔と電、お茶の用意をするために退出していく。
       司令官室の喧噪はまだまだつづきそうで……。


                               (了)
--------------------------------------------------------------------------------

 河内玲(カワチアキラ)提督は、日生日向子(ヒナセヒナコ)提督と同時に生まれたキャラで(実は浅香広海…アサカヒロミ…もですけど)、
 ・ヒナセ基地のエロ枠。
 ・ヒナセの士官学校時代の同期(現役入校なのでヒナセの2歳下)で在学中は常にクラスヘッド(首席)だったとても優秀な人。
 ・常に佐官を輩出している中流軍族家系の人だけど、家系で初めての将官。
 ・しかし不祥事を起こして(口の悪い余所の上官をぶん殴った)佐官に降格。
 ・約一年後にまた将官に戻った。
 ・顔もハンサムならば行動も性格もハンサムかつスマート。
 ・背が高く(173cm…ヒナセと15cm差)骨格と筋肉ががっしりしているから体格が良く体重が重い。
 ・10人中7人くらいは「美人」と評価する程度には整った顔なんで男性にそこそこモテるが眼中に無い。
 ・女性に大いにモテる上にガチの人。
 ・だのに二週間だけ既婚者(つまりはバツイチ)
 。家族の誰とも似ていない。隔世遺伝で数代前の誰かに似ている。
 ・唯一の欠点が『ヒナセが好き』

 ぶっちゃけ、ワタシが好んで描くキャラのパターンにチート設定を盛り込んだ人物ですが、チート具合はヒナセと対局にあって、そうですね、往年の野球選手にたとえるなら、長嶋さん(カワチ)と王さん(ヒナセ)。ちなみにアサカは川上さんてトコでしょうか(若い人はたぶん分からない喩えになってしまった。

 以上が最初のギャラ造形の時に決まってたことで。


 やや後で以下の設定が足されました。

 ・兄がふたりで次兄とめちゃくちゃ仲が悪い(尊敬している長兄はすでに故人。
 ・父とも微妙に折り合いが悪い。母は嫌いじゃないけど苦手。
 ・隼鷹が首席秘書艦(のちに妙高が首席秘書艦で隼鷹が次席秘書艦。ちなみに隼鷹は基地専任艦)
 ・重巡運用が格段に上手く、中でも妙高型との相性が抜群に良い。
 ・幸運艦姉妹と言われている妙高型四隻(ヒナセが鹿屋基地からもぎ取ってきた)を専属艦としている。
 ・妙高さんの尻に敷かれっぱなし。
 ・その妙高さんを手籠めにしたことがある(『錨を上げて』の冒頭部分)
 ・妙高、那智、足柄と関係を持ったが、パートナーとしてお付き合いしてるのは妙高さんのみで、
  足柄は一晩のアヤマチ、那智とは足柄のために五日間耐久レースをやる羽目に(今回のお話)
 ・羽黒については、姉3人が怖いけど一番怖いのは羽黒だと思う<たぶん情が深すぎる。

 ・カワチの容姿は高祖父とそっくり(だから男顔)。
  その高祖父も女性に大モテだったらしい。
 ・妙高さんに頭が上がらないのは、実は唯一頭が上がらないお祖母さま(故人)と
  雰囲気がそっくりだから。<最新設定。←


 正直、カワチはヒナセよりも描きやすいキャラで、ヒナセよりもドタバタなお話がやれるキャラです。

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プライベートエリア 10

Date: 2017/11/02(Thu) 04:18 [1317]

 その10
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

○真夜中 『離れ』 ベッドルーム

       闇の中。
       シュッと擦過音がして小さな灯がともる。
       全裸のままベッドに腰掛けたカワチが浮かび上がり、タバコに火を付ける。
       中指と人差し指にに挟んだマッチの尻を親指ではじいて火を消すと、
       部屋はふたたび闇に戻る。
       ふー…と息を吐く音と、うっすら煙が部屋に広がる。



 那智   ……煙草……吸うんだな……。


 カワチ  イヤ……滅多なことではやらんよ。一箱買えば一年くらいある。
      半分も吸わなくて、捨てることも多いな。


 那智   もったいない。


 カワチ  不味くなるからね。湿気るのか、乾燥しすぎるのか、単に風味が飛ぶのか……。
      理由は分からん。


 那智   ……ふうん……。
      ではなぜ吸う?


 カワチ  さてね。極端に疲れた時とか……かな。
      戦闘時間が長すぎて、へとへとになってるときが、多いね。


 那智   なるほど……じゃ、今はそれなのか。


 カワチ  ……そう……かもしれない。
      すまない……臭いだろう(煙草を消す)


 那智   気を遣わなくていい。いつだったかの提督はヘビースモーカーだった。


 カワチ  (肩をすくめて)私が気になるのさ(立ち上がろうとする)



       那智の手がカワチの手を掴み、引く。
       引かれたカワチは、その強さに驚いて、中腰のまま止まる。



 カワチ  ………。
      (とすん、とベッドにまた腰掛ける)


 那智   あ……提、督……。


 カワチ  なんだい?


 那智   (上半身をやや起こして)………その……


 カワチ  (那智を見ている)



       那智がやや赤面して、視線を地に這わせている。



 那智   ……イヤ……その……。


 カワチ  ん?(やや怪訝な顔になる)


 那智   ア――……(言いよどんで)……イヤなんでもない。



        カワチ、あ、と気がついた表情になる。



 カワチ  (ニコ、と微笑んで、那智の手を取り)
      私のことは好きなように呼び給え。私はそれを受け入れよう。


 那智   ………(闇の中でカワチを見つめ、一度目を閉じてカワチの発した言葉を反芻して
      再びカワチを見る。嬉しくて涙が出そうになるが、それをこらえて声を絞り出す)
      ……アキラ……。



       那智、カワチの髪を一房手に取り、それに口づける。



 カワチ  うん。


 那智   アキラ……。


 カワチ  那智……私の虎――……ん……



       那智がカワチに体重をかけてその唇を奪い、
       二人はそのまま倒れ込み、またベッドと一体になる。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

○翌日の朝 『離れ』

       カワチが身支度を調え、制帽をかぶり、位置を整えている。



 カワチ  ……では行こうか。
      那智。



       身支度を調えた那智が、カワチの斜め後ろに立っている。
       那智の顔は精悍に引き締まり、瞳が強い光を放っている。


     --------------------------------------


       離れの入り口を開け、外に出る二人。
       水平線から太陽が昇っている。



 カワチ  ……つ……数日ぶりに拝むと、さすがにまぶしいな(苦笑気味に笑う)
      (腕時計を見て)マルハチゴーマル……ちょうど良い時間かな(司令部棟に向かって歩き出そうとする)


 那智   あの……アキラ?


 カワチ  (立ち止まって振り返り)なんだい?


 那智   その、ひとつだけいいか?


 カワチ  なんなりと。


 那智   貴様の名前を呼ぶのはプライベートだけにする。
      パブリックでは今までどおりだ、いいな。


 カワチ  好きにしたまえ。
      そうそう、妙高さんもプライベートでしか、名前で呼んでくれないね。
      そういうところは姉妹でよく似ている(クスクスと笑う)


 那智   ……なっ……んだ、と!?



       カワチ、那智を促して、歩き始める。行き先はもちろん司令棟。



 カワチ  しかし、プライベートだけ名前を呼ばれるというのも、こう、秘密めいた背徳感があって良いね。


 那智   (呆れて物も言えない)


 カワチ  さてしかし……今日のところは隼鷹たちに譲るとして、早々に足柄を抱いてやり給えよ。
      学習したことを忘れないうちに。


 那智   ばっ……。余計な世話だっっ!!


 カワチ  なに、私たちには気兼ねはいらん。その気になれば、野っ原でもどこでも。


 那智   姉上のためにも、せめて屋根のあるところでやれ!


 カワチ  いやー……なかなかアレで怖い姉君だからね。
      ま、私のほうも頑張るから、君も頑張り給え(はっはっは…と笑う)


 那智   (真っ赤になりながら)……地獄に墜ちろ!!


 カワチ  んー……最上の褒め言葉だねぇ。



       司令部棟が近づいてくる。


--------------------------------------------------------------------------------
 次はエピローグ。

 濡れ場を書くのは楽しい(w。←

 『Deep inside』の終盤で那智がカワチを「アキラ」と呼んでました。つまりあのお話は、時系列的にこのお話よりも「あと」です。
 『Deep inside』のあの一言を書きながら「あー、ぷちネタばれしちゃってんなー」と思いましたし、ここのシーンを書くまで『Deep inside』を止めようかまで考えたりしましたが、まぁ気がつく人も少なかろう…と思い、勢いよくGOしましたのです。
 いちばん書きたかったシーンをやっとのことで書けると、気分が高揚しますね(清々しく笑いながら。

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プライベートエリア 9

Date: 2017/11/01(Wed) 02:02 [1316]

その9
◇◆◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

○『離れ』 ベッドの上



 声    那智……那智。



       誰かが那智の頬を軽く叩いている。



 那智   ……ん……(目がうっすら開く)



       那智の視線の先にカワチ。
       シャツを羽織ってはいるが前ははだけており、汗をじっとりとかいている。



 那智   ……てい……とく……?


 カワチ  うん。大丈夫か?


 那智   (汗で顔に張り付いた髪を、汗を拭うように退けながら)……体が……重い……。


 カワチ  (那智の唇に指先でそっと触れて)……水をやろう。


 那智   ……いや……いい……(ぐったりと動けない様子)


 カワチ  ぬるいのしかないが、そこは勘弁してくれ(視線だけで那智を見下ろしつつ、
      ペットボトルから直接に水を口に含む)



       カワチ、那智に口移しに水を飲ませる。
       那智、はじめはやや抵抗するが、すぐに観念して素直に水を飲む。
       喉が大きく上下し、ゴクリゴクリと音を立てる。
       カワチ、自分の口の中にある水がなくなると、ゆっくり那智から離れ、
       先ほどのペットボトルから水を飲む。



 那智   (喉が潤ったことで、大きなため息が出る)……肺が……熱い。罐が暴走しているようだ……。


 カワチ  ………(那智の様子を見ている)


 那智   ……あれは、何だ?


 カワチ  ん?


 那智   あの感覚は……一体何なんだ……?


 カワチ  もしかして、初めての体験だったかい?


 那智   ……いや……。……いや……そう……かも……。


 カワチ  イけたのなら、それは重畳。


 那智   イ……?


 カワチ  orgasm……というヤツだよ。
      初めてだろうがそうでなかろうが、そのあたりはどうでもいい。
      私とヤッてイけたのなら、これほど嬉しいことはないね。


 那智   ………。
      (じわ、と顔が赤くなり、ズルズルとカワチに背を向ける)
      ……貴様は、本当に、デリカシーが、ないな……(まだ息は上がったまま)


 カワチ  いやぁ、それほどでも(にこ、と笑う。いつもの自信満々な笑みに戻っている)


 那智   (背を向けたまま)褒めてない。


 カワチ  君はそうかもしれんが、私にとっては褒め言葉だよ(すっと那智の肩を撫でる)


 那智   (ひゃっっと小さく肩をすくめる)……っっ!


 カワチ  (反応を楽しむように、指を那智の首に這わせる)


 那智   (ビクビクとさらに小刻みに反応して)……やめ……っ……


 カワチ  うむ、いい声だ。
      ……さて那智、風呂に入らないか? 髪まで汗みずくで気持ち悪いだろう?
      (立ち上がって)湯を張ってくる。



       パタン、とカワチが出ていく音。



 那智   ………。



       横臥し頬に枕を感じながら、しばらくカワチが出て行ったほうの気配を伺う。
       やがて湯がバスに流れ落ちる音が小さく聞こえ始める。
       ほっとため息をつき、ゆっくりと目を閉じて……。



         ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


○『離れ』バスの中。

        カワチが那智を背中から抱きかかえるようにして、一緒に湯船に浸かっている。



 カワチ   (那智の髪を湯に晒しながら、洗ってやっている)


 那智    (居心地悪そうに)……楽しそうだな。


 カワチ   ああ、とてもね。


 那智    あ……――っっ……き、貴様は、誰にでもこうやるのか?


 カワチ   いや……そうでもない。
       妙高さんの髪はまだ洗ったことないな。


 那智    ………。


 カワチ   ……(機嫌が良い)


 那智    ……失礼なヤツだな。


 カワチ   ん?


 那智    今、妙高姉のことを考えていたろう。


 カワチ   そうだねぇ……彼女の髪も、この髪と同じくらい手触りが良いのだろうな、と考えていた。


 那智    ……地獄に墜ちろ。


 カワチ   褒め言葉と取っておくよ。


 那智    ……っ……。


 カワチ   かわいい娘(こ)だ。


 那智    き……貴様……は……本当に女か?


 カワチ   正真正銘ね……ホラ…(ぎゅ、と那智に抱きついて、自分の胸を那智の背中に押しつける)


 那智    ~~~体のほうじゃない。中身だ、中身!
      (広くもない湯船でバシャバシャと暴れて河内から離れ、向きを変えて対峙する)
      言うことやること、ただのセクハラ親父だ!
      (背中を湯船に張り付かせて、カワチからできるだけ離れて威嚇する)


 カワチ  (威嚇する那智をほへ? っと見ていたが、やがてニカっと笑い)
      なかなかの褒め言葉を頂いたな(言って、素早く那智の足首を右手で捉え、
      やや乱暴に持ち上げて自分の肩に載せる)
      次は応用に移行しようかと思っていたが、その前にがつりと復習をやったほうが良いようだ。
      (体を前に進め、那智に覆い被さるようにして言う)


 那智   ま……待て……。


 カワチ  意識が飛びすぎない程度にやるから、私がやることとその身に受ける感覚を
      よく憶えておきたまえ。
      (耳元でささやく)私に溺れたりするなよ。これを狼に与えてやれるかどうかは、
      今からのお前にかかっているのだから(そのまま那智の耳を、べろり、と舐める)


 那智   っっひぁ……



       那智の体が大きく跳ね上がり、水の跳ねる音がする。



--------------------------------------------------------------------------------
 風呂でヤると、逆上せますよ。お二方(そうじゃなく。

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プライベートエリア 8【改訂】

Date: 2017/10/29(Sun) 00:56 [1315]

 あまりにも自分にしか分からない表現だったなと思ったので、改訂してみました。
 めずらしく、投下した分を修正せずに、改訂という形で丸上げ。どこをどう変えたのか、見て頂くのも一興ということで。
 ではどうぞ。

 その8【改訂】
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

○ヒナセ基地 ヒトヒトマルマル ウサギ小屋

       ヒナセと日向。そして隼鷹が集って密談中。全員作業服。



 日向   ……ふむ。了解した。
      いつから始めたらいいんだ?


 ヒナセ  ヒナタが気にならないんだったら、明日からでも。


 日向   ……私に監視させようというハラではないだろな。


 ヒナセ  やめてよ、人聞きの悪い。
      今後、もしものために、もうひとつくらい建てても良いんじゃないかって、
      ちょっと真剣に思っただけだよ。……ねぇ、隼鷹。


 隼鷹   ちょっと待った。なんでアタシが引き合いに出されんの?


 ヒナセ  いや、君らが今のところ使用頻度が高いんで。
      困るでしょ? 使えないと。


 隼鷹   ……あのねぇ……。ったく、アタシらのこと何だと思ってんだろねぇ、このヒトは。
      以前ほどのべつ幕無しじゃないし、あいつはそもそも聞き分けが良い。
      使えないなら使えないで、自分を律することくらいできまさ。
      ……てかてーとく。変なとこに気が回りすぎじゃない? こういうの苦手でしょ?


 ヒナセ  ……苦手というか……というかですね……。
      一応私も『元』とはいえ、パートナーがいたんですけど。
      もう二十年以上前の話だけどさ。


 隼鷹   ……え”!?(びっくりしてヒナセと日向を交互に見る)


 日向   (そのとおり、とうなずく)『ヒナセ』は亡くなったパートナーの姓だったな。


 ヒナセ  だよ。……だからさ……こういうものの大事さってのは、なんとなくだけど、理解できてる。
      今の私には必要ないってだけでね。


 隼鷹   (口をぱくぱくさせている)


 ヒナセ  ……実際の結婚生は三日間だけだったし……当時の私は『結婚』てこと自体が
      まったく理解できていない子供だったから。
      たぶん彼は、避妊してくれてたんだと思う。私はまだ学生で、妊娠させる
      わけにもいかなかったってのもあるだろうけどね。



        ヒナセ、視線を海に転じる。



 ヒナセ  とにかくただひたすらヤッて、そのまま寝落ちて、目が覚めたらまたヤッて。
      ……朝も昼も夜もわからなくなって……。何か食べてたかって記憶もなくて。
      気持ちいいとかどうだとかっていうのも分かんないままだったけど、
      私を好きだと言う彼を理解したくて……私に手を差し伸べてくれた人を理解したくて、
      彼に求められるままに……それ以上に、すべてをぶつけた三日間だったかな。
      ………。
      だからまぁ、なんとなくなんだけど、今、カワチたちは本気なんだなって。


 日向   ………。
 隼鷹   ………。



       ヒナセ、視線を空に上げる。



 ヒナセ  本気で……ぶつけ合ってるんだ。……魂を。



       そのまま遠くを見つめ続けて。



--------------------------------------------------------------------------------
 いままで誰にも踏み込ませなかったプライベートエリアを、ふと吐露してしまう。
 3日も篭もったまま出てこない彼女らに、かつての自分を重ね合わせて。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 ヒナセ提督の設定…つまりバックボーンである
 【30代後半~40代、40代に見えない、提督に見えない、主計士官に間違われることが多い、元飛行機乗り、飛行学校から士官学校に編入組(裏事情付き)、既婚者で未亡人(ヒナセはダンナの姓)、士官学校在籍中に結婚、結婚生活は実質三日間、ダンナは士官学校の元教官、もともと恋愛とか性愛とかに対してのリソースを持っていない、上司アサカはダンナの実妹(ダンナがヒナセ姓に出奔)、カワチは士官学校の同期で二つ年下…等々】
……は、実はヒナセが自分の中に生まれて一時間もしないうちに固まっていて、これらをどのタイミングで出していくか、を図りながら、少しずつこの創作提督の物語を書いてきました。
 ヒナセがかけている眼鏡は、艦娘の電探技術をつかって彼女の右目の視力を補助している(つまりは武蔵の眼鏡)が、いろいろと不具合があって、飛行機乗りに戻れなかった…も、最初期に出てきた設定ですが、ヒナセの右目が艦娘建造の技術を使った義眼である…というのは、かなり時間が経って付加した設定だったりします(こっちのほうが先に出ちゃったけど(w。
 なんと言いますか、身体欠損についてはギリギリまで思い切れなかったといいますかね。やはり女性ですし。

 まだぜんぜん気配も書いていませんが、ヒナセが右目を失って飛行機乗りからドロップアウトした時のエピソードも、最初期にできあがっていて、これは書くか書かないか(表に出すかどうか)は、まだ結論がでていません。

 これらを書いていく先には、この物語群の結末が待っているわけで、書き切りたいと思いつつ、しかし…と躊躇する部分もあったりします。
 ……結末もね、最初期にできちゃってるんですよね、これ。
 『かいらふ』あたりにチラと断片がありますけども。

 更新頻度が落ちている主原因ではないんですけど(それはどちらかと言えば物理的な問題で…。←)、ちびっとだけ「この先を書いていくのが辛いなぁ…」と思っているのも事実だったりします。

 つるかめつるかめ(ぉ。

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プライベートエリア 8

Date: 2017/10/27(Fri) 13:23 [1314]

その8
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

○ヒナセ基地 ヒトヒトマルマル ウサギ小屋

       ヒナセと日向。そして隼鷹が集って密談中。全員作業服。



 日向   ……ふむ。了解した。
      いつから始めたらいいんだ?


 ヒナセ  ヒナタが気にならないんだったら、明日からでも。


 日向   ……私に監視させようというハラではないだろな。


 ヒナセ  やめてよ、人聞きの悪い。
      今後、もしものために、もうひとつくらい建てても良いんじゃないかって、
      ちょっと真剣に思っただけだよ。……ねぇ、隼鷹。


 隼鷹   ちょっと待った。なんでアタシが引き合いに出されんの?


 ヒナセ  いや、君らが今のところ使用頻度が高いんで。
      困るでしょ? 使えないと。


 隼鷹   ……あのねぇ……。ったく、アタシらのこと何だと思ってんだろねぇ、このヒトは。
      以前ほどのべつ幕無しじゃないし、あいつはそもそも聞き分けが良い。
      使えないなら使えないで、自分を律することくらいできまさ。
      ……てかてーとく。変なとこに気が回りすぎじゃない? こういうの苦手でしょ?


 ヒナセ  ……苦手というか……というかですね……。
      一応私も『元』とはいえ、パートナーがいたんですけど。


 隼鷹   ……え”!?(日向のほうを見る)


 日向   (そのとおり、とうなずく)ヒナセは亡くなったパートナーの姓だったな。


 ヒナセ  だよ。……だからさ……こういうものの大事さってのは、なんとなくだけど、理解できてる。


 隼鷹   (口をぱくぱくさせている)


 ヒナセ  結婚生活は三日間だけだったし、私は学生だったから、子供を作るコトはしなかった。
      ただ、その三日間は、朝も昼も夜もなかったね。食べた記憶もほとんどない。
      だからまぁ、今、カワチたちは本気なんだなって。



       ヒナセ、視線を空に上げる。



 日向   ………。
 隼鷹   ………。


 ヒナセ  本気でぶつけ合ってるんだ。……魂を。



       そのまま遠くを見つめ続けて。



--------------------------------------------------------------------------------
 いままで誰にも踏み込ませなかったプライベートエリアを、ふと吐露してしまう。
 3日も篭もったまま出てこない彼女らに、かつての自分を重ね合わせて。

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プライベートエリア 7

Date: 2017/10/25(Wed) 06:04 [1313]

 その7
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

○翌々日。マルキューマルマル(〇九〇〇) ヒナセ基地司令官執務室

       部屋には基地司令ヒナセの主席秘書艦・鳳翔、次席秘書艦・電
       カワチの主席秘書艦・妙高、次席秘書艦・隼鷹。
       そこにヒナセが出勤してくる。



 ヒナセ  おはよう……(部屋を見回して)……ふむ(自分のデスクにつく)



       部屋にいる艦娘たちがそれぞれに「おはようございます」と述べる声がする。



 妙高   ヒナセ司令。


 ヒナセ  (鳳翔が淹れてくれたほうじ茶を受け取って妙高のほうを見る)
      まだやってんだ。


 妙高   はい。


 ヒナセ  そっか……(視線を落とした先には、卓上のカレンダー。三日分の数字)……長いね。


 妙高   ……はい。


 ヒナセ  ………(肩越しに妙高を見る)



       隼鷹や鳳翔、電もそれそれヒナセや妙高を見ている。



 妙高   大丈夫です。


 ヒナセ  ……そう?


 妙高   ただ……二人が、体を壊さなければと。


 ヒナセ  食事は?


 鳳翔   一応、妖精さんたちに届けさせています。
      召し上がってはいるようです。


 ヒナセ  そう……そっか。



       ヒナセ、椅子をくるりと回し、窓の外に広がる海を見て。



 ヒナセ  ……長いね。
     (海のほうを見ながら)隼鷹。


 隼鷹   あ? はい? なんざんしょ。


 ヒナセ  悪いけど、ヒトヒトマルマルに、ウサギ小屋に日向を連れてきて。


 隼鷹   へぇい……てか、アタシもですかい?


 ヒナセ  うんそう。


 隼鷹   ぅぇいー。なーんかまた、碌でもないこと押しつけようってんじゃないでしょうねぇ?


 ヒナセ  (肩をすくめてから、またくるりと椅子を回してデスクに正対する)
      とりあえず、ざくっとひと仕事、終わらせますか。
      鳳翔さん、書類関係は、適当に振り分けてやっちゃって下さい。
      頭数がいるなら、武蔵や長門にも手伝わせていいですから。もちろん赤城も。


 鳳翔   了解しました。


 ヒナセ  妙高さん、足柄……じゃなくて、羽黒も貸して下さい。


 妙高   足柄も大丈夫だと思います。


 ヒナセ  そう? じゃ、足柄もお借りします。
      目が離せませんか?


 妙高   いえ、あの子も大丈夫ですよ。
      結句、誰のためか、理解していますもの。


 ヒナセ  ……そう(手帳を出して、何かを書き付ける)
      ……あ。


 艦娘たち ?


 ヒナセ  ハロウィンの飾り付けの準備がゼンゼン進んでない。


 鳳翔   カワチ提督のご担当でしたね。


 カワチ  うん。すっかり失念してた。
      じゃ、ついでにそれもみんなでやっちゃうか。分かる分だけでいいや。
      午後は畑組と内職組に分けて全員作業ってことで。
      組み分けは……


 妙高   昼食時に、くじ引きでもさせましょうか。


 ヒナセ  ああ、それいいね。そうしよっか。
      電、作ってくれますか?


 電    はいなのです。


 ヒナセ  (にこ、っと口もとだけで笑って)よろしくなのです。


 隼鷹   (相変わらずの茶番だなーと、小さく鼻で笑う)


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プライベートエリア・6.5

Date: 2017/10/17(Tue) 04:54 [1312]

 その6.5 <こら。
 …ここまで書いていくんだったと、猛反省(うえーん)
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

       カワチの手がピタリと止まり。
       那智の喉が小さくゴクリと鳴る。
       絡む二人の視線。
       カワチは上から。
       那智は下から。



 那智   その言葉……偽りは……


 カワチ  それはお前の、受け取り方次第だ。



       カワチ、いつも浮かべている笑みは消え、まっすぐ那智の目を見据える。
       カワチと那智、しばらく対峙していたが、ややあって那智の口もとがかすかにほころぶ。
       喜びから発せられた笑みではなく、気圧されて敗北を受け入れたそれ。



 那智   ……わかった……
      そこまで言うのなら、貴様にこの身、委ねよう。
      (口もとはかすかに笑っているが、目は笑っていない。やや恐怖を感じている)


 カワチ  (ギラッと目が光り、口角が上がる。今まで誰にも見せたことのない表情がある)
      (那智を抱き寄せて)ここから先は、真剣勝負だ。



       二つの影が重なって……

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プライベートエリア・6

Date: 2017/10/12(Thu) 05:14 [1311]

 その6 やっとこさで、再開。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 カワチ  (手にしているメモ帳をパタンと閉じて)さて、お勉強の時間は終わりだ。


 那智   (顔を上げる)もう、いいのか?


 カワチ  なにがだい?


 那智   その……私と足柄の話だ。


 カワチ  ああ、さっきに足柄から聞いた話を掛け合わせて、だいたい問題は把握した。
      ここからが本番だ……那智、服を脱きたまえ(言って自分も上着を脱ぐ)


 那智   ……!! (グラスを握りしめたまま、じり…腰が引ける)


 カワチ  話を聞くまでは、どうするか決めかねていたが、これが一番手っ取り早いようだ。
      (中に着ているシャツのボタンも外し始める)


 那智   結局……こういう流れに……なるのだな……(嫌悪に顔が歪む)


 カワチ  (手首のボタンを外しながら)命じてはやりたくないのでね、自主性を重んじるよ。


 那智   ……自主性……?
      聞いてあきれるな。自主性に対して失礼千万だ。


 カワチ  (半裸の状態で那智に対峙する。シャツの合わせの隙間から、下着が覗いて見える)
      失礼を重ねて伺うが、那智、君は気持ちの良いセックスをしたことがないだろう?
      足柄以外とは。


 那智   ………。


 カワチ  おや、足柄ともさほど気持ちいいと思ってないかな(かすかに笑い、あからさまに煽っている)


 那智   貴様……。


 カワチ  足柄はしょっちゅう君に求めてくるだろ? どうだ?


 那智   ………(目をそらす)


 カワチ  私が今言ったことが当たっているなら、それは満足していないからだ。
      満足できないのは、片方だけの問題ではないが、君たちの場合は、まず君に問題があると、
      先日足柄を抱いて、漠然と感じたんだ。だから今夜、君を呼んだというわけだ。


 那智   ……私にある問題とは……なんだ?


 カワチ  相手が人であれ艦娘であれ、抱かれて心から満足した経験がないだろう?
      そもそも抱かれたこと自体も少ないか?


 那智   ………(視線が地を這う)


 カワチ  気持ちの良いセックスっていうのは、生まれながらにできるものじゃないからね。
      カナリヤの鳴き方と一緒で、指南相手と経験値が大事なんだ。
      人間ですらそうなんだから、君たちはもっと無理な話だろう。
      重巡以上の建造艦の養育課程に性教育が入っているが、実地訓練はせいぜい数回程度だ。
      それも同性の養育艦とがほとんどで、将来起こるかどうかも分からない人との性交の際に
      事故が起こらないよう、流れや作法を一通り教えるだけだからな。
      そんなもの、セックスとはとうてい言えんよ。


 那智   つまり貴様の持論は、性交は気持ちよくなければならない、ということか。


 カワチ  もちろんそうさ。
      もっとも、私も異性とのセックスで、心底気持ちの良と思った相手は、たった一人だがね。
      その相手と結婚してみたが、私のわがままで離縁した(やや自嘲気味に笑う)


 那智   碌でもないヤツだな。
      ……気持ちよい思いをしたなら、なぜ分かれたんだ?
      分かれなければここに来ることもなかったのではないのか?


 カワチ  気持ちよくて身も心も満足したが、それで良しとは、私は思えなかったということだよ。
      体を重ねことがこの先一生、たとえ海が蒸発しても叶わないだろうが、それでも
      好きな人の傍にいて、見守るだけでもしたかったんだ。
      私にとって、今までの一生の中で、今が一番幸せな時なのさ。


 那智   ……すまん。


 カワチ  何が?


 那智   いや……他意はなかったのだが、貴様のプライベートに踏み込んでしまったなと。


 カワチ  別に。相手は君だし、私も今、君のプライベートに土足で踏み込んでいる最中だからね。
      アンフェアなのは、私自身が嫌いなんだよ。


 那智   ……確かに……
      貴様が言うとおり、私は性交にあまり良いイメージを持っていない。
      初めての相手が『那智』だったからというよりは、そのあと、二番目以降の赴任先で
      いろいろあったからな。アレを入れられるのは、ただひたすらに痛いだけだ。
      戦闘で受けた傷と違って、体の中から受ける痛みだからだろうか、慣れたためしがない。
      女性提督を抱く機会も何度もあったが、あれもよくわからない。
      どちらも始まると、頭のどこかでカチリ、と音がして、あとは終わるまで、何かに閉ざされたような
      感じで……水の中に閉じ込められている……とでも言おうか……。


 カワチ  ………。
      足柄との時も、同じ感覚かい?


 那智   ……いや……それはない。逆に感覚が研ぎ澄まされたような感じがある。
      足柄が触れた部分(ところ)や、足柄を触れた部分(ところ)が過敏になりすぎて、
      どうして良いかわからない。


 カワチ  だから、そっとしか触らない……いや、触れないのか。
      ……ふむ。やはり君は、性教育を一からやり直す必要があるようだな。


 那智   (サッと顔色が変わる)


 カワチ  そんなに警戒しなくていい。嫌なら今すぐその扉から出て行っても構わない。
     だが那智、今ここで出て行くなら、この先遠くない未来に、足柄と君は決裂するかもしれんよ。


 那智   ……(何を言い始めたんだ? という顔でカワチを見上げる)


 カワチ  私はエゴイストでね。
      自分にとってより良い艦が欲しいし、それを手に入れるために、手段も労力も、
      惜しむ気はさらさらない。
      さらに言えば、自分や自分の艦にとって、将来マイナスになりそうな因子は、
      何が何でも取り除きたい。
      つまり今私は、私の目の前にいる艦が、もっと良い艦になることを大いに望んでいるし、
      多少人道的でない手段を使ってでも、後顧の憂いは取り除いておきたい。
      (那智にゆっくりと手を差し伸べる)


 那智   (やや怯んで、後ろにのけぞる)


 カワチ  ……那智……虎よ、お前の牙と爪、私に研がせてはくれまいか?
      私の与えるものを受け取り、溺れ、そしてそれを足柄に与えてやれるようになって欲しい。



       カワチの指先が、那智の顎を、そのラインに沿って撫でる。
       那智の顎がそれに誘導されるように上がっていく。



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 長くなりそうだから、ひとまずここまで。
 タラシ・カワチの真骨頂……か?(へらへら笑いながら、
 こういう、どこからが演技でどこから本気か分からない人って怖い……てか、縁起でああり本気である、が、真実なんだろうな。


 カワチはいつも、どこか笑みを絶やさない人なんだけど、今はいつもと違うタイプの笑みを浮かべてそうで、やっぱりコワいwww

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いろいろと…

Date: 2017/10/07(Sat) 02:16 [1310]

 …削れすぎててダメなようで。

 気が張っているウチはなんとかなるのですが、過度の緊張とストレスが続いたあとでそれが(ある程度)消えてしまうと、一気にガックリくるタイプで。
 昔、20代後半にいろいろあって、まぁぶっちゃけ、1年ちょっとDV受け続けたのちに、それとなく気がついた母に救ってもらって実家に戻ったあと、鬱症状が出て、数年静養という名の引き籠もりをしていた時期がありました。
 たぶん3年くらいだったかと思うんですが、その間の記憶があやふやな上に順番認識がおかしくなってて、今もそのあたりのことをよく憶えていません。実のところ、正確な期間もよくわからない。

 当時から、とにかく人が怖くて、集団も怖い。女性が苦手なのも、このあたりに起因しています(塗り固められていくのはその後のいろいろが原因ですが。
 そして私がサラリーマンをやっていない理由がここにあります。

 DVが怖いのは、振り切って逃げても、逃げ方が中途半端だと相手との縁が切れない上に、なんだかズルズルと関係が続くってところだなと、今断片的に思い出せる分を繋いでつぎはぎ分だけでも俯瞰して、ぼぅっと思います。DVの相手と完全に縁が切れたのは、ここからさらに5年くらいを要しました。

 この一連の出来事を思い出すのも考えるのも、もやを通して見て、水の中を歩いているようなもどかしさ。
 その後知り合って長く付き合った相方と、軽い共依存状態におちいって、私はモノカキとしての時間を約10年分、無駄にしました。

 それもこれも自分が選んで歩いてきた道なので、馬鹿だったなぁ…としか思いませんし、過去を悔やむよりも未来を切り開いて歩いて行きたいので、30代の頃のように、分からなくなってしまった記憶を無理矢理思い出して、空白の部分を埋めることは、積極的にはやっていません。…ときどきヒョイッと思い出して「…これはいつの記憶だ?」としばらく悩むことはありますけども(10分も考えて分からなかったら放置するようにしてる。


 そんなわけで。
 この10月は繁忙期でもありますし、しばらくネットからやや遠ざかっておこうかなと、思っています。
 たぶんここは、ちょこちょこ更新するかもしれませんが。

 Twitterは雑踏の中で一人ぽつんと立って、周りの物音が際限なく自分の中に流れ込んでくるイメージなのですが、今それが辛いなって。

 早々にPCを切って寝室で寝転がって、溜まっているkindleを片っ端から読みちらかしてたら、ずいぶん落ち着いてはきました。
 肌寒いくらいのすきま風と、虫の声が心地良いなぁ…と思っています。

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9月はぎぅぎぅでした。

Date: 2017/10/03(Tue) 02:37 [1309]

 とりあえず、一段落。
 まだ完全に終わったワケではないので、気を抜くわけにはいかないのですが。

 ひと月あまり、緊張と集中した状態が続いてて、気の休まる瞬間がなかったもので、案の定、大風邪を引きました。
 喉が腫れた。

 てか、腫れすぎてて、センセイに叱られるのが今すごくイヤというか、たぶん叱られたらそのままベッコリと凹みそうなので、病院に行った方が治るの早いって知ってても、行かずにグダグダしています。

 ぎぅぎぅ作業の終盤に、ガルパンの劇場版を無限ループでかけ流してました。
 画面なんてほとんど見ていないのに、さすがに内容を憶えてしまった。

 正直、『ガルパン』は、TVシリーズを見ても面白さがよく分からなかったんですが、劇場版はとにかく戦車戦車戦車! なので、そこが実に面白い。
 戦車大好きオトコノコの夢が詰まってる感じです。出てくるオナノコはもうどうでもよくて、とにかく戦車戦車戦車! 戦車を楽しみたい人向けかもしれませんね。自分はそうだった。
 終いには電源タップまで戦車に見えてしまったので、ちょっとアカン感じにはなってますけども。
 明後日あたりにDVDを返却しないといけないので、1度くらいは画面にへばりついて観たいです。

 10月はまた半分くらいがぎぅぎぅなんですけども、これは例年通りの繁忙期なので、まぁ予定調和。
 今年はパートディレクターじゃなくて、上司のいない現場を仕切らないとアカンらしいんですけど。…てかな、大和ミュージアムで釣ろうしても無駄です、ボス。大和ミュージアムより鉄のくじら館行きたい(そっちか。

 帰りに草津か江波あたりを一巡りしたいんだけど、日が暮れてるよなぁ…って。
 いっそもう、自費でいいから広島に泊まろうかな。あるいは車中泊しちゃうか。疲れてるのに4時間近くも一人で車を運転したくないよ。

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【拍手】ぱちぱち、ありがとうございます。>8/22、30、9/5、7、8、10/1。

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