夏イベ。

Date: 2017/08/17(Thu) 00:51 [1306]

 絶賛出張中なので、たぶん参加しないなって。

 といいますか。
 そろそろ飽きてきたかなぁと。
 完全にルーチンワーク化しちゃってるし。

 それよりも何よりも、イベントで実装される新艦に魅力を感じなくなってきているワケで。

 …サラトガまでだったなぁ…。
 サラちゃん欲しかったけど、完走できなかったしな。

 以降はまぁどうでもいい感じ。
 二等駆逐艦あたりが実装されるなら、ちょっと持ち直すかもだけど。
 松とか樅とかかわいいぜ(プラモの箱の話。←

 …とかまぁ、そんなヨタ話はどうでもいいとして。

 ずっと心の中にあるのは、
『艦これ止めたら二次も止めどき』
 なんですけども。

 イベントたんびに言ってるけど、たぶんワタクシ、日常のルーチンワーク化したものに対して、それ以上の変化は基本要らない人のようで。
 …てかまぁ、夏の出張中は、イベント参加しようなんて元気はさすがにないなぁって。



 夏出張も無事半分終わりました。
 今回は故あって、さらに物件がなくて、ホテル暮らしをしていますが。…アレね、料理ができないのがしんどいワケですよ。去年の9月10月出張の時も言ってた様な気がするけど。

 友人に「お総菜でも買って」…と言われたんだけど、そのお総菜が問題で。
 食物アレルギー、マジめんどくさい。

 食べたいものどころか食べられるものすらなくてスーパーマーケットをさまよい歩くたんびに心が折れる夏出張。
 野菜食いたいし、肉焼いて食いたい。
 メシとふりかけだけの夕飯を延々2週間以上。さすがに飽きました(そこだよ。

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【拍手】ぱちぱち、ありがとうございます。>7月30日

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一言だけ。

Date: 2017/08/13(Sun) 01:28 [1305]

さよなら。

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いのちをつなぐ。

Date: 2017/08/10(Thu) 02:03 [1304]

 ずっと書きたいと思っていた一遍を。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

○こちらを覗き込む電

 電    はわ……(大きな目をさらに見開いている)



        画面は電を見上げる感じだが、実際には電がこちらを覗き込んでいる。
        位置関係は電が上でこちらが下。
        実はこちらは電の足下にある箱の中のとあるモノ。
        さて。このモノが、今回の主役(w。



○「パタン」という乾いた音と共に暗転


○ヒナセ基地(最初期)の台所

 電    はわわ……ど……どうし……



        ひとり途方に暮れる電。
        足下にはキャスターの付いた蓋付き木箱。
        途方に暮れたまま、電は宙と木箱を交互に見ている。



 電    えっと……えと……し……司令官さん……に……(カタカタ震え始める)
      ごっ……ごっ……



        目が泳ぎ、脂汗をかき始める。



 電    ……ごめ……め……はわ……わ……わわ……



        カタカタとぎこちなく首と視線を動かして、木箱を見る。
        過去の記憶――つまりは前の提督の頃のこと――を思い出して、
        身がすくんでしまい、足を出そうにもまったく動かない。
        今にも卒倒しそうになっているその時――



 声    デンー?



        電、その声にビクッと飛び上がる。
        声の主はもちろんヒナセ。



 声    デン? ……あれ? どこかな。
      デーン。



        ヒナセが台所の入り口から顔を出す。



 ヒナセ  あ。いた。



        電、ヒナセのほうを見る。完全に硬直している。



 ヒナセ  ……? どしたの?


 電    はわ……わ……


 ヒナセ  (電が真っ青になって動けなくなっているのに気がついて)……!
      ……ん? どした?(ちょっと困った顔で微笑むが、その場からは動かない)


 電    し……司令官……さん。


 ヒナセ  なのですよ。


 電    ご……ごめんな、さい……なの……です(最後は消え入るように)



       電の目が泳いでいる。



 ヒナセ  ?? どうしたの?(ゆっくり近づく)


 電    その……(ぎこちなく首が動いて、木箱のほうを見る)


 ヒナセ  ん? イモ箱?(近づいて開ける)……あ。


 電    (下を向いてカタカタ震えながら)いなづま……お……おやさい、のかんりを……


 ヒナセ  (その様子を見て「ふ」と小さく息を吐いて)ジャガイモの芽が出ちゃったねぇ。


 電    ご……ごめんなさ、い。


 ヒナセ  あー……まぁこれは仕方ないかなー。


 電    ………。


 ヒナセ  (電に近づいて、ひょい、と抱き上げる)


 電    ひぁ……(硬直する)


 ヒナセ  (電をぎゅ、と抱いて、その耳元で)……大丈夫だよ。怒ってない。
      むしろ私のほうが、君に謝らないと。


 電    はわわ……(ぐらぐらしている)


 ヒナセ  危ないから、私をぎゅってしてくれるかな?


 電    は……はい……なの、です(言われたとおりにする)


 ヒナセ  はい、上出来。



       しばらくそのままでいるが、ヒナセがさすがに疲れてしまい、
       電をテーブルの上に座らせてから、少ししゃがんで電と目線を合わせる。



 ヒナセ  (にこ、と笑い)落ち着きましたか?


 電    ……なの、です。


 ヒナセ  なのですか。


 電    あの……ごめんなさいなのです。


 ヒナセ  君が謝ることじゃないよ?


 電    で……でも、貴重なたべものが、食べられなく……なったの、です。
      変なものが、出て、いるの、です。


 ヒナセ  (芽が出たジャガイモの一つを手にとって)まぁ食べられないわけじゃないけど、
      ここまで芽が出ちゃったら、美味しくはないかな。……ホラ、ふにゃふにゃに
      なっちゃったし(ジャガイモをプニプニと握って電に差し出す)
      触ってごらん。


 電    (おそるおそるヒナセの手の中にあるジャガイモに触れる)……ふらふわ、なのです。


 ヒナセ  中の栄養が、(芽を指さして)この芽に食べられちゃったからね。


 電   (うつむく)


 ヒナセ  おイモたちはさ……あ、タマネギとかもそうなんだけどね、まだ生きてんの。
      この子たちはね、土から出してこうやって箱に入れてても、死んでないんだよ。


 電    ……?


 ヒナセ  ジャガイモは、地下倉庫にまだたくさんかこってあるから、心配しないで。
      今日の分は、あっちから出してこよう。
      ……で、この子らは……んー……明日やりますか。
      今日はもう遅いからね。


 電    はわ……。


 ヒナセ  というワケで、このお話は明日しようね。
      じゃ、あっちからジャガイモ出してきて、晩ゴハンの用意をしますか。
      電、手伝ってくれますか?


 電    は、はい…なのです。


 ヒナセ  よろしくお願いしますのです。



       ヒナセはにっこり笑って、電に軽く敬礼した。



○翌午前中 ヒナセ基地の家庭菜園(まだ規模は大きくない) ヒナセと電

       ヒナセと電が畑に出ている。彼女たちの足下には手蓑(テミ)が三つあり、
       その一つの中には昨日の芽が出たイモと包丁が入れてある。
       もう一つには灰が入れてある。
       最後の一つは空である。
       ふたりでストレッチ代わりの体操をかるくやってのち、手蓑のそばに座りこむ。



 ヒナセ  (ジャガイモを一つ手にとって)昨日ね、この子たちはまだ生きているんだよって
      話をしたよね。


 電    (こくん、とうなずく)


 ヒナセ  だからね、土に埋めてやるんです。


 電    はわ……。


 ヒナセ  こうやってね……
      (ジャガイモをいくつかに切り分ける。一つのかけらに一つの芽…くらいの要領で)


 電    (目を見開く)……切っちゃったの、です。


 ヒナセ  (うん、とうなずき)……で、こいつをさらにこうします(切り口に灰をちょん、と付ける)
      さ、私が切るから、電はこうやって、灰を付けてくれますか?
      付けたらこっち(空のテミに自分で灰を付けたジャガイモを入れ)に入れてね。


 電    はい、なのです。


 ヒナセ  そうそう。これはね、手蓑(テミ)って言います。
      地域によってはエビジョウゲとかって言ったりするかな。
      私の父や伯父はエブって言ってたから、ずっとそうだと思ってました(あはは、と笑う)


 電    テミ……えぶ?


 ヒナセ  まぁどっちでもいいよ。一般用語としては手蓑(テミ)だから、手蓑のほうがいいかもね。
      私はついうっかりエブって言っちゃうかもしれないけど。
      ……まぁいいや、とりあえず急いでやろう。
      今日の午前中のお仕事は、このジャガイモを植えることです。
      (言うと、手慣れた手つきでジャガイモを切り分けて、電のそばに置く)


 電    はいなのです(置かれたジャガイモの切り口に灰を付けていき、空手蓑の中に
      丁寧に並べていく)


 ヒナセ  いい手つきだねぇ(ニコニコと笑う)


 電    あの……し、司令官、さん。


 ヒナセ  はいなんでしょう。


 電    じゃがいもさん、土に埋めたら、どうなるの、ですか?


 ヒナセ  埋めたらねぇ……この芽がさらに大きくなって、土の外に出てきて、
      葉っぱが出てきてさらに大きくなって、そのうち花が咲いて、土の中にジャガイモができます。
      この一片でたくさんのジャガイモができるから、収穫したらしばらくイモに
      不自由しなさそうだねぇ。


 電    はわ……。


 ヒナセ  だからね、ジャガイモは芽が出ちゃったら、場合によってはこうやって植えてやればいいの。
      こうやればね、次のジャガイモができるよ。無駄にならない。
      いのちは続いていくんだよ。……もっとも、ダメな場合もあるけどね。 そこはさ、
      掛けみたいなものだから。


 電    掛け……??


 ヒナセ  あーわかんないか。
      私の父がよく言ってた言葉がね
      『種まきと人生はロシアンルーレットだ』なんだけど、
      人生はともかく、植物を育てるってそうだなぁって思うね。
      いろんな状況とか環境や天候で、たくさんできたりまったくできなかったり。
      ホントにね、農業って面白いなっておもいます。


 電   ろしあん……??


 ヒナセ  ルーレットっていう賭け事の方法があるんだけど……賭け事っていうのは……
      ホラ、こないだやったあみだくじみたいなヤツね。当たったり外れたり。


 電    おもしろかったのです。


 ヒナセ  それは良かった。


 電    でも、司令官さんより多くもっらっちゃって、良かったのですか?


 ヒナセ  そりゃもちろん。デンはくじ運がいいよねぇ。
      まさか飴をあんなに当てちゃうなんて、思わなかった。


 電    大事に食べているのです。


 ヒナセ  そうしてください。虫歯になってもここじゃすぐに治療できないから、
      食べたあとは、ちゃんと歯磨きもしてね。


 電    はいなのです。


 ヒナセ  ロシアンルーレットってうのは、簡単に言うと、命がけの賭け事でね。
      当たっても外れても大きい……って意味らしいよ。


 電    ???(首をかしげる)


 ヒナセ  ふふ……(ニコニコと上機嫌で作業をしている)



       そうこうしているうちに、ジャガイモは切り終わり、灰も付け終わって。



 ヒナセ  さて、これをこっちとこっちの畝に、植えていきますか。
      だいたいこのくらいの間隔(約三十センチほど)を開けてね。
      このくらいの深さで、こんな感じに芽を上にして、植えていきます。
      ……わかった?


 電    わかりました、のです。


 ヒナセ  OK。じゃ、競争しようか?(にっこりと笑う)


 電    はわ……。


 ヒナセ  君は初めてだから、ハンデ付けよう。
      (右の畝の中央付近に行って線を引く)ここがお互いのスタートね。
      ……で、君は向こうに向かって植えて、私はこっちに向かって端まで行ったら
      こっちの畝にも植えます。ゴール地点は向こうね(電の進行方向を指す)
      お互いに畝の向こう端にたどり着いたらゴール。
      どっちが早いか競争。……どう?


 電    はわ……。
      わ……わかりましたの、です。


 ヒナセ  これが終わったら、ちょうどお昼を作る時間くらいになるかな。
      じゃ、始めようか。


 電    はいなのです。


 ヒナセ  じゃ、君はこっち側に来て。そう。
      私はこっち側にポジション取ります。お互い右利き同士だから、ぶつからなくて済むよ。


 電    (ヒナセに言われた通りの位置に付く)


 ヒナセ  (灰の付いたイモ2/3ほどを、今は空になっている手蓑に移して自分のほうに置き、
       1/3を電のほうに置く)こっち、君の分ね。足りなかったら悪いけど私のところまで
       取りに来てくれる?


 電     はいなのです(柄に『まづない』と書いてある移植ごてを握っている)


 ヒナセ   お。やる気満々ですね。


 電     なのです。
       じゃがいもさん、たくさんになるなら、いなづまはがんばるのです。
       司令官さんにはまけないのです。


 ヒナセ   (電の様子に心から満足しきった笑顔で)よし。じゃ……位置についてー……よーい……


 電     (真剣な顔で合図を待つ)


 ヒナセ   スタート(ゆっくりとでも確実に土に移植ごてを入れる)


 電     はいなのです。



        人ひとり艦(ふね)ひとり。
        畑で黙々とイモを植えていく。しばらくは徐々に離れていったが、
        やがて人が折り返して艦との差をジワジワと縮めていく。
        空は快晴。風が畑の周りの草を揺らしている。
        
        ヒナセと電、まだふたりしかいない。島の暮らしにそろそろ慣れたけれど、
        ふたりの生活はまだまだこれから。

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 一足早く、エアコミケ的に。

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めーさくお題の欠片。

Date: 2017/08/03(Thu) 23:04 [1303]

 ちび子2号をいじくってたら、ひょろっと発掘されたので、書きかけですが公開してみる。
 …よく見たら、美鈴出てきてないし。←
 こりゃ『咲夜さんとおぜぅ』じゃんよー…てなった。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「しんしゃかいじん?」
 それは、咲夜が初めて聞く単語だった。
「ああ。なんでも“外”では最近、今の時分に“しんしゃかいじん”とやらが大量発生するんだそうよ」
 咲夜の給仕したモーニングティー(それはこの館では一日の最後に出されるものである)を、その出自に恥じることない貴族的で優雅な動作で受け取った、この館――紅魔館――の主人である吸血鬼のお嬢さまが、やはり貴族的な笑みを浮かべて言った。しかし言った本人も意味はよく分かっていないらしく「八雲紫に聞いた話だけど」と補足した。
「しん……というからには、なにか新しいものでしょうか」
「そうかもしれない」
「……であれば、『新しゃかいじん』ですわね」
 咲夜は右の人差し指の先で空中に字を書いた。いわく『新』と。
 であるならば、『しゃかいじん』とはなんぞや? 紅魔館の主従には答えを見いだすべき最後の問題が残った。それを咲夜は素直に口にした。
「……で、“しゃかいじん”とは、一体なんでしょう?」
「さぁな」
 主人の口調は素っ気ない。
 咲夜は「ああ、お嬢さまにも分からないのね」と心の中でつぶやいた。ならばこれ以上ここでこの話題を引っ張っても、なんら進展も発展もないだろう。目の前の主人は単に話の接ぎ穂ネタとして、『新しゃかいじん』なる単語を口にしただけのようだった。もしかしたら咲夜がこの単語の意味を少しでも知っていて話を広げてくれることをほんの少し期待していたのかもしれない。
 しかし咲夜も知らなかった。だからと言うわけではないかもしれないが、主人は今自分が口にした単語への興味を完全に失ってしまっていた。
 だから、この話はこれでお終い。咲夜もこれ以上はこの話を発展させず、お嬢さまの意に沿うよう振る舞った。つまり、完璧な給仕をし、新しい話題の話し相手となり、そしてお嬢さまがお休みになるまでのお相手を務めたのだった。
 しかし、分からないことを分からないままにしておくのは、瀟洒と評される有能なメイドには耐え難いことだった。さてこの問題に対する回答はどこにあるのか、誰が持っているのか。しばしの休息が取れる午前中、時間を止めて微睡みながら、咲夜は考えた。
 夕方、お嬢さまがお目覚めになるちょっと前くらいに人里に出てみようか。
 物知りと言えばすぐに思いつくのが魔法使いたちだが、『新しゃかいじん』と『魔法使い』2つの単語の響きがなぜだかしっくりこない。ここはどうやら寺子屋の教師をやっている歴史食いの半獣に訊くのが良いような気がする。
 『教師』と『新しゃかいじん』……ホラ、なんとなくパズルの隣同士のパーツのような響きではないか?

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 このあともちろん美鈴やけーね先生やらたぶんもこたんやらアリスやらなんやら出てきて、『新社会人』についてあーでもないこーでもないとやる話だったかと。
 思い出すか、別方向でも話が流れ出したら、続きを書くと思います。←

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Deep inside・16

Date: 2017/08/02(Wed) 23:49 [1302]

 エピローグ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
○鹿屋基地 アサカのオフィス

        アサカがヒナセから提出された報告書を読んでいる。
        ヒナセはデスクの向こう側、アサカに対峙する形で丸椅子に腰掛け、鯱張って
        アサカが読み終えるのを待っている。



 アサカ   (最後のページまで読み、すらりとデスクの上に報告書を置いて)……三文小説を
       読んでいるような気分になるわね。


 ヒナセ   はぁ……(そう言われましても、という顔)


 アサカ   あまりにも荒唐無稽だし、憶測の域を出ていないことが多すぎる。もしこの報告書の内容が
       実際にあったことだと仮定しても、例の件についてはすでに最終報告書の受理・検証・承認も
       終わっているから、今さら蒸し返すのも面倒になるわね。
       どのみちG提督はすでに亡くなっているし。


 ヒナセ   ……ですねぇ。
       それは次長にお見せするためだけのモノでして。可能であればご返きゃ……


 アサカ   (自分の唇に人差し指を当てて、ヒナセを制しつつ)ヒナセ提督。悪いのだけど、
       デスクの上の書類を片付けておいてくれるかしら? (ざぁっと書類をかき回す)


 ヒナセ   (アサカの意図に気がついて)次長、来るたびに従卒か秘書扱いは、そろそろやめて
       頂けませんかね?


 アサカ   (何も言わずにオフィスチェアから立ち上がって、隣にある書類用小部屋の引き戸を
       開けて中に入り、扉を閉める)


 ヒナセ   ……無視かい……(呟いたにしてはやや声が大きい)
       んもー……。こういうのは明石あたりにさせてよね。



        アサカがかき回した書類を集め直して順番もそろえて立て、
        デスクの天板にトントン、と地を落としながら、デスクの周囲を
        アサカがいつも座っている正面に回っていく。
        もともと書類を挟んであったハード型のファイルバインダーに戻すと
        バインダーの地をデスクの隅の一画に叩きつけたあと、その場に
        バインダーを、やはり叩きつけるようにして置き、
        同時にデスク天板の裏に手を滑り込ませて小さな黒いモノを剥ぎ取った。
        それをチラリと見て何もなかったように床に落とし、
        靴の踵で力いっぱい踏みつける。
        床の上には無残に潰れた小さな黒いモノの残骸。
        それを無表情でつまみ上げ、ハンカチに包んで小さく丸めて
        自分のポケットに入れた。



 ヒナセ   ……まったく、相変わらず人使いが荒いよ、姫提督は(頭をガリガリと掻く)


 声     何か言ったかしら?



        アサカが書類のバインダーをいくつか持って、小部屋から出てくる。



 ヒナセ   いいえー(にへら、と笑って、肩をすくめる)
       (先ほどハンカチを入れたポケットを指さしながら)これ、ちょいと調べます。


 アサカ   そうして頂戴。あなたの“ご自宅”でね。


 ヒナセ   ……Aye aye ma'am.


 アサカ   ところで、本当に良いのね?


 ヒナセ   何のことですか?


 アサカ   神通のことよ。


 ヒナセ   ええ。現時点では、ウチで引き取るのが最良だと思われます。


 アサカ   一度あなたに手を上げかけたのに?


 ヒナセ   それは、ウチからまた出されるかもしれないという危機感がさせたことで、
       そういうのがなければ、落ち着くと思います。
       ドロップ艦や漂流艦の、発見率の高さには目を見張るものがありますから、
       彼女の着任は、当基地にとっても有益であると考えます。
       まぁ、Win-Winとまではいかなくても、お互いそれなりに益はあると思いますよ。


 アサカ   あなたがそう言うのなら、私には異論はありません。
       ただ、形だけでも廃艦ということにして、あなたの基地で建造されたように
       見せかけることは可能だけど、そこはどう?


 ヒナセ   それをする必要ってあります?


 アサカ   基地から出さないのであれば取り立てて必要ないけれど、大規模合同作戦に
       参加させる場合はシリアルの提出が必要だから、その際に問題になるかもしれなくてよ?


 ヒナセ   ……ああ……なるほど。
       うーん……それについては少し検討させて下さい。


 アサカ   検討ね……そんなに難しい話でもないでしょうに。


 ヒナセ   対外的には次長の仰るとおりですが……その……私もあまり艦政部あたりに
       借りを作りたくないんですよ。下手をすると、そこから綻びが生じることになるかもしれませんし。


 アサカ   (ふむ、と得心した顔で)確かに。それもそうね。
       分かりました。……もしその気になったら言って頂戴。


 ヒナセ   ありがとうございます。
       ところでお茶、入れましょうか?


 アサカ   (珍しいこともあるものね、と目線を上げるが、すぐに書類に目を落として)
       じゃ、ちょっと休憩しましょうか。
       (書類をまとめるとデスクの上から2番目の引き出しを開けてなにやらゴソゴソとさぐり)
       ヒナセ提督、あなたのオフィスでいいかしら?(菓子の箱を持って立ち上がる)


 ヒナセ   (へ? と目を丸くして)……あ、はい。いいですけど……?


 アサカ   あなたのお茶じゃなくて、鳳翔か神通の入れたお茶を所望します。


 ヒナセ   (ひっでー…という顔をするが、自分の腕を知っているのであえて黙った)
       じゃ、神通に淹れさせましょう。


 アサカ   (制帽を手に取って、ふと気が付いたように)電も連れて来ているのだったわね。
       (制帽を置き、カラーを緩める)


 ヒナセ   (アサカの心遣いに「にこ」と微笑んで)ありがとうございます。
       じゃ……(ドアを開けて控える)


 アサカ   (ドアマン・ヒナセの前を通りながら)……そういうところ、抜けないわね。


 ヒナセ   (ちょっと心外だという顔で)アサカ次長に対してだけですよ。
       どんだけ秘書やら特別幕僚やらという体の良い使いっ走りをやってたとお思いです?


 アサカ   (ヒナセの言葉に心を動かされた様子もなくしれっと)あなたも一城の主になって
       ずいぶん経つのだから、自覚をお持ちなさい。ドアくらい自分で開けられます。


 ヒナセ   ……失礼しました(苦笑したアヒル顔になる)



        言葉とは裏腹にアサカはさも当然のようにヒナセが開けているドアを通って廊下に出ると、
        そのままスタスタと艦娘控え棟に向かって歩く。
        その様子を見ていたヒナセは、フッと息を吐いて微妙な表情になると
        小さく肩をすくめてからドアを閉め、アサカを小走りに追う。


 ヒナセ   (追いついて並んで歩きながら)神通はもちろんですが……


 アサカ   長門も見させてもらうわよ。
       (チラ、と一瞬だけヒナセに冷たい視線を送って)本当に、貴女は鈍感ね。
       もっと行動心理学を学んだ方がいいわよ。


 ヒナセ   ……はぁ。



         艦娘控え棟に向かうふたりがだんだんと小さくなっていき……。
                                                                                                            (了)

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そして怒濤の夏がはじまる。

Date: 2017/07/28(Fri) 22:38 [1301]

 一昨日の夜から熊本に来ています。
 今年はお化け屋敷の中の人。

 会期は8月いっぱいまで。

 過去に問題の多かった熊本現場ですが、お世話になった営業さんに何かをお返ししたくて、半分志願してやってきました。
 去年は震災前にはもう決まってた現場でしたが、震災で建物が半壊し、イベント自体が吹き飛んで、ワタシは遠く秋田の地へ飛ばされたましたっけか。

 今も一部は駐車場の一角で、プレハブ店舗で頑張ってらっしゃいます。
 ワタシに何ができるというわけではありませんが、熊本の小さなお友達とそのご家族の幸せなひとときのお手伝いができたらなぁ…と思います。

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Deep inside・15

Date: 2017/07/19(Wed) 03:01 [1300]

その15
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
        部屋の中に残っているのは、ヒナセ、カワチ、神通。



 カワチ   まったく、艦娘使いが荒いのは今に始まったことではないが、感心しないな。


 ヒナセ   まぁいいじゃない。


 カワチ   あと、思いつきで、いとも簡単に予定を変更するのも頂けない。


 ヒナセ   (至極ごもっともなので苦笑する。人の悪い信楽焼のタヌキのような顔になる)


 カワチ   ……と、言うべきことを言った上で、さらに言おう。
       無事で良かった……ヒナセ。そして神通も。


 ヒナセ   ……ありがと。


 カワチ   こんなに肝が冷えることは、金輪際無しにして欲しいよ。


 ヒナセ   軍人である以上、命のやりとりは常に背中合わせじゃない。


 カワチ   そういう意味ではないよ。


 神通    あの……す……すみません……。


 カワチ   いやいや、君が悪いわけじゃないよ神通。悪いのは、この信楽焼のタヌキのほうだよ。


 ヒナセ   あ。ひどい。


 カワチ   君がこういう無謀な計画を立てて実行するたびに、何度でも言ってやるさ。
       じゃないと、分からんヤツだからな。


 ヒナセ   ……レーコさん、怒ってる?


 カワチ   かなり本気でね。


 ヒナセ   ホントにごめん。


 カワチ   (息を大きく乱暴に吐く)



        こんこん、と小さなノック音。



 カワチ   誰だね?


 声     私だ。神通を迎えに来た。


 カワチ   ……那智か。お入り。


 那智    失礼する(嫌な音を立ててドアが軋みながら開き、那智が入ってくる)
       長門たちから話は聞いた。明日、神通も連れて行くなら、そろそろ休ませてやったらどうだ?


 カワチ   ……あ。


 ヒナセ   すっかり忘れてた。


 那智    まったく、ひどい提督たちだな。


 ヒナセ   (那智の意図に気がついて)じゃ、お願いしようか。
       神通、明日の朝の作業は……


 神通    (表情が曇る)


 ヒナセ    ……あ、いや、やっぱりやってもらおうか。
        私は明日、たぶん寝坊するので、私の代わりに鶏小屋の玉子を回収してくれる?


 神通    (にこ、と笑って)了解しました。。


 ヒナセ   よろしくね。じゃ、おやすみ。
       那智も、よろしく。


 那智    うむ承知した。お先に失礼する。
       (神通を促して部屋から出ようとしたところで立ち止まって振り返る)
       ……アキラ、妙高姉(あね)から伝言だ。
       「今夜はゆっくりなさいませ。ただし、とぐろを巻かない程度に」以上だ。


 カワチ   あ……ああ。分かった。
       おやすみ那智、神通。



        那智は神通を伴って、部屋を出て行く。司令官室の扉が、ギギ…っときしんだ音を立てて閉まった。



 ヒナセ   ……ドアを取り替えないと。


 カワチ   君が本部に行ってる間に、直しておくよ。


 ヒナセ   ………(意味ありげにカワチを見ている)


 カワチ   ……なんだい?


 ヒナセ   んにゃ……。


 カワチ   那智のことだろう?


 ヒナセ   ……君の艦(ふね)だしね。
       ただまぁいつの間に? とは思った。


 カワチ   例の一件以来だね。今のは職務じゃなくてプライベートとして来たんだろ。
       ちなみに、妙高さんもプライベートでは名前で呼ぶよ(うふうふと嬉しそうに言う)


 ヒナセ   ……あそ。好きにハーレム形成してろ。
       とにかく問題がないのならそれでいいよ。


 カワチ   なんだい? 妬いてくれてるのかい?


 ヒナセ   それ、ゼッッッッタイにないから!!


 カワチ   そうか、それは残念だ。私は君と鳳翔さんのあいだにある、誰にも割り込めない関係に
       いつも嫉妬しているのだけれどね(にっこにっこ笑いながら)
       特に仕事中、執務室で見せつけられるのは、実に心が苦しい。


 ヒナセ   だから! そういうのは止めろって、何度言ったらわかるかな!!
       私はそういうの――


 カワチ   そんなに照れなくてもいいじゃないか。


 ヒナセ   照れてない!!


 カワチ   (ヒナセを捉えて首に腕を回してヘッドロックし、顔を近づける)まぁまぁ。今夜は何もなければ、
       私は妙高とベッドの上でデートの予定だったんだ。それがオシャカなったからな。このオトシマエは
       きっちり払ってもらおうか。


 ヒナセ   ばっ……マジで止めてよね!!(河内の顔を遠ざけようと押すが、動かない)


 カワチ   (耳元で)まぁそう言わずに、一杯付き合ってもらおうか。
       (冷えたサイダーをヒナセの頬にペタと付ける)


 ヒナセ   ひゃ!!


 カワチ   (ヒナセから離れてにっこりと)どうだい? タネも仕掛けもある手品は?


 ヒナセ   ……妖精さんか……。


 カワチ   ご明察(カワチの肩の上、髪の中から妖精さんがピョコと顔を出して敬礼する)


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 次でラスト(たぶん。←

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プライベートエリア・5

Date: 2017/07/18(Tue) 01:50 [1299]

 その5 ここを書くのに難儀してました。←
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 那智   ……再会した時、足柄は……さっきも言ったが、建造時のことをはっきりと憶えていた。
      当時の建造順、養育艦が誰だったか、そして私たち姉妹全員のこと。
      実は私もすべて憶えていてな。ひと目見てあの足柄だとすぐに分かった。
      後年再会した妙高姉も羽黒も同様にすべてを憶えていて、全員が一目でお互いを認識している。
      それまで他の妙高型と一度も邂逅したことがないならば、単に同型艦認識を勘違いしただけだ
      ということになるだろうが、そうじゃない。全員、他の妙高型と同じ隊にいたことがある。
      彼女らとはこのようなことはなかった。


 カワチ  (速記で書き付けながら)なるほど。


 那智   足柄と再会した夜は、提督の計らいもあって、二人きりで部屋で飲んでいた。
      足柄はあれでも酒に強くてな。


 カワチ  妙高型は、全体強い子が多い印象だね。君ら姉妹は特に強いなと、感じるけれども。


 那智   そうか。
      提督から差し入れられたダルマはもとより、私所有のダルマも空けてしまったな、あの時は。
      ややハイペースで飲んでいたのは間違いない。そのうちにいい雰囲気になってな。
      酔っ払いが酒の勢いでコトに及んだと言われればそれまでだが……。
      (何かに気がついたような顔になり)………(考え込む)


 カワチ  (那智の様子に気がついて顔を上げ)どうしたね?


 那智   ……どちらからともなくと思っていたが、違うな。
      十年以上前の話なので記憶があやふやになっているが、たぶん、積極的に誘導していたのは
      足柄のほうだ。
      私は何度かはぐらかしたんだが、それでもなお食いついてきたというか。


 カワチ  ふむふむ(相槌を打ちながら、しかしカワチの目が意味ありげに動く)


 那智   「気がついたらそうなってた」というのはフェアじゃないな。誘ってきたのは足柄だが、
      それをいいことに、自分の衝動に逆らわなかったのは私だ。


 カワチ  まぁ、それは悪いことではないと思うよ。


 那智   貴様ならそう言うだろうな。


 カワチ  まぁね。これが人間なら兄弟姉妹同士の性行為は大いに問題アリだが、君たちには
      そのあたりのタブーがないからね。『型』はあくまでも『型』であって、『血縁』ではないから。


 那智   ヒトはときどきそんなことを言うが、どういう意味だ?


 カワチ  全部がそうというわけではないが、とあるレベル以上の生物は『血縁』というもので繋がっていてね。
      実際的には遺伝子と染色体という、君たちで言うところの設計図と根幹情報のようなものだ。
      そしてこの遺伝子が繋がっていることを『血縁』や『血』という言語概念で表現している。
      この場合の『血』は単純に『blood』という意味ではない。それはわかるかい?


 那智   ……うむ、なんとなくだが。


 カワチ  OK、なんとなくで十分だよ。
      で、ここからが本題だが、たとえば自分の直接かつ異性の親や子、きょうだいとセックス…
      …生物全体で話をしようか。つまりは生殖……交尾交配だな……をして子ができたとする。
      これを『血が濃い』と称して、あまり良くないこととしている。


 那智   何が良くないのだ?


 カワチ  血縁が近いもの同士の生殖だと、非常に似通った遺伝子を使った次世代ができる。
      遺伝子というのは、遺伝する因子のことだよ。優秀・有益な遺伝子だけが入っている
      のであればあまり問題はないのかもしれないが、先天的な病気や障害などのマイナス因子も
      遺伝子情報として入っているんだ。
      今、「優秀・有益」や「マイナス因子」と言ったが、本来、遺伝子が持つすべての因子は、
      “未来への可能性”という意味しか持っていないんだ。
      たとえばの話。現在のキリンは、現在の生息環境下で生きるための最適進化した姿だが、
      この先気候の変化やらなにやらで食料となる背の高い木が急激に消失して、彼らの蹄の高さほどにも
      ならない草しか残らなかったら、あの首が災いして種の存続危機に陥るだろう。
      つまり、『首が長い』という遺伝因子は、現時点では種の存続のための有益な因子だが、状況が変われば
      種の存続すら危ぶませるマイナス因子になる、というわけさ。


 那智   ……(ちょっと考え込んで)今装備している兵装が、現在の世界最高水準最高性能であっても、
      時と場合によってはそれが徒になって死活問題に発展することがある……ということか。


 カワチ  さすが那智。飲み込みが早いね(満足げに大きく肯く)
      次世代が生み出される際には遺伝子の組み換えが行われるが、
      これは親となる二個体から得た遺伝子情報が使われる。
      顔かたち体型体格体質。身体能力。性格や思考の方向性……出現は多岐にわたり、
      『顔は父親に似ているが後ろ姿は母親そっくり』だとか『性格は母親寄りなのに、
      考え方や話し方は父親と同じ』などという個体が生成される。
      つまり、どちらかの親の完全なクローンではなくて、両方の性質を兼ね備えた次世代が生み出される。
      生物はそうやって常に進化を続けてるのだよ。


 那智   ……ふむ。


 カワチ  さて、話のはじめあたりに戻るが、親や子、あるいはきょうだい間で生殖が行われた場合、
      親となる二個体から得られる遺伝子情報は、重複するものが多いということになる。
      その場合に考えられるデメリット……つまりマイナス面はなんだと思うね?


 那智   (ちょっと考えて)病気や障害が発現しやすくなる……のか?


 カワチ  その通り。もちろん、マイナス面ばかりが発現しやすくなるわけではないようだがね。
      大昔の話ではあるが、王族や貴族などが優秀な遺伝子を残す目的で、同族婚姻を繰り返していた時代もあったということだ。
      もっとも、数世代後には虚弱者ばかりが生まれ夭折することが多くなってきたため、
      極端な同族婚は止めているという話だ。


 那智   (真剣な顔で考え込んで)……たとえば、私と足柄の設計図を持ち寄って新しい艦を作ったとして、
      意図して長所だけを寄せ集めることが、人間や生物の生殖ではできない……ということだな。
      時には短所ばかりが選択されて、不具合の多い艦ができる、と。


 カワチ  (さりげなく自分と足柄を例に出した那智が微笑ましくてくすりと笑い)
      ざっくり言えばそういうことだね。
      君たちをたとえとして使うなら、二個イチで建造しなければならないとして、
      妙高型の設計図を二艦使うのと、妙高型と別型の艦(ふね)の設計図を一艦ずつ出して使うのと
      どっちがより進化した艦が出来上がる可能性が高いかな、という話だね。


 那智   なるほど。……ふむ。遺伝とやらの基礎はなんとなく理解した。


 カワチ  さらに深い話になるが、遺伝には優性遺伝と劣性遺伝、そして隔世遺伝というのがある。
      「優性・劣性」は遺伝の質ではなくて、単に遺伝のしやすさのことだよ。
      わかりやすいところで、「父親似・母親似」などを決める因子だね。これによって、
      姿形がよく似たきょうだいや、ぱっと見他人かと思うようなきょうだいが生まれる。


 那智   ふむ。ではカクセイイデンとはなんだ?


 カワチ  直上の親ではなく、二世代以上を経て出現する遺伝のことだね。
      両親共に右利きなのに子だけが左利きで、調べてみたら三世代前に左利きがいたとか、
      家族の誰とも似ていないが数代前の先祖にそっくりだ……というようなパターンがこれにあたる。
      実は私の容姿がそうでね。親や兄たち、祖父母とも似ていないのだが、祖父に言わせると、
      高祖父……つまり祖父の祖父にそっくりなのだそうだ。


 那智   祖父の祖父……(指で数えて)……四代前か。


 カワチ  そうだね。


 那智   貴様のその容姿から想像するに、ずいぶんとハンサムな提督だったのだろうな。


 カワチ  (肩をすくめて)ご婦人方によくもてたそうだから、それなりにハンサムだったかもしれないね。
       今話したいくつかのことから、遺伝子情報が似通っていると次世代を形成するさまざまなものが
       遺伝子的に濃くなるのは分かったと思う。しかしだ。たとえば、うまみ調味料を入れすぎると、
       美味くなるどころか逆に不味く感じるように、遺伝子情報も似通ったものが重複しすぎると、
      優秀とされている遺伝因子も、その固体にとって害をなす因子になることがある、ということだろう。
      また、異なる遺伝子情報の結合は多様化をもたらすが、似通った遺伝子情報の結合では多様化を
      引き起こす条件が少ない。
      生物の進化は、その多様性をもって、生存環境への順応をしていく先にあるのだと思う。


 那智   理解できたような、そうでないような。
       なんとなく煙に巻かれた感があるのは否めないな。


 カワチ  ……説明が下手ですまないね(苦笑する)


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 書いては消し書いては消し……で二週間くらいくらい格闘してました。
 ひさびさに、資料の読み過ぎで大迷走してみたりも。
 この世界においては「艦娘はヒトではない」ので「こういう知識はほぼ持っていない」という前提があり、その上で「専門家ではないが非常に頭の良い人間」が、「自分の理解している範囲で、この手の知識がほぼない艦娘に、説明している」……というシチュエーションって、難しいな……と思いました。
 …が、まとめる時は、たぶんかなり削っちゃうんじゃないかなぁって、思います。かなり増長しすぎてる。

 さて、次回から後半戦…(苦笑。

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Deep inside・14

Date: 2017/07/09(Sun) 04:39 [1298]

 その14
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

        司令官室の扉を蹴破って、日向と長門が飛び込んでくる。
        日向が神通の持っているナイフを叩き落とし、羽交い締めにして確保する。
        長門は散乱している飛来物をかき分けて、司令官デスクの下からヒナセを引きずりダ出す。



 長門    ……無事か?


 ヒナセ   (引きずり出されながら)……なんとか……。
       耳が割れるかと思った。もうちょっとお手柔らかに頼むよ。


 長門    すまないな。可及的に速やかに、かつ被害を最小にとどめて、
       神通の足を止めさすには、これしか思いつかなかった。



        電気が点けられて、カワチと鳳翔が入ってくる。
        司令官室にドラム缶がいくつも散乱している。
        飛来物はこのドラム缶で、大きな音が出るよう、中は空のようだ。



 カワチ   大丈夫ですか? 司令。


 ヒナセ   ……手荒な真似は止してよね。誰の立案なの?


 日向    すまない、私だ。


 ヒナセ   ヒナタか……(はー、とため息をつく)
       ああ、神通は解放して。もういいでしょ。


 カワチ   しかし……


 日向    (心配そうな顔)


 ヒナセ   ナイフを奪ったなら、もういいです。
       ……ところで、この芸術的な投擲をしてのけたのは、誰?


 カワチ   武蔵だよ。海から……ほら。



        カワチが指さした先の海に、『武蔵』の黒い影。
        てっぺんの戦闘指揮所に武蔵と隼鷹姿とドラム缶の影。



 ヒナセ   (窓からそれを見て、ため息をつく)
       (振り返って)ヒナタ、神通を放してやって。


 日向    ……わかった(神通を立たせて、離れる)


 ヒナセ   (神通の前に行って)すまなかったね、神通。
       ……落ち着いた?


 神通    ……はい……申し訳、ありませんでした……。


 ヒナセ   いや、謝るのはこっちなんだよ。
       君が今夜、ここに来るように仕向けたのは、私でね。
       一部フェイクの情報を流したんだ。
       まさかナイフを持ってくるとは思っていなかったから、ちょっと大ごとな感じになっちゃったけど。


 神通    すみません……私……わた……


 ヒナセ   (室内にいる他の連中を見回して)ウチの専任艦……特に戦艦クラスはやることがおおざっぱでね。



        日向、長門が心外だと言わんばかりに顔をしかめる。



 ヒナセ   でもさ、みんな私やカワチによく仕えてくれるし、小さな艦たちの面倒見もいい。
       どう? 彼女らと一緒にやっていけそう?


 神通    ………。
       私……もう、駄目です……提督を……


 ヒナセ   ………。


 神通    だからもう……解……


 ヒナセ   解体はしないよ。


 神通    ……!


 ヒナセ   その必要はない。


 神通    でも私……おかしいんです。
       はじめはそんなことないのに、だんだんと、提督の一番でいたくなって……
       提督と私以外いらないって……そう、思ってしまって……
       でも……でも、そんなこと……できっこないのに……でも……それが、すごく嫌で……


 ヒナセ   (ガリガリと頭を掻く)君はたぶん、人間を好きになりすぎるんだ。
       それは悪いことではないけど、危険なことでもある。
       あと、君は艦娘を大勢持っている提督や、大規模の基地にいるよりも、
       ここみたいに小さくて、所属の艦娘がコロコロ変わるところがいいのかもしれない。
       どうだろう? ここで基地専任艦として、正式に着任してみないかい?
       それで様子を見て、それでも駄目だと君が判断したら、私にそう申告して下さい。
       その時は、私が責任を持って、君を解体します。


 神通    ……!


 ヒナセ   でも憶えていておいて。
       私はね、資材にするしかないほど損傷している艦や、うまく建造できなかった未生成艦しか解体したくないんだ。
       君たちには、ヒトにより近い『心』がある。そんな君らを解体するというのは
       私にとっては人を殺すことと同じくらいに罪深いことなんだよ。
       だから、そんなことを私にさせないよう、君もできる限りの努力をしてほしい。


 神通    はい……。


 ヒナセ   それと、これは提案なのだけど。


 神通    はい?


 ヒナセ   もし君が基地専任艦となることに同意をしてくれるなら、鹿屋に一緒に行こう。
       一緒に行って、その場でできる手続きは、すべてやってしまおう。
       どうかな?


 神通    ………(しばらく黙っていたが、やがて、こくり、とうなずく)


 ヒナセ   じゃ、決まり。
       (顔を上げて、カワチに)カワチ副司令。明日の旗艦は長門で行きます。


 カワチ   ……は? はい、了解しました。
       しかし司令、足が速い艦をと、おっしゃいましたが?


 ヒナセ   うん。ちょうど良いから、『長門』と『鳳翔』の最速航行の実験と訓練をやりながら行こうかなって。


 カワチ   つまり、今から罐を用意しろ、と?


 ヒナセ   明石と日向がいれば、なんとかなるでしょ(にへら、と笑う)


 カワチ   ………(渋い顔)


 日向    (同じく渋い顔で)わかった。明石を叩き起こして何とかしよう。
       『鳳翔』はともかく『長門』は湾内に置けないから、『明石』を外に出すぞ。妖精も総動員しなくてはな。


 ヒナセ   うん、それでいいです。ありがと。よろしくお願いします。
       (周りを見回して)さて、みんな。今日のところは解散しよう。
       日向、明日の出発は、一三〇〇カッコ「予定」で。


 日向    朝イチじゃないのか?


 ヒナセ   なんか疲れちゃったからさ、ここの後片付けは明日の午前中にやって、のんびり出たい。
       高速罐を積むなら、午後から出てもなんとかなるでしょ。


 日向    ………。
       わかった。
       まったく、不器用な司令官だな。


 ヒナセ   (すっとぼけて)何のコト?


 日向    ま、好きにするが良い。
       鳳翔と長門は一緒に来てくれ(作業のために部屋を出て行こうとする)


 鳳翔    はい。


 長門    うむ。


 鳳翔    では提督がた、お先に失礼いたします(一礼して、日向の後を追う)


 長門    (出て行こうとして、ふと立ち止まり)
       提督、武蔵と隼鷹はこのまま直帰させる。明日の朝にでも労ってやってくれ。


 ヒナセ   了解。そのようにするよ。
       艦を『明石』に付けたら、君たちも早く休んで。


 長門    うむ、了解した。では失礼する。



        日向、鳳翔、長門は、それぞれの作業準備のために、部屋を出て行く。

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『プライベートエリア』4.5

Date: 2017/07/08(Sat) 06:06 [1297]

 その4.5(またそんなことを…)

 “離れ”に移動して、さて前段作戦(は?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

○同夜 数分後 離れ
       那智を連れたカワチが入ってきて、電灯を点ける。



 カワチ  今日はまたきれいに片付けてあるな。前に使ったのは誰かな。


 那智   貴様ではないのか? ……その……足柄……と。


 カワチ  いいや。足柄とは私の部屋でねぇ……(見回して)これだけきれいに整えるのは、たぶん隼鷹だな。


 那智   ………(しれっと足柄とのことを肯定されたので、憮然とした顔になっている)


 カワチ  知っていたかい? 隼鷹はあれでもいろいろときちんとしててねぇ。
      さすが元客船というべきか(クスクス笑う)
      おかげで、ウチの武蔵は余所の子よりも格段に行儀がいいんだよ。
      やはり育て方なのかも。提督(主人)はもとより養育担当艦の性質が大いに影響するようだ。


 那智   私にはそのあたりのことはよく分からないな。建造から二〇年近く経っている。
      以前言ったことがあると思うが、私を育ててくれたのは同じ那智でな。……まぁ、初めての相手も
      その那智だった(カワチと目を合わせずにつぶやくように言う)


 カワチ  (別室にあるたぶん妖精さんが用意しただろうウヰスキーとつまみのセットを持って出てきて)
      ひどい提督がいるもんだ。養育担当艦が同種艦なのは構わないが、初めての相手をさせるのは
      確実に軍規違反だ。……理由は知らないが、まぁなんとなく予想はつく。
      (那智を促して同時にソファに腰掛け、グラスに氷とウヰスキー入れてオンザロックを作る)
      自分と同じ顔でほぼ同じ性格の存在が相手というのは、正直ぞっとしないよ。
      どちらの立場を想像しても、私には耐えられないな(グラスの一つを那智に差し出す)


 那智   (グラスを受け取りながら)私は、そのあたりもよく分からなかった。今でもよく分からない。
      足柄は私と同じ養育艦だったから、もしかしたら私と同じ相手が初めてだったかもしれんな。
      (ぐっと一口飲む)


 カワチ  (グラスをゆっくり傾けながら)……ははぁ……なるほどな。
      なんとなく納得したよ。


 那智   うん?


 カワチ  足柄がどうして君に執着するのか……って話さ。


 那智   ……初めての相手が『那智』だった……からか。


 カワチ  真相はそう簡単なことではないかもしれないがね。単に『那智』だったから……ではないかもしれんよ。


 那智   どういうこと?


 カワチ  突っ込んだことを訊いて申し訳ない、と先に謝っておくが、足柄とはいつ関係を持った?


 那智   ……は……?


 カワチ  誤解が生じないように直截に言おうか。
      初めて足柄と寝たのはいつだ?


 那智   (あからさまに嫌そうな顔をする)………。


 カワチ  嫌なら答えなくてもいいよ。単にこれは自分の予想を補完したいだけの話だから。


 那智   いや……それについては、別に構わない。
      一度姉妹がばらばらになって、再会してからだ。私が当時仕えていた提督のところに赴任してきたんだ。
      前任者が戦死したらしい艦娘を、提督が丸ごと引き受けてきた。その中に足柄がいた。そして……


 カワチ  そして?


 那智   ……その日のうちに……。


 カワチ  なるほど。もう一つ突っ込んで訊く。
      どっちが声を掛けた? つまり……コトに及ぶに当たって。


 那智   ……貴様の出刃亀趣味に付き合わされているのではないだろうな?


 カワチ  そう思いたければ思うがいいよ(肩をすくめる)
      ただまぁ……君と足柄の件については、先日足柄と寝た際にいろいろ思うことがあってね。
      これはきちんとしないとまずいなと思った……と、正直に言っておこう。


 那智   ……ふむ(微妙に納得していない顔)


 カワチ  私はあまり人に褒められた人間ではない。ことセックスモラルについては、たぶん最悪の部類だ。
      だからこそ、君たち姉妹が潜在的に抱えているかもしれない問題については、
      早々に方向性だけでも示しておきたい、と思っている(真面目に言う)


 那智   セックスモラルが低いのは確かだな。
      貴様は私が知っている提督の中でも、しょっちゅう相手が違う。
      ここに来てからは妙高姉(あね)だけっぽいが、実際にはそうでもなさそうだ。


 カワチ  ここでは妙高さんだけだね。ここ以外の場所に出張の際は、まぁそれなりに。
      人間相手ではあるけどね。


 那智   ……貴様のその言葉を、とりあえずは信じようか。
      姉上が世話になっている良人でもあるしな。


 カワチ  それは光栄(にこ、っと微笑む)


 那智   言葉を信じるだけで、貴様自身を信じるわけではないぞ。


 カワチ  そこはどうぞ、好きにしてくれ。


 那智   そのようにさせてもらう(グラスのウヰスキーをぐっとあおる)
      ……私と足柄が今の関係になったのは、足柄と再会したその夜だ。
      新しい艦娘が着任した際、早く環境に慣れさせるために、元からいる艦娘としばらくペアにしておく提督がいるが、
      当時の提督もそのタイプでな。姉妹艦が良かろうということで、私と同室になった。
      当時は妙高型重巡は私だけだったな。
      足柄は……リセットされてほぼ建造時の状態に戻されてはいたが、だからかな。建造時の提督のことと
      私たち四姉妹のことは憶えていた。会ってすぐにその話が足柄の口から飛び出してきた。


 カワチ  ……那智。すまないがこの話、メモを取らせてもらっていいだろうか?


 那智   なんだ? ヒナセ司令の真似事か?


 カワチ  悲しいことに、足柄との一件で、司令に対応と詳細な報告を命じられていてね。
      ……ま、君を呼びつけたのも、その一環というわけさ。


 那智   ……仕事の一環だったのか(憮然とする)


 カワチ  仕事の一環でもあるが、自分の艦娘たちの監督と問題解決は提督の責任だからね。
      君たちはそんなことないかとは思うが、感情的にぎくしゃくするのは、今後の作戦行動に
      差し障りが出る可能性がないとも限らない。それでは私が困るし、君たちもお互いに嫌だろう?
      ……我々の仕事は海で死ぬことじゃない。海で戦って生きて戻ることなのだから。


 那智   ……そうだな。
      メモくらい好きに取るがいい。どのみち私たちは貴様の所有物だ。今はな。


 カワチ  ありがとう(上着を脱いで、内ポケットから手帳とペンを取り出す)
      私の「所有物」という言われ方は心外だが、まぁ良かろう。今話題にすべきコトはそこじゃない
      (手帳を開いていくつかのことを速記のようなモノで書き付けて、そのまま顔を上げずに)
      ……お待たせ。つづけて、どうぞ。


 那智   ……ふん。

--------------------------------------------------------------------------------
 次は、ちょっと面倒なお勉強の時間…(遠い目。

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Deep inside・13

Date: 2017/06/27(Tue) 15:23 [1296]

 『プライベートエリア』と交互に連載状態になってますが、一部テーマかぶりしてるからしゃーないかなって…(明後日を見やる。

 その13
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

○同夜 二二四〇(フタフタヨンマル) 司令官室
        ヒナセと鳳翔が居残って仕事をしている。



 ヒナセ   鳳翔(おかあ)さん、そろそろ上がって下さい。
       明日は早いですし。


 鳳翔    いえ……まだ終わっていませんので。
       提督のほうこそお休みになって下さい。


 ヒナセ   私は艦の中で寝られるので。それに……


 鳳翔    はい?


 ヒナセ   いえ……。


 鳳翔    ………。
       明日の旗艦はわたくしではないのでしょう?


 ヒナセ   (書類から目を外さず)……ええ。大淀です。
       即行で往復したいので。


 鳳翔    でしたら、もう少しお付き合いいたします。


 ヒナセ   いや……鳳翔さんには、艦載機で索敵と直掩をお願いしたいので、
       早く休んで、明日に備えて欲し……(不穏な空気を察し、顔を上げて鳳翔を見る)


 鳳翔    ………(超絶渋い顔)


 ヒナセ   ………(目が泳ぐ)
       お、お茶を入れてくれませんか? 飲んだら今日は上がります。
       目処が付きましたから。


 鳳翔    ……了解いたしました。



        鳳翔、書類をまとめて立ち上がり、書類棚に戻して給湯に消える。
        ヒナセはその様子を見送り、ホッと息を吐くと眼鏡を外し、眉の根元を
        親指で押さえて顔をしかめる。



 ヒナセ   ……まぶし……この、ポンコツ目め。



        デスク上に置いている室内電灯のリモコンに手を伸ばして取り、ボタンの一つを押す。
        ピッと軽快な音が鳴って、室内灯が一段階光量を落とす。
        ヒナセは顔をしかめたまま、二回、三回とボタンを押し、そのたびにピッと音が鳴って
        部屋が徐々に暗くなる。最後の一押しで「ピー」と小さく甲高い音が鳴ると同時に明かりが消える。
        月は出ていず、星明かりのみの夜。
        暗がりの中。ヒナセは窓辺に立ち、海を見る。波の音が聞こえる。

        コツコツ…と控えめなノックの音。



 ヒナセ   (眼鏡をかけ直し、音の方にゆっくりと向き)……誰かな?


 声     あの……


 ヒナセ   ああ……どうぞ。



        扉を開けて入ってくる黒い影。
        中が暗いのでたじろいだ様子を見せる。



 ヒナセ   こんな時間に何かな? 神通。


 神通    ……あの……。



        ヒナセは左目を閉じ、右目で神通を見た。
        胸の前で組まれた手に、ナイフがある。



 ヒナセ   (つま先に力が入る…が、表面上は平静を装っている)
        どうした?(小首をかしげる)


 神通    あの……明日……


 ヒナセ   うん?


 神通    鹿屋に……行くと、伺って。


 ヒナセ   うん、行くね。それがどうかした?
       あ、もしかして、お土産のおねだりかな?(軽くおどけて言う)


 神通    いえ……その……


 ヒナセ   必ず持って帰るねって安請け合いはできないけど、それでもいいなら受け付けますよ。


 神通    わたし……わたし……を……


 ヒナセ   ………。


 神通    他所に……やらないで……くだ……さ……
       私……(手に持ったナイフがカタカタと揺れる)


 ヒナセ   危ないからさ、それ、仕舞おうか?
       こっちにくれるかい?(ゆっくりと神通に手を差し伸べる)


 神通    こ……ここ……に……


 ヒナセ   うん。大丈夫だよ。余所にはやらない。だから……(じり…と神通のほうに踏み出す)


 神通    嘘です!! 提督……提督は、私を……私を他所にやるために……
       やるために……鹿屋に……行く、んでしょう!?
       (手に持ったナイフをさらに固く握りしめる。そのはずみで刃がヒナセの方を向く)


 ヒナセ   違うよ。落ち着いて。落ち着いて、神通(差し出した手を引っ込めて、両手のひらを神通に見せてかざす)
       君は、余所にやらない。その話をしに、明日鹿屋に行くんだ。ホントだよ。


 神通    ……本ト……ですか?
       ここに、ずっといて……いいの?


 ヒナセ   本当。本当。なんなら、カワチに聞く?
       このことは、副司令も承知してることだから。


 神通    ………(ホッとした様子だが、その目はヒナセと凝視している。ヒナセの言葉を信じようと内心で葛藤している)


 ヒナセ   君を、基地専任艦として、ここに引き取れないか、アサカ提督にお願いしようと思ってる。
       さっきも言ったけど、このことは、カワチ副司令にはすでに話して了承済みだよ。


 神通    ………。


 ヒナセ   君はドロップ艦の発見率が高い。ウチにとって大変有用な子だからね。
       だから……



        常にヒナセにくっついている鳳翔所属の妖精さんが、ヒナセの耳の後ろの髪の中から
        ぴょこっと顔を出す。位置的に神通からは見えない。



 妖精さん  てーとく、鳳翔さまからエマージェンシーコールを受けて、カワチ提督がこちらに向かっているとのことです。


 ヒナセ   だから……
       (胸の前で上げている両手のひらを一回結び、そして広げる。妖精さんはこれを了解の合図と受け取った)
       だから……。


 神通    ………。


 ヒナセ   (カワチがこちらに来ているのはいいとして、タイミングを間違ったら最悪の事態になるなぁ、と思いつつ)
       まずは手に持っているそれを、こっちにくれるかな? (再びゆっくりと手を差し伸べる)
       ……ところでそれ、どこにあったの? 倉庫かな? それともキッチンかな?
       (もっと有益なこと言えないのかね、自分は、と思っている)


 神通    嫌です。


 ヒナセ   (冷や汗がどっと背中を伝う感触)


 神通    これを渡したら……余所にやられてしまう……。
       前の前、がそうだった……から……。


 ヒナセ   あー……(前々回、ここに送られてきた直前に何が起こったのか、なんとなく察した)
       落ち着こう神通。さっきも言ったように、もう君を余所にはやらない。
       君を基地専任艦にする申請をするために、明日から本部に行く。それだけの話だか……


 神通    ……え……?(目が見開いて、視線が遠くなる)


 ヒナセ   (神通の様子にすぐに気がつき)ん? (急いで振り返って、神通の視線の先であろう方向を見る)
       ……え!? ちょ……っ……



        ヒナセの目が、こちらに向かって飛んでくる何かをはっきりと捉えた直後、
        それが視界いっぱいに広がる。
        ヒナセは思わず、デスクよりも低くしゃがみ込むと、飛来物はヒナセのデスクを超えて、
        司令官室の床、神通の手前に直撃する。
        続いて二波三波と飛んできて、ほぼ同じ場所に落下する。司令官室が轟音に包まれる。
        ヒナセは耳を塞いでデスク下に逃げ込み、神通は何が起きたのか理解できずに立ちすくんでいる。



 声     提督!



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 書いてみたら存外長くなったので、ここでぶち切り(酷い。

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プライベートエリア・4

Date: 2017/06/21(Wed) 05:58 [1295]

その4
 結局、司令も副司令も、似たもの同士と言いますか。それとも長く一緒にいると、似てくるというのか……。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
○同夜 カワチの私室(リビング側)

       那智が来ていて、ソファに座り、膝に両肘をつけ、手を自分の前で固く握りしめている。
       口も堅くぎゅっと引き結んで、顔をゆがめて黙っている。
       テーブルの上には、ダルマとグラスとつまみのナッツ類。
       グラスには手が付けられていない。
       カワチはテーブルの対岸にいて、静かに飲んでいる。



 那智   (しばらく苦々しそうに黙っていたが、重い口を開く)……とにかく、事情と状況はわかった。
      足柄が……世話をかけた(立とうとする)


 カワチ  待ちなさい那智。君はそれでいいのか?


 那智   (カワチの声を聞きたくないというように、振り切ろうとする)


 カワチ  Wait!


 那智   っ……!(その場に縫い止められたように動けなくなる)


 カワチ  Sit-down and don't move.


 那智   ………(抵抗を試みるが抗えず、引きずられるように座る。
      座ったときには汗びっしょりになっている)


 カワチ  (那智の様子を無表情で眺めたのち、立ち上がって寝室に入り、
       タオルを持って出てきて、そのタオルを那智に差し出す)
      移動しよう。離れを予約してある。妙高にも了解は得ているから心配しなくていい。


 那智   (タオルを受け取りながら、絶望的な顔になる)


 カワチ  なに、夜は長い。話をするにしても、隣にはヒナセ司令がいるからね。
      今夜は電とお楽しみのようだし、邪魔しちゃいけない。


 那智   ……ヒナセ提督が? まさか。


 カワチ  そのまさかさ。人は見かけによらないだろう?(肩をすくめてかすかに笑う)


 那智   平和と見えたのに、ここもそうでもないのだな。


 カワチ  いや、平和さ。他の基地や鎮守府に比べれば、格段に平和だよ。
      人が艦娘を巡って争わないだけでも、格段に平和さ。
      ヒナセ司令はお堅いから、電だけだしね。ベッドに連れ込むのは。


 那智   私は……そうやって人間の相手をさせられた駆逐艦や特務艦が壊れていくさまを数え切れないほど見てきた。
      ここに送られてくる艦なぞ、ほんの一握りだ。艦娘は誰もが口をつぐんでいるが、海ではない場所で
      人間に酷い目に遭わされている艦は、星の数ほどいる。


 カワチ  そもそも人間は、戦闘という名目で君たちを間接的に傷つけている。
      君たちは戦いで疲弊していく。……が、その人間もまた然りだ。
      酷いことを承知で言えば、君たちは感情コントロールがかかっていて、恐怖を感じる部分を
      かなり削られているが、人間はそうじゃない。
      君たちに守られてはいるが、敵の砲弾や艦載機がまぢかに来れば、筆舌では尽くしがたい恐怖をこの身に受ける。
      衝動で動ければまだいいが、たいがいは体が凍り付いて身動きができなくなる。
      死の恐怖を味わい続けて平気な者は、ごくわずかで、そういうヤツはたぶんすでに狂っている。
      ……那智、『死ぬ』という意味がわかるかい?


 那智   動かなくなって解体されるか轟沈することだ。この世には存在できなくなる。
      だが、場合によっては、建造や修復の資材になる。他の艦の役に立つ。


 カワチ  人はね、那智。
      死んだらそこで終わりなのさ。死のあとには何もないし、何も残らない。
      だから人は死が怖いんだよ。
      さ、この話の続きはあちらでやろう。司令の睡眠を邪魔してはいけない。


 那智   ……わかった……睡眠!?


 カワチ  そう、電と一緒だとよく眠れるらしい。
      電からもそのように報告が上がっているよ(にっこり笑う)


 那智   (毒気を抜かれた顔になって)……わかった。今夜はお手柔らかに頼む。


 カワチ  こちらこそ。


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 ちょいと短いですが、一区切り。

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Deep inside・12

Date: 2017/06/19(Mon) 05:54 [1294]

 その12 提督たちの密談は続く。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 カワチ   ところで、そろそろ本題に入らないか?


 ヒナセ   ……そうだね。
       この基地の司令官として思っていることは、まぁこれは「ゆゆしき問題」だね。


 カワチ   その心は?


 ヒナセ   カワチ副司令、当基地の主任務は?


 カワチ   様々な問題……特にメンタル面での問題を抱える艦娘たちの修復と、それに付随する観察と記録です。


 ヒナセ   そのとおり。
       あと、そういう問題の諸元となっているものの特定と告発も、実は秘密裏に行ってます。
       もっとも、たいがい被疑者死亡であることのほうが多いので、告発まで行ったのは、
       過去に二回しかないけどね。


 カワチ   ……それで、あんなに執拗なメモを取るわけか。


 ヒナセ   まあね。しかしまぁ、これは完全なる副産物でしかないけどね。
       艦娘たちに害をなす連中に同情の余地はないし、できることなら根絶して欲しいところ
       ではあるけど、だからといって、私はMPでも軍検察や軍事裁判所の検事官
       でもないから、正直、誰かを裁くための準備をするのは、あまり良い気持ちではないよ。


 カワチ   ふむ。


 ヒナセ   さて今回の件だけど、こんなに何度も出戻ってきた艦娘は他にはいないんだよね。
       戻ってくることそのものについては、特に問題とは思わない。
       気がつかれなかったり隠されたりして、沈んでしまったり、秘密裏に処理されてしまう方が
       問題が大きいと私は思う。
       提督たちの元で日々量産されているからといって、艦娘たちは使い捨てしていいものじゃない。
       兵器とはいえ、人格があり感情も持っているからね。


 カワチ   それはそうだ。そのように士官学校でも、艦娘は大事に扱え、しかし馴れ合うなと叩き込まれるからな。


 ヒナセ   その割には、扱い方が酷かったり馴れ合いすぎてたりして、軍規違反が横行してるけどね(チラリとカワチを見る)


 カワチ   まぁそう言ってやるなよ。
       ……我々は戦争をしているんだ……それも、得体の知れないモノを相手にだ。
       どこかでガス抜きをしてやらないと、人間のほうが先に参ってしまうよ。
       なにせ我々には艦娘のようなメンタルコントロールが施されてないからな。
       だからといって艦娘に対してどんな扱いをしていいということにはならんがね。


 ヒナセ   (肩をすくめる)まぁそんなこんなだから、どこかおかしいなら、ここに預けられたり戻されるほうが、
       万倍もマシだと、私は考えてる。もちろん、ほんのわずかな運がいいかもしれない子たちだけが
       ここに来ているわけだけど。


 カワチ   そこはもう致し方ないところだな。すべてを受け入れるには、ここのキャパでは小さすぎるし、
       問題が露見するのもわずかな数しかいない。


 ヒナセ   分かってる。
       私がここでできることなんて、砂粒ひとつくらいの分量でしかないよ。
       問題が発覚した子すべてを受け入れることなんて、とうていできない。


 カワチ   ………。


 ヒナセ   話を戻そう(ふぅっと息を吐く)
       とにかく目の前の問題をどうにかしないと。
       私はね、あの子を引き取ろうかと思っている。


 カワチ   君の艦(ふね)として?


 ヒナセ   いや……とりあえずは基地専任艦として。
       軽巡は運用しやすいから。


 カワチ   演習や遠征旗艦として運用するといいかもしれないな。


 ヒナセ   ……いや、遠征旗艦はまだ無理かな。
       ここに何度も戻ってくるのは、思い違いじゃなければ「私のそばにいたい」からだと踏んでいる。


 カワチ   なるほど。


 ヒナセ   今は君もいるから、ちょっと様子が変わっているかもしれないけど、とにかく『提督の』役に立ちたい、
       それも直接……って思ってる節があるんだな。もしかしたら潜在意識があるだけで
       本人に自覚はないかもだけどね。


 カワチ   思い当たる節があるんだな。そう言うということは。


 ヒナセ   まぁね。
       褒めるとさ、はにかんだり困ったそぶりを見せるんだけど、一瞬だけ口の端が、実に嬉しそうに笑うんだよ。
       気がつかない?


 カワチ   そういえば……。なるほど、これは根が深そうだ。


 ヒナセ   余所に回されれば、そのたびにリセットされて無改造状態になるじゃない。
       無改造だと運用しづらいから、そこそこのレベルに上がるまで、海域に出してもらえないことが多いと思うんだよね。
       あの子は自分のレベルが上がるまで待てないタイプなんじゃないかな。
       だから、『提督』の役に立てないって思い込んじゃって、不調に陥る。
       ……詐病の可能性も捨てきれないけどね。


 カワチ   詐病だとしたら、論文が一本書けるくらいの症例になるな。
       そんな高度なことをした例は、今までないだろう?


 ヒナセ   公式の記録にはないね。もしかしたら、本当に初めてのケースかも。


 カワチ   もしそうなら、艦娘も、ごくごく緩やかではあるけども、進化しているってことになるかしれないな(やや興奮気味に)



 ヒナセ   (その様子を見て、ため息をつく)それもあってさ、手元に置こうと思ってんの。
       もし本当に進化していて、それが露見でもしたら、それこそ処分されかねない。
       ここに置いておけば、私が口をつぐんでいる限りは、その心配はないからね。


 カワチ   まぁそうだが……ちょっとリスクが高くないか? その仮説が事実だったとしたら。


 ヒナセ   まぁね。とにかく、姫提督に直接相談した方がいいかもしれない。
       早いがいいだろうから、今日アポ取って、早ければ明日にでもちょっと本部に行ってこようと思う。
       急にで悪いけど副司令、留守番をお願いできますか?


 カワチ   了解しました。で、誰で行きます?


 ヒナセ   うーん……そうだなぁ……足の速い子。あと鳳翔さんとデン。


 カワチ   (えへら…と笑う)


 ヒナセ   ……ん? なに?


 カワチ   そこはいつものメンバーなんだなって。


 ヒナセ   デンはどこにでも連れて行ってるでしょ。


 カワチ   いや、鳳翔さん。


 ヒナセ   美味しいゴハン、食べたいじゃない。


 カワチ   ………。


 ヒナセ   なによ?


 カワチ   いや……君こそ艦娘の運用を微妙に間違っているなと思っただけだよ。


 ヒナセ   ……艦載機の哨戒と直掩があったほうが、安全でしょ!


 カワチ   はいはい。そういうことにしておきましょうか(ツボに入って肩が震えている)


 ヒナセ   ………(それを見て、盛大に顔をしかめる)


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 …うっかり本音が出ちゃうダメ司令でありましたwww


【拍手】ぱちぱち、ありがとうございます! >16日。

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プライベートエリア・3

Date: 2017/06/16(Fri) 08:56 [1293]

 距離感って大事だと思うんです。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

○前景 木漏れ日の中。
       ヒナセとカワチ。
       すでにジョギングではなくて散歩になっている。



 カワチ  ……さて、どうしたものかな。


 ヒナセ  百戦錬磨のカワチ提督でもそういうんだ(くすり、と笑う)


 カワチ  やめてくれ。人聞きの悪い。


 ヒナセ  どうせ、私たちふたりしかいないじゃない。


 カワチ  さてどうかな。あんがい日向あたりが、そのへんに潜んでて聞いているかもしれんよ。


 ヒナセ  それこそ人聞きが悪いなぁ。日向は確かに神出鬼没なところはあるけど、
      言うほどでもないし、そんなにしょっちゅう立ち聞きはしてないよ……たぶん。


 カワチ  たぶん。


 ヒナセ  あの子は単に、そういう星の巡り合わせにいるんだと思う。


 カワチ  そうか?
      私の目には、主人に忠実で、何かあったら守ろうと思ってる。
      だから君のそばによく潜んでいるように見えるがね。


 ヒナセ  そう……あー……。


 カワチ  思い当たる節でもあったかい?


 ヒナセ  んー……まぁね。前に仕えていた提督が、たぶん好きだったのかなって。


 カワチ   ………(期待外れに終わった顔)


 ヒナセ  伊勢が好きなんだとばかり思っていたけど……いや、たぶんそうなんだろうけど。
      提督のほうも同じくらい好きだったのなら、そりゃぁ辛い思いをしたろうなと。


 カワチ  (やれやれ、とため息をついて)
      事情がよく分からないが、あの日向にもいろいろあったということか。


 ヒナセ  ま、その話はおいおいね。
      ……となると、日向が実際にどのくらい壊れているのかちょっと怪しくなってきなぁ。
      これ以上面倒ごとが増えるのはちょっと勘弁して欲しい。


 カワチ  ……ふむ。


 ヒナセ  だからさ、頼むから面倒ごとは起こさないでよ。


 カワチ  ………(顔をしかめて)
      いきなりこっちに話を振らないでくれ。


 ヒナセ  いやいや、元々君の艦が問題だったんだから。


 カワチ  ………(やられた、という顔)失礼しました……。


 ヒナセ  方法はお任せします。私にはそのあたり、よくわからないから。


 カワチ  いつもながら、この手の話題は逃げるね。


 ヒナセ  オマエさんと違って、経験豊かじゃないからねぇ。
      若いうちにもっと遊んでおけば良かったなぁって、思うよ。


 カワチ  (肩をすくめて)やめたまえよ。そういう柄にでもないことを口に出すのは。


 ヒナセ  それは失礼。
      ……ま、しばらくは“離れ”を使うのは制限しておきましょうかね。


 カワチ  ヒナセ、そういうのは「気の回しすぎ」というヤツだよ。
      もっと端的に言えば、「要らぬお節介」だね。


 ヒナセ  あ、そ。
      やっっぱり、慣れないことはするものじゃないね。


 カワチ  まったくだ。



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 ヒナセはお堅いというよりも、そっち方面に割かれるべきリソース自体を持っていないと言いますか……。
 結婚生活がそれなりに長く続いていれば、ちったぁ変わったのかもしれないけど、そのあたりはすでに藪の中。そして神のみぞ知る。

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Deep inside ・11

Date: 2017/06/06(Tue) 15:38 [1292]

 そしてはじめのシーンに…。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
 ヒナセ   (ファイルをめくりながら)憶えてないかな。昔、姫提督(アサカ中将のこと)麾下の艦隊で、
       なにひとつ問題はなかったのに、進軍中にいきなり沈んだ艦があったのを。


 カワチ   ……(顎に手を当て、んー?と天井を見つめて)……ああ……そういえば。
       (ヒナセのほうを見る)アレは十年くらい前だったか……。
       私がアサカ提督の配下になって、君と再会したこ……ろ……
       ……まさか……?


 ヒナセ   まさか、だと思いたい。
       いちおう次長に、当時の報告書の写しを送ってもらった。
       事故艦のシリアルナンバーが書いてあったはず……って思い出してね。
       (ファイルの外装をトン、と叩いて)これの最終報告書は私が作成したから。


 カワチ   さすがメモ魔のヒナセ少将。
       君の記憶力には、毎度頭が下がりますよ。
       ……で、どうでしたか?


 ヒナセ   残念ながら、違ってた。
       ……もっとも、ドロップ艦だから新規のナンバーを割り当てられているんで、
       違ってて当然なんだけど。


 カワチ   ふむ(真顔で)……だのに疑っている?


 ヒナセ    ………。
       オマエさんは途中で担当を離れたから知らないだろうけど、妙に符合することが多くてさ。
       だから、ちょっと疑ってる。艦種も同じだし。


 カワチ   ……なるほど……と言いたいところだが、ちょっと首肯しかねるな。
       偶然と考えるにはタイミングが良すぎないか?


 ヒナセ   いやー、単なる偶然でしょ。
       『事実は小説よりも奇なり』って言うじゃない。きっとそれだよ。


 カワチ   うーん……。
       そうかもしれないが、偶然と片付けてしまうにはちょっと……


 ヒナセ   ドロップ艦が、どういうプロセスで発生するのかはまだ解明できていないけれど、
       一度沈んだ艦がなんらかの理由で再浮上してくるという説は、ほぼ間違いがないと思う。
       一説には、『沈んだ艦が深海棲艦となって我々を襲い、我々はそれを倒す。
       倒された深海棲艦の何パーセントかが元の艦娘に戻って再浮上し、我々に回収される』
       ………。
       この説を採る場合、倒された深海棲艦が落としたように見えたり感じたりする
       だから『ドロップ艦』と呼ばれているけど、そうじゃないのかもしれない。


 カワチ   (怪訝な顔で)……というと?


 ヒナセ   もしかしたら、深海棲艦と艦娘の因果関係は、
       我々が考えているよりも、もっと希薄なのかもしれない……ってことだよ。
       単に、深海棲艦と艦娘の戦闘がきっかけになっている、というだけで、
       深海棲艦=(イコール)沈んだ艦娘……ではない、ということさ。
       だが、この説を採るのも、かなり無理がある。
       とすれば、どっちでもなく、どっちでもあるのかもね。もちろん仮説に過ぎないのだけども。


 カワチ   それはまた……壮大すぎる仮説だな。
       だが……


 ヒナセ   なんとなく納得したくなるでしょ。


 カワチ   そもそも、艦娘と深海棲艦、どっちが先だったのだろうな。


 ヒナセ   さてね。そこは最高レベルの軍事機密みたいで、ヒロミさんの……いや、
       ヒロミさんのお父上……艦政本部長の権限を持ってしても情報開示はできなかったみたい。


 カワチ   相変わらず、天上陣営(てんじょうじんえい)の仕組みがよく分からないな。
       艦政本部は、艦娘の諸事を取り扱う官庁ではないのか。


 ヒナセ   ……あすこは、艦娘建造の権限と研究、新型艦娘の開発計画を担当している官庁って
       だけだからさ。軍事的というよりも研究機関の色のほうが強いね。
       技官や学者が多い印象かな。……そうそう、明石、大淀、間宮、伊良湖、そして赤城の
       五艦だけは、ある程度狙って建造できるみたいよ。


 カワチ   さすが、詳しいな。


 ヒナセ   ……詳しくなんか、なりたくなかったさ。
       おかげで、この島から出られなくなっちゃった。
       私の出世もここまでかね。


 カワチ   (肩をすくめ、口をゆがめて笑う)これさいわいにと居座っているくせに、
       どの口がいいますかね、それを。


 ヒナセ   戻ってこなくていいのに戻ってきて、出世を棒に振った人に言われたくないかな、それは。


 カワチ   ……これは失礼。


 ヒナセ   いえいえ、お互い様だけどね。


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 冒頭シーンの中佐AとB、どっちがどっちだったんでしょうなw (ちゃんと書いてるけどな。

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プライベートエリア・2

Date: 2017/06/05(Mon) 09:58 [1291]

 そして翌朝……。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
○蛸壺小屋前 朝
       ヒナセがトレーニングウエア姿で、体操をしている。
       そこにカワチが扉を開けて出てきて、ぎょっと飛び上がる。
       ヒナセはカワチにチラリと一瞥をくれる。



 ヒナセ  (視線を海に戻して素っ気なく)おはよう。


 カワチ  お……おはようございます。


 ヒナセ  (体操を続けながら)……ゆうべはずいぶんとお楽しみだったみたいで。


 カワチ  ……いや……その……。


 ヒナセ  別に構わないよ? 君の艦なんだし。


 カワチ  ……え……っと……。


 ヒナセ  ただ、その手の問題だけは、起こさないでね。
      もっとも、同型姉妹の共鳴艦たちだから、大丈夫とは思うけど。


 カワチ  ……べ……弁明を……。


 ヒナセ  私にしてもしょうがないでしょ?
      私はこの手の話に寛容ではないけど、まったく駄目だと強制する気もないよ。
      イヤな話だけど、それこそ誰でもやってることだし。
      ………。
      弁明するなら、それこそ那智に対してなんじゃないかなぁ。
      ま、その必要もないと思うけど……艦(ふね)なんだし。


 カワチ  ………。


 ヒナセ  堂々としていればいいんじゃない?
      じゃないと、彼女たちのほうが混乱してしまうよ。
      これ、いつも君が言ってることだよね。


 カワチ  ……そうだな。


 ヒナセ  今からジョギングに出るけど、付き合う?


 カワチ  あ……うん。


 ヒナセ  じゃ、着替えて、どうぞ。
      そのくらいにストレッチも終わるだろうし。


 カワチ  ……ありがとう(踵を返して着替えに戻る)


 ヒナセ  (感情のない目で見送っていたが、カワチが扉の中に消えると)
      やれやれ(肩をすくめる)


     --------------------------------------


○ヒナセ基地外周のけもの道
       ヒナセ基地の外周や周辺には、
       作業のためだったり、ジョギングやお散歩に使われていたりしてできた
       けもの道がいくつかある。そのうちの一つ。
       ヒナセとカワチが走っている。ヒナセがやや前。
       カワチは髪をポニーテールの位置でくくり、垂らした部分も途中何カ所括っている)



 カワチ  ……いつも、思うが……君のスタミナは、すごいな……(ちょっと息が上がっている)
      私は、そろそろ……歳かな……。


 ヒナセ  ……(平気な顔で、前を向いたまま)単に軽いからじゃない?
      レーコさん、私よりずっと重いでしょ。
      (私より二つ年下のクセになに言ってやがんだ)


 カワチ  あー……それも、あるのかな……。確かに私は、骨から重いから……。


 ヒナセ  頑丈そうな体つきしてるもんね。脂肪も少なそうだ。


 カワチ  ……よく……ご存じで……。


 ヒナセ  (速度を落として、カワチと並ぶ)先日潜水艦たちの訓練で、水着になってたじゃない。
      あれ、似合ってたよ。


 カワチ  ……それは、どうも……(顔が赤くなる)
      ………。


 ヒナセ  (他意なく赤くなっているカワチを見ている)


 カワチ  (それに気がついて)……やめてくれ、恥ずかしい(顔をそらす)


 ヒナセ  (自分にはどこかに置き忘れてきた感情だなぁと、思いながら)
      ああ、それは失礼。



       言って、顔を前に向けると、また黙々と走る。
       速度は上げずにカワチと並んだままで。
       そのうちにカワチも気を取り直している。
       海がみえる道が終わり、山の中、木陰の道にさしかかる。
       光がまだらに、あちこちに落ちている。
       空気がひんやりとして、ほてった体を冷やしてくれる。



 ヒナセ  (唐突に)……ところで足柄はどうだったの?


 カワチ  (驚いて地面に躓いて、派手に転倒する)ぅわぃっっ!!!


 ヒナセ  (あれ? という顔で立ち止まり、歩いて戻る)
      大丈夫?


 カワチ  (体に付いた泥や草をはたき落としながら)……なんとか。


 ヒナセ  (手を差し伸べる)


 カワチ  (ヒナセの手を取って立ち上がる)ありがとう。
      ……ときどき、そうやって人に爆弾を落とすのは、君の趣味か?


 ヒナセ  (なんのこと? と本気で思ったので、小首をかしげる)
      ちょっとだけ興味がわいて。


 カワチ  それも、例の記録のため……とやら、かな?


 ヒナセ  まぁね。


 カワチ  ……(盛大に渋い顔になる)
      この小悪魔め、地獄に落ちるといい。


 ヒナセ  (にひゃ、と笑い、信楽焼のタヌキが笑ったような顔になる)それはどうも。
      で、どうだった?


 カワチ  それでも訊くか。


 ヒナセ  物理的なことには興味はないけどね。
      どうせ私には分からないことだらけだし。


 カワチ  実地で体験できないからな、君は。
      しかし、そっち方面も、実に興味が深いことがあるぞ。


 ヒナセ  へぇ。


 カワチ  興味が出たなら、そのうちに話して聞かせてあげよう。
      もちろん学術的表現を使ってね。


 ヒナセ  それなら是非お願いします。
      ……で、今の質問の回答は?


 カワチ  ……ここまではぐらかしても、食いつくか……。
      そうだな……。
      ま、一言で言えば、足柄の『飢えた狼』はある意味間違いなじゃない。
      もっとも、他の足柄は分からんがね。
      あれでは気の毒だな。


 ヒナセ  足柄が?


 カワチ  いや。足柄も那智もだよ。
      対策が必要かもしれん。


 ヒナセ  あ、そー。
      じゃ、ある意味収穫があったわけだ。
      (尻から小さなメモ帳と鉛筆を出して、書き付ける)


 カワチ  (その様子を見て、あきれかえって言葉が出ない)



--------------------------------------------------------------------------------
 相変わらず、ヒナセはこういうトコ、鬼畜だ(というか、デリカシーがない)なぁと思います。

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良くも悪くも…

Date: 2017/06/05(Mon) 01:15 [1290]

 …同人なワケでして。
 面白いから楽しいからやる、やってるのが同人活動というモノだと思うんですね。

 もちろん、人によってはそれだけではない人も、いるっちゃいますけども。

 しかし基本は、「楽しいから」やってるワケです。
 仕事じゃねぇんだしな(もちろんそれが『仕事』って人もいるけど、ごく少数なんすよ、ええ。

 …で、あるならば。
 答えは自ずと出てると、思います。



 ……辛いのは、仕事だけで十分だ。

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プライベートエリア・1

Date: 2017/06/03(Sat) 11:21 [1289]

 幸運艦姉妹を全員持つというのも、実は楽じゃないのよね…って話。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
       ヒナセ基地もこの頃になると、宿舎が複数建っている。
       ひとつは受け入れて間もなかったり観察監視が必要だったりする艦娘専用宿舎(A棟)
       ひとつはあまり問題がない艦娘たちの宿舎(B棟)
       ひとつは古株の戦艦・重巡・空母用…つまりは専任艦宿舎(C棟)
       そしてちょっと離れたところに建てられた、司令官たちの宿舎(蛸壺小屋)
       そして、『離れ』と称されるプライベートエリアのここ。
       空いてりゃ誰でも使えるので、ときどき日向が泊まってたりもするけれど、
       基本的に、那智と足柄、武蔵と隼鷹。カワチと妙高……つまりはそういうことでして。
       あ、使ったあとは、自分たちでお片付けするのが『離れ』のルールです。

       でもナ。組み合わせがナ……。……アレ??



○蛸壺小屋(司令官宿舎) カワチの部屋前の廊下 夜半
       カワチが夜の見回りから戻ってくる。
       肩に手を当てて、腕をグルグル回す。やや疲れ気味。
       誰かがカワチの部屋の前にいる。暗くて誰かは見えない。


 カワチ  ……おや? (誰かな? と眉間にしわが寄る)



       影が、ごそりと動く。
       カワチ、表情を緩めて。


 カワチ  どうしたんだい? こんな夜更けに。
      ……足柄?



       果たして、部屋前にたたずんでいたのは足柄。



 足柄   ………(何か言いたげな顔)


 カワチ  どうしましたか? お嬢さん。


 足柄   ……別に……。


 カワチ  (苦笑しながら息をちいさく吐いて)ま、良かったらどうぞ?
      広くはない部屋だがね(自室のドアを開けてまず自分が入室し、中に入るよう促す)


 足柄   ………。



       足柄がカワチの部屋に入り、ドアがパタンと静かに閉まる。



○蛸壺小屋 カワチの私室。
       部屋の電気を付ける。



 カワチ  ……どうぞ(コーヒーを入れて差し出す)


 足柄   ありがとう……(受け取る)
      お湯が沸かしてあるのね。


 カワチ  ああ、見回り後に飲むコーヒーは格別でね。
      インスタントだけど、悪くはない。


 足柄   ふうん……(くん、と香りを嗅ぎ、一口飲んで、はーとため息をつく)
      ……美味し……。


 カワチ  それは良かった(にこ、と笑う)
      ……で、今日は那智はどうしたね?


 足柄   その……那智のことなんだけど。


 カワチ  うん?


 足柄   ………。


 カワチ  ………(コーヒーを飲みつつ見ている)


 足柄   ………(言おうかどうしようか、逡巡している顔)


 カワチ  気が向いたら話せばい――


 足柄   提督はさ、那智と寝たんでしょ?


 カワチ  (ぶーっとコーヒーを吹き出す)


 足柄   提督が誘ったの? それとも那智が誘ったの?
      (コーヒーを喉に詰めたらしく、ガッハガッハと咳き込む)

 カワチ  (椅子の背に掛けていたタオルで口と涙を拭きながら)
      ……あ……足柄……ちょ……


 足柄   ねぇ、どっちなの?(真剣にカワチを見ている)


 カワチ  ………(これは本気で思っているなと分かり)
      それは……この間の件……かな?(『ウヰスキーはお好きでしょ?』のこと)


 足柄   (無言でうなずく)


 カワチ  那智から聞いていないのか。……そう言えば、連携を切っていたんだったか。


 足柄   (無言でうなずく)


 カワチ  それは……まぁ、誤解しても仕方ないね(ため息をつく)


 足柄   誤解? 誤解なの?


 カワチ  あの状況では、誤解が生じても仕方がないな。
      私はてっきり、那智が君にはちゃんと話をしていると思っていたし、
      妙高さんからもこの件は伝わっていると思っていた。


 足柄   妙高姉さんは、提督とのことはほぼクローズよ。
      よほどあなたが好きなんでしょうね。些細なことも、私たちにですら知られたくないみたい。


 カワチ  それはそれは……光栄だね。


 足柄   もっとも、あの姉なので、肝心なところは筒抜けだったりするんですけどね。


 カワチ  そのようだ。那智に聞いた話だけどね(肩をすくめる)


 足柄   本当に、何もなかったの?


 カワチ  那智とかい? 二人とも飲み過ぎて、酔いつぶれて雑魚寝しただけさ。
      この棟は壁が薄くてね。ヒナセ提督の部屋とはリビング同士が隣接しているが、
      それでもお互いに、お互いのいびきで目が覚めたりするからね。
      こんなところで逢い引きはできないな……もっとも、ヒナセ司令はときどき
      電を連れ込んで入るようだけど(くつくつと笑う)


 足柄   あの司令が?(信じられないという顔)


 カワチ  君の反応は正しい(ニコ、と笑う)


 足柄   謀ったのね? ……嫌なニンゲン(顔をゆがめる)


 カワチ  (悪びれずに)すまなかったね。だが、一緒に寝ているのは嘘じゃないよ。
      ヒナセ司令にとって、電は自分の子供みたいなものだからね。
      もっとも、旦那さんが生きていてすぐに子供ができていれば、
      君たちくらいの年齢になっているだろうがね。そのあたりには気が回らない
      らしい。司令らしいね。


 足柄   ………。


 カワチ  失礼。そんな話をしに来たわけじゃなかったね。
      つまり君は、もっと那智に積極的になって欲しいんだな?



 足柄   ……よく……わからないわ。
      ただ、那智はあなたによく懐いているのよね。本来、そんなに人間が好き
      じゃかったのに。


 カワチ  んー……それは……君たちの姉君のおかげではないのかなぁ、私としては。
      那智は、妙高さんに心酔しているように見える。違うだろうか?


 足柄   そうね。私にも割り込めない、何かがあるわね。


 カワチ  割り込みたいと、思っている?


 足柄   ……うーん……。


 カワチ  君はとても人間っぽいな。


 足柄   なにそれ。


 カワチ  全部が全部そうじゃないが、人間は、君のような感情を持つことがあってね。
      誰かの一番でありたい……というヤツだね。
      これを持ってしまうと、自分自身でも感情や行動が制御できなくなってしまって、
      場合によっては、自分自身が嫌になったり、自分の外だけに原因をかぶせて自己正当を主張したりと
      負のスパイラルに陥ることが、ままある。
      俗に言う『面倒くさいヤツ』というものだね。


 足柄   (納得いかない、という顔)


 カワチ  私がこう言えてしまうのは、大昔にそういう感情に陥って、自分自身が
      実にめんどくさい思いをしたからだよ。
      体験談……というヤツだな(ふふふ、と鼻で笑う)


 足柄   ……ヒナセ司令のこと?


 カワチ  ん……まぁ、そうだね。
      ここまで達観するには、それなりの時間を要しているというわけさ。


 足柄   ふぅん……。
      じゃ、あなたが今達観というのをしているから、誰とでも寝るの?


 カワチ  (再度コーヒーをぶほ!っと吹いた)


 足柄   今はどうかは知らないけど、あなた鹿屋にいた頃、『艦娘キラー』だって
      噂されてたわ。今も鹿屋に戻ったら、誰かと気軽に寝ているの?


 カワチ  ……その通りだったね。そこは否定しないよ。頻度は落ちたが、あっちで
      それなりに遊んでいるのも、否定しない。
      言い訳だが、本部はストレスフルなところでねぇ……もっとも、お相手は
      艦娘じゃなくて、提督諸氏だけどね(苦笑する)


 足柄   へ?


 カワチ  そうだろう? 自分の直接部下の艦娘ならいざ知らず、余所の提督の艦娘を
      引っかけて同衾するなんてこと、まず不可能だし、できたとしても、先方の
      提督と血の雨を降らせることになる。そういう面倒ごとは、私はゴメンだね。
      まれにいるけどね、そういう提督も。……アレは何だろうねぇ。


 足柄   (気が抜けた顔)


 カワチ  ……君が、何を訝しんで、また何を期待してここに来たのか、予想が付かない
      ワケじゃないが、それは那智に失礼だからね。それを飲んだら、那智のところの帰り。
      もっとも、ここで一夜を明かして、那智を心配させたい……というなら、
      協力しないでもない。


 足柄   ……あなたというニンゲンが、よくわからないわ。


 カワチ  (にこ、と笑って)私は基本的に、女性の味方なのさ。
      人間、艦娘の別なく、『すべての女性は幸せになるべきだ』


 足柄   あなたも女性でしょうに(なにそれ? という顔で苦笑する)


 カワチ  どうやら生まれてくる性別を間違ったらしいね。
      もっとも、男に生まれていたら、男のほうを好きになるタイプになったかも
      しれないがねぇ。
      ……私が男に生まれるのなら、きっと兄たちが女に生まれるのだろうからね。


 足柄   よくわからないけど、人間もいろいろ大変そうね。


--------------------------------------------------------------------------------
(……と、ここまでは良かったんだけどね、カワチさん。人間ホラ、誰にでも『間違い』ってあるわけですしおすし……)

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伝言・1

Date: 2017/05/24(Wed) 01:22 [1288]

 もちろんこの人にも終焉の日は来る……。
 
 『あの桜並木の下で』時間外。さらに未来。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ――母が、自宅で倒れた。
   医者は、もうそんなに長くはないだろう、と診断を下した。
   父が逝ってから、小さくなってしまった母。
   それでも岩下の母として、家族の中で大きな存在でありつづけた。
   その母が旅立つ日が、刻一刻と、確実に近づいてきている。
   私は母に、伝えなければならない言葉がある。
   あの人から託された言葉。
   しかし私は
   それを、思い出せない――



  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

○柳原本邸敷地内。『あずまや』

       雨――。
       春花が“アトリエ”の窓から外を見ている。
       しかしその目は何も映していないようで。
       玄関がカラリと音を立て、ややあって岩下貴秋が顔を出す。



 貴秋   春花。
      どうする? 出社前に病院に寄るかい?


 春花   ……いいえ。必要ないわ。
      目が覚めないのでしょう?


 貴秋   連絡がないところをみると、たぶん……。


 春花   だったら、いい。
      様子を見に行って、その時にうっかり目が覚めたら、朝から兄妹連座で叱られるわ。


 貴秋   ……まぁね(苦笑する)
      しかし、本当にいいのかい? 主治医(先生)の話では、
      もしかしたら目が覚めずに逝く可能性もあると……。


 春花   それならそれで致し方ないわ。
      母さんだって、お祖母さまの時は別として、お祖父さまと伯父さまが亡くなった時、
      仕事ではないけど、間に合わなかったという話ですもの。
      もし私が間に合わなかったとしても、それは柳原の人間の宿命なんでしょ。


 貴秋   ずいぶん厭世的だね。もしかしてまだあのことを気にしている?


 春花   そうかもしれない。でも、もしかしたら、思い出したくないのかもしれない。
      だって……


 貴秋   ………。



○春花モノローグ

 母に伝えなければならない言葉がある。あったはずだ。
 だが、それを思い出せない。
 思い出せないのはなぜなのか。どこに原因があるのか。
 伝言の主は私の叔母、そして母の義妹でもある岩下貴子、その人。
 私の最愛のひとでもある、その人。
 貴子叔母――貴ちゃん――の言葉を忘れてしまうなんて、あり得ない。そう思うと焦りがどんどん積もっていく。
 だがしかし、私は私を疑ってもいる。
 貴子叔母の伝言を、母に伝えたくないのではないか。だから思い出せないのではないか、と。



○前景『あずまや』

       ダイニングで貴秋がお茶を淹れている。
       春花は“アトリエ”の文机の前に、足を崩して座っている。



 貴秋   マスコミ対策も強化しないとな。


 春花   まだ足りない?


 貴秋   いや、その時がきたあとでは遅いということさ。


 春花   そうね。……今更ながらだけど、面倒な家よね。


 貴秋   だね。……まさか父さんの訃報までニュースになるとは思わなかった。


 春花   あのときばかりはうんざりしたわ。お父さんはただの模型屋のご隠居だったのにって。
      あれ、母さんがいなかったらどうなっていたでしょうねぇ。


 貴秋   ……今度はその母さんの番だからね。父さんの時のような面倒が起きないように、
      事前にマスコミ各社に情報を流した上で節度ある取材をするよう要請して、さらに
      要請を無視するようなら、それなりの対応はさせてもらうと釘は刺してある。
      それでも病院の周辺で嗅ぎ回ったり待機している連中が後を絶たないな。


 春花   毎日状況を流しているのに?
      ……まったく、仕事熱心ね。嫌になるわ。


 貴秋   (淹れたお茶を持ってきて、はるかに渡しながら)その理由は何かな?(目が笑う)


 春花   会長職を引き継いで、十年以上経っているのよ?
      私なんか眼中にもない感じが素敵よね。


 貴秋   やはりそっちのほうか(くつくつと笑う)


 春花   『巨星墜つ』――とか書かれちゃうのかしらねぇ。
      まったく、芸能人やスポーツ選手じゃないっての。


 貴秋   一般紙はともかく、経済関係の報道や出版は、しばらく賑やかだろう。
      面倒くさいが、そういう家だしそういう会社だ。
      私やトモはともかく、お前や春貴に何かあれば、やはりあちらさんたちは黙っちゃいない。


 春花   ……ところで、そのハルキはどうしているのかしら?


 貴秋   もう出社したことだろう。今はアイツのほうが、我々よりも忙しい立場だ。


 春花   見ていてまだヒヤヒヤすることは多いけれど、それなりになんとかやっている感じね。
      そろそろ私は引退してもいい頃かしらと思っているんですけど? 岩下さん。


 貴秋   前会長のようなことを言わないで下さい、会長。
      ……同じセリフを、十年ちょっと前に聞いたね。


 春花   あらそう……(肩をすくめる)


 貴秋   そんなに嫌な顔をするものではないよ。
      母さんとお前は、よく似ている。


 春花   ………(渋面になる)


 貴秋   さ、飲んだら行こうか。


 春花   ええ。片付けるから、車を回して頂戴。


 貴秋   了解いたしました、会長。



   ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


○岩下家本宅 縁側

       岩下友秋がドスドスと縁側を歩いてくる。
       口の周りに髭を蓄え、かつての父親そっくりな容貌になっている。
       縁側に転がっている春花を見つけて近づく。



 友秋   ……ん?
      おい、会社はどうした? というか、ここはお前の自宅じゃないだろ。


 春花   ……実家には違いないわ……。


 友秋   こんなところでだらしなく寝転がってるくらいなら、病院に行ってウチのと交代しろ。
      俺たちばかりに母さんの世話を押しつけやがって。


 春花   義姉さんには、いつも申し訳なくおもってます……。


 友秋   ……世話まではしなくても、見舞いくらいには行けよな。
      一昨日、目が覚めたぞ、母さんの。


 春花   ……うん……。


 友秋   ………。
      おい、どこか悪いのか? ずいぶんとしおらしいが。


 春花   そうでもない……と、思う。


 友秋   タカはどうした?


 春花   会社……私は追い出されたのよ。仕事にならないから、家に戻れって……。


 友秋   じゃ、柳原(自分)の家に戻れよ。
      お前の大好きな『あずまや』はあっちだろ。
      ウチのこんなところに寝っ転がってられたら邪魔でしょうがないぞ。


 春花   トモ兄……。


 友秋   ああ?


 春花   (怠惰に手招きして)


 友秋   (転がっている春花の横に腰掛ける)


 春花   ……頭、撫でてよ……。


 友秋   はぁっ!?


 春花   子供の頃、よく撫でてくれてたじゃない……。
      あたし、トモ兄の手、好きだったなあ……。


 友秋   おまえなぁ、自分がいくつだと思ってるんだ!?
      もういい年のおばさんだろ!


 春花   ……高齢者にさしかかってるわね……でもそんなの、関係ない……。


 友秋   ……(頭をガリガリと掻いて)おーまーえーなぁ……いくらここが、日当たりよくて
      あったかいと言ってもだな、あったかすぎて脳みそまで煮えちゃったか!? ん?
      (言いながら、春花の頭をごしごし撫でる)


 春花   ………(ころん、と仰向けになって、友秋を見上げる)
      ……そういうトモ兄の、ぶっきらぼうにしてるけど優しいとこ、好きよ……――


 友秋   ……お前な……(春花を覗き込む)


 春花   ――あ……。


 友秋   ん? なんだ?



       友秋の顔を見上げる春花の目が、みるみるうちに大きく見開かれる。



 春花   ……忘れてた……


 友秋   ん?


 春花   トモ兄、もともと、貴ちゃんに似てたって……。


 友秋   んあ? ……ああ、そう言えば……


 春花   ………(友秋の顔を見上げたまま)


 友秋   ………。


 春花   ――母さんのところに、行かなくちゃ……。


 友秋   お? ……おう……。
      なるべく早く、見舞いに行ってやれ。それだけでいいから。


 春花   うん……。



   ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



○柳原グループが経営する総合病院 秋子の病個室

       老いた秋子が眠っている。
       窓が開いているのか、カーテンがかすかに揺れている。
       カーテンをすり抜けた風は、病室に飾られた花を揺らした。


 声    ――ら……



       声に反応して、秋子のまぶたがかすかに動く。



 声    ――ら……



       秋子のまぶたがゆっくりと持ち上がる。
       視界にはぼんやりとした影。
       誰かが覗き込んでいることを知覚する。



 声    ――ら……


 秋子   ……貴……ちゃん……?


 声    いいえ……私よ。


 秋子   (ああ、と得心して)……春花。


 声    ええ。
      おはよう、お母さん。


 秋子   会社は、どうしたの?



       秋子の目が開いた。



 春花   今日は、お休みなの。


 秋子   日曜なの?


 春花   ううん。創立記念日よ。


 秋子   ああ……そう。もう、そんな頃なのね。


 春花   ええ。
      ……お母さん、私、お母さんに伝えないといけないことがあるの。


 秋子   ……なに?


 春花   やっと思い出したの。
      ずいぶん昔にね、伝言を預かっていたの。今まで忘れていて、ごめんなさいね。


 秋子   (小さくため息をついて)……いつもながら、詰めが甘いわね。


 春花   そうね。ごめんなさい。


 秋子   (かすかに微笑んで)……なぁに? そんなにしおらしいなんて。
      何か失敗でもしたの?


 春花   お母さん。


 秋子   なぁに……?


 春花   貴ちゃんからの伝言……


 秋子   貴ちゃんから……?


 春花   ええ。貴ちゃんから。


 秋子   ……(ゆっくりと肯いて)おねがい…。


 春花   あのね――……



     ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

--------------------------------------------------------------------------------
 続きます。

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春イベ。

Date: 2017/05/22(Mon) 16:10 [1287]

 終わりましたねぇ。
 今期は開始日が出張中だったこともあって、あまり熱心ではなく(毎回そうじゃん。

 とりあえず一式戦・隼が欲しかったから、E1甲をクリアして終わり。
 そのあとはやっぱり仕事でイベント海域に出る時間は取れなかったので、そのままイベント期間も終了。

 ●●が欲しい…つっても、イベントとの関わり合い方を楽しんでいるみたいなので、獲れなきゃ獲れないでいい…くらいの気持ちで参加するのが良いようです。

 それよりも、今ビス子の建造がしたくてたまらないw 
 大型建造をするには、鉄以外の資材がかなり心許ないので、またチマチマ溜め込み生活になります。


 今回のご新規艦は、春雨、早霜。朝霜。
 ご新規艦が少ないので、ヨチヨチ艦隊は組めないし、礼号作戦関連の任務で、朝霜がすでにぶっちぎり体制になっているので、前回イベントあとのヨチヨチ艦隊みたいにみんな仲良くレベリング…にはならない模様です。
 ただまぁ、ご新規艦だけじゃなくて、プール艦のレベリングをしてない子たちもぶち込んで、ヨチヨチ艦隊を作るかもしれませんねぇ。
 ……とりあえず、今のヨチヨチ艦隊の尻がLv70になったら考えますw
 伊14は今83くらいか。他の子は60台で(イヨちゃんずーっと旗艦だから。


 ドロップまつりの筆頭は不知火。
 イベント中だけでマジに20隻くらい拾ったかな。行った先行った先で不知火ばかりがドロップする日も。
 ……いっぺん轟沈させちゃって今2代目なんですけど、初代の呪いでも発動したんだろうかのぅ?←


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【拍手】ぱちぱち、ありがとうございます。ノ >20日。


 …そういやそろそろ誕生日だのぅ…(遠い目。

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